昨日、テレビ朝日の「ヤマワケQ 責任者はお前だ!」という番組で、以下のような問題が出題されていました。


問題-----------------------------------------------------------------------------

以下の図形を一筆書きしなさい。(制限時間はトータルで90秒)


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最近は本当にクイズ番組が多いですね。

視聴者が誰でも考えられる問題ということで、社会などの一般常識問題や漢字・熟語の問題が中心で、数学の問題は非常に少ない(あっても計算問題のみ)ように私には感じられます。

しかし、見かけ上は「数学」の問題ではなくても、数学の素養があると有利に考えられる問題というのがたまに存在しています。「一筆書き」もそういう問題にあたります。

回答者の方は1番目の問題を完了し、2番目がなかなか解けずにそのままタイムアップしてしまいました。が、原理を知っていれば実は2番目が一番とっつきやすい問題であることが、記事の後半でわかっていただけます。



一筆書きと数学との関係は古く、有名なものでは「ケーニヒスベルグの橋渡り」というお話があります。

昔のドイツのケーニヒスベルグという街は、以下のように川が流れ、橋がかけられていたそうです。


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この街で、「同じ橋を二度渡ることなく、全ての橋を渡れるか?」ということが問題になりました。この問題に対して数学史上最も偉大な数学者の一人であるレオンハルト・オイラーは、「できない」と即答したそうです。

オイラーはなぜ、即答できたのでしょうか?その答えが分かれば、一筆書きのコツが見えてきます。



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↓解説はこちら↓

まずは図を模式化して描きなおしてみましょう。

以下の図のように、それぞれのエリアと橋に名前を付けます。


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すると、エリアを点、橋を点と点を結ぶ線分と見ることで、以下のように模式化できます。


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元の問題の「同じ橋を二度渡らずに」というのは、この図では「同じ線を二度通らずに」と言い換えることができます。すなわち、元の問題は、模式化した図が「一筆書きできるか」という問題になおすことができます。


では、どのような場合に一筆書きができ、どのような場合にできないのか、考えていきましょう。


何事もまずは実験です。点Aから適当に出発してみましょう。

例えば1→2→6→5→3→4という順に一筆書きできますが、そうすると7が残ってしまいます。2→1→6→7→3→4といくと、今度は5が残ります。

他の道を試してみても、同じようにどうしても消費できない線が出てきてしまうのですが、こうして実験を重ねていると、以下の性質が見えてきます。


性質1:一つの点を一回通過する際に、二本の線を消費する。


つまり、ある点を通過する際は「」「」のための二本の線が必要なのだということです。

このことを考慮すると、出発点でも終着点でもない通過点には、必ず偶数本の線が集まっているべきであるということが見えてきます(このような点を偶点と呼ぶことにしましょう。これに対し、奇数本の線が集まっている点を奇点と呼びます)。

つまり、奇点になっても良いのは出発点と終着点の、多くて2点のみであるということになります。出発点と終着点が同じ場合は、全ての点が偶点になります。

以上をまとめると、以下の性質が導けます。


性質2:一筆書きできるのであれば、奇点は2個か0個である。


さて、ここで今回の図を見てみると、A,C,Dは3本の線が集まっているので奇点、Bも5本の線が集まっているので奇点となっていて、奇点が4つもあるので、一筆書きできないということが言えます。

恐らくオイラーもこのように考えて、自信を持って「できない!」と即答できたのでしょう。


ちなみにここで考えたことはもっと発展させることができ、今日では「グラフ理論」というれっきとした数学の一分野を築いています。グラフ理論を使うと、性質2の逆、つまり「奇点が2個か0個だったら必ず一筆書きできる」ということも証明することができます。



この話は、式をこねくり回すだけが数学でないということをわかっていただける良い例だと思うので、私は好んで用いています。ここで考えたような思考、つまり「何かをしたい→実験してみる→ある性質が見えてくる→証明する」という思考は、数学の理論を組み立てる際の基本となる流れだと思います。

高校などではまず式変形ありきで、何をさせられているかわかりにくいものが多いと思います。それが数学に意味を見出せない人を増やす原因になっていると私は感じます。もちろん、式変形ができないと数学を厳密に語ることができないので、式変形は重要ですが、一つ一つの定理や性質が何を意味しているのか、物語の背景を探るようにじっくり考えることこそが、数学を楽しむ第一歩だと思います。



さて、この話を踏まえて、冒頭の問題を見てみましょう。


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この図では、AもBもCもDも4本の線分が集まっており、偶点です。従って一筆書きすることができます。(問題として出ているので当然ですが。。)

例えば点Aから出発して、赤い数字に沿っていけばAに戻って来れます。


続いて、回答者の方が詰まっていた以下の図。


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これはA,B,E,Fが偶点、C,Dが奇点になっています。従って出発点はCかDでなければいけません。これに気づかずに適当に探していると、泥沼にはまることになります。

Cから出発して、赤い数字に沿っていけばDに着いて一筆書きが完了します。

出発点がはっきりしているので、理論を知っている人であればこういう問題は比較的簡単な問題ですね。


最後に、少し難しい3問目です。


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全ての点は偶点になっていますので一筆書き可能です。全ての点と線に名前を付けるとごちゃごちゃになるので、必要な点だけ名前をつけました。

Aから出発して、A→C→E→G→B→D→F→G→Aと一筆書きできます。



今回は、「一筆書きできるかどうか」にだけ焦点を当て、「できる場合、じゃあ具体的にどうすれば良いか」については触れませんでした。興味のある方は、後者についても考えてみると面白いと思います。



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最後に番組の話に戻りますが、ロザンの宇治原史規さんはホントにすごいですね。ちょっとマニアックな問題がどの分野から出題されてもことごとく正解していて、驚くばかりです。すごい。

関連事項として、少年マガジンで連載されているQ.E.D.という漫画の第9巻18話でケーニヒスベルグの橋渡りが扱われています。漫画中では、ちょっとしたトリックを使って「橋を渡りきる方法」を提示しています(「渡りきる」と言っても反則技を使うような感じなので、今回の記事の内容と矛盾することが書いてあるわけではありません。ただ、「なるほど、やられた」という感想は持ちました)。この漫画は数学、しかも結構専門的な話題がたくさん載っていて面白いです。→Q.E.D.‐証明終了‐   9icon