■エヴァには母親の魂が入ってる説は間違い■
■ゼルエルを食べる事でS2機関を得た説は間違い■



第23話

「あの子にしか魂は生まれなかったの」

リツコが証言している。

「生まれなかった」
のだ。

エヴァの世界において、魂とは、
『内側から生まれてくる物』
である。
これが大前提だ。

どこからか、生前か、もしくは死亡後に魂を抜き出して、
エヴァに入魂する、という事ではない。

いつ、誰が、どうやってその作業を施したのか?
が描写されていない。
そんな曖昧な物体や、心霊的な技術を、ネルフ職員は取り扱っているのか?
国連やゼーレが出資しているのか?

『エヴァ達には最初から母親の魂がある』
と言う説は間違いである。


ユイやキョウコは現実に死亡しており、
エヴァには、MAGIにバックアップしてある、
仮想的な人格(パーソナル)があるだけで、
これをパイロットが育成し、MAGIの学習機能によって製錬されると、

『魂が生まれた』

となるのである。
MAGIは人格移植OSであり、ナオコの脳のバックアップなのだから、
技術的に可能なのだ。


■第1話■

リツコ:「初号機のシステムをレイに書き直して再起動」

ネルフ職員は、エヴァやMAGIには、
パイロットの血縁者のパーソナルが入力されている事は知っている。
これをメンテナスして運用しているのだ。

しかし、職員達が、『魂』を取り扱っている事はない。
ましてや、「実は魂を運用しており、ネルフ幹部からは騙されている」
のでは、メンテナンスなど出来やしないはずだ。

職員達は魂など取り扱っていないのだ。



■第16話は、初号機がS2機関を生み出した日でもある■

S2機関とは、エヴァや使徒の胸にある赤い光球である。

シャムシェルから採取したのはこれで、
修復し、第17話でアメリカ支部が無断で搭載実験したのがこの光球である。

初号機がゼルエルを捕食した時、この光球には手を付けていなかった。

もしS2機関がこの光球でなく、
『初号機が食べた肉片っぽい部分』
であるとするならば、シャムシェルから採取した光球は、
2度と劇中に登場しない事になってしまう。

冬月:「これがコアか…」

同じ物がエヴァにもあるなら、開発者の冬月が珍しそうに観察する道理がない。
初めて見たのであり、エヴァにはない物なのだ。
だからこれを研究し、エヴァに搭載させたいのであり、
ゼルエル戦で、「肉を食べる前に光球があった」のは、すでに持っていたからだ。

バラバラにされた弐号機や参号機には、光球がなかった。
光球が入っていそうなスペースはあるが、アバラ骨に過ぎない。
光球を見せたのは、S2機関搭載タイプの初号機と量産機、
他には、使徒と完全に同体として、素体ごと融合した零号機だけである。

量産機達に解体された弐号機は、それを観測していたモニター上で、
真横から見た断面図が表示されていたが、ここにも胸に光球はない。


また、ゼルエルを捕食した際のエネルギーはどこから
捻出されたというのか?

シンジ:「エネルギーが切れた!?」
マヤ:「初号機、活動限界です!予備も動きません!」

シンジとマヤが、エネルギー切れの旨を発した。
これは制作サイドが、初号機のエネルギー切れを念押しした証拠だ。
完全に切れたんですよ、と強調している。

つまり、捕食する前からS2機関はあったのだ。
リツコが吐露したように、ゼルエルの肉を取り込んだのは
体を膨らませ、装甲板を取り除くためである。


そもそも、『半分に欠けた』ので、修復し、真ん丸の光球に戻したはずなのだ。

シャムシエルからはこの光球しか採取していないし、
その後の使徒は完全に処分しており、一切の採取はしてこなかった。

ネルフがS2機関を入手できるのは、
後にも先にもこのシャムシェルしかいないのである。


■エヴァとMAGIはS2機関を使徒から学習した■

エヴァの脳は自立を許されておらず、
代わりにMAGIがエヴァの学習機能を司っている。

あまり知られていないが、MAGIは使徒の能力を学習し、
それをエヴァも使えるようにプログラムしている。

最初に、サキエルから、ATフィールドを学習して対消滅を起こした。
レリエルからディラックの海を学習し、またも対消滅により破壊した。

そもそも、第9話で初号機が弐号機の軽やかな動作を真似できたのも、
弐号機からの学習である。
そして、2週間も費やしたのも、それだけ時間が必要だったことを意味する。

加持がミサトに譲ったデータは、作戦の概要や、音楽テープではなく、
弐号機のデータその物である。
加持は長年、アスカとドイツにいて、弐号機開発に関わっているので、
データを持っているのは当然だ。


リツコ:
「直径680メートル、厚さ約3ナノメートルのね。
その極薄の空間を、内向きA.T.フィールドで支え、
内部はディラックの海と呼ばれる虚数空間」

ディラックの海に飲み込まれた初号機は、
ディラックの海がATフィールドで支えられている事を知ると、

 「これと同じATフィールドを展開すれば破壊できる」

と判断した。
しかしエネルギーがないので、

 「この使徒と同じS2機関を学習すればいい」

と判断し、自分でも使えるようになった。

初号機がディラックの海から脱出できたのは、
説明できないようなパワーが働いたとか、ご都合主義的な理屈ではない。

ちゃんと手順を踏み、S2機関を学習してからディラックの海を学習し、
対消滅を実現させたのである。

992個のN2兵器をいっぺんに使用し、
エヴァ2機のATフィールドを干渉させて、ようやく
一瞬だけ起こせるような現象を、初号機がひとりで起こしたから、
リツコは戦慄しているのである。

この現象を起こした時のエネルギー源は、S2機関以外にありえない。
初号機は、この第16話でS2機関を学習したのだ。

そして、具体的には描写されていなかったが、初号機はあっさり停止したらしい。
これは、「初号機が停止した」のではなく、「S2機関が停止した」のである。

第20話でもS2機関の停止をマコトが報告したが、
S2機関とは、ただ持っているだけでは意味がなく、
ちゃんと電源を入れなければならないのである。


ミサト:「で、動力源はあったんでしょ?」
リツコ:「らしきものはね。でもその作動原理がまださっぱりなのよ」

第5話、シャムシェルの検死において、
ミサトは、『止め方』について聞いてる。作戦課だからだ。
殺す方法を知りたいからだ。

それに対しリツコは、『動かし方』を答えてる。技術科だからだ。
これを研究したいのである。



■シンジがエヴァの中で見た金髪の女性の正体■

第16話において、シンジがエヴァの中で見た
『長い金髪の女性』は、碇ユイと全く似ていない。

『この時点ではユイのデザインが決まってなかった』
のではない。
ユイは第1話からOPに登場し続けている。

この、似ても似つかないユイは、シンジがエヴァの中で育成してきた、
エヴァの中から生まれてきた、『魂』その物だ。

もし、オリジナルのユイの魂が初号機の中で生き続けてたのだとしたら、
外見が変わる事に意味はない。

なのに外見が違うのは、
『シンジが独自に空想した』
からである。

第15話、レイが雑巾を絞る様子を見て、『母親みたいだ』と言った。
これは、シンジが日頃から母親像を夢想している事を意味している。

こうやって、パイロット達に自分の母親像を空想してもらうと、
MAGIの中のパーソナルデータが育成され、
いずれ、『魂と呼べる物』に育つのである。

シンジ視点で見たユイの姿に、いつも「顔」が無いのは、
ユイのイメージを夢想してもらうため、ゲンドウが処分したからだ。

その話しが出たのは第15話であり、タイトルは「嘘と沈黙」だった。
この第15話は何もかもが嘘であり、ゲンドウの処分発言もウソなのだ。
実はユイの写真はちゃんと残っている。
(ユイの顔に『光の線』がかぶさっている「写真」の絵)。


シンジに写真を見られると、先入観が出来てイメージする作業が滞ってしまう。
その例がアスカだ。

「ここにいたのね! ママ!」

この土壇場こそが、「弐号機の魂が生まれた瞬間」なのだ。
アスカは計画的に作られた子供であり、
幼児時代から自我に目覚め、知能が高かった。
母に関する記憶が少なからず残っているのだ。

人形を自分の娘と思い食事を与える様を、アスカは見ており、
つまり母親の声や、狂った様子を目撃し、記憶している。
だから初号機より育成が遅れた。
ゲンドウが写真類を処分したのは、
ゲンドウの非情性をアピールする描写の類ではない。
エヴァ開発に「必須」なのだ。


これが、冬月の提唱していた形而上生物学の正体である。

形而上生物学とは、
「人間は猿ではなく神様の子孫だったら」
を前提にした進化論である。

仮に人類を生み出したのが神様なら、神様自身は不老不死でなければならない。
もし、生み出した人間が地球全域に広まる前に、神様が寿命で死ぬと、
せっかく増え始めた人間が絶滅してしまう。
だから一定以上の人口になるまで神様は死んではいけないのだ。

「人類を生んだのが神様なら、神様自身は不老不死でなければならない」
が葛城博士や冬月の提唱する進化論の正体だ。
そして葛城博士は、
「神様の不老不死の技術があれば人類を救えるかも知れない」
と平和利用を考えた。

神様を、神聖な存在とは捕らえず、「不老不死になれるエネルギー源」
と解釈したのである。

不老不死なのだから、きっと地球のどこかにいるはずだ。
やがてゼーレから、それが南極にあると教わり、発見したのだ。

シト新生の冒頭で、ゲントウとキールが話していたのは、
その暴論、大風呂敷に対する皮肉である。



実際、劇中の人類は本当に神様から生まれたので、
2人の仮説は大正解だった。

冬月が行っていた研究とは、
生殖を伴わずに、人間の手で人間を作り出す事である。

シンジに母親像を夢想してもらい、
パーソナルでしかなかったMAGI内のデータがエヴァに定着すれば、
「冬月が人間を作り出した事」
が証明されるのだ。


一方、リツコは
『クローン人間に魂を生み出す研究』
をしていた。

ナオコを越えるため、MAGI以上の成功をして、ゲンドウを見返したいのだ。

第14話の機体相互互換試験において、
シンジは零号機と、レイは初号機とシンクロしてみた。

結果、『初号機はシンジでもレイでも動く』
と証明された。

それで何が分かったかと言うと、
『レイのクローン人間を使ったダミープラグで、初号機を起動できる』
が証明されたのである。

もし、シンジとレイの互換性がまったくなかったら、
レイのクローン人間では零号機しか起動できない。
これでは、「零号機専用のダミープラグ」でしかない。
リツコは、初号機を動かしたいのだ。

実験の結果、レイのクローン人間で
初号機を起動できるかもしれない仮説を証明できたのだ。

この実験が成功だったから、これ以降、リツコはダミープラグ開発、
つまり、『クローン人間に魂を作り出す実験』
を開始するのである。


アスカ:「ところであの二人の機体交換テスト、私は参加しなくていいの?」
ミサト:「どうせアスカは、弐号機以外乗る気ないでしょ?」
アスカ:「ま、そりゃそうだわ」
ミサト:「(確かにエヴァ弐号機の互換性、聞かないわね)」

ミサトは、アスカの互換性をリツコが検証したがらない事に、疑問を持った。
2人より3人の互換性を確認した方が、作戦課としては有り難いからだ。

つまりリツコは、
使徒戦略の為にダミープラグを開発したいのではなく、自分の個人的な
『人間を作り出す実験』
をしたいから、この実験を行った事が分かる。

ここでミサトがリツコに疑問を持った事は、まったく無意味ではない。

この互換性の仮説、つまりダミープラグ開発、つまりは、
『人間が人工的に魂を作り出す事』
が、葛城博士の研究でもあり、加持が探し求めている
『葛城博士がセカンドインパクトを起こした動機』
にも繋がるのだ。

この、ミサトがリツコに疑問を持ったシーンは、
『人間を作り出す研究』が
具体的にスタートした瞬間であり、
つまり、エヴァ量産機完成へのスタート地点でもある。


ちなみに葛城博士は、神様から人間を作り出す事で
証明しようと試みた。

結果、魂はないがS2機関は持っている怪物、
使徒を生み出してしまったのだ。

もしこの怪物に魂があったら、リリスとレイが同化した姿のように
ヒトである事がMAGIに証明されたである。


■第19話で異変が起きた■

第14話の機体相互互換テストでは、
シンジとレイを入れ替えても起動したのに、
数日後の第19話で、初号機がレイとダミープラグを拒絶したのである。

第14話から第19話までの間に、
「出来たはずの互換性が出来なくなる」
というこの現象には、ちゃんと原因があるのだ。
それが第16話である。

 第13話 オートパイロットテスト
 第14話 互換性実験が成功。ダミープラグ開発開始
 第16話 初号機のユイの魂が完成、S2機関獲得
 第19話 互換性が失われる


簡単に言うと、第16話で初号機は、
「自分の子供はシンジだけ。レイは自分の子供ではない」
と見分け、断言したのだ。

これは、シンジやレイの変化ではなく、初号機の変化(成長)である。

それまで初号機は、シンジとレイの区別がつかなかった。
しかし、第16話の事件を経て、2人を見分けられるようになったのである。
これぞ、冬月の研究が成功した瞬間である。

かたや、ダミープラグを受け付けてくれなかったリツコは、
『クローン人間に魂を生み出す研究』
を、失敗したのだ。

この第19話は、

『エヴァに魂を生み出させて人間を作りたい』、冬月と、
『クローン人間に魂を生み出させて人間を作りたい』、リツコが、

同時に実験をした、という描写なのである。

ダミープラグで初号機が起動したら、
クローンに魂が生まれた事が証明されるのでリツコの勝ち

初号機がダミープラグやレイを拒絶したら、
初号機に魂が生まれた事が証明されるので冬月の勝ち


なのである。
結果、冬月は人間を作り出す事に成功した。


さらに第20話で、初号機と融合したシンジが排出される。
これは、

『エヴァが人間を生み出した』

と言う重大なシーンである。

当初、リツコの仮説では、シンジの体はLCLに溶け込んでおり、
これを再構成して、魂と呼べる物を定着させれば、
シンジは復元できる、だった。

しかしこれは大嘘だった。
実際、シンジは初号機の胸の光球(S2機関)から生み出されたのである。

肝心のLCLは、半分が床に零れ、
プラグスーツを抱き締めたミサトの服に染み込んだ。

結局、『シンジの肉体はどうやって再構成されたのか』
という説明は描写されていない。

しかしこれも、初号機のS2機関と、MAGIにバックアップしてあった
シンジのパーソナルで実現したのであり、
これも冬月の形而上生物学のお蔭だったのが真相である。


つまり、シンジは1度、本当に絶命している。
LCLに溶けた時点で体も脳もバラバラになり、復元が不可能になった。
しかもLCLごと床に消えてしまった。

しかし、S2機関でシンジの肉体を『0から構成』し、
MAGI内のパーソナルを入魂する事で、冬月は、
『MAGI内のバックアップデータから生身の人間“碇シンジ”を作り出した』
のである。

冬月の提唱する形而上生物学とは、
LCLに溶け込んだ肉体や脳などは一切使わず、
S2機関と、生前に残してあったパーソナルだけで、
生前と全く変わらない人間を作り出す、である。

つまり、シンジは正真正銘、死んだのだ。
しかしS2機関で肉体を作り、MAGI内のパーソナルデータによって、
新たに「再現」されたのである。

劇中において、レイのクローン体が、
14歳のレイと寸分たがわず作れるのだから、シンジでも不自然ではない。
ならば、脳(記憶)もMAGIによって完璧に再現できるはずである。

『魂』という言葉に騙されがちだが、
人間の人格は、脳に存在する物である。
ならば脳細胞のひとカケラに至るまで再現できれば、
死者をこのように復元するのも可能なはずだ。


そして、
『排出されてきたのがユイだった』ら、ゲンドウの夢が叶ったはずなのだ。

ユイのパーソナルは初号機に残っている。
たまたま今回は、シンジだけが『ここから出て行こう』
と決めたので、シンジだけが出てきた。

仮に、ユイも、
『ここから出て行こう』
と望めば、S2機関で肉体が復元され、
MAGI内のパーソナルから魂が作られるはずだった。

しかし、ユイはゲンドウのいる世界を拒絶したのである。
ゲンドウは冬月の協力で、0からシンジを完璧に復元できたのに、
ユイは復元できなかった。もう1歩だったのだ。



■第21話 急務の意味■

冬月:「相変わらずですねぇ、私の都合は関係無しですか」
ゼーレ:「議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ」
ゼーレ:「分かってくれたまえ」

ゼーレが諜報部を使って冬月を拘禁した。

簡単に言うと、拉致の動機は、
シンジのサルベージデータを加持に流してもらい、
エヴァ量産機を完成させるためだ。

ゼーレの言った『急務』とは、
初号機がS2機関を獲得した事件ではない。

初号機がゼルエルを捕食したのは40日以上も前のことだ。

シンジのサルベージ作業には40日以上かかった事を、
多くのエヴァファンは見過ごしている。

ゼーレの言う急務が、仮にS2機関搭載の件だったら、
40日後に『急務』と言ったのでは悠長すぎる。

急務とは、「シンジが初号機から排出されたこと」、
つまり、「冬月がエヴァから『魂を持った人間』を作り出した事」
を指している。

これはつい最近の出来事であり、加持から知らされた。


10年以上も前に、ユイを被験者としたサルベージ実験が失敗した。
それが10年ぶりに成功したので、
ゼーレはなりふり構わず要求してきたのである。


エヴァ量産機は、劇場版で急に登場したため、
ダミープラグがいつ完成したのか分からない。

一般的に、
『リツコは失敗したが、ゼーレ側の科学者が完成させた』
みたいな認識が蔓延しているが、この仮説は事実無根である。

初号機がシンジを吐き出した時のデータがMAGIに残っており、
これを加持がゼーレに流したから、エヴァ量産機が完成したのである。

「リッちゃんにも済まないと謝っておいてくれ」
とはこれを指している。

自分が、サルベージデータをゼーレに流せば、
ゼーレはネルフ側のダミープラグが不要になる。
それをリツコに破壊してもらわなければならない。
結果、リツコはゲンドウを裏切った事になり、重罪で拘禁されてしまう。
加持はここまで予測していたから、謝罪したのだ。


エヴァ量産機は、唐突に完成したわけでもないし、
ゼーレ側の科学者が、『魂を生み出すこと』に成功したわけでもない。
加持が横流ししたのだ。

なぜ加持が、ゼーレのエヴァ量産機完成に協力したのかと言うと、
『サルベージデータを見たいから』
である。

これぞ、『葛城博士がセカンドインパクトを引き起こした動機』
その物である。



■加持が追っていた「真実」の正体■

第21話:「真実に近付きたいだけなんです。僕の中のね」
第23話:「葛城。真実は君とともにある。迷わず進んでくれ」
第23話:「君がほしがっていた真実の一部だ」

加持は、「真実」という言葉を3回使っている。
加持にとって真実とは、「セカンドインパクトの原因」だ。

初号機がシンジを吐き出した時のデータを見れば、
「葛城博士がなぜあんな実験をしたのか?」
が確定するはずなのだ。

そのデータを見て、葛城博士の動機を知ったため、
大願成就し、安心して死ねたのである。
なにも、志なかばで死んだのではない。

セカンドインパクトを生き抜いた加持は、
それを起こした張本人への恨みだけで生きていた。
ネルフに入ったのもその為だし、
3重スパイをして自分を追い詰める事になったのもその為である。


葛城博士がセカンドインパクトを起こした動機とは、
『ゲンドウと同じ』と言えば分りやすい。

確証はないが、動機は、

 ・S2機関を実証して人類に移植し、平和利用しようとした
 ・神様から人工的に人間を作り出し、妻を見返そうとした

である。

葛城博士は妻と疎遠だった。

冬の南極に15歳のミサトがいたのは不自然過ぎる。
つまりミサトと妻を見返す目的があった。
もしかするとミサトの遺伝子を使い、妻を人工的に作り出す「黒ミサ」かも知れない。

葛城博士は、S2理論を証明したり、人類の起源を明らかにする事で、
別れた妻を見返したかったのだ。

ただし、『寄りを戻したかった』とは言い難い。
葛城博士は、ミサトを奪い返し、妻に復讐したかったのかも知れない。
これはゲンドウも同じで、

ゲンドウ:「もうすぐだよ。ユイ」

このセリフを見ると、本当にユイを愛しているのかは確信し難かったりする。
もうすぐユイに復讐できる、という意味かも知れないのだ。

葛城博士もゲンドウも、自分を捨た妻を見返し、復讐したくて、
この研究をしていたのかも知れない。
S2機関の平和利用や、使徒撃破は、その片手間である。

つまり、ゲンドウとまったく同じなのである。

加持はゲンドウや葛城博士に嫌気がさし、
『死に逃げ』したのだ。

ミサトに残した
『真実は君とともにある。迷わず進んでくれ』とは、
『そんなに人類を守りたかったら勝手にすれば?』
と突き放す言葉だ。

「君と共にある」とは、比喩でも言葉遊びでもなく、
「セカンドインパクトの原因はお前と共(父親)にある」
と言い当てたのだ。
だったらサードインパクトを起こすも起こさないも葛城次第だ、と。

加持は、ゲンドウや葛城親子が夢想する、
『人類を救ってやろう』
という、お節介で、傲慢な考えに、ほとほと嫌気が差したのだ。

おそらく、ゲンドウが加持に言いたいのは、
「今度こそちゃんとやるから邪魔しないでくれ」
だろう。

 結果、葛城博士は人類の半分を殺し、
 残った半分を、ミサトが全部殺した。



■第20話 加持の残酷な要求■

ゲンドウ:「よって初号機は凍結。委員会の別命あるまでは、だ」
加持:「適切な処置です」
加持:「しかし、ご子息を取り込まれたままですが?」
ゲンドウ:「……」

『ご子息』
という言い回しは、皮肉である。

「あなたの大事な大事な息子さん」
と言う意味だ。

分かりやすく言うと、

 ・サルベージするんでしょ?
 ・自分の息子さんですもんね?
 ・やるなら早くして下さいね?
 ・そのデータは取らせてもらいますからね?
 ・ゼーレに流すのでエヴァ量産機が完成しますが、構いませんね?

である。

「ご子息」と言ったのは、
「あなたの大事な息子さんだからサルベージしない筈がありませんよね?」
という皮肉なのだ。

もし仮に、エヴァに溶け込んだのがレイやアスカだったら、
ゲンドウなら機体ごと処分できる。

しかし取り込まれたのが、他ならぬシンジなのだ。
つまり、ゲンドウはシンジを嫌ってなんかおらず、愛しているのである。
その本音を、加持は残酷にも突いたのだ。

こう言われてしまったら、
ゲンドウもサルベージを推進するしかなくなってしまう。

結果、そのデータは、冬月を拘禁されて交換条件に使われ、
加持が自分の手でリツコから奪い取り、ゼーレ側に流れた。
これをもってエヴァ量産機は完成したのである。

エヴァ量産機が投入された時、アスカは驚いていたが、
冬月が承知していた素振りなのはその為だ。



■ゲンドウとシンジがお互いに思っている事を利用しデータを得た加持■

シンジ:「もう寝ました?加持さん」
加持:「いや、まだ」
シンジ:「僕の父さんってどんな人ですか?」
加持:「こりゃまた唐突だな。葛城の話かと思ってたよ」

シンジはゲンドウの事ばかりを考えていた。
それをこの時、本人から聞いたのだ。

加持は、シンジとゲンドウとそれぞれ会話できる立場であり、
このようにお互いの本音を熟知している。

加持が、この親子の仲を取り持つ事もできたはずだ。

しかし、両者の本音を伝えてあげるなんて事はせず、
2人の思いを自分の中で握り潰した上に、私情の為に親子ともども利用したのだ。

加持は、シンジとゲンドウがお互いに思い合ってる事を知りながら、
データ見たさに、シンジをそそのかして初号機に乗せ、融合に至らしめた。

その結果に少しも驚かず、「これもシナリオの内ですか?碇指令」
と呟いたのは、「皮肉」に加えて、
自分の非を全てゲンドウに着せる、外道な行為である。


葛城宅に泊まった加持だが、パイロットの護衛は諜報部の任務である。
加持はこうして諜報部を出し抜き、こんな貴重な情報を入手したのだ。

もちろんミサトの部屋は諜報部に盗聴されており、
これでは加持が自分から諜報部に喧嘩を売るのと同義である。

この直後に第13使徒バルディエル戦があり、
戦闘配置を無視した罪がきっかけとなって監査部を解任されたのだ。



 ■新世紀エヴァンゲリオンのあらすじ■

 ユイが初号機に溶け込む
 ↓
 ユイのサルベージ失敗
 ↓
 MAGI内のパーソナルとエヴァを使って、シンジがユイの魂を育成する
 ↓
 機体相互互換実験ではシンジとレイの区別が出来ない
 ↓
 第16話、ユイの魂の育成が進行
 ↓
 初号機、レリエルからS2機関も学習
 ↓
 第19話、初号機がレイやダミープラグと、シンジを見分ける
 ↓
 冬月、エヴァに魂を産む出させる研究に成功
 リツコ、クローン人間に魂を産む出させる研究に失敗
 ↓
 冬月、初号機からシンジの複製に成功
 ↓
 加持、エヴァで人間を生み出すデータやS2機関実装のデータをゼーレに流す
 ↓
 エヴァ量産機完成
 ↓
 人類が絶滅し、シンジとアスカが復元される
 ユイの乗った初号機が宇宙に飛び立つ


 物語は碇ユイの研究だけが勝って、終了した。

 シンジ視点で表現されていたユイ像と、
 実際に21話で初登場した実物のユイとでは、かなり印象が違う。

 それもそのはずで、実物のユイはやはり死亡しており、
 シンジが育成していたのは、
 自分やゲンドウに都合のいいユイ像だからである。