2017年10月27日
「いらない遺産」・・・(^^;
「いらない遺産」の相続放棄のコラム。
後編は、空き地・空き家がテーマ。
相続放棄の申述受理件数は、平成26年で18.2万件。
これは平成16年の14.1万件から29%増。
地方の空き家や山林・田畑などの管理から解放されたいニーズも強いですね。
ただ、一つだけ注意が必要なのは、
「放棄さえすればOK」ではないということ。
次の2つの条文をぜひ知っておいてください。
たとえば、空き家の瓦が落ちて通行人がケガをすれば、
「所有者」に損害賠償が請求されちゃう。
で、相続放棄しても、次の管理者が機能するまでは管理義務がある・・・_| ̄|○
早い話、空き家のままにするんだったら、
持っておくメリットは何一つないってこと。
むしろ、デメリットだらけ。
できることなら、親が自宅の始末の絵を描いてあげるべきですね。
信託を使えば、柔軟な対応が可能ですよ。
【<いらない遺産相続放棄>(下)空き地・空き家 放棄した後も管理義務】
借金など負の遺産を引き継がずに済む方法として、申立件数が増えている「相続放棄」。ただ、負の遺産は借金だけではない。地方の衰退を背景に、最近は住む人のいなくなった家や、売り物になりにくい荒れた山林、田畑といった「いらない不動産」も増加。相続放棄後も処分されることなく、放置されたままの土地が増えることも懸念されている。 (砂本紅年)
東京都内の庄野理子さん(60)=仮名=は三年前、父を九十五歳で亡くした。母も数十年前に他界。遺産として預金約一千万円、都内にある実家の土地建物、そして父の出身地である近畿地方の島に、先祖代々の土地約五十筆が残された。
島の土地の大部分は、山林や田畑。庄野さんは兄、姉ときょうだい三人で東京で生まれ育ち、それぞれ住居もある。島への移住予定はなく、相続しても固定資産税などの負担だけが残るため、預金を含む全遺産の相続を放棄すると決めた。
父の兄弟を含む相続人全員が相続放棄したが、問題は残った。実家の建物は老朽化し、荷物も山積み。「ごみ屋敷」状態で、倒壊の危険性があった。
不動産は、相続放棄しても新たな所有者が決まるまでは、放棄した相続人に管理義務があるとされる。この間、実家が崩れるなどして誰かに危害を与えた場合、損害賠償の責任を負う可能性もある。島の土地の管理義務は続くが、何しろ遠方で、手が回らない。
困った庄野さんは、都内の司法書士中村昌樹さんに相談。財産の処分や負債の清算などをする「相続財産管理人」(以降、管理人)の選任を家庭裁判所に申し立てた。
管理人は、相続放棄などで相続人がいないときなどに、申し立てにより家裁が選ぶ。弁護士が選ばれるケースが多い。
庄野さんの場合、管理人となった弁護士が、実家と島の土地の一部を売却し、売却益を国庫へ移した。残った島の土地も、権利関係の確認などを進め、売却に備えた。「管理人に遺産の管理と処分を一任し、管理義務からも解放されて安心した」と庄野さん。
ただ、実務に詳しい弁護士の佐々木奏さん(東京)によると、管理人選任を申し立てるのは、債権の回収を進める金融機関が多く、庄野さんのように、相続放棄した個人が申し立てるケースはまれだ。
管理人の報酬や経費を確保するためには百万円前後が必要とされ、預貯金など現金が遺産としてなければ、申立人が負担しなければならないためだ。
そもそも売り物にならない不動産の税負担を逃れようと相続放棄した場合、わざわざこうした費用を払う人は少ない。このため、相続放棄後は放置され、所有者のいない「中ぶらりん」状態になっている不動産が少なくないとみられる。
空き家問題に詳しい富士通総研経済研究所の主席研究員米山秀隆さんは「人口が減少し、地方の土地価格が下落する中で、今後いらない不動産の相続放棄はますます増えるだろう」とみる。そうなると、危険な空き家などを自治体が代執行で解体しても、費用などを回収できないケースが増えることも懸念される。
米山さんは「現状は、最終的な負担は自治体に押しつけられ、税金投入という形で住民にはね返ってくる。時代に合った制度づくりを真剣に考えなければいけない」と話している。
(10月26日 東京新聞)
土地家屋調査士 大阪 和田清人
後編は、空き地・空き家がテーマ。
相続放棄の申述受理件数は、平成26年で18.2万件。
これは平成16年の14.1万件から29%増。
地方の空き家や山林・田畑などの管理から解放されたいニーズも強いですね。
ただ、一つだけ注意が必要なのは、
「放棄さえすればOK」ではないということ。
次の2つの条文をぜひ知っておいてください。
民法第717条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
民法第940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
たとえば、空き家の瓦が落ちて通行人がケガをすれば、
「所有者」に損害賠償が請求されちゃう。
で、相続放棄しても、次の管理者が機能するまでは管理義務がある・・・_| ̄|○
早い話、空き家のままにするんだったら、
持っておくメリットは何一つないってこと。
むしろ、デメリットだらけ。
できることなら、親が自宅の始末の絵を描いてあげるべきですね。
信託を使えば、柔軟な対応が可能ですよ。
【<いらない遺産相続放棄>(下)空き地・空き家 放棄した後も管理義務】
借金など負の遺産を引き継がずに済む方法として、申立件数が増えている「相続放棄」。ただ、負の遺産は借金だけではない。地方の衰退を背景に、最近は住む人のいなくなった家や、売り物になりにくい荒れた山林、田畑といった「いらない不動産」も増加。相続放棄後も処分されることなく、放置されたままの土地が増えることも懸念されている。 (砂本紅年)
東京都内の庄野理子さん(60)=仮名=は三年前、父を九十五歳で亡くした。母も数十年前に他界。遺産として預金約一千万円、都内にある実家の土地建物、そして父の出身地である近畿地方の島に、先祖代々の土地約五十筆が残された。
島の土地の大部分は、山林や田畑。庄野さんは兄、姉ときょうだい三人で東京で生まれ育ち、それぞれ住居もある。島への移住予定はなく、相続しても固定資産税などの負担だけが残るため、預金を含む全遺産の相続を放棄すると決めた。
父の兄弟を含む相続人全員が相続放棄したが、問題は残った。実家の建物は老朽化し、荷物も山積み。「ごみ屋敷」状態で、倒壊の危険性があった。
不動産は、相続放棄しても新たな所有者が決まるまでは、放棄した相続人に管理義務があるとされる。この間、実家が崩れるなどして誰かに危害を与えた場合、損害賠償の責任を負う可能性もある。島の土地の管理義務は続くが、何しろ遠方で、手が回らない。
困った庄野さんは、都内の司法書士中村昌樹さんに相談。財産の処分や負債の清算などをする「相続財産管理人」(以降、管理人)の選任を家庭裁判所に申し立てた。
管理人は、相続放棄などで相続人がいないときなどに、申し立てにより家裁が選ぶ。弁護士が選ばれるケースが多い。
庄野さんの場合、管理人となった弁護士が、実家と島の土地の一部を売却し、売却益を国庫へ移した。残った島の土地も、権利関係の確認などを進め、売却に備えた。「管理人に遺産の管理と処分を一任し、管理義務からも解放されて安心した」と庄野さん。
ただ、実務に詳しい弁護士の佐々木奏さん(東京)によると、管理人選任を申し立てるのは、債権の回収を進める金融機関が多く、庄野さんのように、相続放棄した個人が申し立てるケースはまれだ。
管理人の報酬や経費を確保するためには百万円前後が必要とされ、預貯金など現金が遺産としてなければ、申立人が負担しなければならないためだ。
そもそも売り物にならない不動産の税負担を逃れようと相続放棄した場合、わざわざこうした費用を払う人は少ない。このため、相続放棄後は放置され、所有者のいない「中ぶらりん」状態になっている不動産が少なくないとみられる。
空き家問題に詳しい富士通総研経済研究所の主席研究員米山秀隆さんは「人口が減少し、地方の土地価格が下落する中で、今後いらない不動産の相続放棄はますます増えるだろう」とみる。そうなると、危険な空き家などを自治体が代執行で解体しても、費用などを回収できないケースが増えることも懸念される。
米山さんは「現状は、最終的な負担は自治体に押しつけられ、税金投入という形で住民にはね返ってくる。時代に合った制度づくりを真剣に考えなければいけない」と話している。
(10月26日 東京新聞)
土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 16:51│Comments(0)│相続・相続税