2025年01月17日

「遺贈寄付」に関する実態調査

日本承継寄付協会さんが、遺贈寄付に関する調査を実施したようです。

記事によると、日本では年間50兆円のお金が相続されていますが、
80-90歳代の遺産のほとんどが60-70代に引き継がれるため、
60代以上が保有する金融資産の割合は年々上昇し続けているんだとか。

これを、将来世代やそれを応援する団体へ寄付する取り組みが「遺贈寄付」。

でも、50-70代で遺贈寄付を具体的に考えたことがある人は、わずか2.3%。

遺贈寄付を断念した理由や、まだ準備をしていない理由は、
トップが「寄付したお金がどのように使われるか不明瞭」の45.9%、
ついで「やり方が分からない」の25%だって。

もう少しターゲットを絞り込んだ上で、
その意義を周知させる取り組みが必要ですね。


【2024年の「遺贈寄付」に関する実態調査を実施〜老老相続の深刻化が浮き彫りに〜】

 一般社団法人日本承継寄付協会 / Will for Japan(所在地:東京都文京区、代表理事:三浦美樹 以下「当協会」)は、2024年における遺贈寄付に関する調査を実施しました。調査の結果、全体的な遺贈寄付の知名度は上昇傾向にあるものの、2025年の大相続時代を迎えるにあたり、遺贈寄付意欲を含め、不足していることがわかりました。また、昨今話題の老老相続(注1)の知名度が、74.2%の人々が知らないと答えるなど、深刻化に向けた状況が浮き彫りになる結果となりました。

■実施背景
 日本国内では、年間50兆円ものお金が相続されていると言われています。80-90歳代の高齢者の遺産相続は、ほとんどが60-70代の高齢者世帯へと相続され、60代以上が保有する金融資産の割合は、年々上昇し続けています。金融庁の調査によると、1999年に47.4%だったものが、2035年には、70.6%に達します(注2)。このような状況を「老老相続」と言われ、昨今メディアでも報道がされています。また、独身世帯の増加や、子供がおらず相続先がいない世帯も増加しています。

 このような、老後の不安から生じる資産の高齢者への偏りを、無理なく将来世代やそれを応援する団体へ寄付を通した資金の流入を行うことができる取り組みとして、「遺贈寄付」があります。日本承継寄付協会は、2019年の設立以来、この遺贈寄付を当たり前にするための様々な取り組みを行っています。

 その取り組みの一つとして、現在の遺贈寄付や相続にまつわる現状を正しく理解し社会に発信する調査事業があります。2020年の初回から続き、5回目となる調査をこの度実施しました。

■主な調査結果サマリー
・遺贈寄付の認知度状況は全体的に上昇傾向にあります。特に70代においては、83.9%の人が認知しており、一般的なものになりつつあります。
・認知が広まる一方、遺贈寄付の意向度合いはまだまだ低く、70代でも79.8%が遺贈寄付について、家族や相続人と話し合ったことがないと回答しました。
・老老相続については認知度が低く、今後、さらに老老相続が進む可能性が強くあります。
・遺言書については、各年代それぞれが、「自分はまだ書く年齢ではない」と捉え、作成が進んでいない状況が分かります。

【遺贈寄付の認知度推移】
 遺贈寄付の全体認知度(20代-70代)は、58.6%。2023年調査では、53.3%であり、上昇傾向にあります。特に、50-70代に限定すると、70%の人が何らかの形で遺贈寄付について触れています。こちらも2023年調査の65.3%と比べて、微増しています。一方、理解している人の割合はまだまだ少なく、今後は理解促進の活動に努める必要があります。

あなたは遺贈寄付のことを知っていましたか?(合算)
 
 特に、70代に区切ってみると、83.9%の人が遺贈寄付を認知しており、この年代においては遺贈寄付が一般的なものになっていると言えます。

あなたは遺贈寄付のことを知っていましたか?(年代別)

 また、これまで何らか社会的な団体に寄付をしたことがある人の方が、遺贈寄付について認知しています。日頃の寄付活動が活発になればなるほど、より広く遺贈寄付の一般化が進むものと思われます。

寄付経験者における遺贈寄付の認知者・非認知者の割合

【遺贈寄付の意向度合い】
 遺贈寄付に関する認知が増えている一方、遺贈寄付の実行意向は、まだまだ低水準です。50-70代においては、83%(417人)の人が、あまり考えたことがない、もしくは、考えたことがないと回答がありました。具体的に考えたことがある人は、12人と少数であることがわかります。

ご自身が残す財産の一部を寄付することを間型ことがありますか?

 加えて、70代の79.8%が、「家族や相続人と遺贈寄付の実施について、話し合ったこともないし、予定もない」と回答。70代の意向度の低さが顕著に出ています。

遺贈寄付の実施について家族や相続人と話し合ったことがありますか?(70代)

 さらに、遺贈寄付について考えたとき「断念した理由」や「不安に思うこと」もしくは「まだ準備をしていない」理由として、「寄付したお金がどのように使われるか不明瞭」が45.9%でトップに。ついで「やり方が分からない」が25%となっています。

 このことから、遺贈寄付に関するより深い情報の発信を継続的に行う必要性がわかります。また遺贈寄付先団体においても、情報の開示やそのことの発信を行うことが、遺贈寄付を推し進めることにつながることが見て取れます。

【老老相続の認知度】
 今後、日本が直面すべき課題である老老相続について、2024年調査で初めて調査を実施しました。結果として、74.2%の人が「知らない」と回答するなど、認知度が低い状況であることがわかりました。

「老老相続」という言葉を知っていますか?

 2025年は、団塊の世代が75才以上の後期高齢者を迎える大相続時代と言われています。相続をする側、される側双方が高齢を迎えることにより、金融資産が「老後の資産」にとさらに貯蓄に回され活用が停滞してしまう恐れがあります。また、相続人の意思能力の欠如により、財産相続がスムーズに進まないケースも増加する恐れがあります。このような状況について、認知度が低いことは由々しき事態であり、今後、大規模な認知活動が必要であることがわかります。

【遺言書に対する意識】
 遺贈寄付の実行の入り口とも言える、遺言書の執筆についても今回調査を行いました。遺言書を書かない・まだ書いていない理由は、「まだ年齢が若すぎる / もう少し歳をとってからと思っているから」が、141回答ありトップであることがわかりました。これは、40代-60代において、また、「相談先がわからない」という回答が74回答となり次点となっています。

遺言書を書かない理由は何ですか?

 遺言書をいつ書きたいか、また、すでに書かれた方はいつ書いたかという質問に対しては、自分が属する年代より上の年代を上げる方が、各年代で多い傾向にありました。例えば、50代と60代では、70代がトップに。また、70代では80代がトップの回答となりました。このことから、相続について先送りにしたがる気持ちが強くあることが読み解けます。

遺言書をいつ書きたいと思いますか?

■考察と今後の展望について
 今回の調査結果に対して、一般社団法人日本承継寄付協会の代表理事で司法書士の三浦美樹は、下記のようにコメントしています。

 「今回の調査結果では、遺贈寄付の認知度が引き続き上昇している一方で、実行意向が依然として低水準であることが明らかになりました。特に70代の高齢者層においては、認知度が83.9%に達しているものの、実際に遺贈寄付を家族や相続人と話し合ったことがある人はわずか20%に満たず、遺贈寄付への意識の深化にはさらなる努力が必要であることが分かります。このギャップを埋めるためには、遺贈寄付がどのように社会や自分自身のためになるのか、その具体的な事例やメリットを一層広めていくことが急務です。

 また、寄付の使途の不透明さや方法が分からないという不安が遺贈寄付を実行しない理由のトップに挙げられていることから、寄付先団体の情報開示や透明性を高めることが遺贈寄付の普及に繋がると考えます。今後は、寄付先の活動内容やその資金の使途に関する情報提供を強化し、寄付者が安心して遺贈寄付を行える環境を整備することが重要です。

 さらに、「老老相続」については、調査において認知度の低さが明らかになりました。老老相続の問題は、今後ますます深刻化することが予想されるため、この問題に関する啓発活動が急務です。2025年、団塊の世代が後期高齢者に達し、大相続時代を迎えています。相続を巡る問題がより複雑化し、遺贈寄付がその一助となる可能性があることを社会全体に認識してもらう必要があります。

 遺言書の作成に対する意識も依然として低く、特に「まだ早い」「年齢を重ねてから考えたい」という声が多いことが分かりました。遺贈寄付を実行するためには、まず遺言書を作成することが重要であり、その意義を理解してもらうための啓発活動が求められます。また、遺言書作成に関する相談窓口やサポート体制を充実させ、遺贈寄付の実行を容易にすることが、今後の大きな課題となります。

 今後は、当協会として、遺贈寄付の認知度向上とともに、実行意向を高めるための取り組みを強化していきます。そのためには、遺贈寄付の具体的な実施方法や、寄付先団体がどのように寄付金を活用しているかについて、えんギフトを通して、さらに広く発信していくことが必要です。また、老老相続の問題に対する認識を広めるため、メディアや地域社会と連携し、積極的な啓発活動を進めていきます。

 遺贈寄付を「誰でもできる寄付」であると認識してもらうために、当協会が提供する情報やサポート体制を強化し、より多くの人々が安心して遺贈寄付に取り組めるような社会作りを進めてまいります。」

(注1)高齢者の相続人(世界保健機関の定義では、65歳以上の人のこと)がさらに高齢者である被相続人(親など)から財産を受け継ぐ相続の形態
(注2)金融庁「高齢社会における金融サービスのあり方(中間的なとりまとめ)」

(1月16日 PR TIMES)


土地家屋調査士 大阪 和田清人
esouzoku at 08:31│Comments(0)相続専門FP 

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