100%再生可能エネルギー地域のブログ

ヨーロッパの各国、ドイツ、スイス、オーストリア、デンマーク、イタリアにおける再生可能エネルギー(新エネルギー、自然エネルギー)によって自立を目指す地域や自治体を紹介した本をより詳細に知るためのページです。

ミット・エナジー・ヴィジョン社では、南ドイツの市民エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社の日本語版ニュースレターの翻訳作成に協力しています。2016年春号のニュースレターを下記に転載します。(以下転載)
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皆さん、こんにちは

低金利時代のソーラーな投資先

 

国土面積が限られている国で、できる限り多くの再生可能エネルギーを生産しようとするならば、ヘクタールあたりの収穫量が多い技術に重点を置いて開発を行わねばなりません。それは、風力とソーラーです。バイオエネルギーと水力の拡張ポテンシャルには限界があります。よって、再生可能エネルギーによる完全供給の道を進むためには、風力とソーラーの大きな寄与が必要となります。

 

「ボーデン湖ソーラー攻勢」キャンペーンでは、太陽光発電の建設を再び元気付けたいと考えています。その際に、幅広く浸透している誤解を解かねばなりません。それは、太陽光発電はもう儲からない、というものです。確かに系統への売電は、大幅な買取価格の低下によって儲からないものとなりましたが、その分だけ自己消費が楽しくなりました。

 

理由は発電コストの急速な低減です。10kWの屋根置き設備の設置費用は、10年前にはkWあたり5000ユーロでしたが、今日ではその41になりました。ですから自分の屋根からの電力は、系統から買う電力よりも明らかに安いのです。

 

一般住宅でも、そしてとりわけ日中の電力消費の大きな産業建築でも、太陽光電力の自己消費は、経済的に非常に魅力的です。

 

ほとんど利子のつかない口座にお金を寝かせておく代わりに、太陽光発電設備に投資すべきです。利回りは5%以上です!

 

それに気が進まない方は、ソーラーコンプレックス社のゲヌスシャイネ(受益債権の一種)に投資すれば、3%がつきます。そのお金は、私たちが太陽光発電に投資します。

 

 

ソーラーコンプレックスなご挨拶と共に

 

フローリアン・アルムブルスター、ベネ・ミュラー、エバーハルト・バンホルツァー

 

  

 

● 多くの地域熱供給網が計画・建設中

ボンドルフ第二工期(ヴァルツフート郡)の建設は、残すところ僅かとなりました。ヴァルト村(シグマリンゲン郡)の熱供給網もラストスパート中です。ベッティンゲン村(トゥッツリンゲン郡)では、熱供給契約が交わされたところで、現在いわゆる供給網の最良化中で、2016年中に建設を開始します。ヴィークス・バイ・シュタイスリンゲン村(コンスタンツ郡)では、接続希望者の密度が足りないため、残念ながらプロジェクトを却下することになりました。

 

写真:ソーラーコンプレックス社のベネ・ミュラーと、ボンドルフ村ハンス・アドラー合名会社のペーター・アドラー。ハンス・アドラー社は、産業排熱をボンドルフ村の地域暖房に供給しています。

 

ソーラーコンプレックス社のバイオエネルギー村についての情報はこちらから

 

 

●  新しい熱供給網の事業会社が活動を開始

シグマリンゲン都市エネルギー公社とソーラーコンプレックス社が新たに設立した「NRSシグマリンゲン地域熱供給有限責任会社」は、フェリンゲンドルフ村とシュトルツィンゲン村における地域暖房網プロジェクトに応募中です。熱のベースロード負荷は、通常同様にバイオガス・コージェネの廃熱が担います。フェリンゲンドルフ村では2016年に、シュトルツィンゲン村では2017年に建設を開始する予定です。

 

 

● リッケルスハウゼン村のソーラーパーク

リッケルスハウゼン村にある郡のごみ埋め立て地跡に設置された弊社の既存のソーラーパークを、2.6メガワット強拡大できることになりました。必要な契約が交わされ、間もなく建設開始です。運転開始は2016年の上半期内です。合計すると6メガワットになる同ソーラーパークは、ボーデン湖地域では最大規模になります。規模ナンバー・ツーは、弊社のモースホーフ村にあるソーラーパークとなります。

 

ソーラーパークに関する情報はこちらから

 

 

● 新サービス:貴方の太陽光発電設備の保守管理を行います

これまで弊社の太陽光部門は、弊社の設備の管理のみを行っていました。これからは、私たちが建設したもの以外の設備に対しても、技術的運転サービスを提供していきます。背景には、多くの太陽光発電が最良ではない状態、あるいは最悪の状態で運転されている、という認識があります。発電収穫が無駄に捨てられています。エネルギーヴェンデとは、単に生産容量を増設するだけでなく、既存の設備を可能な限り良い状態で活用することも意味します。南ドイツの屋根置き太陽光発電が、kWあたり700kWhしか発電しないのは、稀なことではありませんが、醜態です。そして経営的な愚行です。これについて、私たちは改善対策を提供します。私たちの太陽光エキスパートが保守管理する設備は、最良の収穫量をもたらします。

 

ソーラーコンプレックス社の保守エキスパートのリンクはこちらから

 

 

● ゲヌスシャイネ受益債権の一種への反響良好

数か月のうちに200万ユーロが集まりました。ゲヌスシャイネは魅力的なようです。一口3000ユーロにて、「晴れ晴れ3%」の固定金利が付きます。最短償還期間は3年間です。

 

ソーラーコンプレックス社のゲヌスシャインネについての情報はこちらから

 

 

● 日本語刊行物のダウンロードリンク

ドイツのヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所の発行による冊子「都市エネルギー公社の新設と再公有化」が、日本語に翻訳されました。この翻訳は、ソーラーコンプレックス株式会社のスポンサリングにより実現したものです。下記のリンクから、冊子のPDFをダウンロードすることができます。

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 

 

● 最新の情報を

私たちのフェイスブック・ページでは、アカウントをお持ちでない方も、すべての最新情報が見られます。私たちのフェイスブック・ページが気に入られた方、ご自身のアカウントをお持ちですか?「いいね」をクリックして頂けますと嬉しく思います。

 

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● 視察案内のお知らせ

ソーラーコンプレックス社では、専門従業員により、ソーラーコンプレックス社のプロジェクトへの視察案内を行っています。省エネ建築、バイオエネルギー村、風力発電等。お問い合わせに応じて、具体的なご提案とお見積もりを作成致します。お問い合わせは、担当者Jutta Gauklerまで。: gaukler@solarcomplex.de



出典:http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6509925/
翻訳協力www.mit-energy-vision.com

※今日はミット・エナジー・ヴィジョン社のメールニュース2016年春号を転載します。

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皆さま、ご無沙汰しています。桜の時期が来ましたね。とっくに咲いたところ、まだのところ、改めて日本列島は細くて長いことを感じさせる季節です。

また、熊本の一連の巨大地震では各地で被災された皆様が、1日も早く安心して眠れる日が戻ってくることを遠くからではありますが、祈っています。

ドイツ・スイスでは寒暖の差が激しい毎日が続いており、なんとも体調を整えにくい時期でもあります。先週は20度を超えましたが、今週は氷点下で雪のところもありました。

今回も、MITメンバー3名から、皆さまにコラムと各種の告知についてメールニュースをお送りします。今回は、滝川池田村上という順で告知を挟みながらコラムを書いています。最後までお楽しみください(村)。

 

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★100%再生可能エネルギー地域のブログ

100%再生可能エネルギー地域のブログ」では、新エネルギー新聞(新農林社)の了承を得て、同誌に掲載された滝川執筆のニュース記事の一部を転載しています。下記リンクからご覧ください。

http://blog.livedoor.jp/eunetwork/

 

 

MIT:滝川

ブドウ畑の緑化、普及に20年の歳月

私の暮らす北スイスの農村地帯では、菜の花畑のパッチワークのような風景がまばゆい季節となりました。日当たりの良い南向きの斜面には、ワイン用のブドウ畑が広がります。温暖なブドウの木の足元には早春から多様な野草が咲き、活動を始めたばかりの昆虫たちが花粉や蜜を摂取している様子が観察できます。ブドウの木の列の間は、通年して多様な野草で被覆されています。

今のスイスでは当たり前のこの光景ですが、30年前までは珍しいものだったそうです。当時のブドウ畑には除草剤が撒かれ、土がむき出しの状態で栽培が行われていました。そこに変化の波を起こしたのが、ウエリ・レムンド(1945~1996)という1人のパイオニアです。連邦農業研究所で環境的なブドウ栽培の研究を行っていた農学者で昆虫専門家でもあるレムンドは、80年代にブドウ畑の生態系の観察に基づき、土壌を緑化することで害虫駆除剤の使用量を大幅に減らせることを実証。そして、熱心に緑化の普及・啓蒙活動を行った人物です。

適切な種で緑化されたブドウ畑では、春先に咲く雑草の花から益虫が十分な栄養を摂取できるため、害虫を自然の力で制御することができるようになります。緑化が普及したスイスのブドウ畑では、除草剤と害虫駆除剤はほとんど必要なくなりました。また、ブドウ畑の多くは斜面に位置するため、緑化により表土流出も防がれています。今日では、生態系という視点に加えて、土壌改良や緑肥という視点も取り入れたブドウ畑用の種のミックスも販売されています。

このように経済的・環境的に非常に大きなメリットがあるブドウ畑の緑化ですが、スイスで面的に普及するまでには(農家の人々が変化するまでには)、20年の時間がかかりました。当初レムンドは、スイス各地の先見性のあるぶどう農家から実践例を増やしていきました。そのメリットが明らかになると、スイスのドイツ語圏でまず緑化が普及しました。それでもスイスのフランス語圏の農家たちは、心情的にドイツ語圏の新手法をすぐには取り入れたがらなかったため、全国に普及するまでには長い時間がかかりました。

しかし今日では、ブドウ畑が緑化されていることは、あたかも昔からこうであったかのような、当たり前なことになっています。農薬ロビーよりも原発・化石エネルギーロビーの方が強大かもしれませんが、(少々飛躍しますが)太陽光や風力によるエネルギーの地産地消も、この緑化のエピソードように、今から20年後には「当たり前なこと」になっていると思います。再生可能エネルギーの経済的、環境的、社会的メリットは、それだけ巨大で明確です。

 

 

MIT:池田

多機能な森林基幹道 林業、保養、風車

今年のドイツは、冬がだらだらと長引き、4月半ばになってようやく春が訪れました。

私が住むのは黒い森(シュヴァルツヴァルト)のふもと。針葉樹のなかに混ざって育つブナやカエデの新緑が美しい季節になりました。ドイツの森林は、林業のために整備されている森林基幹道(一般車は通行できない)が、一般市民にも開放されており、市民の保養やスポーツの場として利用されています。 散歩やジョギング、マウンテンバイクに乗る人で賑わいます。最近は、高齢の方E-Bikeという電動補助付きの自転車で、涼しい顔で快適に森の坂道を登っている姿もよく見かけます。

森林での散歩やスポーツは、体と心の健康にいいと言われていますが、それは様々な研究で証明されています。ドイツの雑誌シュピーゲルの20142月の記事には次のようなことが書かれています。

・毎日森林をたった3000歩以上歩くだけで、循環器系が活性化され、心臓発作のリスクが減少する。

・韓国の医者が高齢の女性43人に森林を歩かせ、19人に街中を歩かせたところ、森林を歩いた人たちで、血圧が明確に下がり、肺のキャパシティが増え、動脈の柔軟性が高まった。

・森の散歩によって、脳のなかで、癌を殺す細胞が活性化される。

・森の散歩は、人をリラックスさせ、自尊心を高める。

現代人に必要なことばかりです。

私も、少しでも時間をつくって、できるだけ、森で散歩やジョギング、マウンテンバイクをするようにしています。でも、このようなことができるのも、森林の木を持続的に利用していくために、しっかりとした道が面的に整備されているからです。そして、その道は、山の上での風力発電の設置にも欠かせないインフラになっています。質の高い森林基幹道は、多目的に利用されています。

 

 

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ソーラーコンプレックス社による日本語ニュースレター

ミット・エナジー・ヴィジョンでは、南ドイツの市民エネルギー企業ソーラーコンプレックス社が発行するニュースレターの日本語版の作成をサポートしています。同社の活動は、日本で地域密着の再生可能エネルギー事業に取り組む方々にも参考になると考えます。下記リンクからニュースレター春号を読むことができます。

http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6509925/

 

 

MIT:村上

難民向けの住居の快適性は落としても良いのか?

今年、201611日からドイツでは建築物の省エネルギー性能・燃費の最低限の義務値(ミニマムスタンダード)が工程表通り25%厳格化されました。でも、この予定されていた厳格化を本当に施行するのかどうかでは、昨年の秋には政治的にも、建築分野のステークホルダー間でも大いに揉めました。理由は、ドイツで建築される新築の建物が全く足りない状態に陥っており、この厳格化が新築の建築コストを引き上げ、新築戸数の増加を妨げる可能性が指摘されたからでした。

欧州金融危機以来、ギリシア、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの南欧州からドイツに職を求めて移民が押し寄せ、ドイツはこれまでの人口の微減傾向、そして予測とは反対に、人口が増加することになりました。そこに追い打ちをかけたのが、昨年の難民問題です。2015年の1年間でドイツには110万人もの難民が押し寄せ、そのうち半分以上がドイツで難民登録をしています(希望しています)。今年も難民の数がかなり多くなることが予想されていますので、どの都市でも住宅事情がひっ迫しています。

これまで年間1520万戸の新築で推移していたドイツの建築市場は、建設担当大臣の掛け声のもと、昨年には27万戸に引き上げられましたが、それでも全然足りません。家賃は上昇の一途で、とりわけ都市部では住居難は一層厳しいものになっており、今後数年間は最低35万戸の新築を作り続けないとドイツの住宅事情は破たんしてしまいます。空き家に苦しんでいる日本とは対照的ですね。

そこで、自治体や組合、各種の民間デベロッパーは、たくさんの住宅新築の計画を策定していますが、ドイツで現在許されている最低限の省エネ性能は(UA値=0.3以下など)、ドイツよりもかなり寒い日本の北海道での2020年に目指すべき「省エネ基準」よりも厳しいものになりました。つまり、省エネ基準が厳しすぎて、思うように簡単には新築戸数を伸ばせないので、とりわけ民間のデベロッパーなどの団体は、省エネ基準の厳格化は数年間、凍結するべきだとの主張をしていました。

しかし、最終的には政治は工程表通りに省エネ建築の厳格化を施工しました。以下の二つが理由です。

1.いくらドイツに難民が押し寄せ、住宅事情が悪化しようとも、気候変動は待ってくれない。子供たちに多大な苦労・問題を先送りするよりも、経済的に余裕がある今の世代が汗をかくべき。

2.難民向けの住宅のみに例外規定を課すわけにはいかない。難民向けの住宅であろうが、なんであろうが、新築で住宅を建築する際には例外規定はなし。

3.ただし、現実的には、現在の法制度で、難民向けの仮設住宅や仮での受け入れ施設にも、すべて現行法を適用すると、宿泊できるところが全く足りないので、以下の点は法規制を緩めるように改定する:

・省エネ規制が厳しくないコンテナハウスなどの難民向けの仮設住宅は、使用期間が最大2年以内という定義を、最大5年以内まで延長する。

・体育館や商業・工場跡の建物を、難民受け入れのための住居に改修する場合は、現行の住宅向けの省エネ規制を適用するためには多大な工事が発生し、短期間での対応が困難なため、2018年末までの3年間は適用を猶予する。

もちろん、難民向けの仮設のコンテナ住宅でも冬場の屋内の最低温度は19度を下回らないように暖房設備が設計、稼働しています(室内が暑すぎて、外は氷点下なのに窓を開けている近所のコンテナハウスも頻繁に目にしましたが・・・これは難民の方への住まい方の教育が必要)。

人権とはそういうものなんだと感じた一連の出来事でした。

 

 


今回のメールニュース、いかがでしたか? それでは、次回もお楽しみに!




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論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョン社では、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com







 

新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞20163月28日第49

より転載】

スイス:全国版のソーラー屋根台帳を作成

 

 

ソーラー屋根台帳とは、地域の各建物の屋根におけるソーラーエネルギー利用のポテンシャルを、地理データを用いて示すネット上のサービスだ。ドイツ語圏の国々では、先進的なエネルギー政策を実施する自治体や郡、州の多くで、ソーラーエネルギー利用を推進するツールとして作成・公開されている。日本でも東京都の取り組みが有名だ。

 

福島第一原発事故後に脱原発を決定したスイスでは、水力と並んで太陽光発電を最も重要な将来の電源として位置付けている。そのため国は、これまで一部の地域でのみ実施されていたソーラー屋根台帳について、国土を面的に覆う全国版を作成することにした。そして2016年2月中旬には、エネルギー庁が運営するサイトwww.sonnendach.chにて、スイスにある建物の半分を載せたマップが公開された。残りの半分も2018年初頭までに公開されていく予定だ。

 

スイスの全国版ソーラー屋根台帳のサイトでは、住所を入力するか、地図をクリックすることで、興味のある屋根面のポテンシャルを見ることができる。屋根面は角度・方位の異なる面ごとに、4段階の利用適正レベルに振り分けられ、色分けして示されている。そして、それぞれの屋根面ごとに、太陽光発電ならば発電量と発電による収入が示される。後者は、電力の自家消費による省コストおよび余剰売電分の合計となる。また月ごとの発電量のグラフも示される。

 

太陽熱温水器の場合には、その建物の暖房熱需要や住民数を配慮した上での適切な設置面積と集熱量、必要なタンクの大きさ、そして熱供給に貢献するパーセンテージなどが示される。その他に、屋根の方位や角度、面積、一平方㍍あたりの平均日射量といった基礎データも表示される。そして、これらのデータはPDFファイルとしてダウンロードすることができる。

 

この全国版のソーラー屋根台帳は、国がもともと所有していたデータを組み合わせて作られたものだ。基盤となるのは、連邦国土地形庁が所有する建物の3Dデータバンク。ここには、スイスにあるすべての建物の屋根の方位や面積、傾斜のほか、建物の建設年や容積、総改修年のデータも含まれている。また、同庁が所有する地形に関するデータバンクを用いて、建物や森林、植物や山による日陰の分析が取り込まれた。気候データには、連邦気象・気候庁の衛星による日射量データを用いている。地理および気象データの加工は気象・気候庁が行い、ユーザー向けのサイト作りはエネルギー庁が手掛けた。

 

しかし消費者にとっては、こういったソーラー屋根台帳の情報は、ソーラーエネルギー利用へのきっかけを作る第一歩に過ぎない。そのためソーラー屋根台帳のサイトからは、具体的な設備建設の手引きとなるサイトにジャンプできるようになっている。こちらもエネルギー庁が運営するサイトで、具体的な設備の設置コストや助成金、ペイバック年数といった情報が得られるほか、登録された地域の信頼できる業者のリストが示されている。さらに、業者からの見積もりを取り寄せる際に用いる質問リストのPDFがダウンロードできたり、取り寄せた見積もりをエネルギー庁のエキスパートがチェックしてくれる無料サービスも提供されており、消費者を手取り足取り導いている。

 

スイスでは長期的に電力の20%を太陽光発電により、熱の10%を太陽熱温水器により供給することを目標としている。土地が少ない小国であるため、野建て太陽光発電の建設はほとんど行われておらず、上記の目標を屋根や外壁の一部を利用することで達成する予定だ。太陽光発電については、人口一人あたり12平方㍍の設置が必要であるという。この目標に近づくためにも、住民が自らの建物のポテンシャルを確認したり、市民エネルギー協同組合がポテンシャルの大きな地域の屋根を発掘するツールになるソーラー屋根台帳の活用が、スイスでは期待されている。

 

スイスの全国版ソーラー屋根台帳のサイト:www.sonnendach.ch(地図をクリック、拡大していくと各屋根の適正を見ることができる。)

図1










写真 :全国版ソーラー屋根台帳の一例。一つの建物の屋根でも方位や角度が異なる屋根面別に、適正が4段階に色分けして示されている。©www.sonnendach.ch

 


(囲み記事) ソーラー屋根台帳を活用した自治体の太陽光推進キャンペーン例

オーストリア西端に位置する人口3320人の山村ツヴィッシェンヴァッサーでも、エネルギー自立に取り組む先進地域として、ソーラー屋根台帳が作成された。その結果、同村には屋根置きの太陽光発電だけでも村の電力消費の1・5倍を生産するポテンシャルがあることが分かった。このポテンシャルを生かすために、自治体はソーラー屋根台帳の公表後に、地域の太陽光発電業者と銀行と協力してキャンペーンを開始。業者には、品質保証付きの太陽光発電システムを、建設許認可や売電手続きまでを含んだ固定価格で提供するパッケージ商品を開発させた。これに対して地域銀行が好条件による融資を簡易な手続きで受けられるサービスを提供した。そして、自治体が住民にこのパッケージに関する情報提供キャンペーンを行った。住民からの反響は大きく、同村では100日間で100台の太陽光発電設備が新規に設置された。現在、ツヴィッシェンヴァッサー村の屋根には1・52㍋㍗の太陽光発電が設置されており、村の電力消費の15%分を生産している。その大半が、ソーラー屋根台帳の公表後に設置されたものである。  (滝川薫)



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論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョン社では、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com

新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーをこのブログに転載していきます。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

 

【下記、新エネルギー新聞201637日第47 -  321日第48より転載】


 

オーストリア:ブルゲンラント州、10年間で電力自立を達成

~鳥類保全との協働による風力開発が鍵に

 

 

鳥類と景観保全のホットスポット

オーストリア東端に位置するブルゲンラント州は、滋賀県ほどの大きさの土地に29万人が暮らす自然が豊かな地方である。その北部に広がる平野の風況は内陸国のオーストリアでは特に優れており、地上70㍍での平均風速が6・5㍍/秒に達する。同州では、2003年から13年にかけての集中的な風力増産により、再エネによる電力自給率を3%から100%に成長させた。現在、設置出力986㍋㍗、412基の風車が立地し、オーストリアで最も風力利用の盛んな地域となっている。

 

これらの風車が集中して立地するブルゲンラント州北部は、ユネスコ世界遺産に登録された広大なノイジードル湖の文化的景観や、多数の湿地や湖沼から成る自然保護地帯や国立公園を有する。特に鳥類に関しては、ヨーロッパレベルでの重要性を持つ稀少種の生息域だ。そして、自然を目玉としたグリーンツーリズムも盛んだ。

 

南ドイツやオーストリア、スイスでは、風車建設のプロジェクトは、たとえ慎重な環境アセスメントが行われていても、鳥類保護団体や景観保全団体の激しい反対運動の対象になりやすい。そのような中、なぜブルゲンラント州では鳥類・景観保全のホットスポットでありながら、短期間で多くの風車を実現することができたのだろうか?

 

州の風力利用空間計画によるゾーン指定

成功のポイントの1つは、州の主導による質の高い風力利用空間計画の策定にある。

2002年にオーストリアで再エネ電力の買取制度が導入されると、ブルゲンラント州でも翌年には風力開発ブームが始まる。こういった発展を見越して、州政府は2002年に風力利用のための地域空間計画を策定させた。従来のように各自治体が別々に風力のための土地利用計画を行うのではなく、州全体で広域にコーディネートすることが不可欠であると考えたからだ。

 

州の風力利用空間計画では、まず風力建設の「禁止ゾーン」が定められた。そこには、居住地の発展、景観保全、特定種の鳥の生息地保全、保養地の保全が反映された。例えばユネスコ世界遺産に指定された地域を禁止ゾーンするだけでなく、そこから見える地域も禁止ゾーンとした。

その次に、残った地域の中から、居住地に対するウィンドパークの視覚効果やその他の影響を分析した結果、「適性ゾーン」が決定された。この風力利用空間計画によるゾーニングは、ブルゲンラント州では今日まで見直しを重ねながら厳格に運用されている。これにより行政の許認可審査の手間が減少するほか、風力開発会社にとっても安定した投資環境が整った。

 

自然保護団体を巻き込む

もう1つの成功のポイントは、この風力のための空間計画の策定や運用に、専門性の高い自然保護団体を重要なステクホルダーとして参加させたことである。州知事ハンス・ニースル氏はオーストリア放送協会のインタビューに対してこう語っている。

「私の視点からは2002~03年の時点から、(州が風力増産を)非常に体系的に進めてきたことが重要なステップでした~具体的にはWWFやバードライフといったNGO、そしてオーストリア空間計画研究所などを巻き込んだことです。」

 

空間計画の策定グループには、著名なオーストリア空間計画研究所を中心としながら、州行政の環境保全局、ノイジードル湖生物観測所、そして民間からはオーストリア最大の鳥類保全団体であるバードライフ・オーストリア、WWFオーストリアといったNGOが参加した。その他、州政府や自治体、開発会社、観光業関係者も参加して、コンセンサスを形成していった。

 

特に自然保護団体は、この地域の鳥類に関する豊富な調査データを有しており、それを空間計画に反映させることに貢献した。また、開発においては鳥類観測を行ったり、開発会社と共に失われる自然の代替ビオトープ整備にも携わっている。自然保護団体が、自ら禁止ゾーン・適正ゾーンの策定やその運用に加わることで、自然保護の視点からも、風力推進の視点からも、納得できる妥協策を見出すことが出来た。そのため自然保護団体からは、風車建設に対する反対運動は起こらなかった。

 

社会的な受容度の高さ

こういった風力増設のための戦略的な行動の背景には、州政府や州議会の強い意思があった。ブルゲンラント州では、2000年から知事を務めるニースル氏が、積極的に風力を推進してきた。そして2006年には州議会が、すべての政党の賛同を得て、2013年までに電力を再エネ100%で供給することを決議した。そして、この目標は予定通りに実現された。

 

また、風力設備の開発に携わったのは、主に州の所有するエネルギー・ブルゲンラント社の子会社と、州内の2つの開発会社だった。地域の会社が中心になることで、風力開発から得られる経済的なメリットが、地域に還元される環境が整っていた。そして、これらの開発会社や州からは、計画当初から住民に対してオープンな情報提供が行われてきた。こうして政治の側や住民の側からも、風力増産への反対が出なかった。産業が盛んではない同州の住民の多くが、風力増産を「歴史的なチャンス」と考えていたことも、社会的な受容度の高さに繋がった。

 

5つの成功の秘訣

空間計画の策定段階から同州での風力開発を同伴してきたノイジードル湖生物観測所のアルフレード・グリュール博士によると、稀少種のバードストライクは、本格的な風力開発が始まって以来3羽に留まっており、種の個体数は非常に安定しているという。鳥類保全の目標もしっかりと達成できているのだ。これは、開発初期からの自然保護団体との協働作業の大きな成果と言えよう。風車新設の段階が終了したブルゲンラント州では、今後の開発は既存設備の建て替え(リパワリング)が中心となるが、州はその際にも鳥類保全の視点から、いっそうの改善を進めていく計画だ。

 

WWFオーストリアでは、ブルゲンラント州の風力開発を、模範的な「ベスト・プラクティス」として褒め称え、その取組を紹介する冊子を発刊している。その中で、WWFは同州の成功の秘訣を次の5点にまとめている。1・目標に邁進する政治家、2・革新的な空間計画、3・専門性の高い自然保護団体、4・先見性ある行政、5・構築的な協働関係、である。

 

もちろん、同州で成功要因となった条件の多くは、他の地域にコピーできるものではない。しかし、州政府の主導による広域の風力空間計画を、鳥類保全や自然保護団体の本格的な参加により策定し、運用していくことの重要性については、オーストリアや日本の多くの地域での風力開発にとっても参考になりそうだ。(滝川薫)

写真2 

 

 














写真: ©Energie Burgenland

ブルゲンラント州北部に建つ風車パーク。点々と建てるのではなく、適正ゾーンにはパークとして集約して建設されている

自然保護地帯の多いブルゲンラント州では、自然保護団体との構築的な協働作業により、風力適

性ゾーンと禁止ゾーンを定めることで、鳥類保全と風力増産という二つの目的を両立させた。





論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョン社では、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

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http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com

 






新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーのいくつかをこのブログに転載します。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

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【下記、新エネルギー新聞2015年1228日第42号・2016年1月25日第43号より転載】



オーストリア: エネルギー小売り会社に年0・6%の省エネ対策を義務化



●年1・5%の効率向上を目指す省エネ法

オーストリアでは2015年1月より新しい省エネ法が完全施行された。同法の目的は、EUが掲げる省エネ目標を加盟国として達成することである。それは、2020年までにエネルギー利用効率を2005年比で20%向上させるというものだ。オーストリアの省エネ法では、この目標を達成するために、2020年までに高効率化によって最終エネルギー消費量を年1万4千㌐㍗時、累積で8万6千㌐㍗時を削減することを目指す。それにより総最終エネルギー消費量を29万1千㌐㍗時以下に抑える。

 

同法では、この省エネ目標量の51%を後述するエネルギー小売り会社への省エネ義務化により、残りの49%については国の戦略的対策(規制や助成、環境税等)により達成するとしている。その他、従業員250人以上の企業に対しては、エネルギー監査やエネルギーマネジメントシステムの導入が義務付けられた。同法の導入によりオーストリアでは、最終エネルギー消費において年1・5%以上の省エネ効果が見込まれている。

 

●小売り会社への省エネ対策義務化

省エネ法の特徴は、エネルギー小売り会社に一定の省エネ対策の実施を義務付けている点である。具体的には、オーストリア国内で年25㌐㍗時以上のエネルギーをエンドユーザーに販売する会社は、前年の販売エネルギー量の0・6%に相当する省エネルギー対策を毎年実施しなければならない。例えば2014年の売上げが50㌐㍗時の業者ならば、2015年に0・3㌐㍗時分の省エネ対策を行わなければいけないという意味だ。

 

義務化の対象には、電力やガス会社だけでなく、暖房用オイルや木質ペレット、ガソリンやディーゼル販売業者、そしてゴミ焼却設備の排熱や木質チップを熱源とした地域熱供給会社も含まれる。これらのエネルギー小売り会社は、義務化された㌗時分の省エネ対策を社内あるいは顧客の世帯や企業で実施することもできれば、他社に実施を委託することもできる。また、0・6%分の省エネ対策が実施できなかった場合には、国に㌔㍗時あたり20ユーロセントの罰則金を支払わなければならない。国はこの罰則金を資金として、代替となる省エネ対策を助成する仕組みになっている。

 

同法のポイントは、小売り会社に対してエネルギー販売量の削減を求めるものではないという点だ。小売り会社にとっては、義務付けられた量の省エネ対策を実施しながらも、エネルギー販売量や売上げを増やすことが可能な制度になっている。

 

●貧困世帯での省エネ対策は1・5倍にカウント

どのような省エネ対策に対して、何㌗時の削減効果が認められるのかは、オーストリアエネルギー機関内に設置されたモニタリング局により定義されている。対策分野の一例を挙げると企業や家庭における照明交換、エネルギーアドバイス、地域熱供給網への接続、断熱改修、高効率ボイラーへの交換、温水循環ポンプの交換、スタンバイ防止、工場排熱利用などがある。

 

また同法では、エネルギー小売り会社による省エネ対策の40%は、世帯分野で実施されなければいけないとしている。基本的に住宅内部での対策となるが、ガソリンやディーゼル販売業者に関しては自動車や公共交通の分野での省エネ対策も認めている。世帯分野での対策に関して興味深いのは、収入が少ない世帯における対策は、省エネ量が1・5倍にカウントされるというルールだ。これにより、貧困世帯での省エネ対策を重点的に進めさせるインセンティブが設けられている。

 

●省エネ市場に6400人分の雇用創出効果

こういったエネルギー小売り会社への省エネ対策の義務化や、罰則金を財源とした省エネ対策の助成により、オーストリアでは省エネ市場のダイナミックな活性化が予測されている。エネルギー小売り会社による省エネ対策だけでも、2014年から2020年の7年間に渡り年2億ユーロの投資が行われる。オーストリアの科学・研究・経済省の発表によると、省エネ法の実施により国内総生産高は5億5000万ユーロ向上し、未来産業である省エネ分野に6400人分の雇用が創出されるという。

 

CO2削減効果も高い。同省によると、エネルギー小売り会社による省エネ対策だけでも、1400万トンのCO2削減効果がある。2011年比では-17%の削減になる。加えて先述した国の戦略的対策により追加で1350万トン、-16%の削減効果がもたらされる。

 

会計事務所デロイト・オーストリアが今年3月に行ったアンケート調査によると、エネルギー小売り会社の85

%は、義務化された省エネ対策を自らの顧客の企業や世帯で実施する予定であると答えている。小売り会社による多様なエネルギーサービス事業の展開に繋がるはずだ。導入から一年を経たばかりの省エネ法であるが、今後の成果に注目して行きたい。(滝川薫)



≪インタビュー:フォーアールベルク州に見る省エネ法の影響≫

フォーアールベルク州はオーストリア最西端に位置する人口38万人の州で、国内でも経済活動が最も盛んな地域のひとつである。同州のエネルギー政策は、2050年までに域内の再エネ資源によりエネルギー自立することを目指している。そのためには50%の省エネと50%の再エネ増産が必要であるとされている。

エネルギー自立の目標を実現するために、同州では2020年までに実施すべき「101の孫に通じる対策」を策定。具体的には2020年までに建物の熱分野で-20%、電力分野で-17%、交通分野で-20%の省エネを目指している。しかし、モニタリングによると電力と交通分野での省エネは目標路線に乗っていない。

そのため、2015年に国が施行した省エネ法には、こういった州の取り組みを後押しするツールとなることが期待されている。州行政のエネルギー・気候保全専門部長のクリスティアン・フェーゲルさんに、同法の地域社会への影響について話を聞いた。

Q:国の省エネ法施行から1年、フォーアールベルク州にはどのような影響が見られますか?

期待通り、エネルギー供給会社たちが、家庭と企業部門での省エネ対策をサポートする活動を大幅に強化してきています。

Q:エネルギー小売り会社は具体的にどのような省エネ対策を実施していますか?

エネルギー小売り会社は例えば、家庭向け対策としては、LED照明や節水シャワーノズルといった製品を無料あるいは格安価格で提供したり、省エネ型家電への購入割引券を提供しています。産業向けの対策としては例えば、エネルギー供給会社のホストと運営により、地域企業の「省エネ学習ネットワーク」が立ち上げられ、企業が省エネのためのベストアイディアを真似し合うための場が作られました。(下、囲み記事参照)

Q:エネルギー小売り会社は、省エネ対策を実施する代わりに、国に罰則金を支払うことでも対処できます。実際には、どう対処されているのでしょうか?

国に払われる罰則金は、国が省エネ助成金として再分配します。そこに州は関わることができません。よってフォーアールベルク州で省エネ法に関わっているすべての関係者は、省エネへの投資を州内で行うことを目指しています。

Q:住民や企業への経済的負担は大きくならないのでしょうか?

オーストリア全体では、2014年から2020年までにエネルギー小売り会社による省エネ対策のための累積コストが14億ユーロ生じます。この一部はエネルギー料金に上乗せされることでしょう。対して省エネ対策により累積で54億ユーロの省コストが生じます。よって企業や家庭へのメリットは、省エネ対策コストの何倍も大きいものになります。対策の40%は家庭向けに行われます。私たちは、2015年から2020年の間に一世帯あたり最低でも250ユーロの省コスト効果があると計算しています。住民にとっても、経済的には明らかな負担軽減に繋がります。

(以上、フェーゲル氏回答)

 

≪地域企業による「省エネ学習ネットワーク」≫

今回の省エネ法がきっかけとなり、オーストリアのフォーアールベルク州では地域のエネルギー供給会社がホストとなって、新しい地域企業の「省エネ学習ネットワーク」が作られた。これは、地域内の1015件の中規模の企業がネットワークを作り、相互に学び合いながら省エネ・省コストを効率的に実施していく仕組みだ。「省エネ学習ネットワーク」は1987年にスイスで始まった取り組みで、現在スイスでは70、ドイツでは60のネットワークが活動している。

この「省エネ学習ネットワーク」では、3~4年のプロジェクト期間の間に次のプロセスを介して、参加企業の省エネ対策を推進する。最初にネットワークに参加する企業のエネルギー診断が個別に行われ、そこから対策や効果が導き出される。この診断から導き出された経済的対策を基盤としてネットワークとしての省エネ・CO2削減目標が決定される。同時に年3~4回のネットワーク会合がメンバー企業間で持たれ、各企業のエネルギー担当者が経験交換や合同学習を行う。成果については毎年モニタリングが行われ、各企業の省エネ達成度、グループ全体の達成度を評価する。

フラウンホーファー・システム革新研究所(ISI)の調査によると、こういった「省エネ学習ネットワーク」に参加する企業では、年2~3%の省エネが達成されているという。

(滝川薫)

 


論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」日本語版のダウンロードリンク

 ミット・エナジー・ヴィジョンでは、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。

詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com



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【下記、新エネルギー新聞2015年12月14日第41号より転載】


ドイツ:第7回「100%再生可能エネルギー地域会議」開催

~入札制度への移行を前にした危惧と戦略

 

再エネ先進地域の会議に500人参加

2015年1110日~11日にドイツ・ヘッセン州のカッセルにて、第7回「100%再生可能エネルギー地域会議」が開催された。自治体や郡といった地域レベルでのエネルギー自立や気候保全をテーマとし、地域間の経験交換を促す会議としては、ドイツで最大規模のものである。多くの地方行政が難民受け入れの急務に追われる中、自治体の首長や行政関係者を中心とした500人もの参加者が集まった。

 

今年の会議のモットーは「我々は前進する!」。その背景には、再エネ電力の推進に背を向ける国の政策やパリ気候会議の結果に振り回されることなく、「100%再生可能エネルギー地域」(囲み記事参照)では、今後もエネルギー大転換を進めて行こう、という主催者の想いが込められている。会議では、地域のエネルギー自立に関わる幅広いテーマを扱う20のフォーラムにて、盛んな議論が行われた。テーマの一例を挙げれば、電力100%再エネを達成した地域での次なる取組み、住宅公団におけるエネルギー大転換、農村部における交通コンセプト、市民エネルギー組合の今後の戦略など。国際交流プログラムには13か国から40名もが参加した。

 

自治体と郡が再エネと気候保全の推進力

同会議を後援するヘッセン州の経済・エネルギー・交通大臣で、緑の党出身のタレック・アル-ヴァジーア氏は、そのスピーチの中で、気候保全とエネルギー大転換における自治体の役割の重要性を改めて強調した。「ヘッセン州でのエネルギー大転換は加速しています。自治体と、自治体のエネルギー公社は、その最も重用なプレイヤーに属します。(中略)分散型の構造は、省エネと気候保全においても大きなポテンシャルを内包しています。分散型であることにより、再エネを用いた経済的な付加価値が地域内に創出され、経済的な成功への幅広い参与が可能になるのです。」ヘッセン州では、自治体や市民によるエネルギー転換への支援をいっそう強化していく予定だという。

 

ドイツ環境庁環境計画・持続可能性戦略部長のハリー・レーマン博士からも同様の声が聞かれた。「自治体は、現場での計画・許認可の中心的な機関として、土地や不動産の所有者、そしてもちろんドイツに900ある自治体エネルギー公社の所有者として、地域に再エネと省エネを構築し、エネルギー分野からの温暖化ガスを削減していくための決定的な推進力です。」連邦政府のレベルでは、この数年に渡り、分散型の再エネ電力の増産にブレーキをかける政策が実施されている。そのような中で、この両者のメッセージは、地域でエネルギー自立に取り組む参加者を勇気づけるものであった。

 

太陽光発電の入札制度からの経験

同会議での発表や議論からは、ドイツの先進的な郡や自治体、そして市民のエネルギー大転換への意志と行動力は衰えていないことが感じられた。しかし他方では、会議全体に昨年に増して重々しい雰囲気が漂っていた。参加者の数も企業展示の数も、数年前と比べると2~3割は減っている。

 

その理由の1つは、再エネ電力増産のスピードダウンだ。ドイツの電力消費量の33%が再エネ電力で生産されるようになったとはいえ、改訂再エネ法が2014年8月に施行された後(本誌第6号参照)、ドイツの再エネ電力の増産量は大幅に落ち込んでいる。2015年の新規設置容量は、太陽光発電が約1・3㌐㍗の予測で、国の目標設定である2・5㌐㍗を大きく下回る。100㍋㍗が目標とされていたバイオガスの新規設置容量は、僅か19㍋㍗と壊滅状態である。唯一、陸上風力は3・6㌐㍗が新設され国の目標よりは上回るものの、昨年比では1㌐㍗減っており、今後も減少が見込まれている。

 

こういった現状に加えて本会議に暗い影を落としていたのが、入札制度への移行であり、会議でも一番の議論と関心の的となっていた。ドイツでは、野立て太陽光発電については今年から入札制度が実施され、陸上風力についても2017年に入札制度に以降することになっている。1つのフォーラムでは、入札制度からの経験について、連邦系統規制庁と経済・エネルギー省、市民エネルギー組合の立場からの発表が行われた。野立て太陽光についてはこれまでに合計300㍋㍗の容量を対象として、2回の入札が試験的に実施されている。その入札結果を見ると、市民エネルギー組合は1つのプロジェクトも落札できていない。また第1回目の入札では、容量の40%を1つの企業とその子会社が入札していることも明らかになった。

 

入札制度への地域・市民エネルギーの危機

国が入札で目的としているのは、増産量の制限、安い発電コスト、そして発電事業者の多様性の確保の3点であるという。しかし、事業者の多様性の確保については十分な対策が設けられていないことが上記の入札結果からも見て取れる。そして同制度の犠牲となるのは、これまでドイツのダイナミックな再エネ電力の増産を支えてきた多数の市民エネルギー組合や地元密着の小さな事業者であることも明らかだ。ドイツ協働組合連合の市民エネルギー組合事務局では、入札制度の設計において、小規模な事業者向けの特定枠を設けることを国に要求しているという。

 

会場からは、「入札制度では個々のプロジェクトの発電単価が安くても、多数のプロジェクトが実現できないことを前提としているため、国民経済的に見れば非常に非効率だ」、という憤りの声が多く聞かれた。特に許認可を得るまでに高額の準備費用のかかる風力発電では、入札できないリスクを負担できるのは大手企業のみで、市民エネルギーや小さな自治体公社に出る幕はない。それでも入札制度への移行の中で、地域主体の風力開発にはまだどのような戦略があるのか、またどういった制度改善を要求すべきか、について同会議では議論されていた。例えばドイツの9州では小規模事業者を守るために、6㍋㍗あるいは6基以下の風力設備に対しては入札制度の対象外とすることを国に求めている。

 

「市民エネルギー組合は都市エネルギー公社と協働して入札制度にも取り組むべきだ。それしか道はない。」と、ヴォルフハーゲン市で都市エネルギー公社のマネージャーを務めるマルティン・リュールさんは上記のフォーラムで発言した。人口1・35万人のヴォルフハーゲン市の都市エネルギー公社では、株の75%を自治体が所有し、25%を市民エネルギー組合が所有している。市民と自治体の協働体制により、12㍋㍗の風力と5㍋㍗の太陽光を素早く実現し、地域で消費する電力量を年間収支で100%自給している。このような市民エネルギー組合と都市公社、あるいは開発会社の間の協働体制の強化や連合化により入札制度へ対応していくことは、今後もドイツで地域が主体となった再エネ電力の増産を継続していくためには不可欠な一歩であるように思われた。(滝川薫)

 

 

 姉妹都市で再エネ・気候保全を推進するプロジェクト「レギオ・ツイン」≫

同会議の背景には、カッセルの分散型エネルギー研究所(IdE)が運営するネットワーク「100%再生可能エネルギー地域」がある。このネットワークには地域政策としてエネルギー自立に取り組む郡や自治体が参加している。メンバーは、非常に高いレベルでの取り組みを行っている「100%地域」と、まだ途上にある「スターター地域」、そして都市部でのエネルギー自立を目指す「アーバン地域」に分けられる。今年も会議枠内の表彰式で、3つの地域が「100%地域」に昇格し、さらに3つの新しい「スターター地域」に加わり、ネットワークへの参加地域の数は150に増えた。

 IdE研究所では、同ネットワークを基盤とした新プロジェクトとして、この夏より連邦環境省の助成を得て「レギオ・ツイン」を開始している。このプロジェクトでは、条件の類似した2つの地域を姉妹都市化(ツイニング)することで、地域内での気候保全やエネルギー自立対策のより効果的な実施を目指す。

具体的には、2種類のツイニングが同時進行で行われている。1つ目は「地域間ツイニング」で、先進地域とそうでない地域が師弟関係を結び、1年間に渡りエネルギー・気候政策面で集中的に学習するというもの。現在20の自治体や郡が参加している。2つ目は「対策ツイニング」で、同じ分野で対策を実施しようとしている2つの地域が姉妹関係を結び、1年間に渡り、経験交換しながら対策を同時に実施していくというもの。こちらは「行政内部の気候保全対策」と「農村部での電気自動車シェアリング対策」をテーマとしたツイニングが現在進行中だ。

いづれのツイニングでも、IdE研究所のアドバイザーが、参加を希望する自治体や郡の中から適切なツイニングのパートナーを選出し、参加地域に対して集中的なサポートを提供していく。(滝川薫)

www.regiotwin.de

 

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【下記、新エネルギー新聞2015年11月2日第38号より転載】



ドイツ・エネルコン社:大型風力を自己消費、鋳造工場のエネルギー2割を自給

 

 

本誌25号では、ドイツで広がる産業を対象とした自己消費向けの太陽光発電ビジネスについて報告した。ドイツで最も発電コストが安い再エネ電力である陸上風力についても、産業での自己消費が始まりつつある。

 

陸上風力は、ドイツの総電力消費量の9・4%を占める。その発電コストは年々下降しており、2014年時点で1㌗時あたり5・2~9ユーロセントとなっている。ブルームバーグニューエナジーファイナンス(BNEF)の分析によると、2015年にドイツでは石炭・褐炭を含むあらゆる発電方法の中で、陸上風力が最も安い電源となったという。ちなみに、ドイツの産業用電力の平均価格は1㌗時あたり約15ユーロセント(税込み)である。(出所:Statista

 

こういった背景の下、大型風車の設置や運転に適した場所では、電力消費量の大きな工場施設での風力の自己消費が、経済的にも興味深い選択肢になってきている。その一例が、北ドイツの大手風車メーカ・エネルコン社の、ゲオルグスハイル村にある鋳造工場だ。ハブなどの風車部材を鋳造する同工場では、2014年中旬から風力を直接利用しており、良好な経験を得ている。エネルコン社広報のフェリックス・レーヴァルトさんに話を聞いた。

 

Q:ゲオルグスハイル村にある御社の鋳造工場に設置された自己消費用の風力設備とはどういったものですか?

(レーヴァルト)設置したのは弊社が量産するE-101という風車一基です。出力は3㍋㍗、風受け面の直径は101㍍、タワーの高さは99㍍あります。この風車は鋳造工場の建屋から100㍍離れた隣の敷地に建っています。風車からのケーブルは工場内の配電網にダイレクトに接続されており、電力会社のメーターの手前の部分で工場に電力を注入しています。これにより自社の風力が、外からの電力を押し出す形になります。

 

Q:風力の自己消費は、工場のエネルギー自給にどの程度貢献しているのですか?

(レーヴァルト)この風車は一年800万㌗時を発電しています。しかし、発電量をすべて自己消費しているわけではありません。工場での生産量が少ない週末のような時間帯や、強風が吹いている時間帯には、風車は工場で消費する以上の電力を発電します。よって、実際に工場で直接消費されているのは、風車の発電量の7080%になります。余剰電力は、買取制度を利用して送電会社に売電しています。このE-101は、鋳造工場のエネルギー需要量の20%を供給しています。

 

Q: 大型風力の自己消費を行う上で、これまでに問題はありませんでしたか?

自己消費はこれまで問題なく機能しており、ポジティブな経験しかありません。風力の自己消費には、弊社工場にとっては次のような大きなメリットがあります。電気代を削減できること。工場の電力系統への接続容量を縮小できること。そして鋳造工場の環境収支を改善できることです。

特に経済的な面で、自己消費モデルは魅力的です。風力の自己消費による電気代は、電力会社の産業向け電気代よりも安いからです。

 

Q:風力の自己消費に特に適した産業や立地条件はありますか?

(レーヴァルト)自己消費設備ならではの条件というのは特にありません。重要なのは、工場施設と空間的に繋がった場所で、風車建設に許認可が降りるような敷地があるということです。許認可の条件となる建設・環境的な基準は、自己消費用の風車でも売電用の風車でも同じです。

 

Q:自己消費用の風力市場の今後の見通しは?

(レーヴァルト)弊社鋳造工場における自己消費は、今のところパイロットプロジェクトです。しかし、再エネ電力の買取価格がいっそう下がって行くほどに、消費者にとっては自己消費モデルの魅力は増していきます。(以上、レーヴァルト氏回答)

 

エネルコン社では自社の鋳造工場での経験に基づいて、産業顧客の自己消費プロジェクトの実現をサポートする、新しいサービスの提供を開始した。

世界中で840基の風車を建てたドイツの大手再エネ開発会社ユーヴィの創設者の1人であるマティアス・ヴィレンバッハーは、その著書「メルケル首相への手紙」(いしずえ出版)の中で、産業が風力と太陽光を自己消費する時代の到来を予測している。将来には風力と太陽光の豊かな地域に、安いエネルギー源を求めて製造業が移転し、集まるだろうというものだ。

日本では、多数の工場が風況の良い海岸近くに既に集まっている。陸上風力の自己消費設備が、日本の製造業にとって貴重な競争力の向上に繋がる日は遠くないかもしれない。(滝川薫)



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【下記、新エネルギー新聞2015年10月5日第36号より転載】


スイス:地域の熱・ガス・電力供給網を融合するハイブリッド・センターが運転開始

 

欧州中部では、再エネによる未来の地域エネルギーシステムの構築において、熱(温水)・ガス・電力の供給網を連携して制御・運用するためのハイブリッド・エネルギーセンターが重要な役割を果たすと考えられている。それはエネルギーの需給状況に応じて、電気から熱やガスへ、あるいはガスから熱や電気へというようにエネルギー形態を転換し、それを貯蔵したり、輸送することで、再エネによる高効率で安定した熱・電力・ガス供給を行うための施設である。本誌でも何度か紹介されている余剰の再エネ電力を用いたパワー・トゥ・ガス技術は、その重要な構成要素のひとつだ。

 

6月末に西スイスの小都市ソロトゥルンの近郊で、このようなハイブリッド・センターが運転を開始した。プロジェクトを実現、運営するのはソロトゥルン市が100%所有するレギオ・エネルギー・ソロトゥルン(RES)社。人口1万6500人のソロトゥルン市とその周辺地域で、電力、ガス、地域暖房、水道そしてエネルギーサービス事業の供給を行い、地域の配電網やガス網といった供給インフラも所有する典型的な自治体公社だ。社員数は150人、年1億スイスフラン(約123億円)の売上げがある。

 

RES社のハイブリッド・センターが建設されたのは、同社のガス管網、電力系統、地域暖房網が交差する地点である。もともとゴミ焼却場の排熱を利用した地域熱供給を行っていたRES社では、熱を安定供給するための追加の熱源施設の建設を計画していた。その際に、熱供給設備だけではなく、パワー・トゥ・ガスの要素を組み込むことにより、これまでは個別で運営されていた3つの供給網を連携、融合させた。

「私たちは、(将来的に)大量に生じるソーラーの余剰電力を自社のガス網に貯蔵できることを認識しました。夏季の余剰電力を冬季に利用するのです。」

と、RES社の経営者であるフェリックス・シュトレッリ氏はスイス国営ラジオのインタビューで語っている。

 

再エネ水素をガス管網と地域暖房網で効率的に利用

具体的に同施設には現在、6㍋㍗のガスボイラーが1台、発電容量と発熱容量がそれぞれ1・2㍋㍗のガスコージェネが1台、100立方㍍の蓄熱タンク3本に加え、PEM式の水電解による175㌗の水素製造装置が2台(計350㌗)と、180立方㍍の水素タンクが設置されている。ボイラーやコージェネからの熱は、熱需要の少ない夜間には蓄熱タンクに貯めておき、ピーク時の熱供給に利用する。また市場での電力余剰時に作られた水素は、一度タンクに貯め、そこから天然ガス網に2%までの濃度で混入させている。そしてこのガスが、コージェネやボイラーにも利用される。

 

将来的にハイブリッド・エネルギーセンターには、ガスコージェネや近隣の下水処理場で生じる二酸化炭素を水素と化学反応させることによりメタンガスを作る装置を設置する予定である。メタン化設備により、ガス網の持つ大容量を季節間の蓄電設備として役立てることができるようになる。そうなれば夏に余剰で生じる太陽光や風力の電力により作ったメタンガスを用いて、冬にはガスコージェネで地域暖房と電力供給をサポートすることが現実的になる。

 

このほか、ハイブリッド・センターの敷地には、将来的な発展のためのスペースも残されている。例えば短期的な蓄電のための圧縮空気タンクや大型バッテリーの設置も構想の一部である。あるいは将来的な熱源設備として、深層地熱や木質バイオマスのガス化設備をハイブリッド・センターに接続することも可能である。

 

大量の余剰ソーラー電力への準備として

しかしRES社にとっては、水素製造やメタン化設備は、今日はまだ経済性がとれない、将来のための投資である。経済性の向上のためには制度的な整備も必要だ。例えば今日、水素製造設備は電力のエンドユーザー施設として扱われているため、施設が消費する電力の料金には、エネルギー代に加えて系統利用料金が課せられている。対して系統を安定化させる施設と位置付けられている揚水発電のポンプ消費電力には、スイスでは系統利用料金が免除されている。RES社では、パワー・トゥ・ガスを運転するための電力に関しても同様の扱いを期待している。

 

スイスでは、電力分野のエネルギーシフトの主力として、既存の豊富な水力に加えて、太陽光発電に最も大きな貢献が期待されている。国のシナリオでも、2050年までには約20%が太陽光により供給されることになっている。しかし水力が豊富なスイスでは、夏場は水力だけでも電力需要がまかなえるため、将来的には夏場に大量の余剰の再エネ電力が生じる。ソロトゥルン市だけでも2035年には太陽光発電から3・8ギガ㍗時の余剰電力が生じるという計算だ。これを域内で吸収する手法はいくつかあるが、より大きなパワー・トゥ・ガス施設の利用がその一つである。現在のハイブリッド・センターはソロトゥルン市のエネルギー会社にとって、そのためのノウハウを集め、ビジネスモデルを確立するための第一歩という位置づけなのである。(滝川薫)

 

RES社のハイブリッド・センター:http://www.hybridwerk.ch/



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http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。
詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com


※今日はミット・エナジー・ヴィジョン社のメールニュース2015年冬号を転載します。

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欧州中部の日常は、クリスマス休暇直前のラストスパートに入りましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか
? 皆さまの地域では、今年はどのような省エネ・再エネプロジェクトの進展がありましたか?

MITでは、今年も数々の視察や翻訳、調査を行いました。お世話になった日本の皆さま、そしてドイツ・スイス・オーストリアの皆様に心より感謝致します。2016年も欧州中部より、日本の地域のエネルギーヴェンデをサポートしていきますので、どうぞよろしくお願いします!

今回も、MITメンバー3名から、皆さまにコラムと各種の告知、ご報告についてメールニュースをお送りします。まず最初はご報告から、そしてその後、滝川村上→池田という順で告知を挟みながらコラムを書いています。最後までお楽しみくださいね。

 

 

 

!ご報告!

   論文「都市エネルギー公社の新設と再公有化」の日本語版公開

 

ミット・エナジー・ヴィジョンでは、ドイツのヴッパータール研究所が発刊した「都市エネルギー公社の新設と再公有化」というレポートの日本語版翻訳を行いました。 下記リンクから日本語版をダウンロードして読むことができます。拡散を歓迎します!

 

ダウンロードページ

http://epub.wupperinst.org/frontdoor/index/index/docId/6075

 

ミットの視察参加者の方々はご存じの通り、ドイツでは近年、自治体によるエネルギー公社の新設や、それに伴う地域の送配電網の再公有化・買い戻しというトレンドが見られています。

このレポートは、そういったトレンドの現状と背景を分析し、また自治体がエネルギー供給を行う公社や配電網を所有することで、どのような目的を達成することができ、それにはどういったチャンスとリスクがあるのかを調査し、まとめたものです。

レポートの日本語翻訳は、ドイツの市民エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社の依頼により実現されました。同社およびミット・エナジー・ヴィジョン社では、このレポートが日本での自治体による都市公社の新設や、そのための議論に貢献することを願っています。

 

 

 

MIT:滝川

地域内協働で風力を着実に進展させる

 

 

1年前よりドイツとスイスの国境地帯のシャフハウゼン州に住んでいます。国境が入り組んだこの地域では、数年来、国境を越えた地域間協働による陸上風力の開発が行われています。再来年には、ようやく国境近くのドイツ側の森の中に1つの風力パークの建設が実現しそうです。

 

開発・運転事業者は、両国の地域の11の自治体エネルギー公社と市民エネルギー会社、そして市民エネルギー協働組合の協同体です。協同体により、風力開発のリスクとコストを分散負担し、また風力からの利益も分けあって享受します。地域の風力開発を地域の手で着実に進めるための協働です。

 

しかし、いくら地元の公社たちが主体で、入念な環境アセスが行われていて、法に適い、地域社会に受容されていても、スイスでは鳥類保護団体の反対が必ず出てきます。上記のプロジェクトについても、最近、新聞に地域の鳥類保護団体からの批判的な記事が掲載されました。

 

それを受けた開発側は、すぐに鳥類保護団体と開発協同体や州の代理人、環境アセス事務所を招いた話し合いの場をセットし、意見交換や誤解を解明する作業を行っていました。石橋を叩いて渡るような慎重さで、コンセンサス作りが行われています。

 

こういった状況を、そもそも生じさせないことに成功したのが、オーストリアのブルゲンラント州です。2002年、州による風力開発計画の策定の最初の段階から、鳥類・自然保護、景観保全を代弁する環境団体に参加させ、彼らと共に風力を建設する場所、しない場所を定義し、代替対策等も協働で実現していきました。

 

それにより、僅か15年間でブルゲンラント州にはスムーズに400基もの風車が建設され、地域ポテンシャルを達成。政治的な目標である電力100%再エネも達成できました。州面積の31が自然公園で観光の盛んな地域、という条件の中でのこの協働関係について、当事者のWWFも模範的なモデルとして絶賛しています。

 

私の住む地域では、風力開発と自然保護団体の間には、ここまでの協働関係はまだありません。地域にもよりますが、両者の間に、よりオープンで構築的な協働関係を積極的に作っていくことの重要性を、一住民として身に染みて感じるこの頃です。

 

 

 

MIT:村上

ニュースが多すぎて・・・


今年の秋から現在までのドイツは、ビックニュースに翻弄される毎日でした。ギリシア経済危機、政変どんでん返しのニュースに区切りがついていないときに、同時進行で今年上半期からシリアから大量の難民がEU圏内に押し寄せていましたが、秋にはいよいよEUの受け入れ処理能力を超えはじめると、追い打ちをかけるように一気に大量流入。今年のドイツでは100万人とか、150万人とか、といった途方もない数字の難民の受け入れ数が口にされていますが、すでに現在でも難民登録を済ませていない方が少なくとも20万人以上ドイツ国内にいらっしゃるということで、政治的には緊張を高めています。

 

私は鉄道で移動することが多いのですが、最近は、夜半にホームの端に人目を隠れるようにして待機し、停車した鉄道に飛び乗るような感じの、複数人で移動・行動しているドイツ語、英語が一切通じないシリア(?)、あるいはバルカン半島の方々(?)を何度となく目にしています。彼らはドイツで何らかの希望を手にすることができるのか、それが心配です。

 

また、そうした最中には、フォルクスワーゲン社の排ガス不正操作の問題が発覚。かなりあくどい不正な手口で、役員含め会社ぐるみで、アメリカの厳しい排ガス規制を不正にクリアしていたということで、「ドイツの信頼が・・・」と思われた方も多いでしょう。しかし、フォルクスワーゲンが最初というわけではなく、近年のドイツ銀行の不正決算報告、ルフトハンザの職員管理業務の手落ち、大型ストライキの連発など、ドイツの大手企業のモラルの低下は続いています。

 

加えて、サッカー06年ドイツW杯誘致に絡む買収・汚職も明るみになり、ドイツサッカー連盟やアディダスなどのスポンサー大企業も含めて、「サッカー=カネまみれ」というのも大きな見出しを飾ることになりました。

 

そしてフランス・パリでの11.13テロ事件です。テレビや雑誌、新聞では、狂ったようにこのテーマを扱っています。とりわけ、サッカーの独仏代表の親善試合会場を狙った爆破もあったので、ニュース性は抜群です。

 

そのような連日のように怒涛に続くビックニュースの陰で、ドイツの社会・経済改革の本筋である「エネルギーシフト」をとりまくニュースはほとんど盛り上がりませんでした。ですので、あまり日の目を見なかったニュースを3つほど取り上げてみたいと思います。

 

2050年までにエネルギー消費量を半減するため、毎年2.1%の社会のエネルギー効率を改善してゆく必要があるが、その対策の中でも最重要である「建物の省エネ建築と省エネ改修」については、難民収容施設の大々的な急ピッチでの新設という問題があったものの(=つまり難民収容の仮施設でも、ドイツの省エネ基準=二アリーパッシブを満たす必要あり)、ロードマップと変わらず201611日からさらに25%厳しくなることで確定されました。

 

・再エネ電力の推進とともに(2015年はすでに再エネ割合が33%との予測が!)、電力需給システムのフレキシビリティ(柔軟性)を大幅に向上させる必要があります。同時に、柔軟性が高いため当面はバックアップ機能の柱となるが、同時に設備利用率が低く抑えられてしまう天然ガス発電の採算性を向上させることも急務です。そのために「電力市場2.0」と名付けられたコンセプトがこの夏には決まり、政府から発表されましたが、秋には関連法(エネルギー経済法など)の草案が議会に提出され、来春の決議・施行を目指して集中的な議論が行われています。

 

・上記と関連しますが、再エネ電力を柔軟に電力需給システムに取り込むために、地域熱供給とコジェネの推進は欠かせません(パワー・トゥー・ヒート、パワー・トゥー・ガスなどの将来の取り組みとも関連)。現在のドイツでは、地域熱供給&コジェネによる発電量は全体の17%ですが、それを25%に高めながら、さらに柔軟性を向上させる「コジェネ法」の法改正の議論も大詰め。こちらも来春の決議・施行を目指して、集中的な議論が行われています。

 

上記の3つのニュースについては、私のフライブルク市・ヴァインガルテン住宅地の案内を聴かれた方には、その重大性が分かっていただけるはずです。分からない? では、以下の資料を参考にしてみてください。単なる再エネの拡張から、次のフェーズに移ったドイツのエネルギーシフトの様子を俯瞰できるものと思います。

 

レポート「ドイツのエネルギー戦略から日本のエネルギーシフトの提案」

著:(一社)クラブヴォーバン、(株)日本エネルギー機関(一社)日本エネルギーパス協会

ダウンロードリンク:http://bit.ly/1I0MzZL

 

 

MIT:池田

タイタニックとノアの方舟

 

今月パリで開催されたCOP21(国連気候変動会議)は、196カ国が協定に調印するという成功に終わりました。ドイツの報道では、「歴史的な出来事」など、ポジティブな評価が多いです。環境NGOBUNDやグリーンピースなども、今後の実践の問題や課題を指摘しながらも、希望が持てる大きな一歩であると、評価しています。

 

現在は世界の合い言葉になっている「持続可能性」は、今から302年前、ドイツの林業の世界で生まれました。具体的には、カルロビッツという人物が、「森林の持続可能な利用」を、文章にして発表しました。

 

それ以前から、森林を絶やすことなく将来に渡って持続的に利用していく考え方、制度、実践は、世界各地にありました。その発想は、農家林家や村や地域、木材を必要とする産業から生まれています。共通するのは、「将来への配慮」と「危機意識」です。「今の自分たちの世代のことだけを考えて、森を一気に切ってしまったら、将来の世代は生きていけない、村や地域や産業は、消滅してしまう。将来の世代もしっかり生活していけるような森林利用をしなければならない」という考え方が根本にあります。

 

持続可能な森林利用という概念を、初めてしっかり文章にまとめて世に出したカルロビッツという人物も、木を利用する鉱山の経営者でした。彼のモチベーションは、「自分の会社が30年後も50年後も、自分の子供の代も孫の代も、しっかり存続していくためには、地域の限られた資源である森林を計画的に持続的に使っていかなければならない」ということでした。

 

「持続可能性」という概念は、偉い学者や官僚や政治家が考えたものではありません。家族や企業や地域の将来を真剣に「思いやる」現場の人たちから生まれた言葉です。

 

パリのCOP21が将来への希望がもてる大きな歴史的な一歩になったことの背景には、国連のコーディネーターの政治的な事前努力や手腕が挙げられていますが、ここ数年世界各地で多発している深刻な気候災害で、「危機意識」が世界的に高まったことも、協定合意をプッシュした大きな要素だと私は思います。世界一丸となって何か具体的なことをしないと、次の世代の将来が危うい、という「配慮の気持ち」が高まっています。また、過去数十年に渡って、環境保護、気候保全を訴え、地域で世界で活躍する環境団体や市民団体の長年の粘り強い努力も忘れてはなりません。市民の意識を、世論を変えた、変えている原動力です。そして、ドイツでここ数年実践されている「市民による現場からのエネルギーヴェンデ(大転換)」も、将来への希望を示す役割を果たしています。

 

ドイツのカリスマ料理家で、ドイツサッカーナショナルチームの料理長も努めるシュトロームベルクという人物が次のような意味深いことを言っています。

 

「タイタニックは、プロがつくった。ノアの方舟は素人がつくった」

 

2つの船の結末は、みなさんご存知の通りです。タイタニックは沈みました。ノアの方舟はみんなの命を救いました。

 

政治・経済・科学技術の分野のプロと言われる人たちがつくって運転している船は沈みかけています。生き残るためには、素人がつくったノアの方舟に乗り換えなければなりません。素人とは、現場に生きる、地に足の着いた、家族を、企業を、地域を、世代を超えて思いやり、行動する人たちです。

 

 

 

 

!お知らせ!

★ソーラーコンプレックス社による日本語ニュースレター  2015

 

ミット・エナジー・ヴィジョンでは、南ドイツの市民エネルギー会社であるソーラーコンプレックス社のニュースレターの日本語版作成に協力しています。下記より、20157月号と10月号とをご覧になることができます。現在進行中の同社のプロジェクトの様子が分かります。

日本で地域密着の市民エネルギーに携わる方々の参考にして頂ければ幸いです。

http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6275463/7月号)

http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6357207/10月末号)

http://48787.seu1.cleverreach.com/m/6413767/12月号)

 

 

 

今回のメールニュース、いかがでしたか? それでは、次回もお楽しみに!

 

新エネルギー新聞(新農林社)に毎月国際ニュースを寄稿しています。新エネルギー新聞の許可を得て、バックナンバーのいくつかをこのブログに転載します。

掲載誌:新エネルギー新聞http://www.newenergy-news.com/

詳しい情報は次リンクより:www.mit-energy-vision.com

 

【下記、新エネルギー新聞2015824日第33号より転載】

 

 

ドイツ:再エネ収入で空き家対策に成功、マスターハウゼン村

 

ドイツ南西部、人口10・2万人のライン‐フンスリュック郡は、ドイツの中でも先進的なエネルギー自立地域として知られている。90年代末より、郡や自治体といった地域行政が主体となり、総合的な省エネ対策と再生可能エネルギー増産を、住民と共に進めてきた。電力については、既に域内需要量の2倍近くを風力と太陽光を中心とした再エネにより生産している。また2020年までに、電力だけでなく、交通と熱の分野も含めてゼロエミッション地域になることを政策目標に掲げている。

 

農村地帯の多い同郡では、エネルギー自立により地域経済を活性化することを目指してきた。そのため再エネプロジェクトでは、住民や自治体が得るメリットが大きくなるような様々な工夫を取り入れている。例えば、自治体が土地利用計画の中で風力の適正地を指定する際には、基本的に自治体が所有する土地が指定されている。風力設備からの土地賃借収入が自治体に入ることにより、風力利用のメリットが住民に公平に還元されるからだ。それが風力プロジェクトへの住民の受容度を高めることにも繋がっている。

 

同郡の山間農村で人口974人のマスターハウゼン村が良い例だ。この村では自治体の土地に、2006年と2010年に出力27・8メガ㍗の風力パークを、2011年には2・8メガ㍗のソーラーパークを建設させた。事業者は地域外企業であるが、土地賃借収入は自治体の懐に入る。風力パークについては、土地賃借料に加えて売電収入の一部が自治体に支払われる契約になっており、その額は平均して年32万ユーロ(約4650万円)になる。ソーラーパークについては、20年分の土地賃借料である63万ユーロ(約8615万円)を一括前払いさせ、20年後には設備が自治体の所有に移行する契約内容となっている。

 

これらの土地賃借収入を用いてマスターハウゼン村では、公共インフラの充実や村の活性化を行ってきた。その1つが、2011年から実施している空き家や要改修の建物の改修や再生への助成制度だ。村の中心部での空き家増加が問題となっていたためだ。具体的には、1945年以前に建てられた住宅を購入する人に対して、自治体が1万ユーロの助成金を出している。さらに子供が入居する場合には1人あたり1千ユーロと、銀行融資の利子の5%が追加で助成される。合計すると助成額は1軒あたり最大1万5千ユーロとなる。助成条件は3つあり、1つ目は家の所有者が変わること、2つ目は省エネ改修を行うこと、3つ目は外観の改善のための改修を行うことである。自治体は助成制度のために、上述の土地賃借収入から毎年5万ユーロを予算化している。

 

これまでの成果として、マスターハウゼン村では12棟の古い家がこの助成金を受けて、改修、再生された。そのほとんどが空き家で、中には長年放置されていたものもあった。マスターハウゼン村の元村長で、こういった発展を導いてきたトニ・クリストさんはこう語る。

「これによりマスターハウゼン村の中心部には、この地域の他の村と違って空き家が無くなりました。また助成対象になる古い家が売りに出ると、すぐに買い手が着くようになりました。景観の改善効果も非常にポジティブです!改修された家の中には、村の宝石のようになった建物もあります。」

 

マスターハウゼン村では上記の土地賃借収入を利用して、この他にも様々なプロジェクトを実施して、暮らしやすい村づくりを進めている。例えば昨年には、廃校になっていた小学校を140万ユーロかけて総改修し、高齢者用住宅10戸と診療所、カフェの入った多機能建築を実現した。またNPO団体による音楽サークルの練習場や青年活動の空間も14万ユーロかけて新設した。ドイツでは自治体レベルのNPO活動が盛んで、老若男女の地域住民が参加している。そのため自治体にとってNPO活動の支援は地域コミュニティを強化することにも繋がる。

 

同村の次のプロジェクトは、木質バイオマスによる地域熱供給網の実現だ。700万ユーロのコストがかかることから、自治体の再エネ収入だけでは足りないため、住民からの出資も受け付ける。地域熱供給が実現できれば、自治体は暖房用オイル価格の値上がりから住民や企業を守ることができる。この他にも、マスターハウゼン村では土地賃借収入を用いて、村道の拡張や図書館の設置、幼稚園と子どもの遊び場の新設、ハイキング道の新設、高速インターネットのケーブル敷設などを実施してきた。

 

このように土地賃借収入を活用した小さな対策の積み重ねから、今日のマスターハウゼン村の中心部には活気が感じられる。ドイツ社会全体で進行する人口減少の傾向はこの村でも変わらないが、出生率は類似の自治体よりも高い。

「ほとんどの住民が、再生可能エネルギーに対してポジティブな姿勢を持っています。再エネのポジティブな効果を、村の中で手に取るように感じることができるからです。」と、トニ・クリスト元村長は語る。再エネ発電と、空き家対策や地域社会の強化を組み合わせたマスターハウゼン村の取り組みは、同じ問題を抱える日本の農村自治体における風力やメガソーラーの開発においても参考になりそうだ。(滝川薫)

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