2009年08月

ルネ・ラリック/光 松本陽子・野口里佳

国立新美術館で標記展覧会を見ることができました。

ルネ・ラリック展は、これまでにない決定版ともいえる大規模なもので、工芸の魅力を再認識しました。展示品は当然のこと、展示や照明の工夫も興味深かったです。東京展は9月7日でおしまいですが、MOA美術館に巡回します。

光 松本陽子・野口里佳」は、世代も分野も異にする二人を光という大きなテーマの中でセレクションした展覧会。会場も分けられ、実質的には二つの個展という質と量を備えたものです。
松本陽子さんは好きな作家の一人ですが、アクリル絵具によるピンクのシリーズで一室が構成された部屋は圧巻でした。愛知県美の作品が広報のメインになっているのがうれしいですね。近作ではより物質性の強い緑の油絵具によって新しい試みが行われています。両者の間では味わいは異なりますが、物質性とイリュージョンの狭間で生起する絵画的空間の揺らぎが作品ごとに表情を異にし、視るものを惹きつけます。

約束を破る勇気

衆議院選挙の投票日が近づいてきました。

現在、大学や美術館を含め、日本のいろいろな分野で綻びが目立っています。特に年金や再就職を含めた従来の人生設計図が崩壊しかけているため、国民は不安にさいなまれています。現在の政治はそれに対して新しい展望を提示することができず、時代が変わり状況が許さないのにもかかわらず旧来の設計図を温存するほかなく、結果として無為に大きな出血を続けているようです。いずれ崩壊することは分かっているのに問題を先送りしています。現在60代の人くらいが旧来型の恩恵を被る最後だろうと薄々国民は感じているのではありますが。

いつもなかなか鋭い指摘と提言をしている池田信夫さんのブログによると、

政権交代は必要条件ではなく、約束を破れるリーダーが出てくれば、行き詰まりが打開できる可能性もある。カルロス・ゴーンが日産を再建したのは、「私はそんな話は聞いていない」といえたからだ。そのとき日産の幹部は「ゴーンさんのやったのは私たちが提案したこと。何をやるべきかは社員がみんな知っていた」といっていた。たぶん今の日本でも、国民は何をしなければならないかを知っているだろう。鳩山氏に必要なのは、約束を破る勇気だけである。

とあります。
今回政権交替が実現したら、ぜひ多少血を流しても、若い人が多少は希望が持てる抜本的な方向性を出してもらいたいものです。
社会の各所のリーダーにいかに暗黙の約束を反故にする勇気を植えつけるのか喫緊の課題のようです。



あいちトリエンナーレ2010 プレイベント展 放課後のはらっぱ

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標記の展覧会が始まりました。

副題は、愛知県立芸術大学で教鞭をとった−櫃田伸也とその教え子たち−で 、19人の教え子たちの作品が展示されています。展覧会についてまた別の日にまたお知らせするとして、今日は開会式とレセプションが知事さんの列席のもとで行われました。出席者は若い人ばかりで、さすが現代美術展という感じがしました。

芸文近隣のタイガーカフェでは奈良美智さんの音頭で2次会が行われました。名芸の教員の櫃田珠実さんは伸也さんの奥様でありますが、ご両人に教え子たちからソウル旅行券が進呈されました(写真)。弟子たちのスピーチも心温まるもので、櫃田さんがいかにリベラルで親身な教育をしていたかが窺われました。

 

躍動する魂のきらめき 日本の表現主義

yy名古屋市美術館で「躍動する魂のきらめき 日本の表現主義」が始まりました。

栃木、兵庫、岩手の県立美術館、名古屋市美術館、松戸市教育委員会の共同企画で、数年前から森仁史さんを中心に表現主義研究会を組織し、内容面の調査、研究の積み重ねの上に開催されたものだそうです。

「日本において表現主義が生起し、展開した流れを西欧概念の移植としてではなく、固有の必然に基づく開花だと把握し、提示しよう」とするこの展覧会は、「生命主義」をキーワードとし、その構成は、
 予兆
 表現1 生命主義
 表現2 影響と呼応
 表現3 生活と造形
 エピローグ
となっています。

洋画や日本画での表現主義的傾向はこれまでもかなり紹介がなされており、今回も萬鉄五郎や神原泰などが見どころになっています。今回の特色としては、写真、工芸、建築、デザインなども含めた広範な運動としてとらえているところが特筆されます。出品点数は関連雑誌などの資料類も充実して300点を超え、本格的な検証の試みといえます。さまざまな矛盾をはらみつつ近代日本文化が最も高揚した1910-20年代の美術に関心がある、あるいは深く知りたい方には必見の展覧会といえるでしょう。

またカタログも450ページを超える大部なもので、エッセイや文献表も充実しており今後の研究の出発点になるものです。それでありながら、洒落た装丁とデザイン、コラムを活用したレイアウトなどにより学術書臭さは見事に払しょくされています。

会期は10月12日までですのでお早めに。

うしろの正面

現在愛知芸術文化センターでは、あいちトリエンナーレ2010のプレイベントとして「うしろの正面―アーティストたちの誠実な遊戯」展が開かれています。親しみやすさのなかでいろいろ問題提起してくれる作品の数々です。

本学卒業生で版画、アートクリエイターコースの非常勤講師の松岡徹先生も出品されています(B2F)。ぜひご覧ください。

先日若木くるみさんのパフォーマンス(10F)に遭遇しましたが、すこぶるユニークなものでした。指定の日に開催されます。確認の上、ぜひご参加してみてください。

さらなるプレイベントとして、来週からは「放課後のはらっぱ」展(愛知県美術館、名古屋市美術館)、10月からは「長者町プロジェクト2009」が行われます。

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