100%再生可能エネルギー地域のブログ

ヨーロッパの各国、ドイツ、スイス、オーストリア、デンマーク、イタリアにおける再生可能エネルギー(新エネルギー、自然エネルギー)によって自立を目指す地域や自治体を紹介した本をより詳細に知るためのページです。

ミット・エナジー・ヴィジョン社では、南ドイツの市民エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社の日本語版ニュースレターの翻訳作成に協力しています。2016年秋号のニュースレターを下記に転載します。
写真付きのオリジナルは、下記リンクよりご覧になることができます。
ソーラーコンプレックス社のページへ

(以下転載)
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お金が萎むと希望が膨らむ?

 


最近では投資により良好な利子を得ることは
かなり難しくなっており、大きな額では罰則金をとられる恐れも出てきています。投資するお金を持つ人たちはこのことを嘆いています。しかし、この集団的に不慣れな経験にはポジティブな側面があり、ひょっとしたらそれは健康的ですらあるかもしれません。そういう挑発的なテーゼを提示させて頂きます。

 

プラス金利の時代にはお金が不思議な方法で増殖しましたので、「お金そのもの」を所有することが努力の対象になり、ほとんどの人がそのように行動していました。もっとお金を!というわけです。しかし現在の傾向としては、そもそも何のためにお金を所有するのかという問いが重みを増してきています。つまり、関心がお金という交換手段から、交換できるモノの方に移ってきているのです。仮想の媒体から現実のモノへ。例えば自分の家へ。

 

省エネ総改修や省エネ家電への投資は昔から有意義なことでしたが、ここに動機がもう一つ加わります:利子の付かない口座にお金を寝かしておきたくない、というものです。親愛なる皆さま、こういった押しがこれまで実際に欠けていたならば、今がその時です。皆さんのお金を手に取って、喜んで(!)有意義なモノゴトに投資しましょう。ひょっとしたら差し迫ったマイナス金利の力添えで、建物の省エネ改修率を恥ずべき1%から気候保全に必要な3%に上げられるかもしれません。私たちには省エネ改修を成し遂げるのに100年もの時間は残されていませんから。

 

現在の金利水準は、我々ソーラーコンプレックスにとって、もう一つの希望をもたらすものです。それは、控えめな利回りの投資先が魅力的になるというものです。数年前までは侮蔑的に笑われていた投資先が突然、非常に魅力的なものになっています。私たちの利回り3%のゲヌスシャイネ(受益証券の一種)がその一例です。ここに払い込まれた資金は、口座に一時的に置かれるものの、寝かせることはせず、地域内の具体的かつ実在する有意義なプロジェクトに投入されます。

 

皆さんは、このようなものの見方を不愉快に思われ、ナイーブだと思われるかもしれません。しかし互いに正直でありましょう:お金は、これまでにも十分にありました。ただそれは非常に不均衡に分配され、大半が間違ったモノゴトに投資されてきました。ですから、この金利の切れ目を考え直すきっかけにしようではありませんか。

 

ソーラーコンプレックスなご挨拶と共に

 

フローリアン・アルムブルスター、ベネ・ミュラー、エバーハルト・バンホルツァー


ウィンドパーク・フェレーナフォーレンを着工

コンスタンツ郡では現代風車を用いた初のウィンドパークの実現が近づいています。着工式にはこの事業に参加する11の地域エネルギー企業と、自治体テンゲン市の市長であるマリアン・シュライアー氏、そしてヴィークス地区のガブリエーレ・ライヒェナウアー区長が参加しました。運転開始は2017年第二四半期の予定です。将来的な発電量は年約2千万キロワット時です。現在は基礎工事が進行中です。

 

ウィンドパーク・フェレーナフォーレンのウェブサイトへのリンクはこちら


 

フェーリンゲンドルフ村の地域熱供給網

フェーリンゲンドルフ村(シグマリンゲン郡)では、NRS社初の地域熱供給網の建設作業が進行中です。NRS(シグマリンゲン地域熱供給)は、ソーラーコンプレックス社とシグマリンゲン都市公社が共同で設立した会社です。96日に総工費250万ユーロの同プロジェクトを着工し、2017年の夏までに竣工します。地元の再生可能エネルギーにより、ほぼ自給する村がまたひとつ増えます。配管工事と並行して、高速インターネットのケーブル管の敷設が行われますので一石二鳥です。

 

バイオエネルギー村フェーリンゲンドルフ

 


リッケルスハウゼン村のソーラーパーク、拡張後の運転が好調

 

リッケルスハウゼン村のゴミ埋立地後にある既存のソーラーパークの拡張設備(2.6MWの追加)は530日に発電を開始し、好調な運転状況です。815日までにすでに100万キロワット時以上を送電しました。これにより最終工期の施設が、同パーク内にある複数の工期の施設のうち、もっとも発電量が多い設備になっています。

 

ソーラーパーク・リッケルスハウゼンについて

 

 

ゲヌスシャイネ(受益債権の一種)のパンフレット更新

 

連邦金融監督所の規則に従い、私たちのゲヌスシャイネのパンフレットの有効期間は1年となっており、毎年更新が必要です。数日前に金融監督所より新しいパンフレットが許認可され、印刷が仕上がったところです。今後もご存じのコンディションでゲヌスシャインを発行することが可能です:一口3000ユーロにて、「晴れ晴れ3%」の固定金利が付きます。最短償還期間は3年間です。

 

ソーラーコンプレックス社のゲヌスシャインネについての情報はこちらから

 

 

日本語刊行物のダウンロードリンク

 

ドイツのヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所の発行による冊子「都市エネルギー公社の新設と再公有化」が、日本語に翻訳されました。この翻訳は、ソーラーコンプレックス株式会社のスポンサリングにより実現したものです。下記のリンクから、冊子のPDFをダウンロードすることができます。

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 

 

ソーラーコンプレックス社の視察案内

 

ソーラーコンプレックス社では、専門従業員により、ソーラーコンプレックス社のプロジェクトへの視察案内を行っています。省エネ建築、バイオエネルギー村、風力発電等。お問い合わせに応じて、具体的なご提案とお見積もりを作成致します。お問い合わせは、担当者Jutta Gauklerまで。: gaukler@solarcomplex.de

 

 

ソーラーコンプレックス社のニュースレター日本語版は、ミット・エナジー・ヴィジョン社との協力により実現されています。


※今日はミット・エナジー・ヴィジョン社のメールニュース2016年年末号を転載します。

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皆さま、ご無沙汰しています。南欧州も黄金の秋(Goldener Herbst)が終わり、いよいよ冬が到来しました。今年はとりわけ秋が暖かく、夏から一気に冬に突入という急激な冷え込みがなかったためか、例年以上に美しい紅葉、農村風景が見られました。

ただし、夏からの雨量不足は深刻で、川や湖の水位も低いまま、今年は本当に農家の方々は大変だったと思います。一方の日本では秋の日射量が不足し、長雨や台風に見舞われて農家の方々も大変だったと聞いていますが、このような気象の激しさはますます猛威を振るって来るのでしょうね。また、雨量不足が続くと森林のストレス増加も心配になります。

そんなタイミングであっても、日本では気候温暖化対策に対しての優先度合いは低いままのようで・・・パリ協定では完全に出遅れた形となってしまいました。

さて今回も、MITメンバー3名から、皆さまにコラムと各種の告知についてメールニュースをお送りします。今回は、村上滝川池田という順で告知を挟みながらコラムを書いています。最後までお楽しみください(村)。


MIT:村上
電気自動車と「セクターカップリング」

201610月には、ドイツ連邦参議院において、「2030年以降は、ドイツにおいてガソリンエンジン、およびディーゼルエンジン自動車の新車登録を禁止にして、電気自動車のみにするべきだ」、という推奨される政策の方向性が打ち出されました。これをもって、すぐに「2030年以降ガソリン車禁止!」というニュースが世界を駆け巡りましたが、もちろん、禁止を謳う法案が可決したわけではないので、まだまだこの先、どうなるのかは分かりません。

ただし、ドイツを含めて多数の欧州の国々、アメリカ、中国やインドなどの巨大な新興国では、20202030年ぐらいの間に、社会の車交通を電化する方向性を打ち出すようになっています。

それでは、なぜそのような事柄が政治的なテーマとして取り扱われるようになってきたのでしょうか? それは、再生可能エネルギーの推進、そして気候温暖化対策と無縁ではありません。

このような方向性を打ち出してきている国のほとんどすべてでは、電力供給における再生可能エネルギーの割合の急増を政治的なテーマとしています。その理由は国によって様々ですが、
・化石燃料を使用し続けることによる経済リスクと政治リスク、地政学的なリスク(石油をめぐる戦争や資源量の枯渇に向かう際の価格高騰など)
・気候温暖化対策、大気汚染浄化対策
などが大きなものだと思います。

ただし、近年、太陽光発電や風力発電による発電原価が510/kWhを大きく下回る事例などからも明らかなように、もっとも経済的な電力が再生可能エネルギーになりつつあることへの対応であるともいえます。

ドイツでも電力消費における再生可能エネルギー割合は増加を続け、今では1/3を超えています。相変わらず15%の壁を打ち破れず、この先もそれほど上昇の見込めない熱供給における再エネや5%以上はバイオ燃料を供給しようがない交通部門における再エネとは、電力部門は一線を画すようになっています。

そこで、社会全体を再エネ化するためには、電力部門における再エネ割合の増強をより一層推し進め、再エネ電力を、高効率ヒートポンプで熱部門へ、電気自動車によって交通部門へ波及させてゆこうという「セクターカップリング」という思想が、学術界だけでではなく、産業界、政治の世界にも大々的に進出してきています。

ガソリンやディーゼルエンジンの自動車の熱効率は、平均的な使用のケースで1520%程度です。ハイブリッド車であっても、熱効率はせいぜい35%程度で、40%には届きません(残りは大気に熱として捨てられます)。それに対して、電気自動車の熱効率は、インプットされる電気を100とすれば、熱効率は7080%にも到達します。

しかし、日本の場合は、熱効率3540%程度の火力・原子力メインで発電をしていますから(つまり60%のエネルギーは排熱として海に捨てられる)、0.4×0.728%、あるいは0.4×0.832%とハイブリット車と電気自動車の熱効率、あるいは環境性能は変わることがありません。

ただし、ドイツでは製造・設置・廃棄・リサイクルで投入エネルギーに対して、発電で得られるエネルギーが10倍以上の太陽光発電、100倍以上の風力発電メインで電力の1/3がすでに作られ、将来的にはそれで大部分を賄うことにしているため、電気自動車の推進が大幅に排熱をカットする省エネも兼ねた理にかなった政策になるというわけです。

とはいえ、伝統的に高度な技術力を必要とする内燃機関でビジネスをしている自動車産業界は徹底抗戦をする構えです。赤字経営に陥り、分社化などを余儀なくされた電力大手の事例と同じく、既得権益にしがみつく産業は滅ぶだけと私は考えていますが、さて、この先が楽しみですね。


!お知らせ!
★MIT
の募集型視察・セミナー20176月についてのご案内

ミット・エナジー・ヴィジョンでは来年度、下記の日程で募集型での視察・セミナーを企画しています。

201766日(火)ドイツ着~11日(日)ドイツ発(フランクフルト空港発着予定)

メインテーマ「ポストFITの再エネ事業」

ドイツでは小型PVを除いてFITが終了し、FIPへ意向が完了しており、2017年からはFIP&入札制度へと移行します。そんな社会の中で、

・太陽光発電事業の次のステップ
(自家消費モデルの躍進)
・熱コントラクティング事業
2016年からのコジェネ法の改正、再エネ法の新指針によって、電力の自家消費をよりアクティブに活用する熱供給の数多くの新しいビジネスモデルが登場しています)
・電力と熱と交通のセクターカップリング

などにかかわる法制度、新事業やビジネスモデルの制度設計、進捗中の新しいプロジェクトなどについて視察とセミナーの機会を提供したいと考えています。

参加をご希望の方は弊社にメールでご一報ください。年内などいち早くお申込みの場合には、視察・セミナープログラムにご希望を反映させることが可能です。具体的な訪問先、プログラムなどは年が明けてから決定させていただきます。
info@mit-energy-vision.com


MIT:滝川

原発寿命についての国民投票

スイスは紅葉も終盤、朝には地表に霜が降りる季節となりました。そして11月末には、再び国民投票・住民投票の週末がやってきます。

直接民主制のスイスでは、年に4回ほど国民・住民投票が行われますので、常に何らかの投票前の賛否キャンペーンが進行している状態です。住民も、毎回真剣に考えようとすると結構大変ですので、普通は関心のある案件しか勉強しませんし、特に国民が発議するイニシアチブ案については、良く分からないことは否決しておくか、指示政党の推薦に従う人が多いようです。

自治体や州のレベルの身近なプロジェクトや法律に関しては、直接民主制は有意義に機能していると感じます。しかし、国のレベルでは投票案件を理解し、大量の情報から賛成派と反対派の論点を吟味して判断することは、国民投票に慣れているスイス人であっても困難です。特に国民が発議するイニシアチブ案は可決されることは稀で、環境・エネルギーヴェンデ系の法案もその例に漏れません。

特に環境・エネルギーヴェンデ系の投票では、既得権団体であるスイスの経団連や産業連盟が高額な否決キャンペーンを展開してきます。住民を不安にさせ、自由・お金が失われると脅すのが特徴です。9月には地球一個分の資源消費の国作りを求める国民イニシアチブ法案「緑の経済」が投票されましたが、投票一月前には60%の支持率であったのに、ネガティブキャンペーンが功を奏して否決されました。

そんなスイスで現在、非常に激しい投票前論戦が進行中です。11月27日に、原発の寿命を定める国民イニシアチブ法案「計画的脱原発」が投票されるためです。原発の運転終了年が明確化されているドイツと異なり、スイスの脱原発には運転終了年が存在しません。この国民イニシアチブ案は原発の寿命を45年に制限することを求めるものです。というのもスイスにある5基の原発のうち3基が、運転開始から既に45年前後になっており、原子炉素材の劣化等が深刻な問題になっているためです。

賛成を支持する多くの市民や団体が、これまでにないほど頑張って(かなりの資金を投じて)賛成キャンペーンを展開しています。新聞・ネット上では読者の声の欄で毎日のように意見が戦わされ、テレビやイベントでの討論も盛んです。もちろん大手電力と産業連盟を中心とした反対派は、より潤沢な資金を投じて保守派新聞や業界新聞で毎日のように脅しのメッセージを送っています。そこでは未だにブラックアウトや経済の大混乱、石炭輸入電力が増えるといった昔から変わらぬ主張が広げられています。

世論調査によると、現在、スイス人の56%が「計画的脱原発法案」に賛成だそうです。一般的には厳しい数字です。しかし、今回の投票について希望があるのは、反対勢力の主張が明らかに破綻しており、そのことをメディアも積極的に取り上げている点です。例えばスイスでは今、2基の原発が安全上の問題により長期間に渡り運転停止されており、この冬も稼働できません。現実に投票法案よりも多くの原発が止まっていますが、大混乱は起きていません。再エネ・プロジェクト数も十分にあります。

そのような中、私は外国人ですので投票はできないのですが、微力ながらスイスの人たちがこの法案に今度こそ賛同して、自らの国土と生命、経済を守ってくれることを願い、できる限りの活動・支援をしているところです。そういう意味で、直接民主制は実にはらはらさせられる、住民のエネルギーを消耗する制度であると身に染みて感じる今日この頃です。


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★100
%再生可能エネルギー地域のブログ

100%再生可能エネルギー地域のブログ」では、新エネルギー新聞(新農林社)の了承を得て、同誌に掲載された滝川執筆のニュース記事の一部を転載しています。下記リンクからご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/eunetwork/


MIT:池田
地元のスキー場が閉鎖された

10日ほど前にはシュヴァルツヴァルトの標高1000メートル以上のところで雪が降りました。我が家の車も冬タイヤに履き替え、先週日曜日には、隣町の毎年恒例の中古スキー市で、3人の子供のスキー道具を揃えました。成長期にある子供で、1~2シーズンしたらサイズが合わなくなるので新品などもったいない。上の子のお下がりか中古で十分。

南西ドイツシュヴァルツヴァルトは、標高1000メートル前後の山が連なる地域で、気候は日本の東北地方と同じくらいです。ドイツのスキーの発祥の地で、ディーター・トーマやスヴェン・ハナバルト、マルティン・シュミットといった有名なジャンプの選手を生み出しています。アルプス地域のような大きなスキー場はなくて、ほとんどがリフトが2つか3つくらいの小さなスキー場です。

私が住むフライブルク市近郊のヴァルトキルヒ市には、標高約1300メートルのカンデルという山があって、そこにもTバーが2つの小さなスキー場があリます。家から車で山を登って20分くらいなので、仕事の合間とか、ちょっとした空き時間に回数券で2時間くらい子供と滑って帰ってくる、ということができるところです。

そこが、今シーズンから閉鎖になってしまいました。市所有のスキー場で、ここ12年間、市の財政難を受けて、地元の2つのスキー団体が市から施設を安く賃貸して運営していました。スキーが好きな市民の多くのボランティアによって支えられていました。しかしここ数年は、温暖化の影響か雪が少なく、特に昨年は、一番稼ぎ時のクリスマス・新年にほとんど雪がない、という事態でした。2 つの市民スキー団体は、今年にあった5年ごとの市との賃貸契約の更新を、経営リスクの観点で断念してしまいました。安くアットホームなスキー場でしたので、残念です。

シュヴァルツヴァルトには、たくさんこのような小さなスキー場があるのですが、同じような経営の問題を抱えています。そしてそれを解決するために、過去10年あまり、人工降雪機(スノーマシーン)が導入されています。水と空気を使って雪を人工的に作る機械ですが、大量のエネルギーが必要になります。普通サイズのマシンで1時間あたりおよそ1000 kWhの電気が必要になります。1000kWhというと、家庭の1人あたりの「1年間」の電力消費量です。また水は、河川や湖、溜池から取水されるのですが、大量の水が一気に取水されるので、河川や湖や池が凍り易くなり、生態系に大きな影響を与えてしまうことが、環境保護団体から懸念されています。

我が家も昨シーズンは、裏山カンデルのスキー場に雪が少なかったので、1時間ほどのところにあるスノーマシンを備えた別のスキー場によく通っていたのですが
今シーズンはスノーマシンが必要ないくらい雪がたくさん降ってくれることを祈ります。


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ソーラーコンプレックス社による日本語ニュースレター

ミット・エナジー・ヴィジョンでは、南ドイツの市民エネルギー企業ソーラーコンプレックス社が発行するニュースレターの日本語版の作成をサポートしています。同社の活動は、日本で地域密着の再生可能エネルギー事業に取り組む方々にも参考になると考えます。下記リンクに、間もなくニュースレター秋号がアップされます。
http://www.solarcomplex.de/aktuell/newsletter.html


今回のメールニュース、いかがでしたか? それでは、次回もお楽しみに!



新エネルギー新聞(新農林社)に国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞2016年10月3日第62号より転載】




スイス:農家による地域熱供給事業

~糞尿・残渣バイオガスと木質バイオの組合わせ

 

スイスでは、最終エネルギー消費の5割以上を熱分野が占めている。熱分野の再エネ率はまだ2割程度であるため、温暖化防止政策やエネルギー政策において、熱分野の省エネ化と再エネ化は最も重要な対策分野とみなされている。熱分野の再エネ化については、熱消費密度の高い地域では地域熱供給を行うことが効率的であり、実際に都市部だけでなく農村部でも数多くの地域熱供給網が運転されている。

 

こういった地域熱供給の事業者は、自治体や自治体のエネルギー公社である場合が多いが、民間の地域企業が実現・運営する施設も少なくない。主に製材所や工務店、そして農家などが業務で生じるバイオマスを利用して、敷地の一部に設けた熱供給施設から周辺地域に熱販売を行うというケースが典型的である。

 

ウンターブック農場~ミュラー家の場合

そのような例のひとつが、北スイスの人口5000人の自治体タイインゲンにあるウンターブック農場である。3代目の専業農家であるミュラー夫妻が運営する同農場では、100㌶の農地で年1000㌧のジャガイモと400頭の肉牛が生産されている。若く、企業家精神旺盛なミュラー夫妻はエネルギー事業に進出すべく2006年から準備を重ね、2012年にミュラー・エネルギー社を設立。以来、発電および熱供給事業を農場で行ってきた。

 

「きっかけは天候や農業政策に左右されない事業の柱をひとつ作ることでした」と、共同経営者のアンドレア・ミュラー夫人は語る。

 

2012年にはまず、地元の間伐材チップを用いた地域熱供給を開始した。熱供給事業に豊富な経験を持つ地元のエンジニア事務所が夫妻のコンサル役を担い、出力550㌔㍗のチップボイラー1台と8・5万リットルの蓄熱タンク、熱供給管などが設置された。

 

続いて2013年には、納屋と住宅の屋根に211㌔㍗の太陽光発電を設置した。その際に、買取り制度の適用を受けることができなかったため、太陽光からの電気は市場で売電し、環境的な付加価値(グリーン電力証書)を隣町のエネルギー公社に販売している。

 

そして2015年には、念願のバイオガス・コージェネの運転が開始した。発電出力は130㌔㍗で年1300㍋㍗時を生産し、買取り制度を利用して売電している。発熱出力は175㌔㍗で、今日ではこの熱が地域熱供給の大部分を担うようになった。

 

農家から200世帯と4企業に高効率な熱供給

ウンターブック農場から最寄の住宅地や産業地帯までは、道路を挟んで200㍍ほど。熱供給事業を行うには恵まれた立地である。熱供給事業は、当初、長さ600㍍の熱供給網を介して21世帯に暖房・給湯用の熱を供給することからスタートした。その後、段階的に顧客数を増やし、供給網を延長していった。現在は2400mの熱供給網を介して、200世帯と4企業に熱供給を行っている。熱供給契約の期間は25年なので、2038年までの確かな収入源である。

 

ミュラー夫妻は初め、地域の顧客対象となる世帯に個別に手紙を書き、営業を行っていった。地域での知名度や信用も上がった今年には、大手銀行クレディスイスが施主となる集合住宅地がミュラー夫妻の地域熱供給網に接続した。

「先方が決意した論点は環境的な付加価値でした!価格割引を要求されることもなく、とても前向きに交渉が進みました」と、ミュラー夫人は語る。

 

この地域熱供給施設では、夏の間はバイオガス・コージェネの排熱のみで熱供給を行い、暖房シーズンが始まり熱需要が高まると、チップボイラーが追加で稼働する。また、熱需要が少ない夏には余った排熱を利用して、地元の木質バイオマス販売業者の薪やチップを乾燥する事業も行っている(写真3)。スイスの買取り制度では、バイオガス発電からの排熱の70%以上を利用することが良好な買取り価格を得る条件となっているため、徹底した排熱の活用・販売に力が入れられているのだ。現在の排熱の利用率は、夏の間は7割、冬は100%となっている。

 

エネルギー作物を使わない発酵資源

スイスでは、農地で作ったエネルギー作物を、バイオガスの発酵原料とすることが許されていない。そのため、ウンターブック農場のバイオガス設備では、糞尿と残渣といった廃棄物を発酵原料としている。自家農場からの家畜の糞尿が年5000~6000㌧。これに収穫残渣や緑肥、近所の製粉工場のもみ殻や養鶏場の鶏糞など年8000㌧を混合したものである。発酵残滓は、液肥として自家農場や近辺の農家の畑に撒き、年200㌧の化学肥料を節約することに繋がっている。

 

同農場のバイオガス設備の大きな特徴は、発酵炉や発酵残滓、バイオガスのタンクを地下に埋設している点だ。それにより、周辺からは発電建屋以外の施設は見えず、臭気もまったくない。住宅地に近い施設ということで、景観や臭いには細心の注意が払われている。発酵炉を地下化することには別のメリットもある。地上型設備よりも熱損失が少なくなり、発酵炉を温める熱を節約できるという点である。その他、ガスタンクの温度が通年して安定するので、ガス品質を良好に保つことができるという。

 

助成金に頼らない事業計画

ミュラー夫妻が実現してきたこれらのエネルギー事業は、バイオガス発電が買取り制度を利用している点を除いては、一切助成金を得ずに建設、運営されている。自力での経営を成立させるために、上述した排熱の徹底利用など様々な努力が積み上げられている。そんなミュラー夫妻の将来のビジョンは、タイインゲン村を100%再生可能エネルギーにすることだ。

 

少なくとも熱分野については、次のステップが見えてきている。現在、タイインゲン村にある既存の地域熱供給網をウンターブック農場が引き継ぐ交渉が、自治体との間で進められている。既存の古い熱源を交換する代わりに、ウンターブック農場の熱源に接続するという意味だ。これが決まると、学校と50世帯が新たな顧客に加わる。そうなるとピーク時需要の供給を保証するために追加のチップボイラーの設置が必要となる。ミュラー夫妻のエネルギー事業は今後もまだ拡張してゆきそうだ。

 

ウンターブック農場は、経営能力の高い農家が、食物とエネルギーの生産を両立させ、地域にバイオマス資源の循環がもたらした好事例である。(滝川薫)

 

 

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ウンターブック農場の全景。左側が地下化されたバイオガス発酵炉の設備。右側が住居と納屋。熱供給設備は納屋の一部にある。建物の屋根は太陽光発電で覆われている。
©www.unterbuck.ch


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ウンターブック農場からタイインゲン村の住宅地や産業地帯に熱供給管を埋設する様子。
©www.unterbuck.ch

 

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バイオガス・コージェネの夏の排熱を活用した薪とチップの乾燥設備。
©Takigawa/Wassmann

 

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(上)発酵原料を混ぜるミキサー。地下化された発酵炉の上に設置されている。
©Takigawa/Wassmann

 (下)ウンターブック農場のバイオガス発電機。排熱は地域暖房網の主要な熱源として用いられている。熱需要の高まる暖房期にはチップボイラーを併用している。©Takigawa/Wassmann






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新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞2016年8

月8 日第58号および8月22日第59号より転載】

ドイツ:再生可能エネルギー法改訂 ~ 再エネ業界、さらなる縮小への懸念も

 

ドイツの連邦議会は7月8日、再生可能エネルギー法の改訂を可決した。これにより、野立て太陽光だけでなく、来年からは風力とバイオマス発電も入札制度に移行する。2年前の改訂に続き、再エネ電力増産にさらなるブレーキをかける本改訂の概要を、ドイツの再エネ業界の視点を交えて紹介する。

 

●2014年の改訂を振り返る~スピードダウンと大手主体への誘導

まずはじめに今回の再エネ法改訂の基盤を成す2年前の改訂を振り返ってみよう。

ドイツでは2000年に施行された再生可能エネルギー法により、市民や地域密着の中小の事業体が主体となった、ダイナミックな再エネ電力の増産が引き起こされ、電力消費の33%を再エネが担うようになった。しかし2014年の再エネ法改訂では、この急速な発展にブレーキをかける様々な仕掛けが導入された。大手電力や石炭・褐炭発電業界の影響を強く受けたメルケル政権の目標は、2025年までに再エネ電力の割合を45%以下に抑えることであり、これまでの増産スピードではこの上限を超えてしまうからである。

 

そのため前改訂では、風力、太陽光、バイオマスについて、低い増産目標量(上限量)を導入。そして設置量が目標を上回ると買取価格が低下する仕組みを取り入れた。そして100㌔㍗以上の発電設備には直売を義務化し、フィードインプレミアム(FIP)に移行させた。また野立て太陽光(10㍋㍗以下)については入札制度を導入。これまでに4回、625㍋㍗分の入札が実施されている。さらに、太陽光発電などの10㌔㍗以上の発電設備からの電力を自家消費する場合には、課徴金の一部が課金されるようになった。

 

こうした事業環境の不安定化・複雑化の結果、昨年の新規設置出力は太陽光が1・43㌐㍗、バイオマスはわずか101㍋㍗と低調で、今年も改善する見込みはない。太陽光は目標を1㌐㍗も下回ってしまった。唯一、陸上風力は比較的好調で、目標を上回る3・6㌐㍗が建設された。また野立て太陽光の入札制度では、予想されていた通り、資本力の大きな企業が強く、市民エネルギー協同組合は入札量のわずか0・22%しか落札できていない。これまでドイツのエネルギー大転換を支えてきた市民エネルギーが入札制度により排除されていく構図が具現化してきた。

 

●2017年の改訂~750㌔㍗以上は入札制度へ

このような中、今回決定され、2017年から実施される改訂の内容は、連邦経済エネルギー省によると、次の三つの根本方針に基いて策定されている。①コスト効率の高い増産、➁入札におけるプレイヤーの多様性確保、➂増産目標の順守、である。一番大きな特徴は、750㌔㍗以上(バイオマスについては150㌔㍗以上)の設備の入札制度への移行である。つまり風力やバイオマス、大型の屋根置き太陽光も入札制度に移行し、増産量の80%が入札の管理下に置かれる。その際に、後述する対策により市民エネルギープロジェクトにも配慮するという。

 

各分野ごとには、次のような改訂の概要になっている。

・風力:陸上風力は、来年から2019年まで年2・8㌐㍗が入札にかけられる。これには古い機材のリパワリング出力も含まれる。その際、系統容量がひっ迫していると定義される地域については、新設を2013~15年の平均設置量の58%に制限するという項目が入れられた。 2016年末までに建設許認可を得た設備に関しては、これまでの買取制度が適用される。洋上風力については目標は変わらず、年2030年までに設置出力を15㌐㍗に増やす予定だ。

 

・太陽光:大型太陽光は年650㍋㍗が入札にかけられる。全体の設置目標は年2・5㌐㍗だ。750㌔㍗以下の設備では、これまで通りFIP(100㌔㍗以上)かFIT(100㌔㍗以下)を利用したビジネスが展開できる。「これに関して業界はほっとしています。屋根置き太陽光の大部分が入札へのシステム転換の影響を受けずに済んだことは良いことです。」と、ソーラー経済連盟の事務局長カルステン・ケルニッヒ氏はコメントしている。

 

・バイオマス:2019年まで年150㍋㍗が入札にかけられる。新規設備だけでなく、古い設備の10年間の系統接続延長に関しても入札に参加することが可能だ。入札では、電力需給状況に応じたフレキシブルな運転を行うことが条件となった。今後は常時発電するのではなく、風力や太陽光の発電量が少なく、発電需要がある時に発電せよという意味である。

 

●業界からの批判の声

今回の再エネ法改訂は、前改訂により引き起こされた分散型再エネ増産へのネガティブな影響をいっそう強める「再エネ阻止法」であるとして、主要な再エネ業界や環境団体は準備の段階から改善を求めてきたが、残念ながら大きな効果はなかった。これらの団体が強く批判するのは特に下記の点である。

 

・2025年に再エネ電力45%という目標設定: そもそも目標値が低すぎて、ドイツが署名したパリ協定の目標との整合性が取れていないという批判だ。環境団体グリーンピースのレポートによると、ドイツがパリ協定の目標を満たすためには電力分野は2030年以前に100%再エネを達成する必要があるという。特に再エネ電力は、熱分野や交通分野においてもCO2削減の鍵となる要素である。よって温暖化政策の視点からは、再エネ電力の増産と脱石炭・褐炭は大幅にスピードアップさせる必要がある。

 

・陸上風力の入札制度への全面的な移行:陸上風力は、将来的にドイツの電力供給の大部分を担っていくことが期待される重要なエネルギー源である。この分野が資本力の弱い事業者が入り込みにくい入札制度に移行することにより、これまでの重要な推進力であった住民出資や地域密着の中小事業者の活動が阻まれ、それにより増産目標量が達成できないことが懸念されている。ドイツでは風力プロジェクトへの住民や自治体の理解と賛同を得るためには、地域密着のプロジェクト開発を行うことが不可欠な側面になっているためだ。

 

風力連盟の理事を務めるヘルマン・アルべス氏は、「立法者は、順調に伸び、(発電コストが)大変安価な風力に大きな困難を突き付けました。我々は、ドイツのダイナミックで多様性のある市場を発展させるためには、入札制度は難しいツールであると考えます。業界は市場プレイヤーという面からの構造崩壊に直面しています。」と、強い危惧を表明している。また、再生可能エネルギー連合の事務局長ヘルマン・ファルク氏も、「2017年の再エネ法で実施される入札システムへの転換は、分散型エネルギー大転換にとって明確な後退です。」と、コメントしている。

 

●再エネ業界にとってポジティブな項目

このように今回の改訂ついてのドイツの再エネ業界のプレスリリースは、ほとんどが批判的な内容となっているが、例外的にポジティブな評価を受けている改訂項目もある。例えば、過剰供給時において系統安定化のために再エネ設備の出力制限を行う代わりに、余剰電力を暖房や給湯用のヒートポンプや電気ヒータといった熱分野に使うことを進めるツールを導入するという点だ。今後、再エネによる余剰電力を熱や交通の分野に利用していくための第一歩として評価されている。

 

あるいは太陽光については、賃貸集合住宅の屋根に設置された太陽光から、賃借人に電力を直売する事業モデルへの障害が緩和されることになった。今後このような「賃借人電力」は自家消費電力と同等に扱われ、課徴金額が低減される予定だ。これにより屋根からの太陽光電力を購入する賃借人は、一般電力よりもかなり安い電力を入手できるようになる。「ソーラー電力の賃借人向け直売は、エネルギー大転換を都市部に持ち込むでしょう。これは大きな成功です。」と、ソーラー経済連盟のケルニッヒ氏はコメントしている。

 

また今回、法律の中で「市民エネルギープロジェクト」が初めて定義され、これを満たす事業者に対して陸上風力の入札条件が緩和された点も、業界では歓迎されている。具体的には「10人以上から成り、議決権の半分以上を現地住民が有し、どの出資者も議決権の10%以上を持たない事業団体」で、プロジェクトの大きさは「最大で6基、18㍋㍗」とされている。こういった「市民エネルギープロジェクト」は、用地確保と風況鑑定さえ準備すれば、環境悪影響保護法の許認可を取得する前の段階で入札に参加できる。しかしこういった配慮を以てしても、ほとんどの市民エネルギー事業体にとっては入札に伴う経済的リスクは大きすぎるので参加は不可能だろう、という見解が業界では強い。

 

●市民エネルギーの底力への期待

このようにドイツの再エネ業界や中小の市民エネルギー事業体にとっては、成長や活動の場が制限される厳しい年月が当面は続きそうだ。ただ、産業や住宅における太陽光の自家消費設備や賃借人電力の市場、あるいは市民エネルギーからの電力直売など、入札制度とは関係なく成長が見込める市場もまだある。また風力の入札においても、地域の市民エネルギー協同組合や市民エネルギー企業、自治体のエネルギー公社らが事業共同体を形成することにより、第1回の入札に挑戦してみたいとの声も関係者からは聞こえてくる。

今回の法改訂によりドイツの市民エネルギー、地域エネルギーには、新しいビジネスモデルを作り上げる底力や結束力が試される時代が到来した。(滝川薫)


新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

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【下記、新エネルギー新聞2016年7 月25日第57号より転載】

ドイツ: ヴィルポーツリート村発の蓄電池メーカー:ドイツ市場をリードするゾンネン社

 

上記のエネルギー自立村ヴィルポーツリートで、近年、重要産業に急成長しているのが蓄電池メーカのゾンネン社である。「消費量の5倍以上を超す再エネ電力を生産するエネルギー村のヴィルポーツリートは、弊社のヴィジョンにインフラ面でも哲学面でもぴったり合います。」と、同社広報のシュテファン・ヴァイマン氏は村の魅力を語る。本稿では、市場リーダーと呼ばれる同社のユニークな取り組みを紹介する。

 

市場リーダーのゾンネン社

ドイツでは、太陽光発電と組み合わせた家庭用蓄電池のブームが起こりつつある。アーヘン工科大学の蓄電池モニタリング報告書によると、2015年に設置された小型太陽光発電設備のほぼ半分に蓄電池が付設されている。また2013年5月から2016年1月の間だけでも、合計3・4万台の分散型蓄電池が設置され、その蓄電容量は200㍋㍗時に及ぶという。ブームの背景には、電気代の高騰、太陽光発電のコストと買取価格の低下、国の蓄電池助成制度といった理由がある。

 

ヴィルポーツリートに拠点を置くゾンネン社は、2010年に創業された太陽光発電用の蓄電池システムを生産するメーカで、200人の従業員を抱える。同社のシステムは、これまでに1・2万台が販売されており、ドイツでは蓄電池市場に20%(15年)のシェアを占める市場リーダーとして認識されている。

 

ゾンネン社の製品の特長をヴァイマン氏はこうまとめる。

「弊社のバッテリーは、蓄電池だけでなく、バッテリー用のパワコンと、インテリジェントな蓄電池マネージャーを内蔵した総合システムになっています。蓄電池には、リン酸鉄リチウムイオン電池を利用しています。ニッケルやコバルトのような重金属材料を使わないことで環境性を改善するだけでなく、1万回の充放電サイクルの寿命保証を行っており、市場にある蓄電池システムの中で最も寿命の長い製品の一つとなっています。」

 

ドイツでは自宅や自社の屋根で作る電力が、系統から購入する電力よりも断然に安い。よって蓄電池を購入する顧客の目的は、太陽光発電の自己消費率をできる限り上げることである。ゾンネン社の蓄電池システムでは、設置地域の天候予測と各家庭の需要を反映した制御により、自己消費率を8割程度まで上げ、系統から購入する電力量を最小化することができる。

 

余剰電力を売買するゾンネン・コミュニティ

同社は、今年2月に余剰電力を売買できる「ゾンネン・コミュニティ」を立ち上げた、話題を呼んだ。同社の蓄電池システム所有者の余剰電力をコミュニティの電力プールに売電し、電力を必要としている別の会員がこれを購入するという仕組みである。同社の蓄電池システムにはスマートメーターが内蔵されており、すべての蓄電池をネットワーク化して、自動的にユーザー間の需給バランスを調整できる機能が備わっている。それを活用したのがゾンネン・コミュニティである。

 

目標は太陽光の余剰電力を融通し合うコミュニティだが、ゾンネン社では(会員の少ない)コミュニティの立ち上げ時にも十分な電力供給能力を確保するために、バイオガス発電をベースロード負荷用の電源として取り入れている。また万が一供給が不足するような場合には、自動的に市場から電力が調達されるようになっている。

 

コミュニティの会員数はこれまでに2000世帯あり、新規の蓄電池購入者では二軒に一軒が会員になっているという。会員になれば、従来の電力会社から電力を購入する必要がなくなる。コミュニティ内で電力をシェアするという独立性が魅力になっている。

 

直売へのフィードイン・プレミアムを利用

この仕組みにおいてゾンネン社は、ドイツの再生可能エネルギー法に定められた、エンドユーザーへの「直売」を行う委託業者という位置づけになる。コミュニティの会員は、ゾンネン社に余剰電力の直売を委託し、同時にゾンネン社から「コミュニティ電力」を購入する契約を結ぶ。

 

直売委託を行う発電事業者には、電力取引市場の価格に加えて課徴金庫より「市場プレミアム」が支払われるので、結果として一般的な買取制度を利用するよりも少し高い売電価格を得られる。加えてゾンネン社では、コミュニティ電力の増加を推進するために、余剰電力の売電者に㌔㍗時あたり0・25セントを追加で支払っている。

 

そして、この電力をゾンネン社がコミュニティの会員に売るのだが、その販売価格は㌔㍗時あたり23セントと、一般的な電気代よりも5セントほど安い。このほか、コミュニティの月会費が約20ユーロかかかる。太陽光発電や蓄電池を持たない世帯であっても、コミュニティの会員となってコミュニティ電力を購入することは可能だ。ゾンネン社はドイツでの好調なスタートの後、今年の5月にはオーストリアでもゾンネン・コミュニティの形成を開始した。

 

次のステップは瞬時予備力市場への参入

現在のところ、ゾンネン社は蓄電池システムとソフトウェアの販売により利益を上げており、コミュニティ内での電力売買サービスの料金設定においては、利益を出すためのマージンを上乗せしていない。また、コミュニティ会員になると、蓄電池システムの購入価格が1875ユーロ割り引かれることからも、同社がコミュニティの形成に非常に力を入れていることが分かる。ゾンネン社は、このコミュニティが蓄電池を活用した新しい事業開拓に繋がると考えているのだ。

 

ゾンネン・コミュニティの次のステップは、調整用電力と呼ばれる瞬時予備力市場への参入である。多数の分散型蓄電池をネットワーク化した「バッテリー群団」を制御することで、バーチャルな大規模蓄電池を形成することができる。そのために必要な技術的機能は既にゾンネン社の蓄電池システムに搭載されている。ゾンネン社ではこの市場に参入するにあたり、蓄電池所有者から容量の一部を賃貸することを検討している。

 

「瞬時予備力市場は、ゾンネン社の蓄電池システムを経済的に運用するための一つの可能性です。しかしながら、ドイツでこれを実現するには、まだ法制度の面でいくつかの適応や緩和が必要です。」と、ヴァイマン氏。同社では、これに関する法制度的なハードルが低いスイスで、この秋から現地企業との協働によりゾンネン・コミュニティをスタートさせ、最初から瞬時予備力市場に参入していく予定だ。

 

分散型の「バッテリー群団」が系統安定化に貢献し、それにより事業収益を上げるビジネスモデルのビジョンが実現しつつある。(滝川薫)

写真2ゾンネン社バッテリーklein

 












写真:ゾンネン社の蓄電池システム。家庭用を中心に展開。パワコン、自家消費率を最良化する制御装置、バッテリーがケース内に一体になったシステム。1万回の充放電サイクルを保証。価格はゾンネン・コミュニティの会員になる場合、6㌔㍗時
設置費を除いて9115ユーロ。これに約2100ユーロ程度の助成金が付く。© sonnen GmbH


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【下記、新エネルギー新聞2016年7月11

日第56号より転載】


ドイツ:住民参加で電力自立率500%超す、ヴィルポーツリート村(上)


南ドイツ・バイエルン州。人口2650人のヴィルポーツリートは、先進的なエネルギー自立村として有名な自治体だ。500%以上の電力自立率に加えて、総合的なエネルギー政策が高く評価されている。スムーズな実現の背景には、熱心な自治体政府と幅広い住民参加がある。

写真1ヴィルポーツリート村









©Takigawa/Wassmann


住民の声から生まれたエネルギー自立目標


欧州中部でエネルギー自立が進んでいる地域の多くでは、初めに住民参加の下で、地域づくりの目標を明確化する作業が行われている。ヴィルポーツリートも例外でなく、1999年に住民に対して2020年までに村で実現したいことについてのアンケート調査を行った。その結果、住民が再エネと省エネの推進を強く望んでいることが明確になり、これが政策プログラムの3つの重点の一つに据えられた。そして、村の目標像は「ヴィルポーツリート、革新的、方向性を示す村」に決まった。


2000年には再生可能エネルギー法が施行され買取制度がスタート。エネルギー自立への社会的コンセンサスが出来上がっていたヴィルポーツリートでは、住民の反対を受けることなく再エネ増産が進み、
10年余りで後述する大きな成果を上げることができた。エネルギー自立政策に心血を注ぐ村長のアルノ・ツェンゲル氏を初めとした村の評議委員(村政府)の全員が、所属政党に関わらず、この目標に向かって構築的に取り組んできたことも成功要因となった。


010年に自治体が策定した気候目標像では、2020年までに年間収支によるCO2排出量をゼロにすること、そして熱・電力・交通を含むエネルギー消費の総量を100%再生可能エネルギーで生産することを自治体の目標として決議した。2013年には早くもこの目標を達成し、電力については2015年末には自立率500%を超えている。


再エネと省エネの総合的なエネルギー政策


再エネ増産においては、風力、ソーラー、農業バイオガス、木質バイオマス、小水力など、多様なエネルギー源を活用している。


熱供給においてヴィルポーツリートで重要な熱源となっているのが、農家型のバイオガス・コジェネだ。バイオガス発酵炉とコジェネの所有・運転は、村の農家が行っている。対して、コジェネの廃熱を分配する熱供給網の運営は、自治体の会社が行う。集落が分散しているため、バイオガス発酵炉のある農家から4・2㌔㍍のガス管が地下埋設され、集落や産業地帯、村の中心街の5か所に分散型のコジェネ設備を設置しているのが特徴だ。


住民を巻き込んだ太陽光発電と太陽熱温水器の利用も盛んだ。太陽光発電は、ほぼ屋根置き型のみで5㍋㍗を設置している。太陽熱温水器は150基が設置されている。これらは自治体が村のソーラー業者と協力してまとめ買いを行い、格安価格で住民に普及させた成果である。自治体では、公共建築の屋根を太陽光パネルとセットで、村のスポーツサークルといった住民の
NPO団体たちに提供した。設備の施工と管理はNPOが行い、その代わり売電収入はNPO活動費に充てられている。


省エネ政策についても多数の対策を実施してきた。一例を挙げると、2000年から公共建築でエネルギーマネジメントを実施し、公共建築の高度な省エネ改修を行い、パッシブハウス基準を満たすプラスエネルギー幼稚園を新築。新興住宅地ではパッシブハウス基準を助成する。電力分野についても街灯を
LEDに交換したり、省エネ型循環ポンプへの交換キャンペーンや電力省エネコンテストを実施。専門家による住民へのエネルギーアドバイスも無料で提供している。


ヨーロッパには、自治体のエネルギー政策を総合的に評価する「ヨーロピアン・エナジー・アワード」という制度がある。ヴィルポーツリートは、その中で最も優秀な自治体に与えられるゴールドマークを獲得している。


住民出資で9基の風車を実現


ヴィルポーツリートには、自治体の敷地内に9基、出力
18㍋㍗の風車が建っている。これらの風車の開発はすべて、村の農家で、風力開発会社を営むヴェンデリン・アインシードラー氏が手掛け、住民出資により段階的に実現されてきた。村の目標像策定における住民参加の経験が、幅広い住民に出資への意欲を育んだという。


村内の開発事業者による風車への出資は非常に人気で、孫や子供へのプレゼントとして出資する人も多い。はじめの7基は自治体の住民300人が出資。最新の2基は昨年末にリパワリング(高効率・高出力設備へ代替)された設備で、村の住民の他、周辺自治体やその住民も共同で出資している。このリパワリングにより、電力自立率は今年から700%に増える見込みだ。


「これまでにヴィルポーツリートの住民が再生可能エネルギーに出資した額は、4000~5000万ユーロにも上ります。」と、ツェンゲルレ村長は語る。住民のお金による再エネ設備の実現は経済的な果実を結んでいる。村にある発電設備からの売電収入は年500万ユーロ。また村の地域熱供給網により、年
18・7万ユーロの熱エネルギー代が自治体内に留まるようになった。このような再エネ事業からの収入は、自治体にとっても貴重な税収源になっている。


将来を安心できる魅力的な村


近年同村では、周辺自治体と共に10基の風車を増設するプロジェクトを進めてきた。しかし、バイエルン州では様々な理不尽な規制が導入され、今日、風力の増設は事実上不可能となってしまった。有名なエネルギー自立村の首長として世界各地で講演を行ってきたツェンゲルレ氏は、現在のドイツの国や州の再エネ電力に関する政策について苦々しくコメントする。


「エネルギー大転換を巡る条件は各国で異なりますが、どの国でも共通し、同じような手段が用いられているのが、古いエネルギー産業の新しいエネルギー産業に対する闘いです。(中略)

ヴィルポーツリートのこれまでの成功は、買取制度の条件の良い時代にスタートしたからこそ実現したものであり、今日の条件の下で同じことを実現しようとしても無理だったでしょう。」


エネルギー生産については既に目標を達成したヴィルポーツリートであるが、2050年までの
CO2削減シナリオの実践や、分散型蓄電池の普及、交通分野の省エネ化など、今後も課題はつきることがない。筆者は同村に何度も訪れているが、エネルギー自立の取り組みとそれに伴うインフラ充実が、地域住民にとっての生活の質の向上や将来への安心感に大きく寄与していることは確実である。(滝川薫)

IMG_3315

 


IMG_3312





























写真:村の中心部から数キロ㍍離れた小山の上に建つ風車は住民出資で実現された。うち2基は昨年リパワリングされたもの。新しい風車はエネルコン社の
E-115で出力は3㍋㍗。タワーの高さは149㍍、ブレードを含めると総高200㍍を超える。

©Takigawa

/Wassmann


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論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョン社では、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com

※今日はミット・エナジー・ヴィジョン社のメールニュース2016年初夏号を転載します。

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皆さま、ご無沙汰しています。日本では梅雨も明けて、夏本番といったところでしょうか?

ドイツでは6月から夏本番がはじまりますが、今年は異常気象で5月、6月と気温も低く、雨ばかりの毎日が続いていました。局地的にゲリラ豪雨的な大雨、あるいは竜巻などもあり、各地で異常気象による被害、とりわけ洪水被害で、数多くの方が亡くなるという、在独20年の村上が体験したことのないお天気が続いています。

サッカーの欧州選手権EURO2016も、盛り上がりがいまいちなのは、雨が続く試合ということもあるのでしょう。

今回も、MITメンバー3名から、皆さまにコラムと各種の告知についてメールニュースをお送りします。今回は、村上滝川池田という順で告知を挟みながらコラムを書いています。最後までお楽しみください(村)。

 

MIT:村上
気候保護計画2050の草案がリークされる

2016630日のドイツのマスコミ紙面は、現在政府内で検討を続けている「気候保護計画2050」の草案について賑わいました。ドイツ政府は2010年に「エネルギー戦略2050(通称、エネルギー大転換)」を公表していますが、その後には、

・福島第一原子力大災害を受けての脱原発期限12年短縮(全原発廃止2022年まで)、
・再エネ拡張と価格動向(とりわけ太陽光発電の価格低下と山間部での陸上風力の大推進)、
・電力大手の方針変更(E.ONRWEの分社化とVattenfallの原子力・化石撤退方針など)、
・各種の技術動向(とりわけVWによるクリーンディーゼル・スキャンダルと自動運転を含むEV技術のブレークスルー、Power to Gas)、
201512月のパリの気候サミットでの合意、

など各種の社会の枠組みがこの56年間で大幅に変更されたため、部分修正では行き詰まりが見えることから、20156月から「気候保護計画2050」の検討が開始されました。今後は、2016年の9月に閣議決定された後、草案が公開され、秋から年末にかけて国会審議をして、12月には総合的な計画を決議、確定することを目指すように進められています。

以下の政府の専用サイトでは、その計画策定の工程表と、各段階での計画への各種のステークホルダー&市民参加の手法が、なかなかよく練られて掲載されています。とりわけ、各種の参加手法(専門家、ステークホルダー、市民)によって得られた知見は今年3月に連邦環境省の手に渡されました。
http://www.klimaschutzplan2050.de/
http://www.klimaschutzplan2050.de/wp-content/uploads/2015/09/Massnahmenkatalog-3-1-final-Ergaenzungen-Anpassungen1.pdf

ただし、そのような透明性ある高尚な手続きとはやはり別物で、従来型の手法(官公庁&政府内の密室での議論と、都合の良い?マスコミへのリーク)も同時に進んでいるようです。

さて、今回リークされた67ページの計画草案は、すでに連邦環境省で練られたものが、連邦経済エネルギー省で修正され、現在、首相官邸で審議されているものです。その内容はというと・・・

・近年中に(エコ)税制の大改革(化石燃料へのさらなる増税措置)、
2020年以降には、化石を燃料とした暖房・給湯設備への助成禁止、
2030年以降は、化石を燃料とした暖房・給湯設備の新設禁止、再エネか、電気式のもののみを許可、
2030年以降は、ガソリン/ディーゼル車(乗用車と小型輸送車)の新車登録禁止、
2030年までに有機無農薬農法の農地面積を現状の3倍に、
2050年までに肉の生産量、消費量を半減、
2050年までにエネルギー製造・生産・消費(産業、交通も含めた電力、熱、動力)はCO2ニュートラルに、
2050年までに太陽光、風力を主体とする発電は、現状の34倍の600800TWH/年に、
・石炭・褐炭発電から脱却すること、

などが、盛り込まれているそうです(私の手元には草案はないので、いくつかのマスコミ記事を取りまとめただけです)。

こうしたポイントについて、緑の党や各種の環境保護団体、エネルギーロビー団体、そして産業などからは様々な批判が繰り広げられていますが、村上的にはとりわけ、

2050年よりもかなり前の段階で、順次、石炭・褐炭発電から撤退する
という一文が、連邦環境省が提出した草案には記載されていたのに、連邦経済エネルギー省の手によって削除されたこと、

同時に、
・潜熱回収の天然ガスによる暖房・給湯などの温熱機器をすべて電化(とりわけヒートポンプか、深夜型の電気温水器などの復活)の方向にもってゆくことによるリスク(電気自動車の推進と合わせて、どれだけ電力消費量が増えるんだ?)

というポイントが気になります。もちろん、再エネ(太陽光・風力)による電力供給の不安定を、電気温熱機器で受け止め平準化するというのは一手ではあることは確かですが、これを日本やフランスのように実施すると、夏場の気温上昇時、冬場の気温低下時に電力消費量が爆発的に増大し、結局は再エネだけでは賄いきれない、というジレンマが潜んでいるので注意が必要です。

とはいえ、正式な閣議決定後の公表は9月。その際には、もう一度、詳しく読み込んでみたいと思っています。

 

!お知らせ!
ソーラーコンプレックス社による日本語ニュースレター夏号

ミット・エナジー・ヴィジョンでは、南ドイツの市民エネルギー企業ソーラーコンプレックス社が発行するニュースレターの日本語版の作成をサポートしています。

市民エネルギーにとっては容易ではない事業環境(オイル価格の低下や、買取制度の変化)においても、しっかりと利益を生み出し、骨太な経営を持続している同社は、日本で地域密着の再生可能エネルギー事業に取り組む方々にも参考になると考えます。下記リンクからニュースレター2016年夏号を読むことができます。
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6573317/

 

MIT:滝川
自家消費用の太陽光発電事業の面白さ    

ここ2年ほど、ドイツやスイスでの太陽光発電の自家消費や直売の事業に注目しています。市場を取り巻く諸条件からの必然的かつ有意義な帰結とはいえ、太陽光増産が政策的に叩かれ続けてもへこまず、新しいアイディアを持ち、それを事業コンセプトに具体化し、エネルギッシュに実行する。こういった(一部の)太陽光事業者たちのクリエイティビティ、底力、仕事への喜びには、感動するものがあります。

少し考えてみるだけでも、賃貸や分譲の集合住宅での自家消費、その電気代清算を引き受け、残量電力を納入するサービスを提供する電力小売り会社、工場や産業建築への自家消費用の設備の販売やリース、エネルギー協同組合の太陽光設備から建物所有者や組合員への電力直売、地元の自治体エネルギー公社への直売、自治体エネルギー公社からの消費者への直売・・・等々。多様なケースがあります。

先日、家庭用・業務用の蓄電池メーカを取材する機会がありました。これまでに1万台以上を販売している中小企業ですが、蓄電池に搭載されたスマートな制御機能を活用して、これらの家庭をネットワーク化、コミュニティ化しています。現在は、家庭の余剰電力をコミュニティ内で売買する仕組みを実践していますが、間もなく蓄電池群団として瞬時予備力の市場に参入するんだそうです。ワクワクしますね!

太陽光発電の時代も、熱・電気・交通のエネルギーヴェンデも、まだ始まったばかりです。ベルリン技術経済大学・再エネシステム学部の教授のフォルカー・クワシュニング教授の計算によると、パリ協定での(温暖化を1.5度以下に抑えるという)約束を守ろうとするなら、ドイツの場合、エネルギーヴェンデには今の5倍の速度が必要であると言います。

異常気象が気にならない季節がないような今日。日本でも、ドイツ・スイスでも、下からのエネルギーヴェンデにブレーキをかけ(られ)ている場合ではありません。経営者や地域エネルギー事業者の皆さん、太陽光発電の自家消費型事業について、ミット・エナジー・ヴィジョンやドイツ・スイスの人々と一緒に考えてみませんか?

 

!お知らせ!
★100
%再生可能エネルギー地域のブログ最新記事

ミット・メンバーが寄稿する「100%再生可能エネルギー地域のブログ」では、新エネルギー新聞(新農林社)の了承を得て、同誌に掲載された滝川執筆のニュース記事の一部を転載しています。

下記リンクからご覧ください。最近の記事では、「ドイツ:オーデンヴァルト協同組合(EGO)~プロフェッショナルな市民エネルギーの模範例」をアップしています。
http://blog.livedoor.jp/eunetwork/

 

MIT:池田
森林資源による地域価値創出

現在、森林の仕事で日本に滞在しています。

各地で森林バイオマス発電施設用の丸太の一次貯蔵所も見かけました。20万立米以上の丸太が集積されている場所も見ました。その丸太の半分以上が、製材品になるようなB材やC 材でした。それがチップにされ、発電施設に供給されるようです。数名の地域の関係者とも話しましたが、その状況を嬉しく思っているひとたちはいませんでした。皆伐も増えているようです。エネルギー材の需要が高まったために、地域の木材産業に原木が供給されないという問題も起きているようです。

一方、しっかりと森林インフラを整備し、非皆伐の森林利用で、地域に持続的な原木供給を行い、地域で加工し、付加価値をつけて木材を販売する、地域価値創出の取組みもあります。

私は、一環して後者を支援してきましたし、今後もそうしていきます。

 


今回のメールニュース、いかがでしたか? それでは、次回もお楽しみに!

 


新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞2016年5 月30 日第53号より転載】

ドイツ:オーデンヴァルト・エネルギー協同組合(EGO)

~プロフェッショナルな市民エネルギーの模範例

 

 

ドイツでは、住民が出資者となり地域の再エネ設備を実現・運営する市民エネルギー協同組合の活動が盛んであり、その数は約1000に上る。こういった協同組合では、買取制度を利用して太陽光や風力発電設備を実現し、その売電収入から出資者に配当を還元する事業モデルが最も一般的だ。組織の経営は通常ボランティアベースで行われている。

 

しかし買取制度が終了に向かい、入札制度への移行期にある現在、再エネ発電開発事業の難易度は高まってきている。そのような中、ドイツの市民エネルギー協同組合には、経営をプロフェッショナル化し、新しい事業モデルを開発することで、活動を継続しようという努力が見られる。本稿では、ドイツでこのようなプロフェッショナル化にいち早く成功した協同組合の模範例として、オーデンヴァルト・エネルギー協同組合の活動を紹介する。

 

●地銀と自治体のリーダーシップから生まれた協働組合

ドイツ南部、人口10万人弱のオーデンヴァルト郡を拠点に活動するオーデンヴァルト・エネルギー協同組合(EGO)は、2009年に地銀フォルクスバンクと、郡・市・村といった地方行政の協力により生まれた。設立の目的は、地域の手により再エネ生産と供給を行っていくこと。それにより地域に経済的な付加価値を創出していくことである。モットーは「オーデンヴァルト人がオーデンヴァルトに投資する」だ。

 

当初はボランティアベースで運営されていたが、プロジェクト数の増加と共に専門職員を雇用し、現在は17人の従業員を抱える。そのうち3名はフォルクスバンクの元職員だ。上手なマーケティングが功を奏してEGOの組合員(出資者)の数は素早く成長。現在、地域の市民や企業、自治体を中心に3000件の組合員をもつ。組合員に対しては、年約2・5%の配当が出されている。

 

組合員からの出資金を用いてEGOでは、これまでに3600万ユーロ(約44億円)の投資を地域で行ってきた。電力分野で設置した出力は30㍋㍗。太陽光発電については、住宅や工場、公共建築の屋根に中小規模の設備を83基、加えて2か所でソーラーパークを実現した。風力については、9基の風車を自治体や他の協同組合と共同出資で実現。さらに現在6基の風車を共同出資で建設中だ。この他、熱供給事業も行っている。

 

設立以来EGOは、地元企業250社に対して2500件もの依頼を発注してきたという。プロジェクト開発を担当するシモン・コッホさんはこう語る。

EGOの設計や建設依頼のほとんどが、組合員の企業に発注されています。基本的に組合員でない企業でも受注はできますが、そのような企業でもプロジェクト後に組合員になるケースがほとんどです。」

このようにエネルギー協同組合があることで、同地方では地域企業が中心となった再エネ事業が展開されるようになった。

 
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写真:EGOのプロフェッショナルな従業員。再エネや経営の専門家たち。 

©Energiegenossenschaft Odenwald eG



●不動産開発と再エネ事業の組み合わせ

EGOでは、前述の一般的な発電事業と並んで、もうひとつのユニークな事業分野を持っている。それは、地域のインフラ施設となる不動産と再エネの開発を組み合わせた事業である。これまでに2か所の産業地帯と3軒の保育園を開発、所有、賃貸している。同時にこれらの施設に再エネによる熱供給と太陽光発電の設備を導入してきた。

 

最初のプロジェクトは、2014年にオープンしたエアバッハ市の「エネルギーの家」。空き家になっていた元ビール工場の建物と敷地を買い取り、オフィスビルとして省エネ・総合改修を行った。加えて敷地内に産業用建築や保育園も建設した。そして、これらの施設にペレットボイラーによる地域熱供給を行い、屋根や駐車場の上に1・2㍋㍗の太陽光発電を設置した。建物にはEGOの他、エネルギーや建設に関わる郡の行政機関や企業、フォルクスバンクら30団体が賃借人として入居している。

 

不動産事業でもう一つの重点を成しているのが保育園である。ドイツでは国の政策として保育園の増設が推進されているが、多くの自治体では建設費用が財政の負担になっている。そこでEGO

が再エネ付きの保育園を建設し、長期契約で自治体に賃貸するという事業モデルである。

DSC_1242写真上:EGOが省エネ改修・建設した床面積6000平方㍍の「エネルギーの家」。不動産と再エネをセットで開発。賃貸収入のほか、太陽光売電と再エネ熱の販売から収入を得ている。 

©Energiegenossenschaft Odenwald eG

 
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写真下:「エネルギーの家」の建物群に熱供給を行う小規模な地域熱供給センター。ペレットを主要熱源としている。©Energiegenossenschaft Odenwald eG

 

●賃借人へのエネルギー販売事業

近年EGOでは不動産の開発・賃貸を介して、賃借人に熱を販売するだけでなく、建物に設置した太陽光発電からの電力の直売も行っている。ドイツの中小規模の太陽光事業者にとって、建物内での直売や自己消費用の設備は、現在、成長が期待できる唯一の事業分野である。買取制度では採算の合う設備が実現できなくなっていることに加えて、系統から購入する電力よりも屋根の上で生産する太陽光からの電力の方が大幅に安くなっているからだ。

 

EGOでは賃借人と、太陽光からの電力直売について取り決める電力納入契約を取り交わしています。賃借人には、屋根の太陽光発電からの電力を、一般電力よりも安い価格で販売できています。また太陽光からの電力が足りない時には、EGOの電力商品を賃借人に販売しています。」(コッホ)

 

EGOでは電力の小売り事業も行っており、再エネ100%の電力商品を一般の従来電力よりもやや安い価格で販売している。購入できるのは組合員だけであり、EGOに出資する利点にもなっている。この電力小売り事業は、ドイツの協同組合連合組織が設立したエネルギー会社「GENOエネルギー社」をパートナーとしている。EGOは同社から再エネ電力を仕入れ、地域で小売りを行う窓口となっている。

DSC_1233写真:EGOが新設した産業建築の屋根は、太陽光利用に最適な角度で設計された。地域の手工業者や店舗に賃貸。

©Energiegenossenschaft Odenwald eG

 

●地域に愛される再エネ事業体

これらの事業の他に、EGOは「エネルギーの家」の中に文化イベントホールを作り、運営している。それにより地方の町でも多数のコンサートやイベントが開催されるようになった。こうしてわずか7年の間にEGOは、この地域にとって再エネ開発だけでなく、経済や社会の活性化に大きく貢献する重要な存在に成長した。

 

一般的には、ドイツの市民エネルギー協同組合にとっての事業環境は厳しくなったと言われているが、コッホさんはEGOの将来を楽観しているという。

「もちろん新ビジネス分野を開拓していかねばなりませんが、EGOにはそのための組織体制がありますし、専門人材がいるのも有利です。しかし、今後、新しく設立される組合にとってはビジネスのハードルは上がるでしょう。また既存の小規模な組合については、合併が進むことも予測されます。 」

 

ドイツの再エネ法による買取条件が良好であった時期に体力を付け、素早く規模を拡大し、市民エネルギーの組織と経営をプロフェッショナル化してきたEGO。日本の地域エネルギーや市民エネルギーの発展戦略を考える上で参考となる事例である。

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写真2点:EGOが実現した産業施設「エネルギーの家」のカーポートと建物の屋根面には1・2㍋㍗の太陽光パネルが敷き詰められている。©Energiegenossenschaft Odenwald eG

 

 

 

 

ミット・エナジー・ヴィジョン社では、南ドイツの市民エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社の日本語版ニュースレターの翻訳作成に協力しています。2016年夏号のニュースレターを下記に転載します。
写真付きのオリジナルは、下記リンクよりご覧になることができます。
ソーラーコンプレックス社のページへ

(以下転載)
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気候保全に必要なのは石炭・褐炭電力の減少であり、増加ではない

 

 

ブラウンスバッハ村の大洪水はどこでも起き得ることであり、暖かい空気が多くの湿度を吸収し (そして再び放出する)ことは物理です。物理を変えることはできませんが、政治は変えられます。

 

私たちは、決断せねばなりません:エネルギーヴェンデと脱石炭・脱褐炭を加速して、気候温暖化を一定内に抑えることにするのか。あるいは、先日のような大災害をより頻繁に体験することにするのか。

 

連邦政府の現在のエネルギー政策が、パリで決められた気候保全目標に合致しないことは、わずかな数字でもって証明できます。ドイツの総電力消費量は2015年に597テラワット時(=100%)でした。そのうち再生可能エネルギーの割合が194テラワット時(=32.5%)、原発の割合がまだ92テラワット時(=15.4%)で。決定している脱原発を、温暖化ガスを追加で排出することなく実施しようとするならば、2022年までに、少なくともこの15.4%分は再生可能エネルギーで作らねばなりません。しかし連邦政府は、2025年までの再生可能エネルギーの増産を、最大45%に制限したいと考えています。反対に言えば、2022年までの原発電力の代替は、カーボンニュートラルでは実現できないということになります!

 

それどころか、再生可能エネルギー法で定められた増産量の枠に従う場合、原発電力の代替分のうち18テラワット時は、化石エネルギーで行われることになります。すなわち化石エネルギーによる発電所は、それまでに電力を増産せねばならなくなるのです!つまり石炭・褐炭電力の増加であって、減少ではありません!これに関して、パリの気候保全協定への署名は、グロテスクな矛盾にさらされています。批判的な公衆が、この矛盾を取り上げる時が来ています。ここで私たちから始めましょう。

 

 

ソーラーコンプレックスなご挨拶と共に

 

フローリアン・アルムブルスター、ベネ・ミュラー、エバーハルト・バンホルツァー

 

 

 

 

2015年のバランスシート

 

公認会計士による監査証明書が出来上がりました。バランスシートの額は引き続き大きく伸びています。バランスシートの総額は6300万ユーロ(前年5500万ユーロ)、固定資産額は5150万ユーロ(前年4700万ユーロ)、自己資本は1800万ユーロ(前年1300万ユーロ)です。売り上げは1100万ユーロでほぼ変わらず、EBITDAについても同様で約350万ユーロになっています。

しかし配当向けの利益は約16.5万ユーロで、前年(29.8万ユーロ)を明らかに下回っています。これは初期のバイオエネルギー村における、いわゆる「オイル価格ギャランティ」(オイル熱源よりも低い熱価格の補償)が主な原因になっています。極端なオイル価格の低迷により、40万ユーロ以上も請求額が低減したためです。

取締役および監査役は、業務年2015について全体としては満足しています。困難な条件下においても、ソーラーコンプレックスが良好な経営を行なえることが示されています。株主の皆さんは、今年も総会において自己資本への配当が提案されることに喜ばれるでしょう。13年来続いてきたように。

 

ソーラーコンプレックスの数字に関する情報はこちらから

 

 

地域熱供給網の現状

 

ボンドルフ村(ヴァルツフート郡)の二つ目の熱供給網の建設は終了しました。ヴァルト村(シグマリンゲン郡)では竣工直前です。ベッティンゲン村のプロジェクト(トットゥリンゲン郡)は、低迷するオイル価格により難航しています。しかし、このプロジェクトも実現できると確信しています。

 

ソーラーコンプレックスの熱供給網

 

  

ソーラーパーク・リッケルスハウゼン増築、発電開始

 

リッケルズハウゼン村の郡のゴミ埋立地上にある弊社既存のソーラーパークを2.6メガワット増築し、数日前に運転開始しました。計6メガワットとなり、ボーデン湖地帯では最も大きなソーラーパークとなりました。

 ソーラーパーク・リッケルスハウゼンについて

 

 

 

 

新サービス:貴方の太陽光発電設備の保守管理を行います

 

これまで弊社の太陽光部門は、弊社の設備の管理のみを行っていました。これからは、弊社が建設したもの以外の設備に対しても、技術的運転サービスを提供していきます。背景には、多くの太陽光発電が最良ではない状態、あるいは最悪の状態で運転されているという認識があります。発電収穫が無駄に捨てられています。エネルギーヴェンデとは、単に生産容量を増設するだけでなく、既存の設備を可能な限り良い状態で活用することも意味します。南ドイツの屋根置き太陽光発電が、kWあたり700kWhしか発電しないのは稀ではありませんが、それは醜態です。そして経営的な愚行です。これについて、私たちは改善策を提供します。弊社の太陽光エキスパートが保守管理する設備は、最良の収穫量をもたらします。

 

ソーラーコンプレックス社の保守エキスパートのリンクはこちらから

 

 

ゲヌスシャイネ(受益債権の一種)への反響良好

 

2015年末に新規発行が行われてから、すでにほぼ300万ユーロが集まりました。ゲヌスシャイネは魅力的なようです。一口3000ユーロにて、「晴れ晴れ3%」の固定金利が付きます。最短償還期間は3年間です。

 

ソーラーコンプレックス社のゲヌスシャインネについての情報はこちらから

 

 

日本語刊行物のダウンロードリンク

 

ドイツのヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所の発行による冊子「都市エネルギー公社の新設と再公有化」が、日本語に翻訳されました。この翻訳は、ソーラーコンプレックス株式会社のスポンサリングにより実現したものです。下記のリンクから、冊子のPDFをダウンロードすることができます。

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 



(後略) 

新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞2016年5 月16 日第52号より転載】




ドイツ:バーデン‐ヴュルテムベルク州が風車からの低周波音を独自調査

 

 

南ドイツのバーデン‐ヴュルテムベルク州では、長年、風力発電に消極的な政策が取られてきた。そのため、ドイツでは風力の普及が最も遅れた州になっている。しかし、2011年に福島第一原発事故の影響を受けて緑の党の州知事が誕生して以来、風力を推進する政策に方向転換。2020年までに電力の10%を風力で供給することを目指している。同州では、2015年末までに445基、出力700㍋㍗の風車が稼働しており、昨年だけでも53基が運転を開始、建設中の風車は100基ある。

 

このように風力の拡張が進行中の同州では、大半の市民が風力利用に好意を抱いているものの、一部の市民による強固な反対運動が存在する。反対運動の主な争点は、景観の変化と小動物の保全を巡るものであるが、もうひとつの争点として、風車からの低周波音や超低周波音による健康への悪影響の懸念がある。これについては国内外の様々な研究機関が悪影響を証明できないとしているが、それでも地域住民に漠然とした不安を与える要素となっている。

 

議論を客観化するための包括的測定

そのためバーデン‐ヴュルテムベルク州では、州立環境・測定・自然保護研究所(LUBW)に独自の調査を依頼。2月末に調査結果の最終報告書「風力設備およびその他の発生源からの低周波音・超低周波音」が発表された。同州環境大臣のフランツ・ウンターシュテラー氏は、発表に際してこうコメントしている。「バーデン‐ヴュルテムベルク州における風力拡張は急速に加速しています。その際に現場でのプロセスにおいて、特に超低周波音に関する感情的な議論が往々に見られます。そのため州政府は、市民に対して専門性の深い情報を提供することを重視しています。」

 

LUBWは、2013~15年の2年間に渡り、現代的な大型風車の周辺環境における低周波音と超低周波音を調査した。出力1・8~3・2㍋㍗の異なるメーカの風車6基を選び、それらを150㍍、300㍍、700㍍の距離から実測。そしてこの値を、自然界や機械から発生する低周波音と比較するために、道路脇の建物や市街地の建物、車内、住宅内、農地、森林などでも計測を行った。室内では、冷蔵庫、洗濯機、暖房設備といった発生源を測定した。「包括的な測定プロジェクトの目標は、様々な発生源からの低周波・超低周波に関する幅広いデータ基盤を得ることでした。これにより風力発電と関連した音波についての議論を客観化したかったのです。」と、LUBW所長のマルガレータ・バルト氏は語る。

 

風車よりも風そのものや住宅設備から

測定からは、下記の結果が得られた。

・ 風車周辺の超低周波音のレベルは、150~300㍍という近距離においても既に人間の知覚限界を明らかに下回る。

・ 700㍍離れた風車が始動しても、超低周波音の値はほぼ変わらなかった。超低周波音は本質的に風そのものによって発生しており、風車の運転に由来するものではなかった。(ちなみに同州では、住宅から風車までの距離を700㍍以上離すことが、計画の規則になっている。)

・ 風車が存在しない農村地帯でも、風車がある地帯と同レベルの超低周波音が測定された。このことは、風車が人間にとって有意な超低周波音の発生源ではないことを示す。

・ 住宅の側で発生する自動車からの低周波音のレベルは、風車の側で発生するレベルよりもはるかに高かった。最大の低周波音は、時速130㌔㍍で走る中型車内で測定された。

・ 日常的な住宅内の設備の方が、風車よりも大きな低周波・超低周波の発生源となっている。例えば洗濯機や暖房用ボイラーからは、300㍍離れた風車よりも、部分的に、より高レベルな超低周波音が計測された。

 

悪影響への科学的証明はない

最終報告書では、次のように調査結果を総括している。

「超低周波音は、多数かつ多様な、自然や技術的な発生源から生じている。それは日常的で、どこにでも存在する我々の環境の一部である。風力設備は、これに関して本質的に寄与する発生源ではない。風力設備による超低周波音のレベルは、人間の知覚できる限界を明確に下回っている。このレベルにおいての悪影響について科学に依拠する証明はない。」そして、可聴域の音についても「風車設計および許認可における法的、専門技術的な規定を満たす場合には、風車の音による有害な環境影響は予測されない」と、まとめている。

 

同プロジェクトには調査期間中から、行政や市民より非常に大きな注目が寄せられた。州の専門研究機関が作成したこの報告書は、地域住民が低周波音についての意見を形成する際の貴重な情報源であり、地元での風力プロジェクトの受容度の向上に寄与するものとなるだろう。(滝川薫)

 

図1

























写真:バーデン‐ヴュルテムベルク州による報告書「風力設備およびその他の発生源からの低周波音・超低周波音」の表紙。人間への悪影響は科学的に証明できないと結論。

©LUBW








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論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョン社では、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com

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