今日10月25日は、フランスの数学者、エヴァリスト・ガロアの誕生日です。

ガロアと言ったら何といってもガロア理論で有名です。

また、波乱の人生を歩んだ人物であり、20年という短い人生の中で大理論を生み出した早熟の天才だということもよく知られていると思います。


ガロアの人生についてはwikipediaのエヴァリスト・ガロアの項目にたくさん書いてあるのでそちらに委ねるとして、今日はガロアのそれほど有名でない数学的功績をご紹介しようと思います。


現在「ガロア理論」と呼ばれているものは、ガロアの最後の論文であるM���moire sur les conditions de r���solubilit��� des ���quations par radicaux(方程式のベキ根による可解条件についての論文)を指します。

…と言っても、少し読んでみたところでは、この論文から、例えば現在大学で教えられている「ガロア理論」の単位を取るくらいの理解を得るのは難しいと思います。彼の論文を理解した数学者達が整理・整備して、現在のわかりやすく明快な「ガロア理論」になったというのが正しいでしょう。

よくガロア理論の参考書は何が良いかと訊かれるのですが、群論・環論などの前提知識が全くない方にはガロア理論講義 増補版iconがおすすめです。ガロア理論を学ぶことによって何ができるか、などの動機付けも、わかりやすく書いてあります。群論・環論の基本的知識がある方で、具体的な問題を通して演習をしながら学びたい方には代数学 3iconが、ある程度抽象的でも構わないという方には代数概論iconが良いと思います。


さて、ガロアは「ガロア理論」の元になった論文以外にもいくつかの論文を残しています。
今回はその中から、彼の最初の論文であるD���monstration d'un th���or���me sur les fractions continues p���riodique(循環連分数に関する一つの定理の証明)をご紹介します。

この論文中の定理は一つです。詳しい解説を書く前に、まずは定理の内容を書くと、


定理------------------------------------------------------------------------------

ある(任意の次数の)方程式の解が循環連分数で
表されるとすると、その方程式は必ず、
循環連分数で表わされるような解をもう一つ持つ。

---------------------------------------------------------------------------------



というものです。ここで言う「方程式」とは、恐らく係数が有理数のもの(つまり無理数や虚数などは出てこないもの)のみを指していると思われます。実は論文中の定理では「もう一つの循環連分数」がどのようなものなのかという詳しい指定も書いてありますが、文章で書くとややこしくなるので、例を通して説明しようと思います。


ちなみにこの定理、現在の初等整数論ではよく知られている結果で、たとえば私が当ブログで度々紹介している初等整数論講義iconを理解した方なら、数秒で定理の正しさを確認できるレベルです。

ガロアの論文は「内容が先駆的すぎて当時理解されなかった」などとよく言われますが、それはあくまでも「ガロア理論」の元になった論文であって、このあたりの論文は主張も証明も初等的で明快なので、(論文を無事提出できた後は)正当に評価されていただろうと私は予測します。


タイトルにも定理中にも出てくる「連分数」とは、以下のような、分母に更に分数が含まれているような分数のことを指します(正則連分数と言ったりもします)。

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連分数については、過去にもたびたび紹介してきました。たとえば自己相似と黄金比で紹介した

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であったり、賭博覇王伝 零で紹介した

galois3




など。新たにもう一つ紹介すると、たとえば

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も、よく知られています。ここで紹介した3例のように、分母にずっと同じ数が現れたり、いくつかの数が周期的に現れたりするものを「循環連分数」と言います。


上記定理によると、こういう数を解に持つ方程式は、もう一つ、こういう数を解に持っているのだということになります。

証明の詳細は割愛しますが、以下ではガロアの論文中で実際に使われている例を通して、定理の主張を具体的にご紹介します。


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の解を考えましょう。解の公式を使えば一瞬ですが、ここでは連分数展開が目的なので、ちょっと変わった考え方をします。まず

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とおくと、f(3)=-3<0 , f(4)=2>0ですから、解は3と4の間に一つ存在します。そこで

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と置いて、これを3x^2-16x+18=0に代入すると

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が言えます。ここで同様に、y=1を代入すると負、y=2を代入すると正になることに注目して

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とおくと

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これはz=2を代入すると負、z=3を代入すると正ですから

galois11



とおいて

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となります。ラスト、t=1で負、t=2で正に注目して

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とおくと

galois14


となります。

ここでyの方程式とuの方程式が全く同じ形をしていることに注目すると、これ以降は同じ方程式がぐるぐる出てくることになります。このことを記憶に留めつつ、今までの変換を振り返ると

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が言えます。ここでuとyは同じ方程式を満たしましたから、u以降も1,2,1,1,2,1,1,2,1,…という感じで同様に続いていきます。すなわち

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となります。従って元の方程式f(x)=0の解は

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循環連分数に展開できることが言えます。


ここで、ガロアの論文中の定理によると「f(x)=0のもう一つの解も循環連分数に展開できる」ことになります。そして実は

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という形になる、ということも、定理の帰結として出てきます。


なぜこのような形で出てくるのか、厳密な証明は論文を見ていただくのが一番かと思いますが、直観的には、

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ということに由来しています。


冒頭でも述べた通りこれは現在ではよく知られていることで、初等整数論講義iconで更に詳しく明快に解説されています。個人的にはその本の中の「二次無理数(二次方程式の解になるような無理数)は循環連分数で表せるし、また、循環連分数で表せる数は二次無理数」という対応が美しいと思います。


ガロアは若くして大理論を作ったとんでもない天才というイメージがありましたが、こういう具体的な計算をたくさんしていた段階もちゃんとあるということがわかって、ほんの少しだけ身近に感じました。

ガロアの論文はJournal de math���matiques pures et appliqu���es(1846)11巻の中に、発表された順にまとめられています。はじめのうちは初等的な論文を書いていますが、そのうちだんだん抽象的になってきて、体論ちっくな話に移り変わっていくのが見ていて興味深いです。数学科がある大学の数学図書館に行けばおいてあると思うので、興味のある方は是非見てみてはいかがでしょうか。


100年以上前の原論文を見たのは私自身初めての経験でしたが、歴史的数学者の話を直接聞いているようでテンション上がりました。フランス語ってのがちょっと骨が折れますが…(「方程式」って女性名詞なんですね)今後も暇があれば、好きな数学者の論文をいろいろ見てみようかなと思います。


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