2020年11月17日

「住宅団地の行方」

上毛新聞が、群馬県内の住宅団地の現状を記事になさっています。

都心近郊の住宅街として発展し、
人口減少のあおりをモロに食らっている地域として、
ナマナマしいレポートはとても参考になります。

責めるつもりではありませんが、県OBのセリフが全てを物語っています。
「見通しが甘かったと言われるが、(継続的な)努力も足りなかった」・・・_| ̄|○

ま、作っちゃったものを今更言ってもしょうがないけど、
余ったものを減らすための痛みは、分かちあってほしいですね。


【《住宅団地の行方》(上)危機感 進む人口減 各地で活路模索】

 自治体や企業が都市郊外に造成、分譲した大規模な住宅団地が老朽化し、さまざまな課題が浮上している。群馬県内も例外ではなく、造成から数十年たち、空き家や高齢世帯が増加。必要な公共交通が限られたり、子どもの数が減って学校運営の先行きが楽観できない所もある。一方で、現状を直視し、活性化しようと模索する住民もいる。人口減少社会における街づくりの「最適解」は何か。県内各地を歩いて考えた。

■規模ほぼ半減
 10月中旬、高崎市城山公民館(同市城山町)。町内会発足から来春40年目となるのを前に、10年ごとに行ってきた記念事業について役員が集まって話し合った。

 城山町を構成する城山住宅団地はJR高崎駅から南約4キロにある。関越自動車道の建設に使う土取り場跡地に県企業局が約30ヘクタールを造成。1980〜81年に2度の分譲募集があり、閑静な住宅街が形成された。しかし、県営の集合住宅を合わせて3000人を超えた人口規模は徐々にしぼみ、9月末で1563人とほぼ半減。地元の城山小の児童数は本年度、42人と最大時の10分の1まで減っている。
城山団地の人口と城山小の児童数推移

 話し合いに参加した住民の高崎経済大名誉教授、大宮登さん(69)はこうした状況に危機感を強める。地域再生論が専門の大宮さんらは、団地内の住民や公的機関に半年かけて聞き取り調査し、3月に課題を指摘する報告書をまとめた。話し合いでは事業を見送る意見が出たものの、団地の現状、魅力などを考えるワークショップや座談会を開く方向となった。

 大宮さんは「10年後にこの団地はどうなっているのか。新住民が入れば団地はよみがえる。課題に光を当てれば、事業の意味があるのではないか」と話す。

■SNSで発信
 自治体や企業などが全国で開発した住宅団地は、70年代前半が供給のピーク。同一時期に大量供給されたため、親世代の高齢化とともに子ども世代が離れ、空き家の増加などが問題となる。大宮さんの報告書によると、城山団地の戸建て住宅の年齢構成は65〜69歳が最も多く、70〜74歳、75〜79歳と続く。戸建て500軒のうち空き家は29軒。町内会によると、県営住宅に入る世帯数は最盛期より4割以上減り、商店は半数以下になっている。

 城山団地から1キロ余り南西の南陽台住宅団地(同市吉井町南陽台)。旧西武不動産が丘陵地に開発し、81年に入居が始まった団地は全国から人が集まった。長崎県出身の1丁目区長、川口和清さん(66)は「協定によって家は2階建てまで。『そのうち軽井沢まで電車が通るようになる』と聞いて買った人もいたようだ」と苦笑する。

 南陽台団地の人口は2465人(9月末時点)。旧吉井町から高崎市への編入時(2009年6月)より160人余り増えた。開発が長期にわたった上、「全国的な傾向よりも中古住宅を購入する割合が高い」(佐藤英人高経大教授)との研究結果がある。西武時代からのブランド力が人口流入につながっている可能性がありそうだ。ただ、早期入居組の高齢化は明らか。川口さんはコミュニティーが活性化するよう、カフェなどの公民館活動やSNSでの発信に力を入れる。

 太田市は、県や市が開発した住宅団地が25カ所あることをホームページで公表している。34.5ヘクタールと3番目に広い、いずみ住宅団地(同市新田早川町)は70年代後半に造成された。自治会長の六本木敏明さん(70)は「65歳以上が半数超。若い世代が住みやすい街にしないと」と力を込める。

 団地内は665世帯が暮らすのに対し、空き家は30〜40軒あるとみられる。外国人住民とは意思疎通に気配りしながら、協調して生活する。「これまでも無料バスの路線などについて市に要望してきた」と話す六本木さん。住みやすい団地になるよう、今後も行政に訴えるつもりだ。

【前橋・大利根団地】若い世代に購入の動き
 群馬県庁から利根川を挟んで南に3キロ余り。前橋市大利根町を構成する大利根住宅団地は県企業局が初めて取り組んだ大規模住宅団地として、1965年に造成工事が始まった。

 広さ約50ヘクタール。当時最先端の住環境を備えた団地は、官公庁や大企業の労働者が新居を求め、整然とした住宅街となった。町が生まれて半世紀。入居者の高齢化が進んだが、近年は若い世代の住宅需要の受け皿となる動きも出ている。

 「明るい兆しが見えてきた」。自治会長の福島昇さん(79)は昨年7月発行の自治会報に記した。団地内の空き家、空き地跡に若い夫婦が入居するケースを踏まえた表現だ。

 団地は67年に分譲開始。町名と自治会の発足(69年)から10年後の79年に約4000人が暮らしたが、景気の低迷とともに少子高齢化が進んだ。市によると、9月末時点の人口は2727人。高齢化率は市全域が29.3%なのに対し、同町は38.5%と10ポイント近く高い。ただ、昨年9月末の人口は前年同月比20人増の2738人と7年ぶりに増加し、底打ち感が出ている。

 町内を歩くと、広い庭とゆったりした駐車場のある住宅が多いことに気付く。魅力ある住宅街を目指して団地は当初、1区画を330平方メートル(約100坪)を標準に販売された。数十年たち、外部転出などで空き家、空き地となった区画を業者が2、3分割して販売。若い夫婦らの購入者が出ているという。

 同町を含む利根川右岸の東地区は人口増加地域で、福島さんは「若い人が集まる町にしていきたい」と話している。

【板倉ニュータウン】大学撤退 完売厳しく
 群馬県の東端に位置する板倉町の住宅団地「板倉ニュータウン」。県企業局が東洋大板倉キャンパスを中核に建設を進めた学園都市は四半世紀を経て、想定した人口規模(1万2000人)の2割、約2400人にとどまる。東洋大は今春、板倉からの撤退を表明。当初のイメージとの大きなギャップを抱えながら、企業局は“完売”の道筋を探る。

 「東毛の工業団地の労働力が居を構えるためのニュータウン、という発想だった。そのために、東京から人を分けてもらおうと。大学を誘致するわけだから、決して過大なものではなかった」。県企業管理者(1987〜99年)としてニュータウン事業の立ち上げに関わった広瀬玉雄さん(91)=高崎市=はこう振り返った。

 ニュータウンは群馬県が90年に政策決定した「邑楽東部総合開発構想」を踏まえて始まった。キャンパスを含む総開発面積を218ヘクタールとし、94年に造成工事に着手。大規模用地買収のための新住宅市街地開発法の適用を受けた県内唯一の住宅団地で、企業局は買収費用に約240億円を投じた。

 97年春に東武日光線の駅と東洋大キャンパスが開設。同年10月には分譲が始まった。しかし、バブル崩壊後の金融危機と重なり、販売は苦戦を強いられる。県人口は減少に転じ、住宅需要は長期低迷。企業の進出意欲もあって2010年以降、産業用地への変更を余儀なくされた。用途別面積(未分譲を含む)は9月末時点で、産業用地(46.6ヘクタール)が住宅用地(35.2ヘクタール)を上回る。

 広瀬さんは「見通しが甘かったと言われるが、(継続的な)努力も足りなかった」と顧みる。

 県や町などから45億円の支援を受け、国際地域学部、生命科学部で始まった東洋大は09年に国際地域学部が移転。13年に食環境科学部が新設されたが、今春、23年度限りでの撤退方針を表明した。33ヘクタールのキャンパスは跡地利用の見通しが立っていない。

 元海上保安庁職員の佐藤策朗さん(79)は宮城県出身。土地建物を約4000万円で購入し、03年から暮らす。「退職後に落ち着ける所と思って買った。大学があるのは魅力だった」。大学の市民向け講座などが楽しみだったとし、今後に不安を募らせる。

 群馬大の小竹裕人准教授(公共政策論)は「計画は人口増加を前提としていて、自治体、大学とも少子高齢化を予見できなかった。東京に近く、都心に吸い取られる『ストロー効果』が出てしまった。こうした動きはなかなか止められず、似たようなことは他でも起きている。政策を前向きに切り替えるべきだ」と指摘する。

 企業局によると、未分譲の住宅用地は461区画(13.2ヘクタール)あるが、近年の区画販売実績は1桁台が続く。今後はテレワーク需要などの取り込みを目指すとしている。
(11月16日 上毛新聞)


【《住宅団地の行方》(下)再生策 課題認識も対応苦慮】
 
 老朽化する住宅団地に対し、地元市町村はどう向き合っているだろうか。上毛新聞は9〜10月、群馬県内自治体を対象に、管内の住宅団地についての課題、街づくりの方向性などを尋ねる政策アンケートを実施した。高齢化など将来的な可能性を含めて課題を認識している市町村は8割近くに上った。ただ、団地再生への基本姿勢は分かれ、地元が政策的に対応することの難しさを浮き彫りにした。地方重視を掲げる菅政権に対し、東京一極集中の是正など地方が活性化する政策を期待する声も上がった。

 アンケートは住宅団地が開発された地理的傾向を考慮し、国が近年推進している立地適正化計画に基づいた「コンパクトシティー」の街づくりも参考に、都市計画区域があって適正化計画の対象となる27市町村を対象にした。全ての市町村から回答を得た。

《アンケート対象の市町村》
 前橋、高崎、桐生、伊勢崎、太田、沼田、館林、渋川、藤岡、富岡、安中、みどり、榛東、吉岡、下仁田、甘楽、中之条、長野原、草津、東吾妻、みなかみ、玉村、板倉、明和、千代田、大泉、邑楽

■空き家対策
 住宅団地について「課題が顕在化している。またはしつつある」と回答したのは9市町(33.3%)、「近い将来、課題となりそうだ」とした12市町村(44.4%)を合わせると、課題を認識しているのは21市町村(77.8%)に達した。顕在化しているとした自治体から「高齢者(65歳以上)人口が5割前後だったり、5年前と比較して3割から4割になっている団地がある」(渋川)との切実な指摘があった。
住宅団地の課題について

 具体的な課題(複数回答可)では「高齢化、少子化」(66.7%)が最も多く、「空き家の増加」(55.6%)、「人口や世帯の減少」(51.9%)、「商業施設の不足」(22.2%)と続いた。千代田は「少子高齢化における地域コミュニティーの低下」を予想した。
住宅団地の課題の具体例

 課題への対応で最も多く挙がったのは空き家対策で前橋、高崎など11市町村(40.7%)。バスによる高齢者の移動手段確保や、「団地内施設管理の外部委託で負担軽減」(甘楽)との施策もあった。

■居住地域の集約
 団地再生に向けた姿勢は「行政としてさまざまな施策を講じるべき」(29.6%)、「需要の動向に委ねるべきで、積極的な誘導は控えたい」(22.2%)、「国の支援策を活用すべき」(14.8%)と割れた。「その他」(25.9%)とした明和は「老朽化した住宅団地は用途廃止などを検討し、まちのまとまりに必要な団地のみ積極的に誘導すべき」と強調した。

 街づくりの在り方として、都市機能を誘導したり、居住地域を集約化するコンパクトシティーを目指す立地適正化計画に沿って進めるとしたのは前橋、桐生など11市町(40.7%)。一方で、高崎など5市町(18.5%)は計画にとらわれず、地域の需要に応じた施策を柔軟に進めるとした。

 地方の居住環境改善や人口増加策に関する菅政権への期待では多くの意見が寄せられた。玉村は人口減少が全国的な問題であるとし、「自治体がゼロサムゲームで移住者を奪い合っている。自治体は疲弊し始めている」と訴え、省庁が連携して具体的な施策を打ち出すよう求めた。「地方への移住後押し」(桐生)、「企業の地方進出」(館林)、「デジタル庁創設で自治体の情報技術や通信環境を整備し、地方への人の流れを」(安中)との要望が上がった。

◎コロナで需要に変化
 新型コロナウイルス感染症が住宅需要に与えた影響についてアンケートで聞いたところ、前橋、渋川、安中、吉岡、下仁田、東吾妻、玉村の7市町が今後を含めた需要の変化を感じていると回答した。

 渋川は「東京一極集中によるリスクの回避やサテライトオフィス、リモートワークの普及」を根拠に、移住受け入れに意欲を見せた。雑誌の企画「コロナ時代の移住先ランキング」で都内と政令指定都市を除く関東自治体で1位になった吉岡。人口は増加基調で、アンケートでは「今後も需要は増加するのでないか」と展望した。

 一方、コロナ禍を受けた住宅団地の需給状況では北陸新幹線安中榛名駅(安中市)周辺に開発された団地で動きが出ている。団地は「びゅうヴェルジェ安中榛名」として、JR東日本が2003年に販売を開始。約600区画はいったん完売したが、購入したものの居住に至らなかったり、家庭内の事情で中古住宅を売りに出したりする人が少なくないという。

 物件を扱う高崎市内の不動産業者は「コロナ禍でリモートワークが常態化したことが影響し、老後を見据えた都内の富裕層などから購入を求める動きが出ている」と説明する。 (1)東京や軽井沢に行きやすい (2)都会にないスローライフを味わえる (3)街が新しく、団地内の人間関係が濃密でない―といった点に魅力があるとしている。

 アンケートでは、地元安中市もセカンドハウスや事業移転の相談を受けることが増えたと回答。「自治体職員には柔軟に対応できるようコーディネート力が求められている」と強調している。

「物件増やして移住誘う」…カチタス・マーケティング室長 大江治利さん
 住宅団地の再生で鍵となるのが空き家など、古くなった住宅の利活用だ。民間業者は県内の住宅団地の状況や中古住宅の需給動向をどう見ているか。中古戸建て住宅買い取り再生販売大手、カチタス(桐生市美原町、新井健資社長)のマーケティング室長、大江治利さん(52)に聞いた。

―住宅団地が老朽化している。物件の扱いは。
 団地を取り扱うことは多い。一般論として団地は区画や周辺環境が整っている所が多いのが利点となる。ただ、開発年代やプロセスによるが、今となっては住みづらい場所もある。立地による差は大きい。

―群馬の団地の特徴は。
 主に3通りある。開発時期が遅い団地は山沿いや傾斜地にある所が一定数ある。傾斜地だと駐車場を拡張しにくい。買い手が付かず、安くても手を出せない。

 駅や幹線道路から遠い郊外にある団地も厳しい。子どもが学校に通いにくいと購入に二の足を踏むが、価格で折り合えるケースもある。最も安定して販売が見込めるのは駅や高速道路のインターチェンジ、大型商業施設近くなど利便性が高い所だ。

―直近の市場動向は。
 新型コロナウイルスの影響で今年に入って群馬の団地は活況だ。徐々にテレワークが浸透し、「東京を離れてもいいかな」と都会から流れ、群馬を選ぶケースが出ている。一斉休校もきっかけになったようだ。

―主に地方の戸建てを取り扱い、成長している。
 平均すると築30年程度の住宅をリフォームして販売している。東京一極集中で地方が廃れると思われるが、地方の経済規模が縮小していくと、他の住宅供給会社が撤退する。人口はゼロにならないから、需要過多の地方が出てくる。人口減少が厳しい地域でシェアを伸ばしている。所得が伸びないことが背景にあるが、特に若い人を中心に、日本人の価値観にあった新築志向は崩れている。

―自治体も空き家バンクなどの対策に取り組む。
 取り壊すしかない物件もあるが、持ち主が処分を決断できず、流通しないまま放置されていることもある。バンクには難しい物件もある。少しでも流通する物件が増えれば地方に住む人が生まれる。ニーズに合う住宅を仕入れ、きちんとリフォームすることが大事。地方の活性化につながるよう、役に立ちたい。

《視点》地域の未来 住民も提案を
 県企業局や民間企業が主体となって各地に建設された住宅団地は、増加した人口の受け皿となり、県民が快適な生活を過ごすのに大きな役割を果たした。その団地が古くなり、対策が求められるのは時間の経過を考えれば当然行き着く問題だ。中心は空き家となった建物の有効活用などになるだろうが、地元自治体は民間企業と協力し、積極的に対策を取る必要がある。

 個人の所有権が絡む空き家は、扱いが難しい面がある。良い物件でも所在地域に魅力がないと、購入につながらない。自治体は売買しやすい制度設計に力を入れ、どうすれば地域の魅力向上につながるか考えるべきだ。

 新型コロナウイルス感染拡大で変化が生じた新しい価値観を意識しながら、団地を含む街づくりを進めることが求められる。

 国土交通省が主導し、自治体や企業などで活性化策を考える「住宅団地再生連絡会議」が2017年に設立され、県内の一部自治体も加入しているが、コロナ禍もあって動きは鈍い。財政難で身動きしづらい自治体も少なくない。ただ、さらなる人口減少など地方の先行きは厳しい。だからこそ住民一人一人が地域と向き合い、豊かに生きるための提案をしていくことが大切なのではないか。(高崎支社報道部・塚越毅)
(11月17日 上毛新聞)


土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 07:49│Comments(0)不動産よもやま話 

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