http://www.janjanblog.com/archives/22332

平針の里山、住民と業者が睨み合い。刑事、アルジャジーラが登場。

11/5、無残に伐採されてしまっていても、まだまだ諦めない里山保全の人たちと、
開発を続ける業者との間で、衝突の続く平針の里山に出向きました。

前回記事:無残に破壊された平針の里山。周辺住民に話を聞いた。
http://www.janjanblog.com/archives/22193

業者の車と睨み合う地域住民。伐採地の右手奥には、一本だけ残された枯れ木「ハチマンツリー」が見える。

業者の車と睨み合う地域住民。伐採地の右手奥には、一本だけ残された枯れ木「ハチマンツリー」が見える。

8時頃、里山の保全を求める住民らが、平針里山南部の入り口に集合。
ほどなく重機の運転手(二次下請の三光林業)が登場。
地域住民が集まっているのを見て退散。
その後に制服警察がパトカーでやってくるものの、監督企業との連絡が付かず、三光林業の人は解散を宣言。本日は仕事をしないといって退散する。

11時半頃、大和(一次下請)の社長が、巨大バイクに乗って登場(*1)
同時に、中東の報道局、アルジャジーラ(*2)の特派員も現場に登場。
大和の社長と、地域住民らに取材を開始する。
(他の作業員、監督企業の菊和の三島氏などはまったく取材に応じないが、大和の社長だけ取材に応じる)

12時頃、三光林業の作業員が3人、車2台で現場に到着。
地域住民が集まっているのを見て退散。

13時頃、再び三光林業の作業員と大和の社長が現場に登場。
現場監督責任者の開示(*3)、説明会の開催、伐採の停止を求める住民らと揉み合いになる。
作業員らは、車を降りてチェーンソーと草刈機をもって突破。作業を開始する。

草刈機を手に住民の間を突破しようと揉み合う作業員。

草刈機を手に住民の間を突破しようと揉み合う作業員。

13時半頃、今度は天白署から私服警察が登場。刑事課のデカ5人、鑑識1人、警備課2人。鑑識以外は私服。
デカ5人は非常に威圧的な態度で住民らを包囲、公務中の警察官であるにも関わらず、自分達の写真を撮るななどと周囲を威圧(*4)
同時に菊和の三島氏が登場。
「告訴状を出したから」とだけ言って、すぐにいなくなる(*5)
その後、車の搬入を斡旋し、天白署のデカ長は、開発企業側に有利になるような話を繰り返した(*6)
この間、鑑識の人は、手持ち無沙汰な感じで「連れてこられたんだよね」などと話をしており、警備課の2人は「警察」という黄色い腕章を下げて離れた場所にいた。
「デカと同じで天白署からやってきたので同じ所たけども部署が違う。リーダー核のデカは課長級。腕章の色は愛知は黄色、他県は知らないよ」とのことだった。
なお、警察が呼ばれた理由は「業務妨害をされている」とのことであったが、実際には伐採業者は普通に作業をしており、業務妨害は発生していなかった。

15時頃、
地域住民解散。
アルジャジーラの人は取材を継続。
業者も伐採を継続。(奥のほうの「クロメダカの池」周辺の竹林)

地域住民を包囲する天白署のデカ。左のスーツに帽子が似合っていないのがデカ長。右手のスーツ4人がデカ。地域住民が不安げに覗き込む。

地域住民を包囲する天白署のデカ。左のスーツに帽子が似合っていないのがデカ長。右手のスーツ4人がデカ。地域住民が不安げに覗き込む。

この日は合計3回ほど「地域住民VS伐採業者」のにらみ合いが展開されましたが、最後は「警察の斡旋」により巻引きとなりました。

それぞれの側の話を紹介します。
ここでは、実際に話されていた、という話題を紹介するだけであり、それぞれが真実かどうかは、筆者は知りません。

開発業者の話

・地域住民が説明会を妨害したので開催しない。
・警察は元受の菊和の圧力によって協力してくれた。
・一次下請けの大和は、菊和と長い付き合いであり、どんな仕事でも断れない。
・大和(一次下請)は請負で仕事をしている。期間は2ヶ月半。作業が延びるとその分儲けが減る。人件費は一人一日15000円と語った。
・三光林業(二次下請)は、重機は一日10万、人件費は一人一日25000円と語った。(何故か一次下請けの語る日当より高い)
・三光林業の作業員は「仕事が出来なくても日当出ますか?」という質問に「そりゃ出ますよ」と返答。よかったですね安心しましたと声をかけると、少し考えて「いや、出ません」と答えが変わった。
・大和さんは「こういうことに反対するのは右よりか左よりだ、大半の人は真ん中だ」と説明。大和さんはどちらですかと聞くと、当初は「まんなか」と答えるが、それは無理があるのでは? と言うと「右よりだ」と語った。
・「右よりの仁義」としては、ボスの菊和が説明に出てこず、下請けに説明させているのはおかしいのでは、という問いかけには返答せず。
・大和さんは、自分は本来は短気であるが面倒を起こすなと言われているから大人しくしている。本当なら草狩り機を振り回していると語った。「そうする社長が捕まるじゃないですか?」と聞くと、菊和がうちの従業員の面倒をみてくれるのなら、捕まってもいいと話した。
・大和さんは、里山を伐採することに感慨はまったくない、とのこと。
・「反対派は入り口を整地する作業もさせてくれない」と言うので「では何故、森を切る前に入り口の整地をしなかったのか? 先に切りまくったら諦めると思って切りまくったのか?」という問いかけに「そうだよ」と返答。

地域住民を威圧的に包囲する天白署のデカ達。一方鑑識の人(右手の青服)は、手持ち無沙汰にウロウロしていた。

地域住民を威圧的に包囲する天白署のデカ達。一方鑑識の人(右手の青服)は、手持ち無沙汰にウロウロしていた。

地域住民の話

・毎回、説明会の説明が、まったく説明になっておらず、一方的な話をしているだけである。
・企業側の主張する「説明会の妨害」は、コロコロ変わる菊和の説明に、80歳の自治会長が怒って「説明になっとらん」と言ったことである。妨害ではない。
・裁判に訴えているので、裁判終了まで作業は中断してほしいが、このまま進められると裁判が終わる頃には作業は終わっていて意味がない。
・警察の話はおかしい。結果として企業に有利になるような事しか話していない。
・説明会には住民が40名ほど参加していた。その参加人数を制限しろと警察が言い出すのはおかしい。
・大企業は信用を大切にして、住民説明会などを丁寧にやるが、菊和は零細企業でごまかして伐採をして他企業に土地を売ったら終わりなので、信用など気にしていないのではないか。
・伐採業者はすぐに住民に金集めしろと言い出すが、筋違いな話である(*7)
・工事を止めたいならカネを集めてこい、とも言うが、信用できる相手ではないのでカネを集めても止まるとは思えない。
・私達は公有地化を提案し、市もそれに答えて買い取り価格を提示した。市の提示した適正価格(20億)に対して、儲けを大きく上乗せ(8億)してゴネた企業側にこそ問題がある。
・地域住民、とくに隣接地の住民には、詳しく説明をする必要があるはずだが、説明に回っているところと、そうではないところがある。
・地域住民の中には、里山の伐採地域と自分の土地との境界線を「修正」してもらうことで、賛成派に転んだ人もいる。
・公道である里道を周辺住民の説明もなく封鎖するのは問題である。市が業者に譲渡して開発許可を与えた経緯も不透明すぎる。
・業者の人たちは、警察がいるのといないのとでは、態度が違いすぎる。


地域住民で、かつて土木の仕事をしていた人の話

伐採の仕方、工事の進め方が、周辺住民のことを考慮していない。木の残し方が不自然である。
何も建物がない隣接地の木を残して、住宅のある隣接地の木を切ったりしている。これでは土砂を運び込んだときに、風が吹いたらホコリが直撃しかねない。そのような被害を抑制する措置もとられていない。これは法的にOKとかそういう話ではなく誠意の問題である。
また、平針の里山の溜め池には湧き水が出ており、ここを埋め立てると、その水の行き場がなくなる。行き場のなくなった水によって、土圧があがって崩れやすくなる危険もあるし、大雨などの時に、ぬかるみになったり崩れたりする危険もあるだろう。

業者によって一方的に封鎖されている里道を、アルジャジーラの記者に案内する宗宮さん。この道は誰でも通れる公道であるはずだが、切られた木々で封鎖されている。

業者によって一方的に封鎖されている里道を、アルジャジーラの記者に案内する宗宮さん。この道は誰でも通れる公道であるはずだが、切られた木々で封鎖されている。

アルジャジーラの記者、サラメ・ファディさんの話。

アルジャジーラは、いままで誰にも聞かれていなかった、小さな声を大切にします。
そのような小さな声が聞かれないことには、なか理由があるのです。
聞いてほしくない人がいるので、小さな声を報道することには、圧力をうけるリスクがあります。
ですがアルジャジーラは、リスクがあってもそのような声を報道します。
つい先週も、モロッコの支所が潰されて、10人などの記者の取材証明書が取り消されました。
モロッコ政府にとって都合の悪い報道をしたことが原因で、アルジャジーラは間違っていません。
フランス、リビアなどでも、政府と衝突することが多いです。
多くの報道局は、大きな問題でしか動きませんが、私達アルジャジーラは、小さな声でも動きます。

私の故郷のシリアには里山を開発したがるマフィアはいません。
「里山」という場所もありません。
シリアの気候は乾燥しており、岩山などが多く、木もたくさん生えているわけではないからです。
それでも、昔ながらの風景の残った美しい場所はありますが、そのような場所は政府が厳しく管理しており、開発されることはありません。
ですが、そのような自然がある場所でも、環境意識はけっして高いとは言えず、ゴミの分別なども一般的なものではありません。
日本に残された里山はすばらしいものだと思います。
今回の里山の開発の経緯には、不透明で不自然な部分があります。
特に、選挙で選ばれた河村市長が、開発を止めたいと言っても止まらないシステムには問題があります。

宗宮さん(平針の里山保全協議会)の話

みなんがんばってくれました。伐採は阻止できませんでしたが、本当に里山を守りたい気持ちで来てくれました。
それが本当にありがたいことだと思います。これで、まだまだ頑張れます。
業者の人たちは、当初は伐採しないと言っていました。俺を信じてくれ、という感じでした。
ですが実際には伐採しています。私達が止めたから伐採した、などと言い出しています。
業者には何を言っても裏切られるので、他のアクションを起こしていくしか、ないのではないかと思っています。

***

まだまだ波乱含みの平針の里山。
これからどうなるのでしょうか?

明日の土曜日は、業者が自ら配布した文書によって「重機による作業は行わない」としている曜日にあたるそうです。
果たして業者は約束を守るでしょうか?

アルジャジーラの放映は、全世界に向けて、来週に放映の予定です。


*1 一次下請けの大和の人
この現場の構造は、菊和&シィールズ(元請)→大和(一次下請)→三光林業(二次下請)、という構造になっている。
なお大和の社長は、先週、座り込みをしていた若者達に対して、
「大和も三光林業も、菊和の下に並列する下請企業である。自分は故郷の山で森林保全活動をしていたし、今回のような仕事はしたくない。もう現場にも来ないと思う」と説明をしていたため、彼らの配信しているUSTREAMでは「ダイワさんは悪くありません。菊和が悪いです」という紹介をされていたが、ところがどっこい、大和の加藤氏は一次下請けであり、菊和に代わり、二次下請けの三光林業を指揮命令する立場であった。座り込みをしていた若者達は、菊和の担当者・三島利和氏の対応が悪すぎる(みせしめのために大きな木から切ってやる等)のと、まだ普通に話をしている大和の社長とを比較して、コロっと騙されてしまっていたようである。
現場作業員によると「海千山千だからね」とのことであった。

*2 アルジャジーラ
中東カタールにある衛生放送局。
検閲を拒否しあらゆるものをライブ放映したり、アルカイダの声明ビデオを報道したりする、中東を代表する放送局である。自由な報道姿勢から弾圧も多く、アフガン戦争の際に英語版ホームページを開設した時にはサイバー攻撃をうけてクラッシュしたり、イラク戦争の際には米軍のミサイルがバグダッド支局を「誤爆」して特派員が死亡したりしている。

*3 現場監督責任者の開示
工事現場に掲示されている看板には現場監督責任者が書かれていない。過去に記載があって、上から消された形跡のある看板もある。地域住民の話では、問題の多い現場であるので、なり手がいないのではないか、という噂であった。

*4 公務中の警察官には肖像権がない。
警察官でなくとも、公務中の、すべての公務員の撮影は、肖像権侵害にならない場合が多い。
さらに、警察官による不当拘束を立証する証拠的撮影の確保などの必要性もあり、公務中の警察官を撮影しても、肖像権侵害には当たらないとする最高裁判決がある。もちろん、相手が知らないことに付け込んでいるのか、あるいは本当に無知なのか、この事実を否定する発言をする警察官も多いが、事実である。

*5 告訴状を出したから
地域住民の話では嘘だろうとのこと。過去に三島氏は「双方の弁護士同士で話し合いをする。双方の弁護士が到着するまで作業は行わない」と約束して、車を入れた途端に、「弁護士なんか来るわけないだろ、バーカ」などと地域住民を罵倒、約束を破って作業を継続した、という経緯があった。

*6 天白所のデカ長が開発企業側に有利になるような話を繰り返す
地域住民への説明会に、地域住民側からの参加者を、企業側と同数に制限しろ、など。これにたいし、地域住民からは、住民説明会で代表しか参加を認めないというものは住民説明会ではないし、企業側が「怖い」印象も強いので、受け入れられない、という話が出ていた。

*7 地域住民にいくら出すのかと言いまくる。
作業が止まったので、周辺住民に「代わりにカネを出せ」と言い出すのは、間違いである。
まず、雇い主は作業員にたいして、仕事があってもなくても、賃金を支払う義務がある。この場所には反対運動があってややこしい場所であるということは、事前に分かっていたはずなので、それを分かった上で仕事を請け負った場合、もし反対運動で作業がおくれた場合のリスクは、雇い主が責任をもつべきことで、従業員には仕事が出来なくても賃金を支払う義務がある。


関連リンク:
平針の里山保全協議会
http://www.wa.commufa.jp/~hirabari/
【多様な人々】宗宮弘明さん(平針の里山保全協議会)
http://www.ustream.tv/recorded/10485945
・hirabarisato on USTREAM .(伐採に対する抗議活動の様子が見れる)
http://www.ustream.tv/channel/hirabarisato
ふじた和秀 名古屋市議会議員 公式WEBサイト(伐採前の写真がある)
http://fujita-kazuhide.jp/blog/entry-80.html
パキートのブログ(伐採される里山の様子がレポートされている)
http://ameblo.jp/arcoiris758/
株式会社 菊和(伐採を監督している企業)
http://www.kikuwa.jp/

COP10・平針・里山伐採イニシアティヴ:
無残に破壊された平針の里山。周辺住民に話を聞いた。
http://www.janjanblog.com/archives/22193
平針の里山を次の世代に残したい「いのちの旅のパレード」開催。
http://www.janjanblog.com/archives/21812
平針の里山を暴力業者が伐採中 現場の人の話と各種報道を集約してみた。
http://www.janjanblog.com/archives/21460
宮崎駿監督の「平針の里山」保全決議受け「なごやのトトロの森基金」発足
http://www.janjannews.jp/archives/2479340.html
宮崎駿監督が河村市長宛て「平針の里山」守る決議を公表
http://www.janjannews.jp/archives/2437019.html
平針の里山「保存」から急転「開発」のナゼ?
http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912234702/1.php
危機にある名古屋の里山保全に宮崎駿監督がエール
http://www.news.janjan.jp/area/0909/0909099967/1.php

特集・COP10
・巨大葦船、七里の渡しより進水。弾力のある船体を見る。
http://www.janjanblog.com/archives/20805
・COP10会場にて上関原発アクション展開。現地では最後の台船が退散。
http://www.janjanblog.com/archives/20564
・葦船お披露目の「いのちのパレード」開催。デニス・バンクス氏も登場。
http://www.janjanblog.com/archives/20384
・名古屋の中心部に巨大葦船出現。首謀者に聞く。
http://www.janjanblog.com/archives/20096
・「13人のグランマ」COP10で記者会見。会場からの発言で質問時間消滅。
http://www.janjanblog.com/archives/19940
・上関(祝島)原発に世界の注目を。COP10会場にてハンスト決行中。
http://www.janjanblog.com/archives/19830
・「先住民族サミット」初日。上村英明さんCOP10での戦略を聞く。
http://www.janjanblog.com/archives/19438
・COP10おむすび村開村。祝島(上関)原発からのSOSに答えて人を送り出す。
http://www.janjanblog.com/archives/19336
・「先住民族サミットinあいち」G8での開催に続き、今度はCOP10でも開催。(10/15-18)
http://www.janjanblog.com/archives/19290
・「13人のグランマザー」精神性の影に強い「先住民族としての政治」を見る。(10/18-20)
http://www.janjanblog.com/archives/18772
・人と人を結ぶ空間に」COP10期間中宿泊OK。「おむすび村」(10/10-29)
http://www.janjanblog.com/archives/18728
・生物多様性フォーラム、MOP5報告会(10/10,10/11,10/16)
http://www.janjanblog.com/archives/18342
・まもなくCOP10開催。みんなで作る村と通貨のアースキャンプ。(10月8日~11日)