学会、学府

人為的要因による震災の防止を、建築学会特別研究委員会設置申請(12)、エッセイ150

2016.11.13 人為的要因による震災の防止を建築学会特別研究委員会設置申請(12)、150

2017年度開始、216年度作成

テーマ;人為的要因による震災の防止に向けた技術・社会に関する基礎的研究

委員会名:人為的要因による震災の防止に向けた技術・社会に関する特別研究委員会


◆研究目的
地震災害の防止や軽減に向けて、これまで、地震が起こるたびに施工不良、現場技術の未熟さ、設計不備、未耐震化、などの人為的な要因が指摘され続けてきた。にもかかわらず、この種の要因による被害がなくなるどころか返って激しさを増している。このため、問題は技術の枠を超えて社会にも及び、種々の改善が進まないのは社会そのものにその温床があるのでは、ともいわれるようにもなってきた。
 そこで、本研究では人為的要因による震災の防止を目指して、人為的要因による震災のメカニズムを明らかにし、次いで効果的な改善策を立案することにした。具体的には、問題の本質を横断的に二分し検討を次のように進めるとした。第一には、人為的要因は技術を操る人間側社会のあり方に根があると捉え、社会における制度や経済活動などのシステムと人間の住生活に着目し、技術行使のあり方を社会の営みとの関連で明確化する。第二には、社会の営みを多様な分野に加え経済性や倫理との関係性を明確化する。以上をもって本研究の目的とする。


◆設置理由
 震災のかなりの部分が人災といわれることが多いにもかかわらず一向に改まらないのは、この種の問題に対して学術が英知を集めて正面から向き合っていないからではないのか。なぜそうなるのか。震災に取り組む姿勢が各分野単独独自で連携や総合化がなされていないからである。確かに各種委員会も震災を念頭に置いているが、自分の委員会内で足固めに追われている。ならば、災害委員会はどうかと言えば、災害について総合的に主導しているものの、災害発生後に活躍をすることを本務としていて、総合性の任を担う委員会が別途にあればと切望しているかのようにも見える。しかも、社会における技術者の役割として、倫理やコミュニケーションの委員会もあるが、ここにももう一つ連携用に設定された委員会により、水を得た魚のように機能するのではと思える。こうした状況こそが提案委員会の出番を誘導しているかのようにとれる。提案委員会を核に震災というフィールドですべての英知が集まることを熱望したい。もちろん、提案委員会でもってすべてを稠密に行うことはできないので、むしろ各種の委員会や建築学会の枠を超えた様々な分野からもつないで、老若によりパイロット的に研究を進めることにしたい。


◆研究の項目
目的遂行のためにいくつかのサブテーマを設定する。
(1)技術行使の背後における経済性や価値観をも対象にした倫理の構成に関する研究。経済性の上に立脚した倫理では、根本的な解決は難しいと考えられる。価値観まで取り込んだ倫理の構築をパイロット的に構成する。特に世の中、学術的対応よりも世の中が回ることが第一とされる(経済活動優先の)風潮について倫理の面からの対応策を考える。
(2)市民啓発が市民行動につながるための要件の洗い出しとそのメカニクスの解明および実践プログラムに関する研究。啓発には何をどこまで市民に伝えるのかいいのか。マスコミ報道に際しての監修のあり方や市民の良識の醸成に関するプロセスを明らかにする。
(3)生活の営み視点での意識改革の研究。よく住民に求められる意識変革につて啓発活動第一主義ではなく、生活の営みとリンクさせて、意識の醸成のプロセスを明らかにする。
(4)建築からの社会世論づくり・技術世論づくりについての研究。市民良識醸成とあいまって、技術倫理とのリンクで、世論づくりの骨子を建築の視点で作成する。
(5)分業化社会における専門教育のあり方についての研究。教育体系の抜本的改革ということではなく、連携の仕方や総合的視点をもって対応できるような素養を磨くために教育のシステム的な検討。具体的には、地盤と建築、計画と構造、施工と構造、現場とデスクワークといった枠組みでセンスが養われるプログラムを作成する。ただし、実践までは扱わない。
(6)現場軽視の要因と改善に向けての研究。経済性の論理でしわ寄せが現場に及ぶ。そのメカニズムを探り、改善に向けて策を練る。特に、現場にまで設計の論理がいきわたりにくいことや熟練者をないがしろにする風潮にも分析し、抜本的解決を策定する。
(7)住まい方の今日的意義に関する研究。今の住まい方でいいのかどうか、今の設計や施工法でいいのかどうか。地震国日本特有の防災文化がありえるのか、計画・構造・環境の分野から近現代の時間軸の流れで検討する。
◇上記7項目の研究はどれひとつとっても大きいので、本格研究はaij各種委員会にバトンタッチすることを目指して、震災視点からの突破口として位置づける。なお、経済と社会性に関する本来の研究はここでは扱わず、身の丈にあった研究に限定した。


◆委員会構成
委員会については、多種多様な分野からの熱い方々15人で構成する。委員会は、東京、名古屋、京都で開催し、各地にて趣旨に賛同する市民と実務家を会友として結集してWG活動。
◇世話人 教育系 **  ◇公募 若い人2-3名
◇コアメンバ― 各位はaijの各種委員会にも所属
子供系 **  構造系 **  設計系 **  計画系 **  
環境系 **  施工系 **  デザイン系 **
◇顧問格メンバー  
 実務系 ** 都市系 ** 経済系 ** 建設系 **


◆予想される成果
 提案委員会が掲げる究極のミッションは、広く世の中の民度を向上させることにあり、また建築系の方々が主体となって市民視点で動くことができるよう建築世論を形成させることにある。もちろんそこまでの完全な到達は考えておらず、方向性と着実な一歩が肝心としている。委員会活動として、各研究項目について、方向性を見出す成果を上げるとともに、これらをもとに、2018年度大会(東北)でのシンポあるいはPDにのぞみ、そこにおいて問題意識を皆様方と広く共有し、方向性を確たるものにする。すなわち、提案委員会メンバーを核にして各界、各分野のエキスパートの方々と議論により、知的交流を深め、今後の動きの加速にむけたい。大会時では、人為的要因の整理が概略一通り終わっており、今後に向けての方策の方向性も明示できると考えている。息の長い取り組みであるので、本委員会が先行し役目を終えれば、他の委員会が後を継ぐ形で、一つの視点としてでも動きが加速すると考えている。以上をもって、主体性を根付かせる世論形成の基礎が築けると思っている。


◆過去の業績
今回のテーマは今まであるようでなかっただけに、過去の業績は世にいう形になった業績というものではなく、委員候補者自身が研究成果を暖めて門外不出の状態にある。すなわち、がかかる問題を周辺に置きながら研究を進めている各候補者にとっては、場と機会が設定されれば、たちまちのうちにそれらは業績となって世に出てくるものである。また、各候補者の持つ博識・見識・良識そのものが業績そのものであり、何事にも変えがたい宝である。こうした宝を提案委員会が設定テーマの下でより一層光り輝かせるのである。繰り返し言うと、今ここに提案委員会が場所とチャンスを提供することで英知がたちどころに集まってくるはずである。そしてまた、2013年4月から2年間、aij教育委員会傘下のWG「教育の社会性検討」において、着実に実績を積んできており、その後は北陸の地において灯を絶やさず、今に持ち越している。


◆研究期間 2017年4月 ~ 2019年3月
研究費  初年度31.5万円 2年度56.5万円 合計88万円


◆特記事項
 提案委員会発足を起案した動機については、人為的要因による震災には教訓といったものがまったくないことに合点が行かなかったことにある。何故か。極論すると技術が社会問題に入り込まなくていいといった感すらする。本来は、技術の社会性こそもっと問われてもいいはずであり、そのことをないがしろにしていると、震災への対処がどんどん後手になってしまうのではないのか。少なからずの有識者が「建築は今一度出直しを」と言っているが、建築といわず技術と言い換えて出直しまでは言わないまでも地道に進めばいいと考える。そして学会の崇高な蓄積が世の中の隅々にいきわたるようにしたい。提案委員会はその走りを務めたい。


学協会の大会における活性化新企画、エッセイ111

2014.06.28 学協会の大会における活性化新企画、111
  たまたま、ある学協会においておもしろいとりくみがあった。 
支部大会(2003,2004)における活性化新企画について

「語り合のシンポジオン」,「実務者懇談会」,「技術報告」 06

 かつて、学協会の支部長と研究委員長の方々と活性化についてはなししたことがある。ここに写真無しで本文を紹介する。

【1】.はじめに:経緯として

例年、支部大会は、研究発表会を中心に作品展、講演会、シンポジウム、文化賞発表などで構成され、支部地域の学術・芸術・技術の向上に大きな役割を演じてきている。しかしながら、実務系の多くの会員にとっては、「研究発表の場では敷居が高すぎる(自分達が参加しにくい)。学会が提供する情報が自分達向きでない」といった声が強くあり、結果的に彼らのニーズに対して学会は十分に応えていないともとれる。これが、実務系会員の学会離れの遠因にもなっているようにも思える。

そこで、支部の両委員会(研究委員会,事業委員会)では、支部大会の抜本的見直しの一環として、第一に風通しの良いコミユニケーションを如何に図るかを検討した。すなわち、支部として会員の多様なニーズに応えることができるように、実務者が参加しやすい内容で時間と場を設けることにして、2002年度の支部大会から実務者懇談会を新たに企画し、2003年度はさらに踏み込んで敷居の低い発表の場を実務者に(後には学生にも)提供することにし、これを「語り合のシンポジオン」とした。

続いて第二として、実務者が実務を学術的に論議し評価することに積極的参加可能なシステムを考えた。これが、今年度(2004)から導入した実務者による技術報告の場の提供であり、梗概集にも技術報告として掲載することを可能とした。(これは通常の研究報告と一緒に掲載とした)

以下に各取り組みの詳細を述べることにする。



【2】.語り合いのシンポジオン

1. 検討

1.1 問題点

一般に講演会を含めてシンポジウムにはどうもよそ行きの観がある。それはテーマや講師についての不満ではなく、むしろ進行の仕方にある。テーマにもよるが、聴衆は講師やパネラーの話を聞き、その後質疑応答という従来のスタイルでは、参加者の立場でも発表者の立場でも不満が自覚の有無にかかわらず残ることが多い。それともうひとつ大事なのは、そうしたシンポに出席いただけない人の存在もある。彼らはシンポが研究者向きで一般の実務者とは縁遠いとして避けたがる。これもまたシンポの運営の仕方が問題と思われる。



1.2 二種類の不満

不満を整理して列挙すると

カテゴリー1:聴衆対発表者

聴衆側:

質問したくても自分の番がまわってこない。

時間切れで質疑応答なし。

自分の考えもきいてほしい。

シロウトとしてのコメントを聞いてほしい。

よくわからなかったので、もう少し教えて欲しい。

テーマによっては、こんなデータ持っている。

ぜひしゃべらせてほしい。

発表側:

聴衆の反応をもっと聞きたい。場合によっては,詳しいデータの持ち主とデイスカスしたい。

こうした不満は、講演会後の懇親会で一部の方には多少解消されるものの,多くの方には根本的に解決とはなっていない。

カテゴリー2:研究者対実務者

研究者側:実務的な展開についてもっと聞きたい。

実務者側:

実務でこんなこともあること研究者に教えたい。研究とのタイアップでも研究者にまかせると自分らの視点がぼやけることがある。

いろいろ携わっていても発表の機会があまりない。(非会員のためとか、敷居が高くてといった

理由。ただしハイレベルの実務は研究とリンクしているがここでの実務は一般の実務のこと。)

例えば、街づくりの問題などでは官公庁の方も教育・ 研究機関との連携で(仕事の一環として)問題に取り組んでいるにもかかわらず、発表の機会は研究者の方に多く、実務者には少ない。また、実務的な研究においても実務者は研究者と違った観点でシャープに問題に迫っているにもかかわらず発表ヘタが災いしてか埋もれてしまうという心配もある。これらのことが不満へと変わる。



1.3 改善

以上みたように、講演会やシンポでは参加者の中には参加しているという想いが満足されていない。もちろん、著名な講師の講演で一方通行でも満足する場合もある。そうしたものも必要であるとしても、さらに方法を変えた新しいもの(語り合いのシンポジオン)を提案したいということであり、いってみれば今後のシンポなどは旧来のものと新企画のもの(シンポジオン)との二本立てとするのである。

では、シンポジオンの骨子をどのようなものにするのか。基本は学会を雲の上の存在にするのではなく、身近なものにする。それには、自由なフリートーキングの場を設け、これまで遠慮しがちな実務者会員や学会を支える官公庁および民間の方々(場合によっては非会員)にも参加できる雰囲気をつくる。これが、参加者の日ごろの研究的な業務やアマチュア研究を学会のスペースに取り込んでいくことを可能にするといえる。



1.4 シンポジオンの誕生の伏線

2001 年度までの支部大会においては地域への知的サービスを兼ねてシンポジウムが行われていたが、一昨年(2002 年度長野大会では懸賞論文発表の場としてシンポジウムが企画された。これはこれまでと違って会員中心のプレゼンの場ともとれるものとなり、シンポジオンの誕生のもとともなった。これに伴って、従来続けてきたシンポジウムのもの(開催支所地域の

一般の方々を対象とする啓発的なもの)が別途必要となり、これは講演会として設けられることとなった。



2.具体像

2.1 発表様相

発表の場の敷居を低くして発表の機会を促すことが肝要である。これには、発表内容に携わったすべての方々が発表した雰囲気になるようにする。このためには、集団で発表が可能なように、同じ部局や研究室もの同士、発表のテーブルについて、代表一人でも複数の方でも発表してもよしとした。



2.2 デイスカッション様相

デイスカションをフリースタイルとする。発表グループ毎に島テーブルをつくり、聴衆はそのテーブルを取り囲みテーブル毎に自由に討議する。具体的には、発表グループごとに島テーブルで陣をはり、テーブルに写真や地図などの資料を広げる。聴衆は自分の関心高い島テーブルまで出向き、それを取り囲み、グループの誰にでもデイスカスする。

こうしたスタイルであれば、自分の好きなようにデイスカスできるし、発表者側もこれに応じられるばかりでなく、さらなる議論も可能となる。これまでのようなフロアーからの質疑応答の際に質問者と発表者のみの一人対一人のやりとりでは盛り上がりに欠けさびしい限りであったが、これが複数人対複数人、一人対複数など多様な展開で盛り上がることになる。



2.3 アフターケア

聴衆と発表者のデイスカスラリーの詳細については、フリーデイスカス終了後に,発表グループごとにそのときの様子をスピーチする。しかし、それだけでは足りないので、後で発表グループごとに報告書(感想とデイスカスラリーの内容)を提出いただき,場の参加者全員に後日メイル配信というアフターケアを行うことにした。


2.4
イメージ

シンポジオンのイメージがなかなかつかめない方には次の説明が的を得ている。すなわち、これは、懇談会のような気楽さ、ポスターセッションのようなコミユニケーションの様相、パネルデイスカッションのパネラーが聴衆全員という様相、そういったものである。



3.テーマの決め方、発表依頼

テーマについては、多くの会員が討議に参加でき、話題性があり、関心があるものとして、まちづくりを選んだ。また、サブテーマも設定して、これに従って発表者の属性を決め、支部の委員会委員が各行政や各大学でまちづくりにと取り組んでいる方々に実践研究発表をお願いした。発表件数は3 件ほどとした。



4.成果

コミユニケーションの場では、話題提供者も聴衆も複数人対複数人で、しかも自由に語り合うと、こうもにぎやかになるものかと。

実務の方には,堅苦しい論文やレジメ、パネルもなし、机の上に図面や写真を広げての説明との事で安心されて自由に語っておられた。これまで研究発表の場一本であった支部大会に実務の多くの方々をも参加いただき、全員のデイスカッションにより、場は大いに盛り上がった。

また学生を主体にしたときには、コミユニケーションの場は熱気に包まれ、学生は平生の自由な雰囲気で討議にのぞみ、他校の学生との交流も自然と芽生えた。なによりも学生が大人を前に種々語り伝えたことは大いに目を見張るものであった。

なおシンポジオンの場では、聴衆全員が主人公という雰囲気が独特の創作意欲を醸成させるものであったといっても過言ではなかった。



5.実施

5.1 第一回「皆で語り合いのシンポジオン」

2003年度支部大会金沢にて,03714,13:00-15:00

(1)概要

テーマ:街づくり最前線を語る

参加者:26人

発表:石川県(金沢市役所5)、富山県(県庁1、コン

サル1人)、福井県(福井市役所5)

討議:各県ごとに島テーブルを構成。ギャラリーが

関心あるテーブルに出向く。

(2)タイムスケジュール:

・司会:桜井康宏(福井大、研究委員長)

・趣旨説明by桜井康宏

・基調報告:各県から10分ほど

金沢の街づくり

富山県八尾の街づくり

福井駅前再開発

・各テーブルで自由討議、1時間半。

・その道の方々からコメントやまとめ

・まとめby桜井(研究委員長)、富樫(事業委員長)

(3)結び  街づくりは皆さんの関心が高いので、毎年こうした企画を続けること、こうした種々の職種の方が一堂に集まって語り合うことは目新しく新鮮、と総括。



5.2 第二回「語り合いのシンポジオン」

2004年度支部大会富山にて、04717,12:30-13:45

(1)概要

テーマ:北信越地域におけるまちづくり最前線、

パート2「学生参加の街づくり」

参加者:90

(2)話題提供

福井大学グループ:雑木林から街づくりへ

竹原育美、川口充康、大森直紀、他(全員院生)

金沢工大グループ:照明プロジェクトから街づくりへ

田崎浩司、頓宮引三、東出絵美(全員学部生)

金沢の街ゼミ:チャリンコデアート

宇津徳浩、岸本和子(全員街ゼミ、金大院生)

信州大学グループ:町の文化財保存から街づくりへ

土屋直人、西山哲雄(全員院生)

・司会:土本俊和(信州大、研究委員長)

・総括・コメンテータ:桜井康宏(福井大、前研究委員長)

・討議:グループごとに島テーブルを構成。ギャラリー

が関心あるテーブルに出向く。

(3)タイムスケジュール:

・趣旨説明

・各グループより10-15分発表

・デイスカッション。フリースタイルで20 分ほど。

・各グループよりデイスカスラリーの概要が簡単に述

べられ、最後に桜井先生、本多先生の総括でしめる。

(4)結び 締めくくりの言葉は「学生がエネルギッシュであることを大人がこれまで気づいていなかった」と。



【3】.実務者懇談会

1.概要

1.1 懇談会の発足経緯

支部大会においては、参加される方々は主に研究・教育者と学生であり、時折大中企業の技術者がいるものの一般の実務者はほとんど参加していない。なぜか。例え参加しても、自分らの求めるものはそこにおいて得られ

ないといって敬遠するのである。ではどうするのか。ま

ず、一般の実務者が今何を求めているのか、もっと知る

必要がある。加えて,研究者や教育者がどうこれに応える

のか、また研究・教育の話を実務がどうこれに応えるのか。といった方向の議論が必要といえる。そこで、フリートークする場を設けることにし、こうした場を「実務者懇談会」と称した。



1.2 全国への波及

2002年支部での企画の成功を受けて、学会全国大会においてもこうした企画を立案し、「実務者と研究者・教育者との討議の集い」という名称で、まず2002年の大会金沢において,北陸支部がお世話をして開催した。結果はまずまずの成功であった。その後、2003年には名古屋で、2004年には札幌へと引き継がれている。いい傾向である。



2.具体像

参加人の構成は、支部大会に訪れる参加者に加えて開催支所地域の実務者からなるとした。そして何によりもトークが円滑になるように次の3点で会場と机配置で工夫をこらした。

第一に会場については、支部大会懇親会会場の一角とした。理由は、懇親会で盛り上がってから,当該一角に移動して大いにトーク、デイスカスできるようにするためである。

第二に実務者が遠慮しないように,研究・教育と実務とが対等となるように、小さな丸や四角のテーブルにランダムに着座し(人数が多いときは小テーブルを増やす)立座でなく着座にしてゆっくりとトークできるようにした。

第三に、トークテーマはあくまでも細分化されたものにせず、実務者がかかえる問題について実務者が研究者・教育者とともに大いに自由にデイスカッションを楽しむこととした。そこにおいては、酒と料理が参加者の口を滑らかにして、チューターなし、司会者なし、いってみれば皆さん全員がパネラーでありデイスカッサーとなるとした。



3.実施

3.1 第一回実務者懇談会

2002支部大会長野にて、02622日、19:00-20:30

テーマ:実務を中心にした研究・教育との討議

場所:信州大学工学部生協食堂

参加者:実務者3,研究・教育5人、学生1人の計9人

コメント:問題の関心の高さに比して大きな力とはなっていない。まずは継続を。

3.2 第二回実務者懇談会

2003支部大会金沢にて、03714日、17:30-18:30

参加者:12(内訳:社会人3,大学院生・学部生9人)

場所:金沢市内のホテルの宴会場

ポイント:学生と社会人との懇談

テーマ:夢の実現化に向けて,若者は今、社会人は今。大いに語る。

会場風景:懇親会場の一角にテーブルをおき、実務

者と学生がランダムに着座して自由討議。

コメント:若い学生の参加により、学生の将来という観点から夢と現実、勉学と実務がテーマとなって話が進んだ。そこでは、専門の討議というよりも、各自の人生にまで話が発展して,大いに盛りあがった。

3.3 第三回実務者懇談会

2004支部大会富山にて、04.7.17 17:15-18:15

参加者:10(内訳:学校人3,実務6,大学院生1)

場所:富山県民会館宴会場

テーマ:今後の建設業について

内容:支部大会講演会の講師である藻谷さんを交えて、右肩下がりの成長時代における業界について意見交換を行った.



【4】.技術報告

1. 目的

支部大会の研究発表の活性化を目的として実務系会員の積極的発表の可能性を両委員会(研究委員会,事業委員会)で検討してきた。実務系会員にとっては、研究として内容が整っていなければならないとか、水準が問題といったことが、彼らの発表意欲の低下につながりやすいとして、発表意欲向上を図る上で投稿に際していくつかの改善を行い、実務からの学術的参加に道を開いた。すなわち、研究発表の活性化として(発表件数増を兼ねながら)、次のような実務者向けの特別措置が研究委員会から提案され事業委員会がこれに協力して2004年度支部大会から運用とした。

特別措置:「実務者に発表の機会を与える」として

論文・報告文の投稿を促す。

・登録料を半額(4000円から2000)にする。

・通常のまとめ方となっていなくともよしとする

技術報告。ただし先頭ページの上半分のフォー

マットは遵守。書き方や構成は自由。



2. 成果

2004 年度支部大会における技術報告は、高専1 件、ゼネコン1 件、設計事務所2 件の計4件であった。技術報告については、技術者の身丈にあってまとめるという趣旨が(発表会において)十分理解されていたとはいえなかったが、これまでの発表会とは違って、実務者が建築のロマンを熱く語り、会場が大いに沸いた。また、研究者に対して実務者からの鋭い質疑応答もあり、これまでとはまったく違って討議は白熱し、異種混合の妙味が発表会において遺憾なく発揮された。ただし、1 編は研究論文に十分値するものが混入していたこともあり、今後はいま少し趣旨を理解していただくとともに参加を促すことでPR したい。



【5】.おわりに

支部大会活性化のための三つの新企画について、評価は未だ定まっていないが、少しでも継続することを前提に評価を勝ち取りたいと思っている。こうした取り組みを通して、実務者および将来実務者となる学生にスポットをあて、彼らの熱い想いを醸成させることができるならば、学会はすこぶる活性化するものとみており、さしずめ、2005年支部大会新潟が試金石になるのではと思っている。

末筆ながら、こうした取り組みに参加された方々、こうした取り組みに理解されゴーサインを出していただいた方々、こうした取り組みに声援を送っていただいた方々、ほか多くの方々に大変お世話になりました。皆様のおかげをもちまして何とかここまで来ました。記して感謝を申し上げる次第です。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

富山における地域との連携、具体的活動について、エッセイ110 

2014.06.27 富山における地域との連携、具体的活動について、110

富山における地域との連携、具体的活動について 07.03

 建協会の地区代表の方と連名で標記書き物をしたことがある。写真は省略して本分を紹介します。 

■■■第二編 地域連携の実際

富山の事業として、建築文化週間事業や講演会事業などが実施されている。地域連携とした事業のうち特徴的なものを実践例としてここに紹介する。

◆1.地震対応の種々活動

「講演会、調査、啓発教育」

この種の問題についても支所に基礎体力がついてきたので、aijとして取り組むべき以下の事柄について活動可能となり、そして活動している。

1)地域への提言;種々の活動を通して社会に提言する。

2)啓発活動 ;市民向けの防災教育など、市民向けの啓発を行う。

3)実務者指導;例えば耐震設計や街づくりなどの実際的な指導(講師派遣など)として、被害調査報告会や建築サロンとリンクさせた指導会のようなものを行う。

4)調査;他の県と違い、大学中心ではなく地域連携として富山らしい多様な人材で調査研究にあたっている。07年能登半島地震では大調査班を結成し、学術的な貢献のみならず、県民にも「aijが貢献」を強くアピールできた。


1.A  建築サロン

「富山県における大規模地震災害時の対応について」 再構成加筆:編者

1.概要

  富山県に大地震が到来したときにどう対応するのか、日頃からその備えをする場合、当然地域連携で事に当たらなければならない。支所では、2004中越地震において初めて、他支所と同じように被害調査を行うとともに、講演会を開催して、応急対応や復興支援を行った行政チームとのコミユニケーションを図り、ネットワーク構想を打ち出した。

05226()13:30-16:30

富山県民会館701室、 参加40

第一部.新潟県中越地震の概要           

 (1) 地盤・RC造被害状況;富樫(教育)          

 (2) 木造被害状況;中谷(研究)             

 (3) 鉄骨造被害状況;大塚(研究)

第二部.安全と安心のために

(1) 支援状況等;新夕(行政) 

(2) 災害廃棄物の処理;島田(行政)

(3) 防災ネットワーク構想;坂井(実務)

2.内容

会においては、単なる地震報告会に終わらせることなく、市民に責任を持つ各専門家の役割が確認された。特に、学術的なアプローチを耐震設計の再構成のみにつなげるのではなく、復興支援まで範囲をひろげることやごみをださないような建築設計をすべきということが強調された。

また、今回のことを教訓にして全体の動きを把握して効率よく調査・支援できるようにすることが「防災ネットワーク構想」の原点であり、aijが中心になって行政や建築関連の諸団体に呼びかけていくことが提案された。



1.B  05中越地震、06能登半島地震のときの対応

 95阪神淡路地震においては、他府県の研究者によらず自前のメンバーで阪神地震シンポを即座に開催し、地域においてaijがその責務を担っていることをアピールした。その後、04中越地震、07能登半島地震については、地域の期待に応えるためにaijとして被害調査の実施と報告会や講演会で市民啓発や地域への提言といった活動を行った。

(1)04年中越地震

大学人2人、一般教員1人、設計事務所1人の計4人をメンバーとして、個人ボランテイアの形で計三回調査を行った。結果については、aij災害委員会の地震被害HPに掲載し、報告会(05.2.26)も実施した。

(2)07年能登半島地震

 大学2人、一般教員1人、官庁研究所5人、官公庁1人、設計事務所2人、ハウスメーカ1人、で富山支所チームを結成し、aij北陸支部の災害調査団として悉皆調査を分担で実施するとともに、各自の関心ある問題についもデータ収集に努めた。成果は、0791日防災の日に講演会にて発表することにしている。

項目

兵庫県南部地震

新潟県中越地震

能登半島地震

発生年月日

95.1.17

04.11.24

07.3.25

M 

7.2

6.8

6.9

最大震度



6強

被災地

阪神淡路

中越山間部他

能登輪島七尾

死者

6435

67

  1

 富山において

震央距離

300km

160km

80km

震度


  2

 5弱

調査

aij

・他団体

(個人参加数人)

 


3
人、18人日

14人、?人日


11
人、19人日

7人、15人日

応急判定等

人数

人日数



 

 



37

156人日 



36

38+α人日

講演会開催

aij

・他団体



2回

10回程 



1回

8(行政3)



1回

1(行政1)

(3)コメント

 富山においては、こうした問題について学術的な対応を望む声が強く、その意味でもaijはフットワークのよさで十分期待に応えた。しかしながら、実務者の間には地震は構造の問題といって意匠分野や市民生活の分野の反応が鈍いので、その意味では実務者への啓発という課題も残った。

参考までに、この種の問題についてaijによる地域貢献を浮き彫りにするために、地震被害調査や報告会の実施状況を表に記しておく。



◆2.建築生産システムを考える活動

語り合いのシンポジオン

「健全な建築生産システムの構築をめざして」 再構成加筆;編者 

1.概要

  04年には耐震偽装事件が勃発し、建築界は社会に対して信頼を大きく失った。これを如何に取り戻すのか、地域でがんばっている方々により忌憚のない語り合いを行った。これも地域連携ならではの企画であり、現場で苦しんでいる実務者に加えて経済人の本当のところが意見として飛び交い、次に繫がる展望がみいだされた。

0663()14:00-16:30

富山県民会館401室  参加60

2.構成

(1)基調講演:建築生産システムと品質確保について

講師:嘉納成男(aij副会長、早大)

(2)パネル討議:コーデイネータ;貴志(富大)

「日常業務における建築生産と経済性のせめぎあい」

「しあわせの形と風致の創出」;坂井(設計)、

「設計・施工の日頃の業務から語る」;北岡(技術者)、

[経済人の一人として技術をかくみる」;山瀬(経営コンサル)

3.内容

市場原理や経済性優先の昨今,強度偽装問題を契機に国民の利益を優先するための建築生産システムのあり方が問われている。今回、社会資産としての建築の役割を日常業務の視点から議論することとなった。

 第一部では嘉納先生より、建築産業・建築生産システム・品質確保の仕組みが現状に合わなくなってきていることが指摘され、法令・行政・設計・施工また発注を含めた仕組みの改革、意識の改革の必要性が提議された。

 第二部では論点としては、建築生産活動と市場原理との対立がもたらす弊害や、社会資産としての建築の役割を建築側・市民側・経済側から検討することとなった。建築主が安全性より経済性を上位に、設計者が安全性より建築主の意向を優先して考えてしまった結果、最低の安全性を確保する為の法令が機能しなかった事に問題がある。また、今回の事件は、社会資産としての建築の価値とは何かを考えるきっかけにもなり、社会的に安全で快適な建築物は、後世まで続く資産であるという認識を持つべきであり、さらに建築側は理念に基づいた確かな技術の向上と生産活動におけるチェック機能の確立に取り組むべし、と結論づけられた。

            

◆3.建築の歴史的評価活動

04年建築文化週間事業、講演会・演奏会・見学会

「近代建築の歴史的意味—呉羽中学校校舎」

1.概要

  富山には建築家吉阪隆正設計の近代建築「呉羽中学校」がある(07年に取り壊し)。これが取り壊しになるということで、JIAを中心に保存運動が盛り上がっていた。そのようなときにaijは「何ゆえ保存なのか」を根本的に検討するために、「近代建築の歴史的意味」を探ることにして、講演会と見学会、それにエクスカーションを企画した。なお、同窓生や周辺住民が多数参加した。

041030()13:30-16:30 

富山市呉羽町の会館と呉羽中学校

参加250人(一般市民多数参加)

2.構成;

講演会「建築物の歴史的意味」by内藤廣(建築家,東大)

ミニコンサート:byバイオリン「ホンティラ・クラウディウ」(ルーマニア)」とピアノ「竹内祥子(ウイーン)」の響宴。

見学会:特にコミユニケーションの場となる中庭空間とY字型校舎の魅力を見学。

3.内容(1)講演会では、建築家には、理屈で建築をつくる丹下先生のような方に対して、理屈で割り切れない建築をつくる吉阪先生のような方がおられる。呉羽中学校校舎は理屈で割り切れない人間性の建築であり、今後は理屈では解決し得ない事柄を解決していく時代になったと力説された。 

 (2)中学校の中庭という劇的空間における演奏会では、当日あいにく雨天のため校舎中庭から音楽室に会場を移して音楽鑑賞を楽しんだ。

(3)今回の企画のねらいは吉阪名建築について一般市民とともに今日的評価をしたいがためであった。呉羽中学校舎建設(6064)に際しては、当時の町長が「百年の計は教育にあり」として、町民と行政が一体となって、「生徒が健全に育って欲しい」という吉阪建築が誕生した(市民・行政・建築家の連携)。校舎はY字型の校舎三棟にU字型管理棟からなり、これらが数字の8のように平面配置され、中庭空間を形成している。中庭を囲むバルコニーは全生徒の交流の場であり、親和性は高く、かつて校内暴力で荒れた時代においても事件は皆無であったという。



◆4.まちづくり活動

06建築文化週間事業「まちなみウォッチング井波」 再構成加筆:編者

1.概要

  aijの地域連携事業のひとつである「まちづくり」について、行政と地域が連携しているところに後発であるaijも加わって、aij主導で「地域の街づくり」を学術的に支援することを目的に街づくりの現状を地域の方々とともに勉強し、今後につなげることを企画した。

061015()13:30-16:30

富山県南砺市(旧井波町)

 参加40人、建築士会も協力

2.内容;まちなみ散策(千秋氏や観光ボランティアの方が案内) 、井波彫刻の歴史、瑞泉寺と町との関わりなどの説明を聞きながらのまちなみウォチング。

   シンポジウム;千秋謙治氏(井波町文化財保護委員長)、地元の、まちづくりリーダー、設計者、大工。

3.状況:瑞泉寺の門前町として、今もその伝統的な町屋と町並みを残す富山県旧井波町の八日町通りと上新町。その住民たちが、その歴史と伝統にふさわしい町づくりを目指した「景観づくり住民協定」を締結し、町屋の改善や町並みを整える取り組みを始めている。今後については、地元の方々の町に対する熱い思いがあり、これをどうaijが形にしていくのか、課題が浮き彫りにされた。特に住民とともに考えて行くシステム作りが学究的な面においても肝要であることが再認識された。



◆5.子供啓発教育の活動

06建築文化週間事業

「集合!みんなはたてもの探偵団!」 再構成加筆:編者

1.概要

  これまでは、子供向け取り組みは教育機関ごとにばらばらに行われ、どちらかというとやっただけという感があっただけに、何かしらのアカデミックな支援が待ち望まれていた。そこへ、富山大学を中心としたaijが音頭を取り、市民・子供の啓発教育を地域連携で行った。aijの地域連携事業として、また大学が加わった連携事業として、啓発教育は富山では画期的なことであった。

企画においては、子供の頃から「たてもの」や「景観」等への関心を深めることを目的にし、地域の公民館や小学校の先生方の協力を得て、富山大学が中心となって支所の多様なメンバーとともに展開した。

見学場所や日時等はつぎのとおりである。

  第1回;05108()9:00-16:30

  高岡市平米公民館  参加20人程、スタッフ15人程 

2回;06107()9:00-16:30 

 高岡市ウイングウイング 参加34人、スタッフ16

2.第二回内容:地元の小学校から参加した総勢8チーム34人の小学高学年の子供たちには、「対になる言葉で説明できる2つの建物を探して撮影しタイトルを付けて発表する」という課題が与えられ、「たてもの探し」のため高岡市中心部から郊外に向かう「万葉線」の電車に乗って出発した。各チームには、安全確保と写真撮影補助のため、学会員と学生が付き添い、電車から見つけた気になる「たてもの」のある場所で電車を降りて写真撮影等を行った。

その後、子供たちは学生の協力を得ながら昼食時間も含め2時間程度のワークショップで写真やコメントを整理した後、チームごとに写真や説明文をスクリーンに写しながら一人ずつ発表を行った。

審査は、学会員5人が審査員となって、子供たちの発表力に感歎しつつ、着眼点のユニークさのほか、発表の楽しさや説得力、チームワークの良さなどを評価し、最優秀の1チームを選定した。なお、学生が作ったオリジナルトロフィーが優秀賞品として手渡された。



◆6.雪の研究活動

産官学民連携調査事業03,04年度

「積雪地域の住生活・住空間・まちの空間の伝統的知恵に関する調査」

1.概要

支所では研究者が少なかったために、aijのかわりに建築士会に所属する研究好きな実務家がその任を担い、雪荷重の問題や設計法などをてがけていたと聞いている。

時代が下ってようやく支所のメンバーが質的にも充実したことにより、研究体制が整った。0304年度には、北陸支部では北陸ならではの問題として「建築における雪の問題」を各地域においてしかも産官学民連携で研究することになり、富山でも調査チームを組織した。研究チームは大学2人、一般教員が1人、官庁が2人、民間技術者が2人の計7人である。

雪に関する伝統的な知恵や工夫の時代的変遷を探り、次の時代への反映という観点で現代の建築における雪処理の問題を扱うことにして、具体的には設計と材料の二点から論ずるとした。

前者については、伝統的な知恵を受け継いでもっている方々へ(公務店、設計者)アンケート調査を行った。そのあと、3人設計者には、今日的にそうした技術をどう展開してきているのか、ヒアリングしてデータをとった。

テーマ自体が地域連携を前提としているので、その意味は大きい。また地域連携することによって得られた成果は次のようである。

 1)雪に関する伝統的な知恵が収集できた。

2)雪に関する知恵を若手に伝えるデータを確保できた。特に、五箇山でのとりくみや現代の設計者の理念や方法をしっかりと記録できた。

2.内容

(1)アンケート調査

 アンケート用紙配布先は、アンケート協力者を事前に選出し、「設計事務所に80件、工務店に20件、行政などに20件の、計120件程とした。

 回答いただいた人は10(設計者6人、工務店2人、行政2)のみであり、回答率は1割弱であった。

(2)伝統的知恵や工夫の有無

 調査項目ごとに結果を表に記した。この表では、各項目の評価は選択肢番号⑤,⑥がほとんどであったので、それ以外の評価について評価番号と人数を記した。

間取

・構造

内外装材

軒先

屋根・

雪処理

芋小屋

地域ぐるみ

1

2

④1人  

2

2

2人 ②1

2人 ④3

③4人

2

②1人

 選択肢:①伝統的な知恵が今もそのまま残っている ②形は変わりつつあるが今も残されている ③昔はあったが今はない ④それなりの知恵がみられるが地域独特かは不明 ⑤伝統的知恵は見当たらない ⑥わからない

(2)雪の配慮の時代的変遷

地域の設計者3人にヒアリングして、雪処理に関する技術をどう展開してきたかを調べた。それによると;

設計者は住民の立場でこれまでの伝統的知恵を今日的に解釈して柱の寸法や、間取り、屋根形状、壁、雨とい、など設計に反映させている。

(3)材料関係は省略。



 


 


 


 


 


 


 

富山における地域との連携について、エッセイ109 

2014.06.26 富山における地域との連携について、109 

富山における地域との連携について 07.03

 建築学会の富山地区代表の方との連名で標記書き物をしレポートを書いたことがある。写真は省略して本文を紹介する。
■■■第一編

学協会富山ではもとより地域連携によって支えられている。標記題目かきものは活動の考え方の紹介や実践の報告とすることにした。第一編として種々概要を述べ、第二編として特徴的な取り組みを紹介する。

紹介の骨子は、(1)「地域連携とは多様な人々の結集であること」、(2)「富山ではごく自然に地域連携が行われていること」である。

なお本稿は、富山の公式文書ではなく、編者らによる個人レポートであり、独断と偏見が多分に入っていることに注意されたい。また文中では敬称略とした。

◆1.はじめに

 今またなぜ地域連携が叫ばれているのか。学術的な知的財産の創出だけではたちゆかなくなってきた昨今、知的財産の運用があってはじめて、学術が社会的に存在し活性化できることになる。建築学会(以後aijと称す)が「地域連携を」と強調するのも、次世代の活動と考えている結果とも取れ、今まさに地域連携を実践し始めている。aij北陸支部でも、これを重要な問題として捉え、本年(07)度北陸支部大会のシンポジウムで富山における活動を紹介する機会を与えていただいた。

 富山においては、富山大学に県内初の建築コースが設置された200510月を区切りとして、それ以前には当然のことながらaijは民間と官庁によって支えられていた。これが富山の特徴であり、それ以後も産官学民の連携がほかの地域よりも緊密であるといってもよく、連携の趣旨も実践も成果も大変ユニークなものとなっている。

◆2.       富山における知的貢献の状況

1.       概要

 富山において、地域連携のニーズがどれだけあるのであろうか。ニーズをつくりだしていくことも必要とは思うが、誰の何のためのニーズかがいつも定まっていないところに、「地域貢献や地域連携」といっても実効が今ひとつのようにも思う。ある団体が組織延命のために地域をキーワードにしているといったことは確かによく聞く。勿論富山においてはそのようなことはない。

 本題に戻って、富山ではそうしたニーズがどれ程あるかを探るために、各団体による講演会やシンポなどの開催状況、地域の文化育成状況などを調べることにした。

2.人的構成

 まず、建築系の人的構成模様を把握しよう。富山県の人口は110万人、総世帯数は37.7万世帯、建設業従事者(土木・建築)5.4万人である。建築系はその半分くらいであろうか。

 次に、団体ごとに加盟人数を記す。

建築士会2300人程、JIA57人程、JSCA20人程、建築学会180人程、新建築家技術者集団100人程、という構成である。他の団体は省略する。

3. 各団体の活動

各団体では、会員へのサービス、実務者へのサービス、    市民向け啓発を目的として、見学会や講演会、シンポジウムを行っている。2006年度における講演会やシンポなどの開催数は次のようであった。

建築士会12回、新建築家技術者集団12回、JIA6回、建築学会4回、事務所協会3回、JSCA0回。

分野別に見れば、それらのほとんどが講演会であり、街づくりが20%、すまいづくり20%、地震10%、というように、割合ソフトの話が多かった。

 なお、教育機関におけるものとしては、大学は公開講座など多く開催している。またその他の学校も時折市民向けの取り組みを行っている。

 

4.行政の有識者のとりこみ

富山県では有識者や市民から広く意見を聞いて行政に役立てるための審議会・委員会が設置されており、h17年末には146個の会があった。これらの委員会に、建築系の方々がどの程度委員になっているか、その中にaij会員はどのくらいいるか調べることにより、建築系に寄せられる期待の程度を知る。もちろんaij会員がaijを意識した委員会参加ではないことはいうまでもない。

審議会等は、知事政策室(系では)()、農水部27、管理経営部15、土木部13、生活環境部19、出納事務2、厚生部36、教育委員会16、商工労働部13となっており、このうち土木部には建築系5、都市計画系2、純建築系3個がある。建築系が食い込めそうな教育委員会系の一部をも含めて、建築系の委員数とその中に建築系人数とaij人数を記す。








 建築は社会性の強い体系であるにもかかわらず、関連部局でaij委員を出すので精一杯といった感がする。(他県とは状況が異なるが)aij人の占める割合も低い。このデータをみると、行政側に分野を超えた広がりで地域連携を進めることはなかなか難しいように思える。



5.研究次元の状況

 地域においては、住宅行政やまちづくりについてアカデミックな支援のニーズが高く、大学はこれに応える形で地域連携を進めている。aij富山支所としては、「地域のことは地域で」をモットーに、新生富山大学とともにaijとしての地域連携を図っていきたい。以下に、大学による地域連携について、これまでの取り組みを記す;

・滑川市や砺波市において、住宅マスタープランの策定などがあり、これに福井大学が参入している。

・富山市では、新幹線の富山乗り入れに合わせて岩瀬や八尾のまちを観光資源とするために、まちづくり事業が展開されており、これに東京大学(北沢研究室)や金沢工業大学(遠藤研究室)が参入している。



6.体系化や文化構築の状況

 富山において、建築の体系化や技術開発に向けて種々の取り組みがあり、代表的なものを以下に列挙する。その多くは建築士会によるものであるので、今後はaijメンバーが少なくとも監修といったようにリーダーシップをとっていきたいものである。

(1)富山の建築100選 80年代

 建築士会が中心になり、富山の名建築を100棟選んで、結果を単行本にして残した。

(2)住まいの遺産 013

 建築系の団体が連合して住まいに着目して県下の特に文化的素養のある建物を遺産として調査し、結果を単行本にまとめた。

(3)溶接技術向上(レ型溶接が定着)80年代

 中央ではレ型溶接が常識であった頃、富山では一般にいきわたっておらず、心有る設計家が多くの施工技術者に長きにわたり指導してもらちがあかなかった。そんなとき当時の建設省が音頭をとって県の行政指導によって初めてレ型溶接が定着した。

(4)雪荷重の検討 80年代

 富山独自の積雪荷重を決めるために、県が率先して研究調査を行った。

(5)雪に強い住宅 86.1 84.11

 雪に強い住宅について、県がモデルプランをつくり、一般に公開して市民を大いに啓発した。

(6)和合住宅のコンペ 80年代

 建築士会が実務者のセンスに期待して設計コンペを企画した。



◆3.支所の取り組み

1.支所の基本方針

 aijは会員相互の親睦ならびに会員サービスと地域貢献を図ることを目的として、特に95年より支所活動を充実・定例化させ、年間4本の枠組みを次のように設定した。

  ・講演会やシンポジウム。

  ・文化週間事業として見学会、ほか。

  ・交流会;懇親会、講演会と抱き合わせもあり。

  ・サロン;会員向け2030人規模での勉強会。

 なお、対象は会員ではあるが、建築系の非会員や一般市民にも門戸を広げている。



2.支所構成メンバー 

 メンバーは大学10数人、一般教育系10数人、官公庁20数人、民間100数十人ほど。民間には多くの会員を有する企業等は今はないが、一頃、官公庁に30数人、大手設計事務所に30数人、電力系に20数人、大手ゼネコンに20数人がいたころもあった。(07年現在総勢180)



3.地域連携

 地域連携として取り組みは、以下のようなものがある。富山ではこうした連携は、富山大学を中心に今後充実されていくものと思っている。

 共同研究 :技術開発、政策研究

調査・支援:災害調査、復興支援

 まち・すまいづくり:住マス策定、住宅政策支援

 文化財保護:保存運動

市民啓発 :人づくり支援など

 実務者啓発:人材育成など



◆4.地域連携をすすめるにあたりその背景

1.活性化の下地(富山の特徴)

aij94年頃より割合活発にすんなりと活動できた。それを可能にしたのは、下記に示す富山らしい特徴があったからである。

(1)地域連携のニーズが明瞭ならずとも、何かにつけて学術的な事業が求められている。

(2)富山は割合小さく狭くまとまっており、コミユニケーションが図られやすい。

(3)持ち家率ナンバーワンとして住まいには関心が高い。建築ということではないが、家はステータスそのものという捉え方が強く、他府県とはちがって住まいへの思い入れは格別である。



2.取り組みのポイント 

地域連携に際して、次の三つをポイントとして,取り組む側の姿勢を記す。

(1)地域連携は他の団体でも割合熱心にやっている。aijとして特徴的なかかわりをどこに見出すのか。

  → aijとして学術的な展開とメンバーの多様さで特徴を出す。

(2)aijとしては、すぐに市民とのかかわりを模索しているが、もっと実務者の力を借りたほうがいいと思うが。市民に向き合うのは圧倒的多数の実務者ではないのか。 → メンバーを広く活用,特に市民と向き 

合う実務者が実働の一翼を担う。

(3)地域連携というと、すぐに産官学の研究とか、民と学の連携によるまちづくりというが、その他にはないのだろうか。→ 市民の間に横たわる多岐の問題  

に対処する。

 

◆5.講演会と文化週間事業

1.講演会

(1)aijへの知的サービスに関するニーズには、実務者にとっては自己研鑽に役立つものや実益情報のものがあり、市民にとっては建築における問題について分かりやすい解説といったものがある。そこで、このようなニーズに応えるために、話題性の飛んだもの、地域特有のもの、最先端技術などをテーマに選び、そのテーマに関する第一人者を講師として招き、多くの方々を対象として年1~2回ほどの頻度で講演会を実施している。

 講演会の実施成果としては、情報提供や啓発などを可能にしたことがあげられる。いいかえれば「参加者がテーマに関して出会いをもったこと」ということである。

(2)これまでの事業を分類する。(数字は実施年を示す)

教育;建築設計者を育てるデザイン教育(05)

街づくりシンポジ(04)

都市;東京の建築模様(02)、ものづくり・環境づくり(00)

   市町村合併と都市再生(04)

保存;DNタワーの保存再生(01)、呉羽中学校(04)

建築生産・技術者;APECとグローバルスタンダード(01)

建築生産システムの健全化(06)

建築紛争(0304)

建築史;現代建築の潮流(99)、ライトと日本(00)

近代建築の意味(04)

縄文建築(98)、アンコールワット保存修復(06)

地震;阪神地震被害から学ぶ(95)、耐震設計の行方(95)

中越地震から学ぶ(04)、建築と構造の間(97)

(3)展覧会についても述べる。

巡回展:ウイーン市集合住宅展(94)DOKOMOMO近代建築展(03)

支部展覧会:卒業制作展(99,04)



2.文化週間

(1)建築学会建築文化週間事業は、全国9支部で地域貢献を目的に実施されている。このうち北陸支部事業については、90年代より富山支所が毎年担当している。もともと富山支所の活動には実務者やその他の多数の方々が積極的にかかわるという富山独自色があり、このため文化事業は、富山色に彩られ、地域への知的サービスを「多才な方々の多彩なテーマで多様に楽しむ」ことと位置づけて実施している。

(2)事業の特徴を列挙する;

1)文化事業は講演会よりも幅広い内容のものとなっているので、参加者は幅広い建築関係者に加えてその家族や一般市民といったように多様である。

2)テーマは、自然と触れ合うエクスカーション的なもの、古代ロマンを描くもの、街を含めた住まいの文化をたしなむもの、教育的視点のものなど、多彩である。

3)内容や実施方法について、特別に著名人を当てているわけでないので、世話側と参加者側が同格である。

4)成果としては、参加者が知的に楽しみかつaijを身近なものに感じたことに加えてスタッフ側も知的貢献に大いに満足し使命感をより強くもったことをあげたい。

これまでの取り組みを整理しておく。

・エクスカーション的見学、3回;

小矢部桜町の縄文遺跡(98)

立山山麓にある磯崎新建築・六角鬼丈建築他(99)

黒部峡谷にある山口文象建築他(00)

・街並み散策、3回;井波町のまちづくり(06)

   城端町の文化遺産(97)、五箇山の文化遺産()

・建物見学会、6回;長谷川逸子の児童館・学校(01)

博物館・谷村美術館・寺院(02)

吉坂隆正の中学校(04)、など  

・啓発教育、2回;

小学校高学年対象のまちづくりもの(05,06)



◆6.富山における重点活動

 これまで行ってきた講演会・シンポ・見学会などについて、それらを今日的な問題に整理し直して、特に重要な6個の項目に絞り、以下に概要を示す。なお、詳細は第二編をみられたい。

1.地震対応の種々活動

地震の専門家が富山に少ないこともあって、地震被害に関するシンポや講演会というと講師やパネラーはすぐに他府県の著名人と相場が決まっていたが、90年代から、支所が地道に力をつけて、自前で講師やパネラーを出すようになって来た。と同時に、啓発教育や地震被害調査にも地域貢献として実施できるようになった。もともと、メンバーが多様なだけに、取り組みは当然地域連携であり、最近では新生富山大学を核として、この種の動きが加速している。



2.建築生産システムを考える活動

県内に研究者が少ないだけに、余計に実務者の問題をクローズアップして、地域連携で企画を進めてきた。実際に扱った問題は、耐震偽装問題と建築訴訟問題である。いずれの問題も、建築の社会性が大きく問われたものであり、幅広い層における議論が問題解決に向けて必要と考えて実践している。

 

3.建築の歴史的評価活動

 富山には伝統的な古い民家や近代名建築など、文化的に価値の高いものが割合多く残っている。こうした建物は、建て替えとか取り壊しの憂き目に会うこともしばしばである。そのようなときにaijとしては、何故に保存かを根本的に検討するために、aijにふさわしい取り組みとして、学術的評価に加えて地域住民とのタイアップによる啓発とともに建築の価値を論じている。



4.まちづくり活動

  「まちづくり」については、(行政と地域が連携しているところに後発であるaijも加わって)aijならではの貢献をしたいと考えている。まちづくりを単に建築的な形態といった取り組みに終わらせることなく、生活環境の人間らしい復権といった原点に立ち返って、住民に対してどう連携していくべきかについても取り組んでいる。



5.子供啓発教育の活動

 明日の世界を背負ってたつ子供に健全なセンスを養うために、センス育成を念頭に置いた啓発教育を(人間教育の支援を兼ねて)実施している。

スタッフ側も教育関係者は当然のこと実務者や学生が多数結集し、子供中心に子供らしさを引き出しており、aijとしての貢献は大きいと考えている。



6.雪の研究活動

研究といえばすぐに最先端とか、ビッグプロジェクトといったものが連想されるが、富山では地域に根ざした問題を産官学民連携でことにあたっている。さしあたり、雪の問題をあつかっているが、今後は地震災害危険度など取り組んでいきたい。



7.まとめ

 富山地域に建築系の学科を有する大学がなかったことが、富山のaij活動そのものに地域連携としての性格がかね備わり、活動は地域連携そのものとなっている。このおかげで、地域貢献は計り知れないほど有益となり、地震の問題、技術者の問題、建築の評価の問題、街づくりの問題、子供啓発教育の問題、など、aijならではのアプローチにより多大な成果があったと思っている。

こうした富山発の活動が、今後の他支所・他支部・本部の活動に大いに参考になればと思う次第である。

 今後の地域連携の進め方としては、新生富山大学を核として、aijがどう活動していくかにかかっている。もちろん、地域連携はこれまでのものと様相が変わってくるであろうが、大学の事業の一環としたときでも、これまでの地域連携がさらに勢いづくと思っている。

 最後に、取りまとめに際して多くの方々にお世話になった。記して感謝申し上げます。



付録1.富山支所歴史概要

支所が80年代に誕生して、今日までを展望すると、時代を三つの期に分けることができ、各期においてそれぞれ特徴的に活動してきた。以下に簡単に記す。

1)第一期、19871992年 

城石支所長。

北陸電力、佐藤工業の時代を経て、三四五建築研究所、富山県庁が中心となって細々と活動。

2)第二期、19932004

  稲葉支所長・小林幹事長、秦支所長・白山幹事長。

 よろず集団(大学教員、民間技術者等が加わる)による活動で上昇気流にのる。

・第二期前期 19932000

  稲葉支所長・小林幹事長。活性化充実化途上期。

・第二期後期 20002004

  秦支所長・白山幹事長。継続、安定な活動。 

3)第三期 2005年~

秦支所長・竹林幹事長。

 富山大学中心に結集し、質・量とも充実した活動。 


審議会・委員会名

委員数

建築系

人数

aij

人数

水墨美術館運営委員会

10




 

近代美術館運営委員会

10




 

立山博物館運営委員会

17



環境評価技術審議会

13




 

都市計画審議会

23



開発審査会




建築審査会




景観審議会

16



建築士審査会




身近なアカデミズム、建築分野における地域にふさわしい学会の活動、エッセイ97

2014.06.11 身近なアカデミズム、建築分野における地域にふさわしい学会の活動、97

身近なアカデミズム------建築分野における地域にふさわしい学会の活動----- 95.11記

 身近なアカデミズムとして、建築分野の学会というものにスポットを当て、学会は市民の方々に知的サービスの面でも結構がんばっていることを紹介することにする。

 学会というと、会員の多くが大学の教員や大企業・官公庁の研究者で占められていることもあって、一般の方にとっては大変取つきにくく硬いイメージの最高学府の巨塔のように感じられるものである。建築の場合しかも某県の場合には、建築学科を有する大学がないこともあって、逆にそのような方々の会員は極めて少なく実務者がほとんどであるので、硬いイメージはないように思われがちである。しかし、残念なことにそれでも硬いイメージは払拭できず、学会は建築従事者にもあまり縁がないばかりか一般県民にとっては無縁の存在といって過言ではないように思える。
 事例を少し挙げると;学会の全国的な催し物(例えば巡回展や講習会)については、広区域では主要な都市にまわってきても、某県は素通りである。また、某県内でかかえる問題などの解決には東京や某県周辺の研究者に頼らざるをえない。街並み景観研究しかり、民家の研究しかり、防災問題しかり。
 しかしながら、このような状況に甘んじる事なく何とかしたいといった動きが学会の若手メンバー(教育関係、官庁、設計事務所)を中心に生じても不思議ではなかった。若手メンバーが中心になり、1993年には素通りするはずの巡回展(ウイーンの集合住宅展)が、続いて1994年には学会の広区域支部大会が某県で開催され、学会として少しずつではあるがようやく一般の建築従事者に対してもサービスが提供されるようになった。
 一般の県民に対しては、学会が果たす役割は例えば防災や街並などにあろうと考えられる。防災については阪神大震災についてのシンポや講演会が某県でいくつか催され、県民の防災意識の向上、行政への提言などが行われていたが、肝心の建築関係からのものではなく、急きょ建築サイドからの県民への知的なサービスとして今年5月に県民シンポジウム「阪神大震災に学ぶ。某県の防災」が某地域支所自前で開催された。また、9月には建築従事者を対象として参加者と最高権威者(岡田恒男東大教授)を招いての講演会「耐震構造の行方」をも開催された。
  某県の場合にはこうして変な権威主義のない実にフランクに学会が構成されており、例えて言えば地元の町医者および名医と都会の名医との協調で、県民にサービスができている。
今後については私自身、街並景観のように計画意匠や環境の分野のシンポジウムを企画し、建築間傾斜はいうにおよばず県民の皆様に対して、学会としてのサービスが必要と思われる。

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