アメリカの友人

小説と詩を書くブログ。

2009年07月

私があなたでないのは
一つの絶望です
なぜ私はあなたでなく
私は私なのか
こんなにも
こんなにもあなたを……

あなたは言います
それは一つの希望よ
あなたが私でないのは
だってあなたといつか出会える
それだけで私
生きていけるもの

動物たちはきっと

自分が幸せかどうかなんて面倒くさいことは考えない

人間の子供たちが動物たちを眺めてる

すげえ

かわいい

と子供たちは無邪気に言葉を発する

もちろん動物たちは意味を理解することなんて出来ない

スゲエ

カワイイ

ただそんなふうに音が聞こえてくるだけ

百獣の王であるライオンが

縦じまの檻の向こうであくびをする

ちょうど昼寝の時間だった

邪魔しないでくれ

私は死ぬほど眠いのだ

邪魔しないでくれ……

 ダンスフロアの壁に、一人張り付いてる女に僕は声を掛けた。
「君、一人なのかい?」
 すると女はこちらを見ずに答えた。
「誰だって、本当は一人よ……」
 僕は女の言葉に面食らったが、ひるまず話し掛けた。
「知ってる。でも一人じゃ寂しいよ。僕と踊ってくれないかな?」
 女は仕方なく微笑すると、僕の差し出した手を軽く握った。
 僕と女は、眠たげなワルツに合わせて踊った。
「君みたいに素敵な人が一人でいるなんて、僕には信じられないな」
 二人のリズムは、心地よく重なり合った。
「夢の中で、いつもあなたと会っていたわ。でもあなたは氷のように冷たいキスをして、私にサヨナラを言ったのよ」

*****
 いままでブログに掲載してきた小説のあらすじを一覧にまとめてみました。
 気になる小説があれば、ぜひ読んでみて下さい☆
…euReka
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【短編】青空
(09年)
▽「誰だって…帰るべき場所はあるのよ…」。人を殺すことと、殺さないことの境界上に迷いこんだ主人公。人は、悪魔になれるのか?希望は、誰のためにあるのか?


【短編】狂った男と妊婦
(09年)
▽「死んだのよ…、大切なものが…」。失われるものがあれば、新しく生まれるものもある。しかし失われるものは、あまりに大きい…。そんな心象風景。


【短編】白い髪の女
(09年)
▽「私、死んじゃったみたい」「知ってるさ」「私の名前、おぼえてる?」「忘れた……」。白髪の女と僕の、不思議なメロドラマ。


【短編】境界の言葉
(09年)
▽雲と空、つないだ手と手、さよならとこんにちは――そんな、何かと何かの境界からこぼれ落ちた言葉をいくも拾いあつめて――――僕は博物館をつくった。(本文冒頭より)


【短編】砂漠と雨の日
(09年)
▽「……色んなものから逃げなくちゃならないんだ――くだらないゲームが、終わるまでは」。砂漠をさまよう主人公と、雨の日を過ごす子供の物語。


【短編】夏の鐘
(09年)
▽「夏のピストル32番を下さい。……一番涼しげなものを」。季節と金物と番号の組み合わせから生まれた、奇妙な世界の物語。

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 夏の鐘は春の鐘より軽く響くが、秋の鐘は夏の鐘よりもっと軽いのだという。
「秋の鐘7号を下さい」と僕は金物屋の主人に言った。「一番響きの軽いやつを」
 主人は在庫の棚をゴソゴソあさると、埃のかぶった箱を一つ取り出した。
「これ、10年前の鐘だよ」と主人は言いながら、箱に積もった埃をはらった。「最近鐘を買う人なんて、ほとんどいないもんでね」
 ふいに一人の女が金物屋へやってきた。
「夏のピストル32番を下さい」と女は主人に言った。「一番涼しげなものを」
 主人が再び棚をあさっている間、僕は女と話をした。
「僕もピストルを一つ持ってるよ。冬の45番をね」
「冬は嫌い。春はもっと嫌いだけど、秋は好きでも嫌いでもないわ」
「君は夏派だね」
「ええそうよ。あなたは?」
「僕は好きな季節なんてないな。流行にもウトいし」
 金物屋の主人が、また古い箱を一つ持ってきた。
「20年前のピストルだよ、これ」と主人は、埃の多さに顔をしかめながら言った。「春のスパナ909ってのが今どきの流行さ。あんたたちも一つどうだい?」

 僕と女は近くの海岸へ行った。
 僕は結局、秋の鐘ではなく夏の鐘を買った。
「急にね」と僕は海を見ながら言った。「不安になったんだ――秋の軽さが」
 女は海に向かってピストルを構えた。
「わかる気もする。秋って、どこか捉えどころがないのよ――ドーナツの穴みたいに」
 空は曇っていた。
 誰もいない海岸に、夏のピストルの銃声が響いた――。
「ねえ知ってた?」女は振り向いて言った。「ピストルって元々はね、人殺しとか銀行強盗の道具だったのよ」
「へえ、そうなんだ……。ところで“ギンコーゴートー”って何のことだい?」
「知らない」

 女は海に向かって何発か銃声を鳴らすと、銃口からまだ煙の立つピストルを僕に渡した。
「あなたも打ってみたら?」
 僕は灰色の水平線を片目で睨みながら、引金を引いた――。
 銃声に驚いたカモメが、上空を急旋回した。
「悪くないね」と僕は言ってまた引金を引いた。「一瞬だけ、世界が自分のものになったような気がする――それが夏だね」
 女は腕を伸ばして、夏の鐘を鳴らした――。誰もが長く待ちわびた約束の瞬間を告げるように、
 何度も。
 僕はこめかみに銃口を当て、
「これ自殺にも使えるんじゃないかな?」
 引金を引いた――。

 すると色んなことがはっきりして、
 僕の中にいっぱい
 夏があふれ出した。

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