○○気質というものがあります。
その病気の患者さま特有の共通する性格があるというものです。
自分が医師になったころ、ある先輩医師から教えてもらいました。
「あの患者さんは典型的な緑内障気質やな〜」 (先輩医師)
「緑内障気質ってどんな感じなんですか?」 (私)
「まじめで几帳面やろ。毎回の眼圧をメモしてすごくきっちりしているし、お薬のこともすごく調べられて、少し神経質。それが緑内障気質や」 (先輩医師)
「緑内障は失明が怖いから必然的に几帳面になるんではないんですか?」 (私)
「糖尿病気質っていうのもある。 糖尿病でも失明する人が多い病気だけど、緑内障の患者さんとは逆で、大らかで細かいことを気にしない性格。その性格が食欲を自制できず糖尿病を悪化させてしまうことが多いようだけれども、緑内障も糖尿病も日本人の失明する病気としては同じくらい多いのに、性格は両極端なんや」 (先輩医師)
「眼圧って自律神経の影響があるので、あまりいらいらしてストレスをため込むと眼圧が上がり良くないですよね」 (私)
その後、眼科医療に長く携わり、多くの緑内障患者さまと接してきながら、確かに緑内障気質というものがあることを実感しています。
まじめで几帳面、神経質という感じでしょうか。
緑内障気質についての医学的根拠はありませんが、経験に基づいて眼科の医療関係者の間に緑内障気質という言葉が浸透していったものだと思います。
しかし、沖縄で開催された第20回日本緑内障学会でそれを裏付けるような発表がありました。
山梨大学の間淵文彦先生らのグループによる発表によると
『緑内障患者には心気傾向、うつ傾向のある症例の割合が多い』
とのことです。
心気症とはノイローゼの一種で重い病気に患っているのではないかという固定概念にとらわれて他人に訴え続けている状態で、緑内障患者さなには若いほどその傾向が強かったとのことです。
うつとは、抑うつな気分が続いている状態で、ひどければ生活にも支障が出てきます。緑内障患者さまのうつ傾向は高齢であるほど、あるいは良いほうの目の視野が悪いほど強かったとのことです。
以前から言われていた緑内障気質が今回の調査で裏付けられましたが、緑内障になったから心気症やうつになったのか、心気症やうつ傾向のために緑内障になってしまったのは明らかではありませんが、緑内障を進行させる眼圧は自律神経の影響で上昇することが分かっています。
緑内障の患者さまが病気を気にすることは確かに良いことです。きっちり治療して決められた通り点眼を使い続けることが進行予防の第一です。点眼をきっちり使用しないと緑内障での失明率が増えるというデーターが出ている以上、点眼をきっちり使用していく必要があります。
しかし、きめられた通り点眼を使い続けていかないと見えなくなってしまうということがストレスになり、しかも、そのストレスも眼圧のコントロールを悪くし緑内障を悪化させる原因になることも言われています。
大らかで細かいことを気にしない糖尿病気質のある患者さまが糖尿病のコントロールを悪くし糖尿病を悪化させるのと同じで、まじめで几帳面、神経質な緑内障の気質を持つ患者さまがストレスをため込みかえって緑内障をすすめる可能性もあるのです。
明るく前向きに生活するのも緑内障の進行を抑える一つの方法ではないでしょうか。もちろん緑内障の治療のことに注意していくことは重要ですが、病気のことばかりを考えず、時には気分転換も必要かもしれません。
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