a023
 遅めの夏休みをもらつて、上高地へ行つてきました。
紅葉にはまだ早い時期でありましたが、そのぶん旅行客は少なく、ゆつくり過ごすことができました。
 梓川沿いのホテルに宿泊して、そこから「河童橋」を経て「横尾大橋」まで(およそ12kmほど)歩ゐて行きました。日頃から山歩きには縁遠かつた僕が、急に歩ゐてみたくなつたのは、健康、運動不足と云うやうな事もありますが、焼けついたアスファルトや、亜硫酸瓦斯まみれの街の中を歩ゐても、かへつて体にわるいんぢやないかと考へるやうになつた事もあるかと思ひます。とりあへず齢のせい、とは思ひたくは無いんですが...。
さて、清流に沿つて林の中を一人歩ゐて行くと、まさに芥川龍之介の『河童』を彷彿させる世界が拡がつてゐます。ふと振り返えれば、背後に「バツグ」が覗き込んでゐるような感じがしました。
   どうかKappaと発音してください。
と云つても、今どきの人には伊太利屋のスポオツ用品にしか思ひ浮かばないでしやうがね...。


小説中の「僕」は、上高地から穂高山へむかふ途中で河童の国に迷ゐ込んでしまうハナシです。其の国では人間世界の観点や価値観とまつたく異なる世界であつた、と云ふのですが、85年(当小説は1927年に発表)を経た人間世界は、さらに多様な観点や価値観を持つに至り、何が標準で何が異質なのか訳がわからない状況です。その中で河童の世界も忘れ去られてゐつた、と云ふのがお決まりです...。
実は、河童もそこそこしたたかで、ニンゲンの皮をかぶつて堂々と人前に存在してゐるのかもしれません。現にリアルフエイスと云ふものを、滋賀県大津市で作つてゐるんです...。もしかしてうちの社長が「ゲエル」だつたり、「チヤツク」や「ラツプ」がそこかしこで暗躍してゐる...。もう、政治家をはぢめセンセイと呼ばれる人たちの顔が、皆河童に見えてくるやうです...。
そんな妄想に浸りながら、山道をあるひて行きました。

上高地(田代橋〜横尾)


株式会社REAL-f
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