数年前、父の通夜を済ませた後、家族一同父の遺体が安置されているお寺に泊まることになりました。
布団に潜り込んで寝ようとすると、あちこちからパチパチとラップ音が聞こえ、気になって中々眠れません。
寺のすぐ側には墓場があります。
もしかすると、死んだ人の魂がここに集まっているのではないかと思うと、余計に強くなってますます眠れません。

やがて、ラップ音にも慣れ、ウトウトしかけた頃、私の右肩を誰かがポンと叩いたのです。
私は驚いて目を覚ましました。
しかし、周りの人は皆寝ています。
誰が私の肩を叩いたのか、疑問を抱いたまま、私は眠りにつきました。
次の日の朝、家族にその話をしましたが、皆口を揃えて私の肩なんか叩いていないと言いました。
「お前の肩を叩いたのは死んだ父さんじゃないの?きっとお別れを言いに来たんだよ。」母は私にそう言いました。
そういえば、父の死に目に間に合わなかったのは、家族で私1人だけでした。
そんな私の為に、父はわざわざ私にお別れを言いに来たのでしょうか?
生前の父は穏やかで優しい性格の人でした。
きっと私にお別れを言いにきたに違いない。
そう思うと、涙が溢れそうになりました。
葬式が終わって3ヶ月経ったある日のこと、眠りにつこうとした時、突然父の顔がはっきりと頭に浮かびました。
私はあまりのことに驚いてしまいました。
その頃の私は更年期障害に見舞われていて、体調があまり良くありませんでした。
父の生前にも、子宮筋腫の手術で入院したこともあり、父はよく私の体調を気にかけていました。
ガンで入院していた頃も、私のことをいつも心配していました。
そんな私を心配して父は私の元に来たのでしょうか?
その後、暫く夢の中に父が頻繁に出てきました。
父は亡くなった後も私のことを心配していたのかもしれません。
お寺に泊まった時に右肩を叩かれた話を家族と時々することがあります。
その度に、あれは死んだ父だと言われます。
本当に、私の肩を叩いたのは死んだ父だったのか?
しかし、私は肩を叩いたのは死んだ父に違いないと思っています。
今は体調も良くなり元気な毎日を過ごせるようになりました。
そのせいか、夢の中に父が現れることが無くなりました。
当時体調のすぐれなかった私を父は死んだ後も気にかけていたのかもしれません。
そう思うと、父の優しさに胸を締め付けられる思いがするのです。
父は今でも家族を天国から見守っているのでしょう。
忘れた頃にまた父が夢の中に現れる気がしてならないのです。