アメリカの友人

小説と詩を書くブログ。

2012年03月

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アナウンスを続ける女性の声/すぐに津波がやって来ます/魚も人間も逃げて下さい/只今牛が赤ちゃんを産みました/やがて放射能がやって来ます/牛も人間も出来るだけ遠くへ逃げて下さい/木も草も土も/水も空気も出来れば高性能マスクを装着して下さい/みんなみんな逃げて下さい/すべてを失う前に



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東日本大震災における死者・行方不明者の合計は約2万人であるが/日本における自殺者数はここ10年以上に渡って年間3万人を下ることはない/自然環境はときに非情であるが/人間社会は常に非情である/そこに死があるということは/そこに痛みがあり命があり誰かを愛し誰かに愛された記憶があるはず



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弱肉強食とは/自然環境における現象を一面的に言い当てた言葉であり/それは例えばライオンがシマウマを襲うといった/映像などによって醸成された観念に過ぎないのであるが/野生に暮らす生物は常に空腹であり/常に死と隣り合わせなのであるから/人間的な意味での勝者も敗者も/野生には存在しない



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我々人間はなぜ「勝ち負け」に拘るのか/それは/「生存に必要」とする以上の果実を手に入れ/支配する方法を見つけたからに他ならない/つまり今すぐ必要としない食糧の備蓄/つまり「余剰」をどう扱うか?/みんなで平等に分けるのが筋だが/どうせ「余って」いるのだし/独り占め出来るかもしれない



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人間社会における「競争」とは/生存にとって最低限必要な/限られた富に対してではなく/むしろ生存に必要以上の余った富に対して惹き起こされる感情であり行為である/人間は余分な富を手に入れると/その富を失ってしまう未来を想像して不安になる/だからもっと欲しくなるし/奪いたくなってしまう


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今回の原発事故により/70年前なぜ日本が無謀な戦争を実行出来たのかということがよく理解できた/つまり日本には/「お上」と「下々」という絶対的な落差と共犯的な意識があり/それは人間同士の「階級差」とも違う/神と人間の関係なのである/だから天災も悪政も受け入れるべき運命になってしまう



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電力というものは/確かに便利で快適な社会生活を享受させてくれるものではあるが/我々は知らず知らず電力という社会システムによって/人生における何か重大な部分を収奪されていることに/遅まきながら気付き始めている/電力とは一つの政治であり宗教であったと仮定することは/この際有意義である



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人間が必要とするエネルギーは/大きく分けて二つに分類することが出来る/まず一つ目/は生命を維持し環境の中で活動するためのエネルギーであり/二つ目は/環境の中で道具を制作しその道具を機能させるためのエネルギーである/一つ目と二つ目は/環境の中での振る舞いという点において分類しづらい



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人間は環境に「適応」するという力をあるときから踏み越えて/環境を「克服」するという事業をコツコツとやってきた生き物である/「克服」とはつまり/環境を支配する力を得たということであり/動植物の命を自由に強奪出来るということである/人間同士においてもその強奪の構造は今だ続く暴力である



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人間の誇りが/同じ人間からの収奪や/環境からの強奪を根拠にするものであるとしたら/実に悲しいことである/我々の所有する富とは/つまりあらゆる手段を講じて収奪した/この世界を生きるものの命の価値に他ならず/我々の富に価値があるのは/すべての命が等しく尊い価値を有する存在だからである


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光は/自分が光であることを知らない/だから光は/自由な子どもなのであり/孤独な老人でもある/光は/誰もいないブランコの影にも/シャボン玉の輪の中にも居て/光は/高級レストランの皿の上にも居れば/厨房裏の残飯置場にもちゃんと居る/干からびた蛙の死骸にも/萌芽したばかりの朝顔の種にも



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開き直ることと/信念を持つことは全く違う/開き直るとは一つの処世術であり/心を守るための方法である/一方/信念には何より責任が伴うのであり/石を一つ一つ積み上げていくように/自ら選んだ責任を一つ一つ積み上げていく行為である/でも多くの人は/ただの開き直りのことを信念だと信じている



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「個性」という言葉が/戦前の全体主義を否定するための言葉であったことは理解出来るのだが/その理念だけが先行し過ぎていて/仏作って魂入れずという状況が世紀を跨いだ今も続いている/その「個性」という言葉に足りなかったものは第一に「誠実さ」であり/第二に「嘘」をつかないということである



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人間を含む全ての命は平等である/という価値だけは決して譲るわけには行かない/全ての命に対し同じ痛みを感じることが出来るのは/全ての生物の中ではおそらく人間だけであり/だからといって人間が特に優れているわけではないが/人間が人間たる所以は/命に対する同情であり/平等の精神にあるはず



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正義とは/それが正しいと言える「根拠」のことである/だから正義とは/その「根拠」となるものを問い詰める作業であり/必然的にその根拠となるものの「普遍性」を求める姿勢がなければならないはずである/だから国家とか組織のためといった限定的な動機は/「普遍性の論理」に矛盾する可能性がある


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個人は個人だけでは成立せず/「個人」とは「社会」という言葉と対の関係にある言葉であり/「社会」を無視した純粋な「個人」というものは論理的にあり得ないことである/なのに「私は私だから」は論理的には破綻しているのに「個人を主体とする社会」という定義の中では矛盾しないという/言葉の矛盾



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ふるさとは/誰も見棄てない場所だが/都会は/誰かを見棄てることで成り立っている場所である/もしかしたら/それは全く逆の場合もあるのだが/人はふるさとと都会を行ったり来たりしながら/自分の居場所を捜している/人は人に棄てられたときはふるさとを思い/誰かを棄てたときは都会を思うものだ



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例えば/「福島第一原発」は固有名詞であるが/「原発」や「MOX燃料」や/「プルトニウム239」や「半減期2万4千年」などは全て普通名詞である/普通名詞とは/ただ普遍的な存在や概念に対して与えられる名称であるが/固有名詞とは/現実に問題を起こしたり/現実によって痛みを伴う何かである



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東北の復興を阻む最大の原因は放射能汚染である/たとえ津波によって破壊された漁港が復旧したとしても/放射能に汚染された太平洋側の水産物が/まともな市場で売り捌けるとは到底思えない/農業や畜産も同じことである/食べて応援や風評被害という/政府マスコミの詭弁はいずれ通用しなくなるだろう



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このような厳しい時代に生まれなければならない子供たちの身を思えば/幸せな時代に生まれ/自由に過ごす余裕を与えられていた自分がいかに恵まれていたことか/しみじみと思い返すのも恥ずかしいくらいである/今の子供たちは放射能ありきの世界を生きるしかなく/逃げ場を探すことが人生の課題になる


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1+1が/なぜ2になるのか?/我々はその数学のルールを知っているが/改めて質問をしてみる/例えば2個の林檎は/なぜ2個だと言えるのか?/1個でも2個でも/林檎はただの林檎ではないのか?/つまりそこには2個でなければならない理由があるはずなのだが/私はその理由を今だ聞いたことがない



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放射能よりストレスのほうが心配な世界と/1ベクレルも放射能を摂取したくない世界が/スクランブル交差点を無言ですれ違う/神様は超高層ビルの屋上で缶ビールを開けながら/言葉にならない言葉に耳を澄ましている/もちろん神様は未来を知っているが/興味はなく/言葉より信号の点滅のほうが面白い



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神様とはいったい誰なのか?/それは物理法則にも/時間にさえ縛られることのない何かである/神様は真実にも嘘にも興味はなく/ただ風景を眺めているのがお好きなのである/じゃあ神様はなぜ存在するのかと質問したら/お前たちが必要とするから存在しているのだと/燃え上がる原発を眺めながら答えた



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水俣病の/公式確認が1956年で/安全宣言がなされたのが「41年後」の1997年/政府が公式に責任を認めたのが「48年後」の2004年です/原因物質の除去に13年と485億円が掛かり/推定患者数は2~3万人/日本政府が公式に認定した患者数は(2010年現在で)2969人になります



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誰も事故の責任を取らず/誠実さのカケラもないような原発推進体制の/一体何を信じればよいのか?/信頼とは/何か問題が起こればきっちりと責任を取ることが出来る/という約束のことである/本当に原発を推進したいのであれば/これまで原発を推進してきた自分の首を/まずは差し出すというのが筋だ


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