2015年07月30日

「認知症で相続ができない」

相続の現場において、認知症が壁となって立ちはだかった事例。

・銀行口座がわからない。
・遺言書の保管場所がわからない。
・成年後見人がやかましく口を挟んでくる・・・_| ̄|○

厚生労働省のデータによると、65歳以上の7人に1人が認知症。
85歳以上だと、4人に1人というデータも。

そして、アルツハイマー病患者の平均余命は8年。
ちゃんと手を打っておかないと、長く辛い戦いになります。

家族信託も有効な対策の一つですよ。


【(現役世代必読)トラブル続出! 認知症で「相続」ができない(前編)親しか知らない預金口座はどうなるのか】

 いつかは自分も最期を迎えるとわかっている。でもイメージしていたのは、最期まで自分で物事が判断できる逝き方だ。それほど多くないけれど、家族に財産は遺したい。でも、アレはどこだっけ……。

家族会議で発覚

 「オヤジの財産探しの大騒ぎを経験して、ほとほと疲れましたよ。うちは家族仲も悪くない。オヤジには隠し財産も借金もなかった。それでも、相続に認知症がからんだら、これほどの大事になるとは想像もしなかった」

 東京・杉並区在住の佐々木信孝さん(仮名・63歳)はこう語る。

 相続はただでさえ、手続き上も心理上も難しい問題だ。家族が亡くなり、葬儀や墓の手配、家や遺品の整理……と、人ひとりの人生の後始末に追われるなか、遺族は銀行とのやり取りや相続税の申告など、膨大な手続きをこなさなければならない。さらには資産、ありていに言えばカネの問題で、兄弟親戚の思いもかけない一面を見せられることもある。

 ところがいま、それに輪をかけて事態を複雑化する問題が、多くの家族を襲っている。認知症だ。

 厚生労働省の推計では、65歳以上の4人に1人が、認知症またはその予備軍とされる。この「国民病」が足を引っ張り、相続がスムーズにできないだけでなく、家族関係を壊してしまうトラブルが多発しているのだ。

 冒頭の佐々木さんの例を見ていこう。佐々木さんは、89歳の父親が、数年前からどことなく自信がなくなった様子で、食事を摂ったことを忘れることがあるなどと、87歳の母親から聞いていた。

 昨年、母親が半ば無理やり連れていった病院で父親が認知症と診断されたのを機に、今後のことを考えようと佐々木さんは父親、母親、妹、弟を集め、家族会議を開いた。

 佐々木さんは、こうなった以上、相続のことも考えておくべきだと、両親に預貯金の通帳や固定資産税の通知書など一式そろえてもらい、検討を始めた。だが各通帳の金額を書き出してみると、みなが怪訝な顔になった。

 「預金が、こんなに少ないはずがない」――。

「通帳はどうしたの!?」

 父親は長年、私立中学校で教員をつとめ、退職後も教育関係の業界団体に再就職するなどした。私生活では派手なことは嫌いで、ギャンブルはもちろん、旅行にもめったに行かない。ごく大人しい人だった。

 ところが手元にある通帳では、預貯金は900万円程度。住宅ローンは退職金で完済し、「だいぶお釣りがあった」と話していたことを考えあわせても不可解だった。

 「体調を崩した際に入院費などがかかったと言っても、大半は子供が出しました。そんなに減る理由がない」(佐々木さん)

 佐々木さんは訊ねた。

 「オヤジ、退職金の残りはどうなったんだ。他にも銀行口座があるのか」

 父親は、「それは、アレだアレ」と言って口ごもっていたが、やがて「万が一のために、とってある」と憮然として言った。

 家に多額の現金を置いておくような父ではない。株や金など投資に興味があるタイプでもなかった。あるとすれば、家族の知らない銀行口座だ。佐々木さんたちは通帳のあった銀行だけでなく、近所に支店のある銀行に、他の口座がないかと訊ねて歩いたが該当するものはない。短気な妹が、

 「なんでちゃんと書いておいてくれないのよ。通帳はどうしたの! ?」

 と叫んだこともあったが、父親はうなるばかりだ。そんなとき、意外な突破口を見つけたのは、母親だった。ヒントは、雑巾にしていた古いタオルの端切れだった。

 「これ、銀行の粗品。通帳はなかったけど取引があったんじゃないかしら」

 調べてみると、その信託銀行は、以前は近隣に支店があったものの、現在では撤退。問い合わせると、なんと3000万円もの預金が眠っていた。

 「『年1回は、残高をお知らせする書類などをお送りしていたと思いますが……』と銀行は言うんですが、父が捨ててしまっていたようでした。聞けば、もし父の死後も遺族が10年間問い合わせずにいると、口座の中身は銀行のものになるという。ヒヤヒヤものでしたよ」

 ちなみに、父親が暗証番号を忘れていた銀行口座は、銀行へ父親に同行して口座番号の変更手続きをした。窓口の担当者には、「ご本人がもう少し判断能力がない状態になっていたら、家庭裁判所で成年後見人を決めてもらわないと手続きできないところでした」と言われたという。この成年後見制度についてはのちに詳しく触れよう。

 こんな例もある。東京・世田谷区に住む秋山聡子さん(仮名・62歳)は、貿易会社を経営していた父親が、中年の頃から「遺言を書いている」と口にするのを、たびたび聞いていたという。

 「認知症が重くなってしまって、父が87歳のときに施設に入れたんですけれども、うわ言のように『遺言が、遺言が』と言うんです。初めは聞き流していたんですけど、あまりに繰り返すので確認しようか、ということになりました」(秋山さん)

 ところが、父親は遺言書のある場所を覚えていない。自宅をくまなく探しても見つからない。会社で世話になっていた弁護士に訊こうと名刺を探し、事務所に問い合わせると、「先生は4年前に亡くなりました」との回答。

 子供が知らない銀行の貸金庫でもあるのか、と途方に暮れていたとき、先の弁護士事務所からこんな電話がかかってきた。

 「公証人役場にある『遺言検索システム』は試されましたか?」

相続する側が認知症の場合

 詳細は【後編】で述べるが、遺言のなかには、公証人役場で手続きをし公文書化した「遺言公正証書」というものがある。自宅で手書きした自筆遺言よりも法的信用力を持ち、原本は公証人役場に保管される。これらの多くは公証人役場のシステムに登録され、遺言書を作った人の名前や住所をもとにパソコンで全国どこからでも検索できる。

 結局、遺言書が見つかった秋山さんだが「事業を継いだ弟に資産の大半を遺すとあって、母が亡くなってから父の介護をしてきた妹にはごくわずか。父は昔気質の人で、嫁に出したらあとは知らんという主義でしたが、さすがにひどいと兄妹が揉めだした」と嘆息する。

 一方、相続する側が認知症を患っている場合もある。横浜市在住の滝本栄治さん(仮名・68歳)の父親は一昨年、90歳で他界した。遺されたのは、87歳の母親と、滝本さん、弟の3人。主な遺産の内容は、父親と母親が暮らしていた自宅の土地・家屋(時価約4500万円)と預貯金1500万円だ。

 母親は、父親の死の3~4年前から認知症の症状が進んでいたが、父親が、「俺が面倒を見る。施設には絶対に入れない」と主張、ヘルパーを頼むなどして、自宅での介護をつづけてきた。

 「家事なんかしたことのない父でしたし、老老介護で絶対にもたないと思ったけど、私たち夫婦も手伝って、どうにかやってきた」(滝本さん)

 そんななかでの父親の死去。滝本さんは相続のことなどわからないからと、近所の行政書士に相談した。すると思いがけないことを告げられる。

 「この、認知症でおられるお母さん、第三者の後見人を立てないと、遺産分割ができませんよ」

 どういうことか。遺産相続の際には、相続人(相続を受ける人たち)が、どのように遺産を分けるかを話し合う、遺産分割協議を行う必要がある。

 滝本さん親子の場合、被相続人(遺産を遺した人、この場合は父親)の妻である母親が2分の1、滝本さんと弟の子供2人が4分の1ずつ相続するのが法定相続分だ。

 しかし実際には、誰が土地や家屋を継ぎ、その価値をどう分け、預貯金は誰の名義にするのかなど、細かい内容を決める必要がある。そこで遺産分割協議を行い、相続人全員が署名・捺印した遺産分割協議書を作成する。

損をするのは遺族

 ところが、認知症などで判断能力が著しく低下していると見なされる相続人がいる場合、その人が不利益を受けないために、後見人をつけることが求められるのだ。

 「我々子供は、同じ相続人だから、利益相反になるという。それで急遽、父の弟にあたる叔父に母の成年後見人になってもらいました」(滝本さん)

 成年後見制度は、'00年に始まった。認知症で判断能力の衰えた高齢者などに代わって、資産の管理を行う後見人を定めることができる制度だ。

 滝本さんの母親のように、すでに判断能力が損なわれていると見なされる場合には、親族などの申し立てによって、家庭裁判所が「法定後見人」を認定することになる。

 滝本さんら遺族は、成年後見人となった叔父を入れ、ようやく遺産分割協議を始めた。

 「ところが、これがすんなりいかない。私と弟は実家の不動産の大半を母に相続してもらって、引き続き実家で母を介護したらいいと思っていたんです。ところが叔父は、父がいない以上、自宅での介護はもう限界だから、すべてを売却して現金にし、それを元手に施設に入れろと主張する。私たちが反対すると意固地になって、『それなら、お母さんが相続した不動産をあとで自分が売却して、施設に入れる』などと言い出した。成年後見人は本人のためと言えば資産の処分ができるんです。

 ならば不動産は母に渡さず預貯金を、と思ったら、預貯金は1500万円で不動産が4500万円でしょう。『お母さんの法定相続分は2分の1なのに少な過ぎる』と叔父が譲らない。話がこじれて、遺産分割協議は棚上げ状態。父の預貯金も下ろせず、結局は兄弟でおカネを出し合って、母を自宅介護しています」

 ちなみに、相続税の申告はどうなるのか。相続税は故人の死亡翌日から10ヵ月以内に申告しなければならない。申告が遅れると税率が加算される場合がある上、遅れた日数に応じて延滞税も取られてしまう。遺産分割協議が不調の場合でも法定相続分を受け取るものとして申告し、その分の税額を支払う必要がある。

 ところが、遺産分割協議が成立していないなかでの申告の場合は、各種の控除など、相続税を安くする特例は受けられない。結局すべては、遺族の損になってしまう。

 大認知症時代の相続トラブル。いったいどうやって避ければよいのか。【後編】をご覧いただきたい。(後編につづく)


(7月29日 現代ビジネス)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150729-00044331-gendaibiz-bus_all&p=1


土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 08:07│Comments(0)TrackBack(0)相続専門FP 

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