平針里山、十六銀行に申し入れ。返答は「何故批判されるのかがわからない」?!
「みせしめに大きな木から切ってやる」と言い放つ業者に無残にも伐採されつくされた平針の里山。
この業者は、河村市長も開発阻止のために尽力したものの、市の査定額20億に対して28億を提示。
「まったく話にならなかった」業者だったそうです。
その後、訴訟が起こされ、業者と地域住民のにらみ合いが続き、海外メディアも取材に登場、先日は国会質問にまで発展しました。
「平針の里山問題」は、だんだんと「おおごと」になりつつあります。
10/10、平針の里山保全協議会の人達が、里山問題の収束を図るべく、
平針の伐採企業に融資をしている十六銀行に申し入れに向かいました。
・「COP10・SATOYAMA・伐採・イニシアティヴ問題」が国会質問される。
http://www.janjanblog.com/archives/22803
・「平針・里山伐採イニシアティヴ」を、年表にまとめてみた。
http://www.janjanblog.com/archives/22627
・無残に破壊された平針の里山。周辺住民に話を聞いた。
http://www.janjanblog.com/archives/22193
十六銀行は、名鉄の「新岐阜」駅の目の前にある立派なビルです。
11時過ぎ、宗宮弘明さん、動物写真家の小原玲さんらが、申し入れに十六銀行に来たところ、本店営業部の尾関さんが応対。
事の次第を話をしますが、十六銀行の経営陣の方ではなく、本店の店舗の方だったとのことで、里山の伐採の話はよくわかりませんでした。
事情を説明したところ、話の分かる人を呼んできます、ということで引っ込みました。
ここで、かなりの時間待たされました。
保全協議会の人たちの話では「誰が応対するのかで、もめてるんじゃないのか」ということでした。
20分近く経過してから、「お客様係り」の人が出来て応対。
宗宮さん1人だけ、16時半なら会うがそれ以外はムリ、という返事でした。
お客様係りの人に、申し入れに来ているのだから、1人だけはヘンだろう、ということを話をするも、全く聞く耳をもたず、とにかく
「1人だけ、16時半」と繰言を繰り返すだけでした。
小原さんが伐採現場の映像を見せようとしますが、顔をそむけて画面すら見ようとしません。
申し入れにきたのだから、とにかく申し入れ書を受け取るように、と話をすると、また
「1人だけ、16時半」と、下を向いて呪文のように繰言を繰り返します。
「受け取るならここで受け取って渡すことも可能だろう」と諭すと、やっとで「担当のものに渡します」ということで「お客様係り」の人は受け取りました。
申し入れ書には
「平針の里山の伐採に融資している金融機関としての責任はないのか」
「企業の社会的責任についてどう考えるのか」
「十六銀行は「日本の森を守る地方銀行有志の会」に参加しているが、里山伐採の事業に融資をするのは矛盾していないのか」などが書かれており、12日までに返答を、という内容でした。
会としての申し入れといっても全く聞く耳がないので、申し入れ書を「お客様係り」に渡して、
のちほど「1人だけ、16時半」に、しかるべき責任のある人に会うことになりました。
11時にやってきて16時半に会う、ということですから、微妙に時間が空いたので、岐阜の町を見て回りました。
岐阜の商店街は、かなり広い範囲にアーケードがあるのですが、商店街の多くはシヤッター街になっています。
「柳ヶ瀬ブルース(*1)」などでも謡われる柳ヶ瀬もありますが、やしりシャッターが降りているところが目立ちます。
とくに、商店街の表通りに面した場所にあるビルが丸ごと「売地」になっていたり、
表通りのパチンコ屋が閉まっており(*2)「しばらく閉店します」という張り紙が、見事に変色している所があったりすることが、印象的です。
シャッターの閉まっている商店街に、十六銀行のビルがあちこちにドカーンと建っているのが印象的です。
経済に詳しい方の話によると、岐阜は名古屋と違って地元産業がなにかあって、それが発展したものではなくて、裏社会の経済が盛んで、それに付随して発展した町ではないか、という話でした。
一行は、岐阜の町をブラブラと歩き、時間を潰して再び十六銀行に向かいました。
宗宮さんは、1時間ほど一人で話をして出てきましたが「全く話にならなかった」とのことでした。
どのような「話にならなかった」のかについて、宗宮さんにお聞きした、十六銀行とのやり取りの話を再現してみます。
宗宮:COP10で自然が大切だと言っているときに、こんな伐採が起こったしまうとは驚きでした。
いままで興味のなかった人たちも、これはおかしいと言い出しています。
このような里山は残さないといけない、特に都会の中にこんな所が残っているところは珍しい、という声が、私達市民だけでなく、行政や研究者、専門家から上がっています。
十六銀行には、地域住民が望んでいる解決をしてほしいです。
できれば抗議活動はしたくないです。ソフトランディングしたいのです。
今回の問題を契機に、十六銀行の名声も上がるようなことをしたいです。
十六銀行・三浦文彦(取締役・営業統括部・部長):ネットとかHPでも、何故私達が非難されるのかが分かりません。。
ネットに私どもの通帳にハサミを入れる映像が流れる映像が流れるのは困りますね。(*3)
国会質問で名前が出るのも困ります。どうしてこんなことを言われるのかが分かりません。
宗宮:十六銀行が開発業者に平針の里山を伐採して宅地にする、ということで融資をしているのは確かですよね?
世界では自然を資本にしようという考えが多くなっていますし、名古屋市長も保護すべきだということで動いてくれましたが、業者が全く聞く耳をもたなかったのです。
十六銀行・三浦:今回の融資には都市開発や環境問題があるのだと思うが、私どもは一金融機関であり、専門的な部分は分からない。
国会質問の写真でもあったように、周囲も宅地になっているので、そのような地域に、一金融機関としては、宅地開発をしたいという業者を支援するのは善である。(*4)
宗宮:十年前ならその考えは通ったかもしれませんが、いまは社会がかわっています。
市長さんがやってきて「これは文化財だ、わしの入る一日前に申請して開発許可が出ているのは問題だ」と発言している開発に関して、協力をお願いするのはおかしなことでしょうか?
十六銀行・三浦:それは行政にがんばってもらってください。
名古屋市も緑地として残したいところには規制をかけているんじゃないですか?
名古屋市も全て緑を潰しているのだから(注意:市長は止めようとしていた)問題はありません。
宗宮:この開発で一番のキーパーソンは十六銀行だと思います。
開発業者の暴力によって怪我人が出ています。
開発業者は普通の会社ではないと思いますし、話し合いは難しいでしょう。
市長さんに聞いても、開発業者も全く話ができない相手だったというとです。
開発業者、行政、保全協議会、十六銀行の4者協議を実験したいのです。
保全協議会は行政に申し入れをして、十六銀行さんには開発業者に声をかけてほしいと思います。
十六銀行・三浦:がんばって業者に声をかけてください。
宗宮:業者は話にならないのです。怪我人も出ています。話し合いができる相手ならとっくにしています。
十六銀行・三浦:私どもが声をかける話ではないと思います。
なんでこんなことになったんだろうと本当に困惑しています。誹謗中傷をされていると思います。
宗宮:生物多様性を残すことは次世代に大切です。
生物多様性を残さないと、次世代の人たちが困ってしまいます。
十六銀行の融資によって里山が破壊されているので、抗議されているのです。誹謗中傷ではありません。
十六銀行・三浦:
このようなことを繰り返されるなら話し合いになりません。私どもは企業としての対応をしています。
***
このような感じで、十六銀行は「なにがいけないのかがわからない。里山を破壊して宅地を作ることは善である」という姿勢で一貫していたようです。
挙句の果てには、保全協議会の人達が持参した「申し入れ書」を、申し入れ書として受け取るのではなく「宗宮さんの個人的な案として受け取るのはダメか」などと言い出したそうです。
宗宮さんは会としての申し入れ書として持参した旨を明言して返答を求めて帰りました。
このあと12日、再び宗宮さん達、保全協議会の人たちは、十六銀行に再び出向いて要望書の返答をもらいに行きましたが、この姿勢は全く変わっておらず、赤道原則も、企業の社会的責任も、里山の保全も、全く「意に介さない」態度だったそうです。
十六銀行は「日本の森を守る地方銀行有志の会」の参加しているのですが、それは別に、十六銀行の融資で里山を破壊することとは、何の関係もないそうです。
さらには、会話内容を録音したいという申し入れを拒否。
録音するなら応対しない、という態度だったそうです。
国会質問、各種報道、Youtubeの「十六銀行の通帳を切る映像」などは「堪えて」いるようですが、
十六銀行は「何故そのようなことをされるのかがわからない」ということでした。
保全協議会の宗宮さんは、このような十六銀行の姿勢に対して
「金融機関が融資しなければ、環境破壊は促進されません。
これは国際的な常識となりつつあります。COP10ではそのようなことを話し合ったはずです。
そのような意識が日本の金融機関ではまだ低いですが、全く省みないという十六銀行の姿勢は、問題がありすぎます。
このような意識を変えるために、なんらかのアクションをする必要があると思っています」
と語っていました。
十六銀行への申し入れは、うまくいかなかったようです。
現在、平針の里山には、ぞくぞくと土砂が運び込まれているようです。
*1 柳ケ瀬ブルース
1960年代にヒットした曲。美川憲一が歌っていた。
ヒットしていた当時は、柳ケ瀬は活気のある繁華街であったが、現在は寂れつつある。
*2 表通りのパチンコ屋が閉まっている
パチンコ屋は、かなりの地方都市でも、それなりに営業しているものである。
*3 十六銀行の通帳にハサミを入れる映像
里山伐採の業者に融資をしている十六銀行に抗議をしたもの。
なお、読売新聞の報道にある「伐採を開始しないと融資引き上げを示唆」したのが十六銀行でないとしても、開発計画に融資をした金融機関としての責任は存在する。
参考:YouTube – 十六銀行さん 私たちのお金を里山開発に使わないで
http://www.youtube.com/watch?v=iWwwqiVzmIw
*4 周囲は住宅地。宅地開発は善?
直接話をした宗宮さんによると、国会質問で写された伐採後の里山の写真の背後に宅地が写っていることをさして「周囲も宅地なんですよね」などと指摘していたとの事。
木を切ってしまって、今まで見えなかった宅地が見えるようになったことに、驚いたり悲しんだりするのではなく、回りも宅地だと指摘する発想に驚いたとの事。
関連リンク:
平針の里山保全協議会
http://www.wa.commufa.jp/~hirabari/
日刊ベリタ 記事 生物多様性保全は「絵に描いた餅」か
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201011091301262
ふじた和秀 名古屋市議会議員 公式WEBサイト(伐採前の写真がある)
http://fujita-kazuhide.jp/blog/entry-80.html
パキートのブログ(伐採される里山の様子がレポートされている)
http://ameblo.jp/arcoiris758/
針山里平のブログ(新聞記事がまとめられている)
http://ameblo.jp/satoyama-initiative/
株式会社 菊和(伐採を監督している企業)
http://www.kikuwa.jp/
関連映像:
YouTube – 国会で阿部知子議員が平針の里山の問題と十六銀行に対して質問
http://www.youtube.com/watch?v=-5grPl0kxm8
YouTube – 十六銀行さん 私たちのお金を里山開発に使わないで
http://www.youtube.com/watch?v=iWwwqiVzmIw
【多様な人々】宗宮弘明さん(平針の里山保全協議会)
http://www.ustream.tv/recorded/10485945
hirabarisato on USTREAM .(伐採に対する抗議活動の様子が見れる)
http://www.ustream.tv/channel/hirabarisato
COP10・平針・里山伐採イニシアティヴ:
「COP10・SATOYAMA・伐採・イニシアティヴ問題」が国会質問される。
http://www.janjanblog.com/archives/22803
「平針・里山伐採イニシアティヴ」を、年表にまとめてみた。
http://www.janjanblog.com/archives/22627
無残に破壊された平針の里山。周辺住民に話を聞いた。
http://www.janjanblog.com/archives/22193
平針の里山を次の世代に残したい「いのちの旅のパレード」開催。
http://www.janjanblog.com/archives/21812
平針の里山を暴力業者が伐採中 現場の人の話と各種報道を集約してみた。
http://www.janjanblog.com/archives/21460
宮崎駿監督の「平針の里山」保全決議受け「なごやのトトロの森基金」発足
http://www.janjannews.jp/archives/2479340.html
宮崎駿監督が河村市長宛て「平針の里山」守る決議を公表
http://www.janjannews.jp/archives/2437019.html
平針の里山「保存」から急転「開発」のナゼ?
http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912234702/1.php
危機にある名古屋の里山保全に宮崎駿監督がエール
http://www.news.janjan.jp/area/0909/0909099967/1.php