アメリカの友人

小説と詩を書くブログ。

カテゴリ: 小話

すてきな三毛猫が死んだ鼠をくれたのですが

僕は鼠を食べませんので土に埋めてやりました

すてきな三毛猫はそれを見て 今度は右足のサンダルをくわえてきました

僕はありがとうと言ってサンダルを受け取りましたが

なにしろ片足だけのサンダルを履くわけにもいきませんので 僕はかび臭い下駄箱の中にそのサンダルを放り込みました

するとすてきな三毛猫はそれから

三日ばかり姿を見せなかったのですが

春の縁側で僕が爪を切っていると すてきな三毛猫は猫らしくふらりと現れ 今度はきれいな女の人を連れて来ました

しかし話をきくとその女の人は すでに結婚していて子供がいるということだったので

僕は ため息をついたのですが

女の人は真面目な顔をしながら いま旦那と別れる手続きをしているという話を始めるし

僕はどうしたものかと思い

すてきな三毛猫に意見をきこうとしたのですが

猫は多分にゃあとしか言いませんし

まるで何事もなかったように 縁側で丸くなっていましたので

僕はコーヒーカップのようにじっと 女の人の話を真面目にきいていました

爪のほうはまた 明日切ることにします

 小さい小さい人が私にたずねました

「お腹すいてないの」 と

 すいてると言えばすいてるし すいてないと言えばすいてません

 小さい小さい人は 小さい小さい鞄から何かを取り出すと私に差し出しました

「これあげる」

 小さい小さい人の手のひらに乗っていたのは どうやらパンのようでした 見ようとすると目が痛くなってしまうほど小さな

「うまいよ」

 私はそれを指先でつまんで口の中へいれました しばらくするとそれがパンだということが味覚でもわかりました

「パンでしょ?」

 たしかにパンです

「それだけ」

 それだけ?

 小さい小さい人は満足そうな顔をしながら 小さな小さな足取りで去って行きました

 私は次の週末 たこ焼きパーティーをしたいと思っているのですが

 小さい小さい人が また来てくれるといいなと思いました

 雲が、北の神話を従えながら南へと流れて行った。
 南で何が起こったのか?
 不安げな渡り鳥も隊列を整え、乾いた空を進む雲の列に加わった。でもよく見ると、雲はさまざまなものを従えている。虫、気球、飛行機、ミサイルなど。空を飛ぶすべてのものが、まるで蛇のように長ながと、雲の後ろをたなびいているのである。
 ふと下を見下ろすと、海流の乗って南からやってきた鯨の群れが、真っ白な潮を高く吹き上げながら何かを叫んでいる。
「南で新しい神が生まれた! 有と無が居眠りしてるときにできた子供でね、世界を粘土みたく作り直すんだってさ!」
 それでも雲はぐんぐん南へと進む。
「みんなそろって神殺しかい? 相手はまだ子供なのにね。でもこの出来事は、鯨の神話に書いておくよ」

「あなたの夢は何ですか?」
 街を歩いていた私は、突然のインタビューに面食らった。
「夢はあるけど君に話すつもりはない。失礼」
 若いインタビュアーは立ち去ろうとする私の腕を掴む。
「それでは、あなたは神様を信じますか?」
「私が神様を信じているかどうかということを、なぜ君は知りたがっているのかということを逆に尋ねたいね!」
「まあ、これが僕の仕事ですから。ええとそれから……、今あなたは、幸せですか?」
「おいおい、さっきの神様の質問はどうしたんだ!」
「答えてくれるんですか?」
「いや……、べつに神様なんて信じてないけど……」
「じゃあなぜ神様を信じないんですか?」
「そんなの、信じる理由がないから信じないのさ」
「理由って、何のことですか?」
「つまり、私には神様なんて必要ないってこと。もうこれくらいでいいだろ?」
「神様が必要ない人というのは、いったい何を信じて生きているんですか?」
「そんなの知らないよ。人それぞれなんじゃないの! もういいかげんにしてくれないかな」
「人それぞれですか……。なんだか寂しいですね」

 暗闇に、火を点したらあなたがいた。
「ハロー。でも火を消して。とてもまぶしいの」
 僕は、おもわず火を消そうとしたがためらった。
「しばらく、あなたを眺めていたいんです。駄目ですか?」
「じゃあ三秒だけ」
「三秒だけ? もう過ぎてしまいましたよ」
「じゃあ三十秒」
「わかりました」
 いち、に、さん、し、ご、ろく……目、鼻、口、アゴ、首、肩、耳、ひたい……
「消して」
「はい」
「真っ暗ね……」
「真っ暗です……」
「やけに静かね……」
「やけに静かです……」
 あなたと僕は、暗闇の中で黙っていた。
「じゃあね……」
「えっ……」
「私のこと、ずっと憶えててね。忘れないでね……」
 あなたが去った後、僕は火を点し、もうどこにもいないあなたの姿を想い浮かべた。明かりに浮かんだ、あなたの顔。あなたの声。あなたの、一つ一つ……。
 僕は再び火を消し、疲れたように目を閉じた。暗闇はもう何も語らなかった。そのあとのことは、よく憶えていない。夢の中でまた、あなたに会えたかどうかも。

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