2018年07月18日

おひとりさまの終活

おひとりさまの終活に関する書評。

タイトルは「おひとりさまの死後事務委任」。
直球ですね。(^^;

曰く、終活で活用すべき5つの制度は、
 ・成年後見
 ・身元引受、身元保証
 ・遺言
 ・信託
 ・死後事務委任

おひとりさまに限らず、現代の一番の問題は認知症。

老後は誰にも迷惑かけないつもりでコツコツ貯めたお金ですら、
認知症になれば、裁判所が選んだ見ず知らずの人に委ねなければなりません。

当然、自分が希望していたとおりに使ってくれる保証はありません。

さらにおひとりさまには、孤独死(=死に様を選べない)リスクもあります。

だから、お元気な間に、信託や身元保証・死後事務委任などを
契約しておく方がいいわけですね。

阪神間の方は、一般社団法人いきかたラボがお手伝いします。
一度、話だけでも聞いてみてはいかがですか?


【いつ死んでも大丈夫? 財産は? 連絡は? SNS削除は? おひとりさま用「終活説明書」】

「終活」が重要だ、という話をしたい。実は友人で「終活アドバイザー」になった40代の女性がいる。この資格は「人生の終わりへの多岐にわたる準備、総合的なライフプラン設計をサポートできる」というもの。ただ彼女は資格を生かし働くというより、自分の知識のために取得したそうだ。まず自分が独身のまま最期を迎える時を考え、また離れて暮らす両親のことも考えるようになった。親は父母どちらかが先に亡くなると、残された方は(彼女と一緒に暮らせない以上)やはりひとりきりになる。

 3世代以上で暮らすというケースは減少し、核家族化、さらに世代間の考え方のギャップも広がっている。独身者、子供のいない夫婦、いつかひとりになるだろう家族がいる人、皆この「おひとりさま終活」については考えざるをえない。本稿でおすすめしたいのは『おひとりさまの死後事務委任』(島田雄左、吉村信一/税務経理協会)だ。

■多様化する価値観、制度はいまだ整備不足…おひとりさま終活はどうするべき?

 本書ではひとりで最期の時を迎えるかもしれないその時のために、誰もが知りたい! と思うことがしっかりと書かれている。「おひとりさまの相続財産はどうなる?」「他の家族に内緒で葬儀はできないの?」「どんな人が遺言書を書いておくべきか」「フェイスブックアカウント削除の実態」など読みたくなるトピックが並ぶ。

 最も重要な部分は、おひとりさま終活で活用すべき「5つの制度」だ。それが「成年後見」「身元引受・身元保証」「遺言」「信託」そして本書のタイトルにもなっている「死後事務委任」。これらの中から自分や家族が合う制度を活用すればよい。これらの制度と提供されるサービスが、ひとつひとつ丁寧に書かれている。

■生前のサポートから遺言執行まで行う死後事務委任制度

 近年依頼が増加しているのが「死後事務委任制度(契約)」である。この制度は生前の日常生活をサポートし、亡くなると各種手続きに葬儀、そして財産処分・分配を行う遺言執行を開始する。

 その具体的な業務は多岐にわたる。役所での諸手続き(死亡届、保険証・マイナンバーカード、免許証、パスポートなどの返却)、葬儀と埋葬、遺品整理(家の片付け)、各種契約の解約・清算、遺産相続手続き、メールサービス・SNSアカウントの削除…。

 これだけのことを行う受任者は資格に制限がない。しかし本書にも書いてあるが、信用度が高く法的な問題にも配慮できる弁護士・司法書士・行政書士などに依頼するべきだろう。

■終活の計画は時間をかけて、じっくりと

 この書籍を書いたひとり、行政書士の吉村信一氏に話を聞いたところ、この数年、日本全国で多くの死後事務委任契約を結んだという。その相手は40代、50代と比較的若い人が多いそうだ。しかもそのうち半分近くは女性だとか。

 日本は年齢、性別にかかわらず終活の意識が高まってきているのだろう。書影は老人のイメージだが、若い人も知っておくべき内容であるし、自分の家族がおひとりさま終活をせざるをえない状況であれば、そのための知識を得ておいて損はない。間違いなく、早ければ早いだけいい。

 吉村氏が死後事務委任契約を結ぶようになったきっかけは、余命宣告を受けた末期癌の患者Aさんだった。打ち合わせから遺言書と死後事務委任契約書を完成させるまでに僅か1ヶ月半。そして契約から半年後、Aさんは帰らぬ人となった。全ての手続きが完了するまでにそれから約半年かかることになる。この時わかったことが短い準備期間ではヒアリングしきれない項目や、受任者が把握していない問題が亡くなった後に発覚することもあるということ。つまり死後事務委任契約は数ヶ月程度の時間をかけて、じっくりと計画を立てるべきで、終活について考えたなら、ぜひ少しでも早めに行動することを検討してほしいということだ。

 また本書には実際に「死後事務委任を設計するための質問項目や確認事項」がまとめてある。これらをあらかじめ考えておけば、専門家へ相談する時にスムーズに話ができる。最期を考えることはネガティブなことではない。自分と周囲に等しく訪れるその機会に、あわてないため、本書を一読することをおすすめしたい。
(7月18日 ダ・ヴィンチニュース)


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月16日

「地積規模の大きな宅地」の新たな視点

本年1月1日をもって、相続税の広大地評価が廃止され、
地積規模の大きな宅地の評価」が新設されたのはご承知の通り。

おさらいですが、下記が新しい評価減の要件です。
 〇安臈垰垠は500岼幣紂△修谿奮阿涼楼茲1000岼幣紂
 普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区限定。
 市街化調整区域、工業専用地域、容積率が400%以上でないこと。

つまり、従来ダメだった、「都心の低層マンション」が
新しく評価減の対象になるってことですね。

該当する物件をお持ちの方は、ぜひシミュレーションしてください。

また、これから取得なさる方は、こういう視点も織り交ぜてご検討くださいね。


【マンション相続、実質減税 土地の容積率で新基準】

 国税庁が7月2日に発表した2018年分の路線価は全国平均で0.7%上昇した。ただし、路線価はあくまで「標準的な宅地」の価格であり、相続税の計算では個別の事情に応じて減額補正が認められる。実は税制改正によって18年から一部の中低層マンションの土地にかかる相続税が事実上、減税になった。どういうことだろうか。

 「このマンションは1戸当たり数十万円の減税効果がありますね」。相続税に詳しい岡野雄志税理士が地図上で指さしたのは、横浜市営地下鉄センター北駅から徒歩10分余りに建つAガーデン(仮名)。東京都心へのアクセスがよい同駅周辺は子育て世代に人気があり、Aガーデンの路線価も前年より2%上がった。

■一部中低層が該当

 路線価は道路に面する土地の1平方メートル当たりの価格で、相続税と贈与税の計算ベースとなる。路線価が上がったAガーデンはその分相続税が重くなりそうだが、岡野税理士は「税制改正でむしろ実質的に減税になった」と指摘する。

 路線価はごく標準的な条件の土地を想定したもの。形がいびつだったり高低差があったりすると資産価値が低いとされ、路線価による評価を減額できる。相続税の申告書に記載して認められれば節税につながる。

 「広すぎる土地」も全面をくまなく有効利用するのは難しいとの理由から減額が可能だが、中高層マンションの開発に適するようなケースは除外するとされてきた。ただしその判別は実務上難しく、申告したのに税務署に認められず不満を持つ納税者もいた。

 国税庁は18年から、広すぎる土地の条件を3つに明確化した(図A)。土地の「容積率」が低めであれば、形式的にマンションには不向きで価値が劣ると判定。現にマンションが建っている土地でも減額を認めるようにした。

3条件すべてを満たすと路線価から減額できる

 容積率は土地面積に対して最大どのくらいの延べ床面積の建物を建てられるかを示し、都市計画で地域ごとに指定されている。新ルールでは400%(東京23区では300%)よりも低ければ減額が認められ、結果的に中低層のマンションで土地の相続税が実質減税となった。

 路線価からの減額率は、土地が広ければ広いほど有利だ。約2万平方メートルという広い土地にあるAガーデンの場合、減額率は約34%にもなる。岡野税理士がAガーデンの平均的な住戸について試算したところ、土地部分の相続税の評価額が約360万円下がった。これに税率を掛けた分だけ減税になったはずだという。

 こうした減税対象のマンションはどのくらいあるのか。不動産情報サービス会社、東京カンテイ(東京・品川)が、1980年以降に分譲された物件を対象に集計したところ、東京23区だけで少なくとも700棟近くあった。容積率をデータベースに登録していない物件を含めると、数倍にのぼる可能性がある。

 相続案件を専門に手がける税理士法人チェスター(東京・中央)の荒巻善宏税理士は「今年に入って発生した相続で実際に減額補正できる案件が出てきている。地価の高い東京都心の低層マンションなどは減税の恩恵が大きい」と話す。

■幹線道路沿い留意

 幹線道路沿いなどで容積率の異なる土地にまたがって建っているマンションにも路線価から減額できるルールがある(図B)。道路に面していない奥の方の土地の容積率が低いのに土地全体をそのままの路線価で計算すると、過大評価になってしまうからだ。

容積率が低い地域が含まれると減額補正が可能

 例えばマンションが幹線道路に面して間口50メートル、奥行き24メートルの1200平方メートルの土地に建っており、容積率は道路から20メートルまでの1000平方メートルが300%、それより奥の200平方メートルは100%としよう。

 この場合、マンションが路線価図の「普通住宅地区」にあるなら減額率は約1%。容積率がより地価に影響を与えやすい「普通商業・併用住宅地区」では約6%の減額が認められる。

 こうした減額補正を知らずに申告しても一般に税務署は指摘してくれないため、相続税の払いすぎになる心配がある。いずれ相続するマンション住戸があるなら、路線価からどんな減額ができるのか、よく確認しておきたい。

◇  ◇  ◇

■小規模宅地等の特例 適用で相続税ゼロも

 土地の評価を路線価から減らすことのできる税制の中で、最も減額率が大きいのが相続税の「小規模宅地等の特例」だろう。亡くなった人が住んでいた自宅の土地を、同居していた親族らが相続した場合に、その評価額を80%(面積330平方メートルまで)も減らせる仕組みだ。

小規模宅地等の特例の適用状況

 相続税の申告により、この特例を活用すると、相続税がゼロになることも多い。一般に相続財産に占める土地の比率は高く、特例活用により財産全体の評価額が、基礎控除の範囲内におさまりやすくなるためだ。

 相続税の申告件数は2016年分で13万6891件。日本経済新聞の情報公開請求に対して国税庁が開示した資料によると、このうち54%(7万3444件)で、同特例が適用された(図C)。路線価などで計算した評価に比べて全体で1兆1898億円が減額され、税負担の軽減につながっている。

 同特例の適用によって相続税がゼロとなったのは、申告件数全体の16%(2万1736件)だった。とりわけ相続財産に占めるマイホームの割合が大きい都市部の中流層は、同特例が使えるかどうかで税負担が大きく左右される。
(7月14日 日本経済新聞)


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月12日

後悔・・・(^^;

ショッキングなタイトルのコラム。
「親の成年後見人になった私が後悔している事」・・・(^^;

後見人になると面倒くさいという声はよく耳にしますが、
詳細に、ナマナマしく書かれた貴重な情報ですね。

成年後見関係事件の概況」のP8にあるように、
申立ての動機は断トツで「預貯金等の管理・解約」。
「身上監護」の3倍だもんね。

で、解約の代償は・・・
本文をご参照ください。(^^;

読めば、打つべき手が見えてきます。

預金を凍結させない、あるいは凍結されてもいい状態を作るのが最優先。
家族信託も一つの選択肢ですね。

お金と不動産の対策さえ済めば、後は身上監護に専念すればいい。

くれぐれも、順番を間違えちゃダメですよ。


【親の成年後見人になった私が後悔している事】

親が認知症になって銀行のキャッシュカードの暗証番号がわからなくなったら、子どもであっても預金を引き出せません。子どもが親の「成年後見人」になれば解決する――そう銀行から告げられた筆者が父親の成年後見人となって4年、その経験を基に『認知症の親と「成年後見人」』を上梓しました。なぜ筆者は「成年後見人になるかどうかはもっと慎重に決めるべきだった」と感じているのでしょうか。

 2013年10月、私にまさかの出来事が起こります。母が末期がんであること、さらに父の認知症がかなり進行していることが、同時に判明したのです。母は年明けに危篤状態に陥り、医師から「余命1か月」と告げられました。一方、父も腰の圧迫骨折で倒れて意識を失い、入院します。

 この事態をどう乗り越えたらいいのか――。まずは親の財産を知る必要があると考えた私は、父のメインバンクの通帳をチェックしました。そこには予想を超える預金があり、年金も十分振り込まれていることがわかったので、姉と話し合い、母をゆったり送り出すとともに、父を民間の介護施設に入所させようと決めました。

■大きく立ちはだかった「お金の問題」

 しかし、ここで大きく立ちはだかったのが「お金問題」でした。親の入院費用や生活費、葬儀費用、父の介護施設の入所費、その他もろもろ……。それらの費用を工面しようにも、父の銀行のキャッシュカードの暗証番号を把握していなかったため、引き出せない事態に陥ったのです。それでも発生するものは発生します。私は自分の貯金から、それらの費用を捻出していましたが、この状態がずっと続くと考えると、不安だけが募りました。

 ダメもとの気持ちで、銀行に直談判しに行くと行員と面談することになりました。そこで、なぜお金が必要なのかを必死に伝えたところ、行員が「では今回は私の責任で」と、当面の費用を引き出すことはできました。しかし、肝心の暗証番号は教えてくれませんでした。さらに預金の半分以上を占めていた定期預金の解約は「名義人(父)の委任状がない以上、不可能です」と言われました。

 さらに私に「お金問題」が襲ってきます。母の死去後、遺産相続が、お手上げ状態になってしまったのです。金融機関の預貯金を遺産相続するときは、遺産分割協議書や金融機関に提出する書類に、相続人それぞれの署名が必要になりますが、母の死去などで当時、父の認知症の症状は悪化しており、とても自分で署名できる状態ではなかったからです。

 そして極めつけの問題が起こります。父の介護施設の入所契約は本来、子どもであってもNGで、子どもが行う場合は、父からの委任を受け、任意代理人となる必要があると、ある司法書士に言われたのです。

 親のメインバンクのお金が自由に引き出せず、遺産相続も進めなくなった「お金問題」。さらに子どもであっても、介護施設の契約はできないという法律上のルール……。

■「成年後見人」とは? 

 切羽つまった私は、活路を見出したい気持ちから、遺産相続を行う母のメインバンクに問い合わせました。父が認知症であることを伝えると、予想通り「相続人の方の署名がないと、手続きは不可能です」との答え。しかし、それに続けて「成年後見人を立ていただければ、遺産相続は可能です」と言われたのです。実は「成年後見人」という言葉は、父のメインバンクに直談判しに行ったときにも、聞いていました。「定期預金の解約は、成年後見人を立てていただければ」と――。しかし、はじめて耳にする言葉ですし、自分には使いこなせない気がして聞き流していたのです。

 その言葉を再び耳にした私は、すぐに成年後見人に関する本を購入します。そこには、成年後見人さえいれば私が直面していた「お金問題」はすべて解決でき、さらに介護施設の入所契約も締結できると書かれていました。

 実際、国の調査を見ると、成年後見人になろうとした動機は、「預貯金等の管理・解約」がグンを抜いており、そのほか「相続手続き」や「介護保険契約(施設入所等のため)」も多く、私にとってこの制度は「救いの神」だと感じられ、私は成年後見人になる決意をしました。

 その結果、どうなったのか。父のメインバンクの預金は私が管理できるようになり、定期預金も解約できました。遺産相続も、父の介護施設の入所も無事終わりました。しかし、私の心には「この制度は使ってはいけなかった」という、強い後悔の念しか残っていません。

 認知症になると、判断能力が低下するため、預貯金の管理や各種契約ができなくなります。そうした人を、家庭裁判所の監督のもと、法的に支援する制度が「成年後見制度」です。法定後見制度と任意後見制度からなり、判断能力がすでに不十分な人を支援する場合は、前者を利用します。法定後見制度は「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれ、判断能力の程度によって、いずれかを選びます。私の父のように認知症が進んでいる場合は、財産に関するすべての法律行為が代行できる「後見」になります。その父を支援するのが、成年後見人というわけです。この制度を利用するには、親が住むエリアを管轄する家庭裁判所に、成年後見等選任申立てを行う必要があります。そして面談を経て、成年後見人が選任されます。

 成年後見制度の大きな落とし穴――それは、たとえ子どもが「自分が親の成年後見人になります!」と申し立てても、家庭裁判所が、不適任と判断すれば、専門職後見人(弁護士や司法書士など)が選ばれることです。幸いにして、子どもが後見人に選ばれたとしても、多くの場合、成年後見人を監督する成年後見監督人(弁護士や司法書士など)が付くことになります。私は、このパターンでした。「普通は、子どもが選任されるのでは?」と思うかもしれませんが、専門家に取材すると「最近は不正防止のため、専門職後見人が選ばれるほうが一般的になりつつあり、あなたのケースのほうが珍しい」とのことです。

 誰が成年後見人に選任されるかは、面談時ではなく、1〜2か月後に届く「審判書」に書かれています。「自分(子ども)が選任されないならば、この制度は使いません」「成年後見監督人は不要です」などの主張は、一切認められません。私の場合は、面談時に「この制度を使うか、姉と相談したいので、一度持ち帰ってもいいですか?」と聞きましたが「今、この時点で決めてください」と言われました。

■専門職後見人や成年後見監督人の問題点

 では、専門職後見人や成年後見監督人が付くと、何が問題なのか。もっとも大きいのは、年間24万円程度の報酬が発生するという点です。当然ですが、10年で240万円となります。

 また専門職後見人が選任されてしまえば、たとえ家族であっても、後見を受ける親の財産のチェックができなくなります。親の財産はすべて専門職後見人の手に委ねられることになり、1か月に必要な費用だけが与えられる形になるのです。それ以外の費用は、いちいち「〇〇のためにお金が必要です」とお伺いを立てて、支払いを認めてもらわなければならなくなります。では、専門職後見人や成年後見監督人が性格の悪い人だったらどうなると思いますか?  結論から言えば、私たちは一切リコールできません。

 成年後見制度では「自己決定権の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」の3つを基本理念に掲げています。簡単に言えば、本人に残っている意思や能力をできる限り活用し、その意思や能力を尊重していこうというものです。しかし、私が父の成年後見人になって痛感しているのは、家庭裁判所は、「本人の意思に基づくこと」であっても、一切認めてくれないという点です。

 母の死後、介護施設に入居した父と、飲食店で食事をしたとき「俺がおごるよ」と言ったことがありました。当時、父の認知症の症状は持ち直ししており、普通の会話が成り立つことも多くありました。だからこそ父の意思を尊重して、「じゃあ、おごってもらうよ!」と、その飲食代を父の預金から支払わせてもらいました。成年後見人になると、家庭裁判所に1年に1度、財産の収支報告をする必要があるのですが、この出費には「本人の意思とは立証できない」ということで、認めてもらえませんでした。

 同様の理由で、母が元気なときに、親子間で話し合っていた、相続税対策も一切できなくなりました。年間110万円まで贈与税が発生しない「暦年贈与」を実行しようとしたら、裁判所からストップがかかったのです。母の遺産相続についても、父は私に「俺はいらないよ」と言っていましたが、法定相続分に従わざるを得ませんでした。

 家庭裁判所としては「認知症を患い、本人の判断能力が低下しているから」という言い分で、こうした行為を認めないわけですが、それでは「自己決定権の尊重」や「残存能力の活用」といった理念は、もはやどこ吹く風です。

■成年後見人になるかは慎重に決めるべき

 今、私が強く思っているのは、成年後見人になるかどうかは、もっと慎重に決めるべきだったということです。例えば、母の遺産相続については、当時の父は、母の死去による精神的な苦痛で、認知症が悪化しており、とても自分で署名ができる状態ではありませんでした。結局、それが成年後見制度の利用につながるのですが、その後、父の容体は、少しずつ持ち直していきました。なぜ私は、父の状態がよくなるのを辛抱強く待たなかったのか。そうすれば、自分で署名ができたかもしれないのです。

 親のメインバンクの引き出しについても、銀行に直談判することで、当面の資金は得ることができたのです。だったらその後も何度も何度も足を運んで、直談判を繰り返すべきだったのです。介護施設の入所契約に至っては、契約の際、施設の人から「ご家族であれば成年後見人は必要ありません」と言われました。

 認知症を患う高齢者が増えている今、私のような状況に陥るケースは、決して珍しくはないと思います。それだけに強く訴えたいのは、成年後見人制度は、あらゆる手段を講じた結果、それでも「利用する必要がある」と、最終的に判断したときに限って、利用を検討すべきだということです。私のように早まってこの制度を使えば、大きく後悔することになります。さらにいえば、親が元気なうちから、親の銀行口座の暗証番号を把握するなど、事前の対策を行うことも大切です。

 ここではっきり伝えたいのは、成年後見制度を一度使えば、後見を受ける人が亡くなるまで、やめることはできないということです。そのことをぜひ肝に銘じてください。
(7月11日 東洋経済オンライン)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180711-00228139-toyo-bus_all


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月11日

境界でモメた場合の選択肢

境界でモメた場合に採ることができる選択肢は3つ。

 〆枷
 筆界特定(筆特)
 D環

100点満点を目指すなら,虜枷修任垢、これには時間も労力も要します。

そこで、「この項目が決着するなら70点でいい」というような場合には、
△良特やの調停(←今回のコラム)を選択することができます。

コラムにあるように、調停は、越境物がある場合などに有効ですね。

筆界(=公法上の境界)がハッキリして越境が判明した場合、
それぞれのゴールはこんなイメージになります。(ちょいデフォルメ)
 〆枷宗А崟擇譟」
 筆特:「筆界はここ。越境については改めて裁判してね。」
 D環筺А岷朸について引き続き話し合いを続けましょうか?」

調停は、お互い相手の事情も聞きながら着地点を探しますから、
決着した後の人間関係が修復されやすいという特長があります。

まさに相隣関係の代表ともいえる境界問題にうってつけ!(^^;

ただ、ひとつだけ大きなハードルがあります。

相手方が調停に応じてくれなければゲームオーバー。
裁判のように出頭を強制できないんですね。

それでも、最初のハードルさえ乗り越えれば、建設的な解決が待っています。
大阪では、「境界問題相談センターおおさか」が承りますよ。
お困りの方は、一度相談してみてくださいね。


【「境界問題相談センター」で土地の境界問題を解決 裁判との違いは?】

 各都道府県にある土地家屋調査士会では、裁判以外で境界問題を解決する「境界問題相談センター」(ADR)を設置する。2017年12月時点で、県庁所在地を中心に全国50ある。

 東京土地家屋調査士会(東京都千代田区)の味田昌也さんは「これは境界の専門家である土地家屋調査士と、法律の専門家である弁護士が協力して紛争解決を手伝う仕組み。裁判ではなく、当事者同士の話し合い(調停手続き)で合意する」と説明する。

 争いは、所有者同士が、登記による一般的な境界である「筆界(ひっかい)」と、所有者の合意によって変更できる「所有権界」を理解していないことなどが要因。樹木の越境などで関係がこじれると、測量時に積もった思いが露呈し、引くに引けなくなる。

 裁判では期日が一方的に決められる。相手が出廷しないと解決までの時間は延びるが、ADRはそうではない。同調査士会の木下満さんは「ADRでは、相手の事情に合わせて日程調整でき、応じてもらえる可能性が高い」と話す。

 ADRでは公正な立場の専門家が入るため、関係がこじれていても隣の言い分を認めるケースもある。合意すれば、境界標の埋設や登記手続を行う。東京土地家屋調査士会の境界紛争解決センターでのADRの調停申し立て費用は2万円、調査費用に3万円。これ以外に調停の期日費用で最低2万円ほど(すべて税別)。その他実費や調停成立時の費用なども必要。

 一方で、木下さんは「紛争の防止には、近所づきあいが非常に大事」と話す。続けて「権利書は大切にしても、境界確認書や図面が大事なことに意識が回らない人は多いのではないか。土地の売却を考えて、権利書よりも境界確認書などがあるか探しておきたい」ともアドバイスする。

 帰省時には、隣地にあいさつし、感謝の気持ちを伝えたい。なお、各地の土地家屋調査士会では、区市役所などで無料表示登記相談会を開催。ADRセンターでも相談会を行う。
(7月5日 ZAKZAK)


土地家屋調査士 大阪 和田清人
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2018年07月10日

災害に係る住家の被害認定研修

昨日、大阪市役所で、被害認定調査の研修がありました。

これは、大阪土地家屋調査士会と大阪市との間で締結された
災害時における支援協力に関する協定に基づくもの。

先日の茨木市の分は第1次調査(外観のみ)。

今回の要請は、第2次調査(建物内部)。
間取り図を描いて、天井・壁・床・建具を全部チェックします。

1棟1.5〜2時間で1日5棟のイメージでしょうか。

責任重大ですね。
がんばります。


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月06日

解体費用6318万円!

柏崎市が、築60年の旅館を行政代執行によって解体し始めました。
解体費用は、なんと6318万円!

1700万円は国から交付金が出ますが、残りは市の負担・・・_| ̄|○

これ、まさに「外部不経済」ですね。

こと不動産においては、「ワシの物やからワシの勝手や!」にはなりません。
景観を悪化させる建物が一つ存在すると、周囲一帯の相場が下がっちゃう。

同様に、旅館を放置すると、税金=他の国民すべてに費用負担させることに。

不動産を所有することの責任を自覚してくださいね。


【空き家を行政代執行で解体撤去】

柏崎市は倒壊の恐れがある空き家に対して、行政代執行により解体を3日から始めました。解体が始まったのは旅館だった建物で23年前に廃業し古い部分は完成から60年近く経っています。5年前に所有者が亡くなったあとは、建物が傷み、外壁が落ちるなど地域住民から危険性が指摘されていました。柏崎市の内藤清弘都市整備部長は「高齢の住民は将来家をどうするかについて親族と話し合い、なるべく空き家にならないよう対策を考えてほしい」と呼びかけます。解体費用6318万円のうちおよそ1700万円は国の交付金で賄われますが、残りは市が負担します。
(7月4日 UX新潟テレビ21)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180704-00010000-niigatatvv-l15


土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 10:27|この記事のURLComments(0)空き家 

2018年07月04日

「こども霞が関見学デー」

8月1日と2日、「こども霞が関見学デー」が開催されます。
26府省庁が、いろいろな体験イベントを実施するみたい。

法務省のプログラムのひとつが、「登記官と土地家屋調査士のお仕事体験」。
測量機器を使って、法務省の建物の高さを測るんだって。

これは、当日参加もOK。
近郊の方は、お子様の夏休みの自由研究にいかがですか?


【法務省「こども霞が関見学デー」8/1・2…人権教室や模擬取調べなど】

 「こども霞が関見学デー」が2018年8月1日と2日、26府省庁などで開催される。開催にあわせ、法務省は2018度「法務省こども霞が関見学デー」についてWebサイトに掲載した。検察官による模擬取調べ実演や人権教室、登記官と土地家屋調査士のお仕事体験などを実施する。

 法務省は、事前に申込みが必要な3つのプログラムと、当日自由参加の11のプログラムを実施する。

 事前に申し込みが必要なプログラムのうち、「検察官による模擬取調べ実演!」では、検察官の取調を見学し、検察官へ質問したり取り調べの体験もできる。2018年7月3日現在、8月1日開催分は定員に達している。そのほか「人権擁護委員さんと学ぶ!人権教室に参加してみよう」と「あかれんが亭―こども落語会―」が実施される。参加を希望する場合は、Webサイト専用の申込書に必要事項を記入し、FAXにて申し込むこと。

 当日自由参加が可能なプログラムのうち、「登記官と土地家屋調査士のお仕事を体験しよう」では、測量機器を使って法務省の赤いレンガの建物の高さや、投げたボールの飛んだ距離を測る体験ができる。そのほか「ものづくり体験教室 ホゴちゃんとサラちゃんのオリジナルエコバッグづくり」「パラリンピック正式種目・ボッチャをやってみよう」「どっちがニセモノ?ルーペを使って偽造パスポートを見破ろう」「君はどんな性格?少年鑑別所で実施しているコンピューター性格検査を体験しよう」「これで君も法務省の仲間入り!刑務官・入国警備官の制服を着てみよう!」「心のバリアフリー体験・車いすに乗ってみよう」「君は何問解けるか!?真夏の法テラスクイズに挑戦しよう!」「マスコットキャラクターと記念撮影をしよう」「刑務作業品遊具コーナー」「自由に遊べるコーナー」を実施する。

◆法務省「こども霞が関見学デー」
日時:2018年8月1日(水)・2日(木)10:00〜16:00(入場15:30まで)
入口:東京都千代田区霞が関1-1-1法務省西門(赤いレンガの建物側)

<事前応募制プログラム>
応募方法:Webサイトの専用の申込書(PDF)に必要事項を記入し、FAXにて申し込む
・検察官による模擬取調べ実演!
 開催日時:2018年8月2日(木)10:10〜11:10、14:00〜15:00
 ※8月1日開催分は定員に達したため受付を終了している
 対象年齢:小学校中学年〜高校生
 募集人数:各回先着20名
・人権擁護委員さんと学ぶ!人権教室に参加してみよう
 開催日時:2018年8月1日(水)13:00〜13:45、15:00〜15:45
 対象年齢:小学校中学年〜高校生
 募集人数:各回先着20名
・あかれんが亭―こども落語会

<当日自由参加できるプログラム>
・登記官と土地家屋調査士のお仕事を体験しよう
・ものづくり体験教室 ホゴちゃんとサラちゃんのオリジナルエコバッグづくり
・パラリンピック正式種目・ボッチャをやってみよう
・どっちがニセモノ?ルーペを使って偽造パスポートを見破ろう
・君はどんな性格?少年鑑別所で実施しているコンピューター性格検査を体験しよう
・これで君も法務省の仲間入り!刑務官・入国警備官の制服を着てみよう!
・心のバリアフリー体験・車いすに乗ってみよう
・君は何問解けるか!?真夏の法テラスクイズに挑戦しよう!
・マスコットキャラクターと記念撮影をしよう
・刑務作業品遊具コーナー
・自由に遊べるコーナー

◆2018年の「こども霞が関見学デー」他府省庁の開催案内
【警察庁】警察庁、こども霞が関見学デー「けいさつの仕事を知ろう!」
【外務省】「各国の外交官と話してみよう!」など3プログラム
【文部科学省】大臣室の見学や「さかなクンとギョ一緒に学ぼう」など
【総務省】投票体験やプログラミング、天気予報がテーマの体験など
【厚生労働省】補助犬ってなぁに?保育園の先生体験など過去最多28プログラム
【人事院】小中学生対象・楽しく知ろう国家公務員のこと
【防衛省】ピクルス王子とパセリちゃんの市ヶ谷台探検ツアー
【国土交通省】海難が起きたらどうなるの?大臣と会話・免震体験など
【環境省】放射線実験ラボやゴミ収集体験、香育講座など
(7月3日 リセマム)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180703-00000003-resemom-life


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月03日

平成30年分路線価

国税庁が、平成30年分の路線価図等を発表しました。

最高値は、不動の銀座5丁目。4,432万円/屬覗闇比9.9%アップ。
坪1.5億円弱だもんね・・・

バブル期の最高値を超えたのは、ここだけ。

大阪では、北区角田町が1,256万円/屬6.8%アップ。
中央区心斎橋筋2が1,184万円/屬22.3%アップ。

特に商業地は、インバウンド需要に左右されていますよね。
内需がダメだってのも、悩ましいですね。


【路線価3年連続上昇 ミナミがキタに伯仲、京都・東山は全国2位、神戸・三宮は10年ぶりトップ10入り】

 大阪国税局が2日に発表した平成30年分の近畿2府4県の路線価も、標準宅地評価基準額の変動率が前年に比べ0・6%増と、3年連続で上昇した。路線価は今年1月時点を評価しており、6月18日に発生した大阪北部地震の影響はそもそも加味されていないが、専門家は「最近のマンションの耐震設備は充実しているため、影響はほとんどない」とみている。

 近畿の最高路線価は、キタの大阪市北区角田町(阪急百貨店前)の御堂筋で、6・8%増の1256万円。昭和59年以降、35年連続でトップを維持し続けているが、ミナミの大阪市中央区心斎橋筋2は22・3%増の1184万円と、キタに肉薄している。

 飲食店や商業施設が立ち並び、訪日外国人客でにぎわうミナミの勢いは周辺地域にも波及しており、隣接する浪速、西、天王寺の上昇率の順位が軒並み10位以内に。その効果は「労働者の街」から一躍観光スポットへと生まれ変わりつつある新今宮駅周辺の西成にももたらされ、上げ幅が前年を大きく上回った。不動産鑑定士の真里谷和美さんは「ミナミの土地がインバウンドの影響で高くなりすぎており、周辺地域へと需要が移行する動きが出始めている」と分析する。

 近畿で上昇率が最も高かったのは、25・9%増となった京都市東山区中之町の四条通で全国2位。堅調なインバウンド需要などが影響したとみられる。また、駅前再開発が進む神戸・三宮(神戸市中央区三宮町1)の上昇率が近畿2位と、10年ぶりに近畿のトップテン入りを果たした。
(7月2日 産経新聞)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180702-00000540-san-bus_all


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年07月02日

罹災建物調査

日曜日、茨木市の罹災建物調査のお手伝いに行ってきました。

大阪土地家屋調査士会三島支部は、高槻市・茨木市・吹田市・島本町と災害協定を締結。
今回、被害認定調査員の派遣要請があったわけです。

朝、集合場所の茨木市役所へ行くと、思っていた以上に大勢の方々が!
180701

他市の市役所職員の方々、不動産鑑定士の方々、そして土地家屋調査士。

そうなんだよ。現地では震災は終わってないんだよ。
改めて痛感しました。

私たちの役割は、罹災証明の申請があった方々のお宅に訪問して、
外観から損傷度合い(建物の傾き、屋根・壁面・基礎の損傷)を数値化すること。

皆さん、罹災証明をもらってから修繕に取りかかるわけですから、
調査員の派遣を心待ちになさっているんです。

「暑いのにごめんなさいね。」なんて・・・
いえいえ、もっと早く来れなくて申し訳ありません。って感じ。

私たちのチームは、効率的に作業を進めることができて、
15時ごろにはノルマを終えて帰庁しました。

かけられた言葉は、「お帰り」ではなく「お代わり」・・・(^^;

「待ってる人がいる」と意気揚々と出発しましたが、
さすがにダブルヘッダーはキツかった・・・

丸々一日拘束されちゃうから、平日は厳しいけど、
週末はお手伝いさせていただきます。

できる時に、できることを、ね。


土地家屋調査士 大阪 和田清人

2018年06月28日

測量士?

中古戸建て売買時の、境界確認の重要性が書かれたコラム。
さすが、さくら事務所。かなりお詳しいですね。

曰く、「境界標が必要な場所にすべて設置されているか、確認しましょう。」
御意!

曰く、「地積測量図は作成年月日を確認しましょう。」
御意!

大阪法務局管内(近畿2府4県)の場合、不動産表示登記事務取扱基準が
施行されたのが昭和54年1月1日。

つまり、これ以前のものは、ちゃんと現行ルールでも通用するものと
そうでないものとが混在している可能性があるわけです。

また、同じく大阪法務局は、上記基準を平成18年11月1日施行にて改正。
これ以降のものは、原則、基本三角点からの測量による座標値を記載
することになりました。

したがって、これ以降の地積測量図が法務局に提出されていて、
かつ、現地と合・致・す・れ・ば、この測量図をそのまま採用
することもあります。

曰く、「確定測量図の作製は土地家屋調査士や測量士に依頼。」
・・・ちょっと待て!

測量士がやれるのは現況測量まで。
確定測量をやらせる怖さを理解してますか?

少なくとも、私たち土地家屋調査士は、境界に関する研鑽を続けてますよ。
土地家屋調査士法第25条
2 調査士は、その業務を行う地域における土地の筆界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない。

地域の慣習まで調べるんですよ。
一緒にするな、一緒に!・・・(^^;


【隣の家から「境界線が違う」と苦情 土地売買の注意点】

 筆者は中古戸建ての売買取引の現場で契約の立ち合いを依頼されることがあるのですが、そこで「『境界標』は必要な点にすべてありますか?」と聞くと、不動産業者から曖昧な答えが返ってくることがあります。「境界標」には杭(くい)や金属のプレート、鋲(びょう)などが用いられ、境界標を結ぶと境界線ができます。売り主に聞いても、住みながら境界標を気にすることはあまりないでしょうから、ほとんどの場合が曖昧な回答になってしまいがちです。ただ、土地の境界線が不明確だと、隣の土地の所有者などとトラブルになることも少なくありません。

■まず境界標の有無を確認

 一般の不動産売買契約書には「売り主は買い主に対し引き渡しの日までに境界点と境界線を明示する」と書かれています。(「境界点」は境界標の頭部に金属鋲や矢印、交差する線などで示されます)
 契約書に書かれていることは、売り主が自身の責任で売却する土地の範囲を買い主に明示するという意味ですが、契約を急ぎたがる不動産業者は「売り主の責任でやるべきことだし、引き渡し日までに実施すればよい」と確認作業を後回しにしてしまいがちです。もっとひどい場合、売り主と買い主に対して不動産業者から具体的な指示もなく、明示そのものを実施しないケースもあるくらいです。
 しかし、境界を明示するということは隣地の所有者から異議申し立てのない所有権の範囲を買い主に示す作業なので、売り主の責任は重大です。「ここが所有権の範囲」と明示して売ったのに、後日、隣地の所有者から「本当の境界線はこちら」と異議を申し立てられないとは限らず、その場合は売り主が買い主に対して責任を負わなければならないこともあります。もちろん買い主もそんなリスクがある買い物はしたくないでしょう。
 このため、売るにしても買うにしても、境界線の目印となる境界標が必要な場所にすべて設置されているか、まず確認しておきたいものです。

■測量図があれば問題ない?

 しかし、不動産業者から「境界標は一部見当たらないけれど、測量図があるので問題はない」といった説明をされることがあります。確かに見せてもらった測量図は立派だし、その図面通りに境界標を改めて設置し直せばよさそうです。ただ、ここには落とし穴があるのです。

 測量図には(1)確定測量図(2)現況測量図(3)地積測量図――の3種類があります。確定測量図とは、敷地を取り巻くそれぞれの隣地の所有者が境界線と境界点について合意している測量図のことです。合意の証しとして測量図を添付した「筆界確認書」という書類をつくります。
 この書類には「測量図の赤線部分がお互いの境界線と境界点ということで確認し合った」との文面が記載されており、それぞれの隣地の所有者と売り主の双方で記名押印する形になっています。
 この筆界確認書がある確定測量図があれば、境界標が仮になくなっていたとしても、隣地の所有者と合意した証しがあるので、なくなってしまった境界標を復元する、つまりもともとあったところに設置し直すことができます。
 ただし、確定測量図がつくられた時期が古く、当時の隣地の所有者が別の所有者に変わっている場合などは、新たな隣地の所有者はその合意について認識していないこともあるでしょうから、境界標の復元が簡単にはいかない場合もあるので注意が必要です。

■注意が必要な測量図とは?

 現況測量図は隣地の所有者の意思とは関係なく、現況を土地の所有者の主観に基づき測量しただけのものです。このため、なくなった境界標を改めて設置することはできません。ただ、測量図としては立派に見えて勘違いしてしまうことがあるので注意しましょう。
 通常は「現況測量図」と記載されているか、単に「測量図」となっています。ただし、その隅に「隣地の所有者との立ち会いはしていない」あるいは「現況を測量したもの」といった表記があるのでよく確認しましょう。
 地積測量図は法務局に備え付けられている測量図のことで、土地の地積変更、地積更正登記、分筆登記などの申請をするときに法務局へ提出されるものです。法務局にある測量図なので法的効力がありそうに思えるのですが、実は必ずしもそうではないケースもあります。
 法務局を管轄する法務省は、1977年(昭和52年)9月3日以前の地積測量図は現在の基準よりも低い精度のものがあるとしています。この時代の地積測量図の中には信頼度が低いものが含まれており、境界標を復元できない水準のものもあるということなのです。
 その後、たびたび不動産登記に関するルールが改正され、地積測量図の信頼度が徐々に増していき、2005年(平成17年)3月7日以降に作成された地積測量図は実質的に確定測量図と同等の効力があるといわれています。このため、地積測量図はその作成年月日が重要な確認ポイントになります。

■測量はリスクと費用の見合いで

 境界標が一部分からなくなっており、確定測量図や信頼できる地積測量図がない場合、改めて測量しなければならないのでしょうか?
 確定測量図の作製は土地家屋調査士や測量士に依頼することになります。費用は土地の面積や隣地の所有者の数などによって変わってきますが、30坪程度の土地で隣地が4件程度でも50万円前後はかかるケースが多く、場合によってはそれ以上になることもあります。
 確定測量図はあったほうが安全ですが、測量する対象の土地と隣地の状況、境界紛争のリスクと費用などの兼ね合いもあるので、不動産業者に相談しながらバランスを見て判断するとよいでしょう。
(6月28日 NIKKEI STYLE)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180628-00000002-nikkeisty-bus_all&p=2


土地家屋調査士 大阪 和田清人