〈6〉
「『あなたと初めて出会ったとき、私はとっさにそう思ったの。気がついたときには、もう私の腕の中にグロリアがいたのよ』そう彼女は言いながらグロリアの頭を撫でたわ。あたしは赤坂典子と出会ったあの冬の夜、突然熱を出して寝込んだことや、そのとき見た夢の話を彼女にした。彼女はときおり深くうなづきながら、あたしの話を聞いてくれたの。『そんなことがあったのね…』彼女はそう言いながら、何かを考えていたわ。それから彼女はこんな話をしたの。
『あなたの見た夢と少し似た話があるの。中国東北部の少数民族に伝わる民話なんだけどね。
…ある日狩人が森を歩いていると、若い女の悲鳴が聞こえてきたの。狩人が声のほうへ駆けつけてみると、大きな蛇が女の体に巻き付き、女を頭から飲み込もうとする光景に出くわしたのよ。狩人がとっさに弓を引いて蛇の眼を矢で射抜くと、蛇は女の体からするりとほどけ、よろよろしながら森の奥へ逃げていった…。ここまではあなたの夢の話とほぼ同じね。でもこの話には続きがあるの。
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「『あなたと初めて出会ったとき、私はとっさにそう思ったの。気がついたときには、もう私の腕の中にグロリアがいたのよ』そう彼女は言いながらグロリアの頭を撫でたわ。あたしは赤坂典子と出会ったあの冬の夜、突然熱を出して寝込んだことや、そのとき見た夢の話を彼女にした。彼女はときおり深くうなづきながら、あたしの話を聞いてくれたの。『そんなことがあったのね…』彼女はそう言いながら、何かを考えていたわ。それから彼女はこんな話をしたの。
『あなたの見た夢と少し似た話があるの。中国東北部の少数民族に伝わる民話なんだけどね。
…ある日狩人が森を歩いていると、若い女の悲鳴が聞こえてきたの。狩人が声のほうへ駆けつけてみると、大きな蛇が女の体に巻き付き、女を頭から飲み込もうとする光景に出くわしたのよ。狩人がとっさに弓を引いて蛇の眼を矢で射抜くと、蛇は女の体からするりとほどけ、よろよろしながら森の奥へ逃げていった…。ここまではあなたの夢の話とほぼ同じね。でもこの話には続きがあるの。
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