わたしは宮部みゆきの作品が苦手だ。なぜなら心情説明や比喩、状況や人物の行動表現が職人並みに細かいのだ。それが、わたしには毎回、だからどうしたのだ。テンポよく進めてくれ、と苛立たしく思う。それでも宮部みゆきの本は何度か手にしている。
その回りくどい説明にはかなりの確率で後半での展開に必要な背景であることが多いからだ。だから毎度苛立たしく思いながら後半でやっとスッキリするという我慢大会のような読み方をしている。
今回の本は中学二年の柏木くんがクリスマスイブの深夜、学校の屋上から転落死していたという事件を発端に起こる中学校内の混乱。そして続く事件。不完全燃焼といったらおかしいだろうが、うまく心のなかで整理がつかないままの生徒たちに暗い影を落とす。そして、柏木くんがいた頃のクラス委員、藤野涼子は提案する。学校内裁判で、みんなで柏木くんの自殺について話し合おう。事件性はないと早期の段階で警察は判断していたはずの事件には、あれは殺人事件ではなかったのか?という噂が学校内で巡っていた。その噂の標的となっている男子生徒、大出俊次を被告人として、裁判で戦おう。
実はこの本では早くの段階で事件の裏側のほとんどが明らかにされている。
というのは、裁判をしようと言い出す、藤野涼子、柏木くんのお兄さん、柏木くんの遺体を発見したクラスメイト。そのほか数人の目線から経緯を語っている章があるからだ。だからタイトルである偽証がふくまれていることも読み手には登場人物たちよりも早く承知している。それでもこれだけの長編にしているのはミステリー長編にするため、というよりも中学生の抱える問題、心の動きを書き連ねたかったからのように思える。
こういうとあんまり面白くないのかと感じるかもしれないが、それでも読む意味はある。最後の最後に、染み渡る展開、場面が用意されているからだ。薄々わかっていたのに、こう感じられるのは、わたしの嫌いな細か過ぎる表現が無駄でなかった証拠だと思う。

2013年の本屋大賞ノミネート作品として
チェックしていたのですが、出鼻から大変なページ数でした。
1冊あたり700ページ以上。
それを3冊読み込む、というのはかなり読書家でないと
できないです・・・

連続ドラマなら、アリな原作ですね。