思考都市 坂口恭平 Drawings 1999-2012思考都市 坂口恭平 Drawings 1999-2012 [単行本(ソフトカバー)]
著者:坂口 恭平
出版: 日東書院本社
(2013-03-06)


やっと、この本を買いました。買ってよかったです。
先日見た、ワタリウム美術館での展示が、コンパクトにまとめられた感じの本です。倍の値段でもいいから展覧会カタログと呼べるぐらい分厚いのも見てみたいのですが、これはこれでいいです。より多くの人に認知されることが大事だと思うので。

この本や、先日見た展覧会で感動したことは、記録を残す事自体がアートになりうると、実感した事です。子どもの頃に作った、学習机でつくった家のようなもの。学生時代に貯水タンクの中で住んだ事。大学卒業後に路上生活者の生活を取材した事。そういった事をスケッチしたり、写真集にしたり、映像で記録することによって、アート作品として世の中に出すことができる。そういうことに私は感動しました。
それと、あきらめない事の大切さを感じました。巻末の作者の経歴を読んでいたら、20代後半までアルバイトをしながら創作活動をしていた事を知りました。アルバイトをしながら無名のアーティストでいることはしんどい事です。自分の作品は世の中に認知されないわ、労働者として認められないわで。収入が無い事も、社会にとって要らない存在だと思う事も、しんどいでしょう。それでもあきらめず続ける事で、人に「考え方」「ものの見方」を伝える事ができる。そういうことに感動しました。

未だに、日本の美術の世界では、洋画だの彫刻だの抽象だの具象だの、そういった分類があります。美術館によっては、この本の「ドローイング」の部分だけ展示するでしょう。けれども、今の美術館では、ドローイングも考え方を説明する図も映像も立体作品も展示して、「考え方」や「ものの見方」を伝える事が重要なんじゃないかと思います。そもそも美術というもの自体、何かを伝えるためにあるんじゃないでしょうか?