Nikkeiビジネスオンラインより。
もう、政治は、組織票の時代ではないという当たり前の指摘ではあるが、なかなか、僕の考えに近い意見だと思ったので、転載。
***************
自民大敗、本当の理由
小泉改革路線に逆行する安倍自民を国民が拒絶
2007年8月7日 火曜日
参院選での自民党大敗については、既に年金問題、政治とカネ、閣僚の失言などいくつもの原因が挙げられている。だが、河野太郎・衆議院議員は根底にある本質的な敗因は、小泉改革の継承者であるはずの安倍政権と自民党が継承者としての責務を果たさず、むしろ逆行していることだと断ずる。「昔の自民党」に戻るなら、次の選挙も危うい。(聞き手は、日経ビジネス オンライン=谷川 博)
NBO 参院選は自民党の「歴史的大敗」となりました。年金の記録漏れ問題や「政治とカネ」の問題、閣僚の失言など様々な問題が重なり、自民党に激しい逆風が吹いた結果だと言われています。
河野 その見方は表面的です。自民党が参院選で負けた本質はもっと深いところにある。一言で言えば、安倍政権と自民党は小泉改革の流れに“逆行”しているということです。安倍政権は小泉政権の継承者であるはずなのに、やっていることは一昔前の自民党と何も変わっていない。そこに気づいた有権者が「ノー」を突きつけたのです。
「郵政選挙」と呼ばれた2年前の衆院選で、自民党は「歴史的大勝」を収めました。郵政民営化に象徴されるように、既得権益に鋭く切り込んだ小泉改革を国民が圧倒的に支持したからです。
官民を問わず、既得権益を押さえている組織や団体がそれに安住しているような社会構造は変えていかなければいけない。国民もメディアも、そうした小泉改革を圧倒的に支持したのです。今でも国民の多くはその改革の方向性を支持しているはずです。
ところが、今回の参院選で自民党は何をやっていたのか。
小泉改革がぶっ壊したものに再び頼った愚
例えば、青木(幹雄、前自民党参院議員会長)さんは「組織を引き締めて」とおっしゃっていたでしょう。この発言に象徴されるように、自民党の参議院は「組織や団体をいかに引き締めるか」といったことばかりを議論していました。
でも、もうそんな時代ではないんですよ。組織や団体は自民党のために動いてくれません。当たり前でしょう。既得権を持っていた組織や団体に対して、小泉改革は「既得権は認めない」と言って“ぶっ壊して”きたわけですから。
実際、無駄な公共事業を減らしてきたことで建設業協会は昔のように動かなかった。郵政民営化に反対していた「大樹(特定郵便局長OB会)」も全く動かなかった。医師会も同じです。高齢化で膨張する医療費の削減を進めてきたからですよ。比例代表で医師会が推していた武見(敬三、前厚生労働副大臣、日本医師連盟推薦)さんが落選してしまったことは、もはや組織では票を集められないことを象徴しています。
しかし、逆風と言われる中でも、世耕(弘成)や林(芳正)や山本(一太)ら、小泉政権時代から頑張ってきた若くて意欲のあるヤツらはみんな当選したんですよ。日頃、彼らは一般有権者にメッセージを伝え、そういう人たちの間に自分の支持者を少しでも増やそうと努力してきたからです。
そういう地道な政治活動をせずに、今さら“動かない組織”に頼ってそれを一生懸命に引き締めようとしたところに最大の敗因があったのだと思います。
いいですか、思い出してください。2年前の郵政選挙で自民党を大勝に導いたのは、既得権を持つ組織や団体ではなかったでしょう。まさに、一般有権者でした。だから、今回の選挙でも国民の多くが納得できるような政策を作って、それを一般有権者に向けて堂々と訴えていけばよかったんです。
厚労省に気を使う自民党政調の愚
NBO 今の自民党は一般有権者の方を向いていないわけですね。
河野 そうです。既得権を持つ組織や団体、それに官僚の方ばかり向いている。いずれも小泉改革が壊そうとしてきた相手じゃないですか。
今回の選挙で大きな争点となった年金問題への対応だってそうです。自民党は厚生労働省の言い分しか聞いてこなかったんです。だから、年金の記録漏れ問題が表面化した後も国民の怒りや不満を見誤った。
例えば、年金の記録漏れ問題に絡んで社会保険庁のずさんな業務実態が明らかとなり、政府も「社保庁を解体する」と言い出しましたよね。その時に、僕は自民党の政調(政務調査会)で「保険料を何に使うのか、使途を明らかにすべきだ」と繰り返し訴えた。そして、「保険料をその使途以外に使わないと明言しなければ、国民の信頼は得られない」と最後まで言い続けた。でも、最終的には「そんなことはできない」ということで片づけられてしまった。要するに、自民党の政調は厚労省に気を使ったわけです。
「挙党一致」で昔の自民党に逆戻りする愚
NBO 安倍首相が続投します。どうしたら安倍政権と自民党を立て直せますか。
河野 まず、安倍総理は今回の選挙で何が間違っていたのかをきちんと総括したうえで、改めて国民に政策の優先順位を明示する必要があります。
その際に総理の持論である憲法改正を上位に掲げてもよいのですが、先の通常国会で国民投票法が成立して今後3年間は発議ができないわけですから、当面は憲法改正を後回しにしてもよいのではないでしょうか。それよりも、年金や教育、労働など国民生活に身近で切実な問題に優先的に取り組むべきです。
また、国民の間では「閣僚の資質」を問題視する向きも多いわけですから、人事には早急に手をつけなければいけません。ただしその際に、「挙党一致」と称して、またぞろ派閥が前面に出てくるような人事だけは絶対に避けなければいけない。万一、そんなことになれば、それこそ昔の自民党への逆戻りです。それでは、国民の支持をさらに失ってしまう。
国民に向き合った政治に戻すこと。安倍政権と自民党を立て直すためには、これしかありません。
もう、政治は、組織票の時代ではないという当たり前の指摘ではあるが、なかなか、僕の考えに近い意見だと思ったので、転載。
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自民大敗、本当の理由
小泉改革路線に逆行する安倍自民を国民が拒絶
2007年8月7日 火曜日
参院選での自民党大敗については、既に年金問題、政治とカネ、閣僚の失言などいくつもの原因が挙げられている。だが、河野太郎・衆議院議員は根底にある本質的な敗因は、小泉改革の継承者であるはずの安倍政権と自民党が継承者としての責務を果たさず、むしろ逆行していることだと断ずる。「昔の自民党」に戻るなら、次の選挙も危うい。(聞き手は、日経ビジネス オンライン=谷川 博)
NBO 参院選は自民党の「歴史的大敗」となりました。年金の記録漏れ問題や「政治とカネ」の問題、閣僚の失言など様々な問題が重なり、自民党に激しい逆風が吹いた結果だと言われています。
河野 その見方は表面的です。自民党が参院選で負けた本質はもっと深いところにある。一言で言えば、安倍政権と自民党は小泉改革の流れに“逆行”しているということです。安倍政権は小泉政権の継承者であるはずなのに、やっていることは一昔前の自民党と何も変わっていない。そこに気づいた有権者が「ノー」を突きつけたのです。
「郵政選挙」と呼ばれた2年前の衆院選で、自民党は「歴史的大勝」を収めました。郵政民営化に象徴されるように、既得権益に鋭く切り込んだ小泉改革を国民が圧倒的に支持したからです。
官民を問わず、既得権益を押さえている組織や団体がそれに安住しているような社会構造は変えていかなければいけない。国民もメディアも、そうした小泉改革を圧倒的に支持したのです。今でも国民の多くはその改革の方向性を支持しているはずです。
ところが、今回の参院選で自民党は何をやっていたのか。
小泉改革がぶっ壊したものに再び頼った愚
例えば、青木(幹雄、前自民党参院議員会長)さんは「組織を引き締めて」とおっしゃっていたでしょう。この発言に象徴されるように、自民党の参議院は「組織や団体をいかに引き締めるか」といったことばかりを議論していました。
でも、もうそんな時代ではないんですよ。組織や団体は自民党のために動いてくれません。当たり前でしょう。既得権を持っていた組織や団体に対して、小泉改革は「既得権は認めない」と言って“ぶっ壊して”きたわけですから。
実際、無駄な公共事業を減らしてきたことで建設業協会は昔のように動かなかった。郵政民営化に反対していた「大樹(特定郵便局長OB会)」も全く動かなかった。医師会も同じです。高齢化で膨張する医療費の削減を進めてきたからですよ。比例代表で医師会が推していた武見(敬三、前厚生労働副大臣、日本医師連盟推薦)さんが落選してしまったことは、もはや組織では票を集められないことを象徴しています。
しかし、逆風と言われる中でも、世耕(弘成)や林(芳正)や山本(一太)ら、小泉政権時代から頑張ってきた若くて意欲のあるヤツらはみんな当選したんですよ。日頃、彼らは一般有権者にメッセージを伝え、そういう人たちの間に自分の支持者を少しでも増やそうと努力してきたからです。
そういう地道な政治活動をせずに、今さら“動かない組織”に頼ってそれを一生懸命に引き締めようとしたところに最大の敗因があったのだと思います。
いいですか、思い出してください。2年前の郵政選挙で自民党を大勝に導いたのは、既得権を持つ組織や団体ではなかったでしょう。まさに、一般有権者でした。だから、今回の選挙でも国民の多くが納得できるような政策を作って、それを一般有権者に向けて堂々と訴えていけばよかったんです。
厚労省に気を使う自民党政調の愚
NBO 今の自民党は一般有権者の方を向いていないわけですね。
河野 そうです。既得権を持つ組織や団体、それに官僚の方ばかり向いている。いずれも小泉改革が壊そうとしてきた相手じゃないですか。
今回の選挙で大きな争点となった年金問題への対応だってそうです。自民党は厚生労働省の言い分しか聞いてこなかったんです。だから、年金の記録漏れ問題が表面化した後も国民の怒りや不満を見誤った。
例えば、年金の記録漏れ問題に絡んで社会保険庁のずさんな業務実態が明らかとなり、政府も「社保庁を解体する」と言い出しましたよね。その時に、僕は自民党の政調(政務調査会)で「保険料を何に使うのか、使途を明らかにすべきだ」と繰り返し訴えた。そして、「保険料をその使途以外に使わないと明言しなければ、国民の信頼は得られない」と最後まで言い続けた。でも、最終的には「そんなことはできない」ということで片づけられてしまった。要するに、自民党の政調は厚労省に気を使ったわけです。
「挙党一致」で昔の自民党に逆戻りする愚
NBO 安倍首相が続投します。どうしたら安倍政権と自民党を立て直せますか。
河野 まず、安倍総理は今回の選挙で何が間違っていたのかをきちんと総括したうえで、改めて国民に政策の優先順位を明示する必要があります。
その際に総理の持論である憲法改正を上位に掲げてもよいのですが、先の通常国会で国民投票法が成立して今後3年間は発議ができないわけですから、当面は憲法改正を後回しにしてもよいのではないでしょうか。それよりも、年金や教育、労働など国民生活に身近で切実な問題に優先的に取り組むべきです。
また、国民の間では「閣僚の資質」を問題視する向きも多いわけですから、人事には早急に手をつけなければいけません。ただしその際に、「挙党一致」と称して、またぞろ派閥が前面に出てくるような人事だけは絶対に避けなければいけない。万一、そんなことになれば、それこそ昔の自民党への逆戻りです。それでは、国民の支持をさらに失ってしまう。
国民に向き合った政治に戻すこと。安倍政権と自民党を立て直すためには、これしかありません。