『天使』



 街を歩いていると、お坊さんが声を掛けてきた。

「ちょっとお伺いしてよろしいですか? この近くにインターネットカフェがあると訊いたのですが、ご存じありませんか?」

 僕はネットカフェの場所をお坊さんに教えた。お坊さんは丁寧におじぎをしてその場を去っていった。

 数日後、お坊さんからメールが届いた。僕はメールアドレスを教えた覚えなどなかったが…。

@「この間は、ご親切に道を教えていただきありがとうございましたm(_ _)m お陰でインターネットを楽しめました。あなたは良い人です。だから本当のことを言います。私は僧侶ではありません。実は天使なんです――あの翼の生えた…。本当です。またメールします」

 さらに数日経って、またメールが届いた。

@「この前メールした、天使です。あなたにメールしたのは、友達になってほしかったからです。私には友達がいません(;_;) どうやって友達をつくったらいいのかわからないのです。あなたは優しい人です。友達になって下さい」

 僕はメールを返信せず、ただ放っておいた。一週間ほど経って、また突然メールが届いた。

@「こんにちは、天使です。日曜日、一緒に映画でも観ませんか? 今度は僧侶ではなく、女の子の姿をしてきます。午後2時に、映画館の前で待ってます。きっと来て下さいね(o^-')b」

 メールには写真が添付されていた。写真には若い女性の姿が写っていた。赤いベレー帽をかぶり、カメラを見ながらニッコリと笑っている。昔の恋人に似ているような、似てないような…、うまく説明のできないけど、どこか懐かしさを感じる写真だった。

 日曜日が来るまで、僕はメールのことをすっかり忘れていた。日曜日の朝になって、僕はふとメールのことを思い出したが、結局、映画館へ行くことはなかった。すると夜になって、メールが届いた。

@「こんばんは。ずっと待っていたのに、来てくれませんでしたね。人から拒否されるのは、やっぱりつらいものです。あなたが来ないことは、なんとなくわかっていました。でも信じてみたかったんです。もうメールするのはやめます。さようなら」

 僕は少し気がとがめた。その後ぱったりと、メールは来なくなった。



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