2017年05月15日

固定資産税あれこれ

固定資産税に関するコラム。
「市町村への家賃」とは、言い得て妙ですね。

相続登記を70年以上放置したため、相続人が38人に。
隣人に引き取ってもらう前提の相続登記に38人中3人が協力してくれない・・・

やむを得ず訴訟に踏み切って、ようやく土地を譲渡できたけど、
弁護士費用や登記費用などの合計が130万円・・・_| ̄|○

これ、固定資産税の100年分だって。
徒労感がのしかかってきますね。

価値のない不動産を押し付け合って、遺産分割協議がまとまらないのが今風。
先送りは誰も得しないということをしっかり認識してくださいね。


【固定資産税に翻弄される人たちの悲痛な叫び】

 5月は「マイホーム」という言葉が幻想であることを確認させられる。固定資産税という「市町村への家賃」を求められる月だからだ。すでに納税通知が来て、高額の負担に閉口している人も多いだろう。

住んでいればまだいい。少子高齢化で過疎化に拍車がかかる地方では、買い手も借り手もつかないのに、固定資産税のおかげで「マイナス」の土地や建物が増えている。朝日新聞経済部が紙面連載をベースにまとめ、筆者も執筆者の1人として名を連ねる『ルポ 税金地獄』で指摘している問題点の1つが、市町村税収の半分を占める不動産への課税だ。

■子々孫々まで続く「死亡者課税」

 ある日突然、地方の役場から、見たこともない土地の固定資産税を払うよう求められるケースがある。土地の持ち主が死亡し、登記を変えずに放置していると、その子孫係累にまで固定資産税の請求書が届くのだ。これを「死亡者課税」という。

 2013年、大阪府の男性会社員(当時59歳)の元に、まったく身に覚えのない土地の固定資産税を支払うよう求める通知書が届いた。差出人は愛媛県内のある自治体で、横書きの納税通知書の宛名には、男性の名前の下に「(亡○○○○様分)」と、彼が生まれるより16年も前の1938(昭和13)年に亡くなった祖父の弟の名前が書いてある。

 通知は、次のように始まっている。

 「この通知書は、下記固定資産の所有者として登記簿等に登録又は登記されている方がお亡くなりになっているため、相続人に対し、地方税法第364条の規定により課税内容及び課税明細をお知らせするものです」

 要するに、祖父の弟の名義のまま放置されてきた土地の固定資産税を支払うよう求める通知である。

 その土地は、祖父の弟が32歳の若さで亡くなった後、誰も相続していなかった。誰が相続したかをはっきりさせなくても、「放棄」の手続きを取らないかぎり、自治体は一方的に相続権のある者を探し出して課税してくる。

利用価値を見いだせない土地

 そこで長男だった祖父が「相続人代表者」に指定され、固定資産税を納めていた。祖父の死後は父がその指定を受け、所有者の死後も70年以上、固定資産税を納めてきた。そして父の死によって、新たに代表者として男性が指定されたというわけだ。現地を見に行くと、起伏の大きな山林や荒れ地で、利用価値は乏しかった。

 相続による登記の変更をしなくても、自治体は戸籍をたどって固定資産税の課税対象者を探し出す。役所からの通知書には「相続財産は相続人全員の共有財産となるため、全員に固定資産税の連帯納税義務が生じます」などと書いてある。この土地には94万4000円の固定資産評価がついた。固定資産税は評価額の1.4%だ。年に1万3200円の税金を払うよう求められた。

 「このまま自分の子孫にこの負担を残すわけにはいかない」そう考えた男性が自治体に相談すると、隣の農家が引き取ってくれるという。しかし、農家に土地を譲るためには、男性がいったん所有者にならないと契約ができない。

 ところが、誰も相続をせずに70年以上放置してきたことで、相続権がある子孫は38人にも増えていた。男性名義にするためには38人全員の同意が必要だ。親戚といっても、会ったことさえない人もたくさんいた。2013年12月に全員に手紙を送り、半年で35人の同意は得られたが、3人からは返事さえ来なかった。

 残された手段は裁判しかない。やむをえず男性は親戚38人を相手に、土地の名義を変えるための訴訟を松山地裁で起こした。裁判の結果、名義変更はようやく認められた。こうして土地を譲渡できたのは2016年6月だった。この間、弁護士費用や登記費用などで計130万円もかかった。固定資産税の100年分だ。

■増える持ち主不明の不動産

 亡くなった親族の土地に利用価値を見いだせず、相続の手続きをしない人や相続放棄をする人は後を絶たない。相続人がわからなくなった不動産には、家庭裁判所が相続財産管理人をつける。その数は、2005年度の約1万1000件から2015年度には約1万9000件と、ほぼ倍増した。

 乗用車がようやく1台通れる細い道を抜けて、広島県の山奥のある集落に着いた。その集落を見渡す丘の中腹にある農家の土壁は崩れ、縁側の障子が破れて風に揺れていた。ここに1人で暮らしていた男性は10年ほど前に88歳で亡くなったが、相続する人はいない。

 相続する人がいない財産を管理する相続財産管理人は、家庭裁判所が弁護士や司法書士を指定することが多い。不動産が売れれば、管理人は報酬を取ったうえで国庫に納めるのが通常の流れだ。しかし「売るに売れない不動産」は、管理人の手にも余る。

 この空き家の管理人になった司法書士によると、土地に約100万円、家に約7万円の固定資産評価額がついており、ほかに田畑や山林もある。司法書士は、男性が残した約150万円の預金の中から年約1万円の固定資産税を払い、草を刈るなどの管理をして、売れるのを待っている状態だ。

自治体の課税ミスが表面化

 司法書士はこう嘆く。

 「ただでもいらないと言われます。最低限、雑草取りはしなければいけません。それでも固定資産税は払わないといけない。公示地価は大きく下がっていますが、利用価値を見いだす人がいないので時価はもっと下がっており、固定資産評価額が時価を逆転した状態です。税金を払うために『管理費』名目のおカネを積めば、ようやく引き取ってくれる人が現れるかどうかです」

 要するに「マイナス価格」での土地取引だ。だが、そんな取引の仲介を頼める不動産業者はまずいないという。宅地建物取引業法で、不動産売買の仲介手数料は「200万円以下は5%が上限」と定められている。取引価格がマイナスになることは想定していないかもしれないが、仲介手数料を取ることが違法になる可能性が高い。

 司法書士が担当した別の物件で、約100平方メートルの土地に立つ木造2階建ての家は、固定資産評価額が約250万円だった。相続人が買い手を見つけたが、実際に売れた価格は10万円。もし不動産業者が仲介しても、手数料は消費税抜きで最大5000円にしかならない。

 地元の不動産業者は、こう話す。

 「物件の仲介をして売るためには調査が必要です。登記簿で権利関係を確認したり、敷地の境界を確認したりします。境界がはっきりしなくて測量が必要だと何十万円もかかります。ダニがいれば駆除しなければいけないし、雨漏りがあれば直さなければいけない。5000円では話になりません」

■課税額の計算ミスが頻発

 固定資産税は納税者が自ら算出して申告する所得税と違い、各自治体が税額を計算して納税通知書を送ってくる「賦課課税方式」である。ところが、課税する自治体の計算ミスが、各地で表面化している。

 茨城県つくばみらい市は2015年1月、住宅用地での課税のミスが123件あったと公表した。住宅用の土地は、固定資産税を計算する際、200平方メートルまでは評価額が6分の1になり、それを超えても3分の1に下がる特例がある。それが適用されていなかった。

 市は10年間さかのぼって取りすぎた税金と利子にあたる還付加算金を合わせて、計約7300万円を返した。固定資産税は、税額が国民健康保険料の計算の一部にも使われるため、保険料の取りすぎにもつながった。市は国保に入っていたことがある55人に、過去10年分の計400万円余りを返した。

 市税務課によると、住宅と土地の担当者が別で、家が建ったことを確認した住宅の担当者が土地の担当者に伝えることを忘れたり、伝えても土地の担当者が固定資産税に反映することを忘れたりしたという。住宅の担当者が土地への反映にも責任を持つようにすればミスは減るはずだが、「つくばエクスプレス沿線の住宅開発が続いているため住宅の担当者は忙しく、土地まではできない」(税務課)と、いまの体制は変えないという。

ミスをミスと認めない自治体も…

 埼玉県本庄市は同年3月、1342件の課税ミスを公表した。2006年に合併した旧児玉町の地区で旧町の担当者が住宅用地の特例を誤解していたと言い、取りすぎで税金が戻るケースが970件、逆に追徴課税したケースが372件あった。

 住宅用地は、1つの区画として使われていても、登記上は2つ以上に分かれていることがある。その際、一部の用地にしか特例を適用しなかったり、逆に、住宅用地ではないのに特例を適用したりする誤りがあった。旧本庄市の地区では見つかっていないミスだという。

 埼玉県新座市では2014年6月、27年間にわたって住宅用地の特例を適用せずに過大な固定資産税を払わされていた老夫婦の家を、市がほかの税金も含めた滞納を理由に公売で売却してしまう深刻なミスも発覚した。こうした事態を受けて、総務省は2014年9月、全国の市町村に向けて間違いの具体例を示しつつ、固定資産税評価の信頼を確保するよう通知を出した。

■取りすぎたのに返さない自治体

 ところが、ミスをミスと認めない自治体がある。取材をしていると、ミスがわかったときに謝罪して、取りすぎた税金を返すという当然のことができる自治体は、まだマシなほうであることがわかってきた。背景には、固定資産税などの資産課税が自治体税収の約半分を占めているため、ミスを認めて返還すると財政に影響するという意識があるようだ。

 新潟市の主婦、楠原富美子さん(57)は2012年、自宅の庭に対する課税の誤りに気づき、2013年度から納税額が年3万円余り下がった。ところが、新潟市は過去に納めすぎた税金を返さないままだ。

 楠原家は1995年、自宅に隣接する約250平方メートルの土地を買った。1997年、その一部を駐車場として整備し、倉庫を置いたり畑や花壇を造ったりして庭として使ってきた。自宅の庭なのに、固定資産税額が大きく下がる「住宅用地の特例」が適用されず、2012年度まで17年間にわたり、誤った割高な税金を払わされていた。

 朝日新聞の記事を読んで、過去に払いすぎた税金を戻す自治体があると知った楠原さんは市のホームページから市長宛に質問をした。

 すると、市の税務を取り仕切る田村敏郎税務監の名前で、返せないことを告げる手紙がきた。それは、「外見上、確認できず、届け出や申告もない場合のすべての土地や家屋の利用状況を把握することは困難」として、市側に重大な過失がないので返さないという内容だった。要するに、外見だけで判断しているので、間違いを認めて返しているとキリがないというわけだ。

「市役所の内規なので開示はできない」

 しかし、地方税法は自治体に少なくとも年1回の実地調査を義務づけている。固定資産税に詳しい神野吉弘税理士は「固定資産税は自治体が一方的に課税する税金だ。本人の申告がなくても、自治体は気づかなかったでは済まない」と指摘する。楠原さんは「ちょっと聞けば、私たちの庭であることはわかることなのに、聞かれたこともない」と怒る。

 土地の用途や形、条件によって固定資産税額は変わってくる。評価を決めるのは自治体だが、疑問を抱く所有者も少なくない。

■土地評価変更、開示せぬ内規

 東京都府中市の商業環境デザイナー宮尾舜三さん(71)も、父から相続した新潟県妙高市の土地を2009年に確認したところ、敷地の周りの土地に敷地並みの固定資産税がかかっていることがわかった。

 周囲の土地は家の敷地より一段低く、ぬかるんでいる。敷地と同じ課税はおかしいと、市役所に確かめると、周囲の土地は「宅地」から「雑種地」に変更された。税金も年間約1万円下がって2000円程度になったが、過去の分は戻らなかった。雑種地とは主な地目に分類されない土地のこと。自治体が課税の基準を決めている。

 朝日新聞を読んだ宮尾さんが市役所に問い合わせると、市民税務課から手紙が届いた。「(2010年度に)宅地から雑種地への地目変更ができるよう『雑種地比準表』を定めたことから、評価地目の見直しが可能となりました」などと書かれている。

 その意味について、筆者が同課に取材すると、市側は、宮尾さんの指摘をきっかけに「土地評価事務取扱マニュアル」を見直した、と説明した。宮尾さんが指摘した年までは宅地で評価をして、翌年から新しく作った基準を適用したので「間違い」ではなく、さかのぼって税金を戻すことができないという。

 宮尾さんは「新たな基準を文書で示してほしいと求めたが回答がない。税額を決めるルールも示さずに課税する姿勢は信用できない」と不信感をあらわにする。筆者も新たな基準について市に尋ねたが、同課は「市役所の内規なので開示はできない。今後、検討したい」と答えるのみだった。

 このように、自治体の貴重な収入源である固定資産税は、時代に合わなくなっても、役所が扱いきれないことがわかっていても、一方的に税額を決めて納めさせることを変えようとしない。少子高齢化で地方の衰退がはっきりしている今、硬直的な制度が国民生活の足かせにならないよう、見直す時期に来ている。
(5月13日 東洋経済オンライン)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170513-00171135-toyo-bus_all&p=1


土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 19:04│Comments(0)TrackBack(0)相続専門FP 

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