ある奈良県の眼科医が目について書いたブログ

眼科診療をしながら気がついたこと、最近気になったことを書いてみました

目の病気-糖尿病

糖尿病性網膜症は視力を回復する治療へ:抗VEGFの硝子体注射

糖尿病性網膜症は日本人の失明原因では緑内障に次いで多く、治療法も進歩してきています。

10年以上前は、網膜光凝固で出血の原因となる新生血管や血管の閉塞部位を凝固する治療がメインで、どちらかというと失明を防ぐ治療が目的でした。


しかし、2014年に抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)を硝子体に注入する治療が糖尿病黄斑浮腫に認められ、それが治療の主流となり視力を回復する治療へと変わりつつあります。

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(治療効果のメカニズム)






それではどれくらいの効果があるのでしょうか
東京医科大学眼科での治療成績を診てみます

(清水広之ほか:日本人における糖尿病性黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体注射の長期治療成績. あたらしい眼科35:136-139・2018 より)





まず治療方法です

●治療方法
抗VEGFの硝子体注射を行い、毎月2段階以上の視力低下、20%以上の網膜の腫れの増加があれば、再発として再注射

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状態を見て追加治療も必要です

●併用した治療法
網膜光凝固:33%
ステロイドのテノン嚢下注射(眼球の後ろ側への注射):22%




そしてその結果です

●視力

治療前の視力0.5以上:57%

6か月後:73%

12か月後:72%

18か月後:78%



このように硝子体注射は視力を回復する治療であることがわかります

しかし、再発しやすく1回の注射で視力が維持できる人は少なく



●再発率(治療18か月期間中)

91%



それではどらくらいの注射が必要でしょうか?


●平均再注射回数

6か月まで:2.3回

12か月まで:3.0回

18か月まで:3.3回



視力を維持するためには、治療開始18か月までに3回以上の硝子体注射が必要のようです

あきらめないでがんばりしょう。



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糖尿病性網膜症になる人は?:国別、治療率、発症率、血糖値のコントロール(ヘモグロビンA1C)、眼底検査実施率

●国別糖尿病の患者数は?


1位 中国 9.629万人

2位 インド 6.685万人

3位 アメリカ 2.578万人




●一方日本は?、


10位で、950万人。20歳以上の成人の男性の15.2%、女性の8.7%を占めています。





● そのうち、実際に糖尿病を治療している方は

65%で35%が無治療であるといわれています





●世界と日本の糖尿病性網膜症の発症率は?


全世界では約34.6%

日本では約4.2%

 が糖尿病性網膜症を発症しています。


 :日本の医療水準の高さが発症率の低さの理由となっているようです。






●血糖値のコントロールはどれくらいにするのが良い?

ヘモグロビンA1C:7.0以上になると網膜血管の異常が出ます

ヘモグロビンA1C:6.5以上になると眼底に以上の出る方が出現してきます。


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 :ヘモグロビンA1Cを7.0以下に、できたら6.5以下にコントロールを行いましょう。





 ●日本の糖尿病患者の眼底検査の実施率は?

糖尿病患者の眼底検査の施行率

イギリス(83.4%)
スウェーデン(77.8%)
オーストラリア(72.5%)
アメリカ(67.5%)
ニュージーランド(65.5%)
イタリア(56.0%)
ドイツ(49.0%)
カナダ(48.6%)
スロバキア(47.0%)
フランス(45.1%)
韓国(38.1%)
日本・・・37.0%
 
OECD平均(57.3%)


 我が国は、糖尿病があるにもかかわらず、眼底検査を受けていない方が多い国です。

糖尿病性網膜症は早期発見早期治療が重要です。

糖尿病のある方はすすんで眼底検査を受けましょう。



眼底出血などの糖尿病性網膜症の予防に果物が効果があるようです

日本の59か所の大学病院やその地域の基幹病院の糖尿病専門医が協力して、2000人の糖尿病患者様を追跡調査しました(Japan Diabetes Complications Study)


糖尿病

その結果、適量の果物の摂取が、糖尿病性網膜症に予防的に作用することがわかり、


果物摂取量が、1日250g(バナナ2本分、またはミカン3個分、リンゴ1個分程度)を食べている方は、ほとんどとっていない方と比較すると、 糖尿病性網膜症の発症が少ないという結果です。


経過年数3年で約60%糖尿病性網膜症の発症が減少。


経過年数5年で約30%糖尿病性網膜症の発症が減少。

とのことです。


それはビタミンC摂取量と関係があるようです。


当然、過食すると血糖値が上がるためお勧めできませんが、今まで果物を摂る習慣のない方は血糖値の上昇に注意しながら試されてはいかがでしょうか



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糖尿病の眼科の合併症で眼底出血などの糖尿病性網膜症の発症は3.8%。発症する人としない人の要因は何?、血糖? 治療法? 血圧?コレステロール?

糖尿病患者数は、我が国成人人口の11.2%を占めています。


なんとこの患者数は世界ランキングの第6位。


それに伴い、糖尿病の三大合併症である糖尿病性網膜症の患者さんも増えています。


我が国で失明する人の原因としては、糖尿病性網膜症で失明する人の数は緑内障に次いで第2位となっています
我が国の失明原因は?



糖尿病になっている方で眼底出血などの網膜症が発症している方は3.8%であると言われていますが、誰でも失明はしたくはありません。


また、網膜症をおこすと、腎不全、脳卒中、虚血性心疾患の危険性が高くなり、さらには死亡率にも影響します。


そして糖尿病性網膜症を発症するとレーザーや注射など多額の治療費がかかります(その治療費は?)





そこで、どのような方が糖尿病患者さんの中で、どのような方が糖尿病性網膜症を発症するのかを、データから見てみましょう。

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〃貪値のコントロール

当然、血糖値のコントロールが良好なほど、糖尿病性網膜症の進展は抑えられますが、


ヘモグロビンA1C 7.0%未満の方と比べると、

ヘモグロビンA1C 7.0から8.0%の発症は約2倍

ヘモグロビンA1C 8〜10%では3.5倍

ヘモグロビンA1C 10%以上で7.6倍


発症率は上がります。




糖尿病を発症してからの年数

糖尿病になってから眼底出血などの網膜症が発症するのは 5年から10年で増加する傾向





E尿病の治療状況

A.インスリン1日1〜2回打って平均ヘモグロビンA1Cが9.1%のグループでは網膜症の発症が54.1%

B.インスリンを1日4回打ち、平均ヘモグロビンA1Cが7.2% のグループでは網膜症の発症が11.5%

インスリンを多く打って厳密にコントロールをすることで、54%の危険性を軽減できる。



さらに、その後、Aのグループにインスリンの回数を増やしBのグループと同じくらいにしても

糖尿病性網膜症の発症率は縮まるものの、最初にヘモグロビンA1Cが下がっているBのグループの方が網膜症の発症は少ない



すなわち、ゆっくり下げるよりも最初から強力に血糖のコントロールを行った方が糖尿病性網膜症の発症が少なくなります。

以前は、ゆっきる下げた方が良い見解の時もありましたが、最近のデータでは異なっています。





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血圧が150/85未満にコントロールできているグループは

180/105未満にコントロールできているグループにくらべ、

網膜症の進展は34%発症率を軽減。





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血清コレステロール値を減らす治療を併用することで、


血糖値のコントロールだけをしているグループの網膜症の進展は14.6%に対し、

コレステロールを減らす治療を併用しているグループでは、3.1%





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人間ドックの眼底写真で1/3以上の失明は予防できる。眼底検査で多くの緑内障や眼底出血、白内障、加齢性黄斑変性症は検診でこのように発見されます

ある調査で、人間ドックで眼底検査を受けると40歳以上の失明率が36.4%減少できることがわかりました。




最近の眼底カメラは進化しており、多くの場合は目薬を使って瞳孔を大きくしなくても、瞬時に下のようなきれいな写真が撮れます。


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ところで、日本人の失明原因は

2007年の調査結果 (厚生労働省研究班の調査報告書より)

1.緑内障(20.9%)
2.糖尿病性網膜症(19.0%)

3. 網膜色素変性症(13.5%)
4.加齢性黄斑変性症(9.3%)
 

と報告されていますが、

どちらも早期発見、早期治療で失明は予防できるのです。



●緑内障はこんな感じで発見される・・・


glanor正常の写真と比べると視神経乳頭(左図の矢印)の白い部分が大きくなっています (視神経乳頭陥凹拡大)。








緑内障は進行すると元に戻すことはできませんが、早期発見して眼圧を十分に下げることができれば進行を止めることが実証されています(そのエビデンスはこちら
 

見えなくなってからでは遅い病気で、早期発見が重要なのです。


検診で緑内障の指摘を受けて眼科を受診してくただくと、最新の機器であるOCTで簡単に診断でき、視野検査で確定診断がされます(OCTの診断についてはこちら)。





●糖尿病性網膜症はこんな感じで発見される・・・
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正常と比べると、赤い斑点や白い斑点が出ています。

赤い斑点が眼底出血、白い斑点が白斑で、糖尿病性網膜症に特徴的な所見です。


この患者さんでも視力が1.0見えているのです。


このように出血が増えてきても自覚されないのが糖尿病性網膜症の怖いところで、視力が下がった時には網膜が傷んでしまい、視力が回復しないこともあります。


やはり早期発見が重要です。

治療技術の進歩で、早期発見で90%の方の失明が予防できるといわれています。


ちなみにこの眼底写真の患者さんは、早急にレーザー治療を行い、出血も吸収し視力1.0が維持できています


糖尿病性網膜症レーザー後




加齢性黄斑変性症はこんな感じで発見される・・・


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失明原因4位の黄斑変性症も初期の段階の黄斑のドルーゼンという状態があります。

本来では色素がいっぱい詰まって色の濃い部分の黄斑の一部にドルーゼンと言う白い斑点が出てくるのです。


この段階で予防していけばその危険因子を排除することで予防はできるのです。





●白内障はこんな感じで発見される・・・
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このように写真全体が白く濁ってしまっています。





以上からも、簡単な眼底検査で失明者の36.4%が予防できるというデータはご理解していただいたと思います。

 

しかし、実は多くの方は眼底写真による眼底検査を受ける機会が減少してきているのです。


それは、それまで基本健康調査(住民健診)で行われていた眼底検査が、2008年の特定健診(メタボ検診)導入後、多くの市町村で行われなくなってきているのです。

たとえば名古屋市の眼底検査の実施率は

2007年・・・13.4%
2008年・・・0.4%
2009年・・・0.14%


と2008年以降激減し、ほんとの住民が眼底検査を受ける機会を失っているのが現状です。



その結果、多くの方は防げる失明に至る病気を治療する機会を失っているかもしれないのです。


さらに最近では眼底写真から脳梗塞や脳出血の危険性までわかるようになりました

詳しくはこちら


40歳を過ぎれば、積極的に眼底検査を受けられることをお勧めいたします。





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糖尿病の目は自分で守る時代に。眼底検査で早期発見が必要な糖尿病性網膜症にもかかわらず先進国では日本は最低の受診率。治療のきっかけを失い中には手遅れで失明することも

●日本の糖尿病患者の眼底検査の実施率は?

糖尿病患者の眼底検査の施行率

イギリス(83.4%)
スウェーデン(77.8%)
オーストラリア(72.5%)
アメリカ(67.5%)
ニュージーランド(65.5%)
イタリア(56.0%)
ドイツ(49.0%)
カナダ(48.6%)
スロバキア(47.0%)
フランス(45.1%)
韓国(38.1%)
日本・・・37.0%
 
OECD平均(57.3%)


わが国の失明原因の中では緑内障に続いて第2位の頻度となっているにもかかわらず、
このように糖尿病患者の眼底検査受診率は先進国最下位です。






●眼底検査の受診率の最近の傾向

上のデータは2006年以前のデータですが、それ以降さらに受診率は減少傾向にあります。

それは従来、住民健診である基本健康調査として実施されていた眼底検査が、2008年にメタボ健診が導入されて健診内容が生活習慣病メインにシフトされたため、眼底検査は医師が必要と思われる方のみの実施になってしまい、眼底検査実施率はその後100分の一に減少しているのです。

たとえば名古屋市の眼底検査の実施率は

2007年・・・13.4%
2008年・・・0.4%
2009年・・・0.14%



と2008年以降激減し、ほんとの住民が眼底検査を受ける機会を失っているのが現状です。




●なぜわが国は受診率が低いのか?

他の先進国では健診という形で積極的に眼底検査を受けるようにすすめています。

しかし、わが国では糖尿病の治療の窓口は内科にあり、健診でほとんどの方が眼底検査を受けられなくなった今、糖尿病患者さんが眼底検査を受ける機会は内科から眼科を紹介されて受診することがほとんどになってきています。


たとえ内科から紹介され1回目は眼科を受診されても、その後は全く受診されず見えにくくなってから受診される方もいらっしゃいます。

見えにくくなってからでは遅いケースもあるのです。


内科の先生も眼科に紹介した後も定期的に眼科を受診しているものと思っています。



そこで住民健診で行われなくなった以上、糖尿病の患者様は自らで眼底検査を受けなければならなくなっているのです。






●治療が遅れれば視力は上がらないのか?



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この写真の方のように出血が広がってしまうと視力の回復は難しくなります。











●早期発見すれば失明は防ぐことができるのか?

糖尿病性網膜症の治療法は進歩しており、抗VEGF硝子体内注射や網膜光凝固を行えば、失明の90%は防止できると言われています。



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このような時代だからこそ、糖尿病の患者様は定期的な眼底検査をお勧めいたします。

自分の目は自分で守りぬく時代なのです。


糖尿病の眼科の合併症で眼底出血などの糖尿病性網膜症を発症する人としない人の要因は?


糖尿病性網膜症を発症した場合の治療費は?




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若いときには色覚が正常でも年齢とともに色覚がおかしくなることが。糖尿病の方は見え方が悪くなくても、徐々に色の感覚がおかしくなることがあります(後天性色覚異常)

若いときには色覚が正常でも、

年齢とともに色の感覚がおかしくなることがあります。

代表的な原因として緑内障などの視神経の病気や頭の病気でも侵されることがありますが、

糖尿病性網膜症などの網膜に病気が出てきても色覚が侵されることがあります。


しかし、防衛医科大学眼科の庄司拓平先生は、

眼底、すなわち網膜に症状の出ていない2型糖尿病患者でも8.07倍の後天性色覚異常の危険性があると発表されました
(Shouji T, et al:Do type2 diabetes patients without diabetic retinopathy or subjects with impaired fasting glucose have impaired colour vision? The Okubo Color Study Report. Diabet Med28:865-871.2011
糖尿病






糖尿病はあるけれども、

眼底に糖尿病の影響が出ていない、

すなわち、

見え方が悪くなっていないのに色覚が低下していることがあるのです。

主な色覚異常者が感じる症状はこちら


自覚的に気が付かないままに色覚が低下してくることがあるようです。


糖尿病のある方で、

デザイナーや運転士など色の見分けが重要な仕事についている方は、

自覚されないまま、徐々に色の識別が低下して、仕事に支障の出ている可能性があり要注意です。

色の識別が必要な職業についてはこちら



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肝臓の治療中に眼底出血? インターフェロンの副作用の網膜症で来院される患者さまが時々いらっしゃいます。 かすみが強くなったり視力低下の原因になることも。

ある日のこと。ある患者さんが来院されました。

「どうなさいましたか?」


「月の影のようなものが見えるんです」


「それは飛蚊症ですね。さっそく瞳孔を開いて眼底をみることにしてみましょう」

説明1







散瞳後

「眼底出血していますよ。 眼底出血の原因として多いのは糖尿病や高血圧がありますが、言われたことはありませんか?」

「いいえ。ありません」

「これが眼底写真ですが青い矢印の先、白くなっているのところがありますがこれが白斑という異常な所見です。他に何か病気はないですか?」

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「今、肝臓の病気で治療中です」

「もしかしてインターフェロンを使った治療を行っていますか?」

「はい、この前から始めました」

「恐らく、この白斑はインターフェロンが原因と思われます」

「では今すぐに肝臓のインターフェロンの治療をやめなければいけませんか?」

「自然に吸収することが多いのでインターフェロンの治療を続けながら経過観察をしてみましょう」

「大丈夫ですか?」

「肝臓の治療優先で行きましょう」


その方は、インターフェロンを使いながら、1か月に一度くらい経過観察を行いましたが半年後にはきれいに出血も吸収し、月の影が見える症状も改善されました。

医師







インターフェロンは抗ウイルス作用と抗腫瘍作用がありいろいろなところで使われているお薬です。

特にC型肝炎の治療においては一般な方法になって多くの患者さまが使っておられます。


そのため時々この患者さんのようにインターフェロンを使われて眼底に異常のでる患者さまを見ることがあります。


しかし、眼底出血が生じても自然に吸収することが多いと言われています。

ですから眼底出血が生じたからといってインターフェロンを中止する必要はありません。


ただし、中には硝子体出血やさらには眼底出血から緑内障を生じて視力をかなりの程度落としてしまったケースがあり油断はできません。

とくに糖尿病の患者さまは要注意です。


そうならないよう、この方のように眼底出血が吸収するまでは眼科に通院されておかれたほうがよいでしょう。


また、インターフェロンでの加療中の方で、とくに糖尿病もある方は自覚症状がなくても出血が目の中で生じているかもしれません。


眼科で一度調べておかれてはいかがでしょうか。



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糖尿病の方が眼底出血などの網膜症をおこすと、腎不全、脳卒中、虚血性心疾患の危険性が高くなり、さらには死亡率にも影響。だからこそ糖尿病の方は定期的な眼底検査が必要。

糖尿病の方が、内科から紹介されて眼科を受診されることがあります。



糖尿病の合併症として眼底出血などの網膜症は重要で、最悪、失明にまで至ることがあります。日本人の失明原因では緑内障について多い順位となっています。


糖尿病で網膜症を発症し、視力障害を起こしている患者数は約66万人と推測されます。


眼底を調べて眼底に異常がなくても、その時の糖尿病のコントロールの状態で、患者さまには次回の受診を6ヶ月後や1年後の指示をします。


しかし、中には指示を守らず、内科医に注意をされて何年もたってから来院される方もいらっしゃいます。


説明










「どうして来院されなかったのですか? 次回は1年後と言っていたのにもう3年もたっています」  (医師)


「今でもよく見えているので大丈夫かなっと。それに、前回異常がなかったので安心していました」  (患者さま)


という答えが返ってきます。



「この眼底写真を見てください。この方の眼底はすごく出血していますがそれでも視力は1.0以上見えているのです。こんなに出血していてもよく見えているのですから、よく見えているからと言って眼底出血が出ていないとは言えないのです。


糖尿病性網膜症写真








じわじわと網膜が腫れてきたり、ある日突然大きな出血が起こって見えなくなることもあるのです」  (医師)





「わかりました。言われたとおりに定期的に眼科も受診します。失明は怖いです。」   (患者さま)




「さらにもう一つ付け加えておきます。

糖尿病は全身の血管をおかす病気です。

眼科のほうでは末梢血管の異常として眼底出血が出てきますが、眼底だけではなく他の部位の大きな血管にも異常を生じます。

それは腎臓であったり脳や心臓の血管であったりするのです。


眼底の血管に異常があるということは体のほかの部分の血管にも異常があることが推測されます。



このようなデーターがあります。


多くの糖尿病のタイプである2型糖尿病患者の中で、糖尿病性網膜症を有する患者は6年後に腎機能障害を発症する危険性は糖尿病性網膜症を持たない患者に比べ2.5倍高い。


また、同じく糖尿病性網膜症をもつと脳卒中の危険が2倍から3倍上昇する。


さらには糖尿病性網膜症を有する2型糖尿病は2倍心筋梗塞などの虚血性心疾患の発症の危険、ならびにうっ血性心不全の危険が増す。

糖尿病性網膜症の重症度が虚血性心疾患による死亡率を高めると言うことも分かっているのです。



さらに、怖いのは、『2型糖尿病で糖尿病性網膜症を有する患者の5年後の死亡率が高くなり、さらに糖尿病性網膜症の程度が強いとさらに死亡との関連が強くなる』ということが多くのデーターから実証されているのです。 



目は心の窓といいますが、脳や心臓・腎臓の血管は直接のぞくことができませんが、眼底は血管を見ることのできる唯一の窓でもあるのです。


眼底の血管に異常があるということは、腎臓や脳、心臓の血管にも異常が出ていると推測できるものと思われます。


いろいろな意味で糖尿病の方が眼底を調べる必要性をわかっていただけましたか?」   (医師)




「はい、わかりました。 毎月でも来ます」  (患者さま)



「・・・・・・」   (医師)



(以上、本間慶ほか:糖尿病性網膜症の疫学:糖尿病性網膜症と大血管症.あたらしい眼科27(9):1169-1174、2010を参考に書きました)





(関連ブログ)

眼底検査でわかる脳卒中の予兆、高血圧、糖尿病の影響

糖尿病患者さんの中で眼底出血を発症した方にはどのような傾向があるのか

糖尿病の方、この眼底写真でも視力は1.0ですよ

糖尿病患者様の中にはつらくて治療を途中でやめてしまう人が-NHK「クローズアップ現代」より

誰でも失明はしたくはありません。日本人の失明原因を10年前と比較してみてみました





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眼底検査でわかる脳卒中の予兆、高血圧、糖尿病の影響

最近では人間ドックなどの健康診断で眼底検査をすることが多くなっています。


緑内障や眼底出血、黄斑変性症が見つかることがありますが、それ以外に動脈硬化、高血圧による全身的疾患からの眼底の血管変化が発見されることもあります。


また眼底の血管の異常の程度から、全身的疾患の進行具合が予想されることもあるのです。


それだけ眼底の血管の変化は全身の血管の病的な変化と関係があるのです。
 

たとえば脳卒中の発症と眼底の眼底の血管の変化が関係があるといわれています。

 眼底血管の変化とは、網膜の動脈の血管径とその静脈の径との比(動脈径/静脈径)が小さくなることや網膜の静脈と交叉するときに硬くなった動脈が静脈を圧迫している所見で、これらの所見があると、年齢、性別、人種、血圧、糖尿病などの危険因子に独立して脳卒中の発症と関連するということが複数の疫学調査で報告されています。



『眼底血管に異常があると脳卒中になる危険性がでてくるということです』


 脳卒中の中でも、眼底の血管の変化は脳梗塞より脳出血とより関係があるようです。

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次に、さらに興味深いのは、網膜血管の変化が高血圧の発症に先立つことが報告されています。

高血圧の発症は末梢血管抵抗の増大と関係がありますが、眼底の血管も末梢血管で、網膜血管の径が細くなっていることは全身の末梢血管抵抗が増していることが示唆され、これが高血圧の発症へと影響されてくるのです。
 

『血圧が正常で網膜細動脈が細い人では動脈が太い人に比べて5年後に高血圧の発症する危険が高い』

と報告されています。


血圧測定








また、 網膜動脈径が将来の糖尿病の発症や、糖尿病性網膜症の発症と関連する』

ことも報告されています。



平成21年度に篠田総合病院健診センターを受診した1003名で調べたところ、腹囲拡大、高中性脂肪、高血圧が網膜動脈径の狭細化と関連しており、腹囲拡大は網膜静脈の拡大と関連していたと報告しています。


このように最近よく言われている
『メタボリックシンドロームとも網膜血管の変化は関連がある』
ようです。

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眼底の血管は、全身の血管の中で唯一直接見ることのできる血管です。

目は心の窓と言われていますが、この点では目は全身の血管の窓なのかもしれません。

その血管を調べることで、脳卒中や、高血圧、糖尿病などの血管の変化から生じる病気の危険性がわかることがわかるとことがわかってきました。


眼底カメラを使えば、眼底の血管は写真を撮るだけの簡単な検査でわかります。


気になる方は一度調べられてはいかがでしょうか

(以上、斎藤公子他:眼底検診と全身疾患:日本の眼科81:1008-1011、2010 を参考にして書きました)


また、まぶたにこのようなできものができると心筋梗塞などの虚血性心疾患が生じる危険性があると言われています(詳しくはこちら





(関連ブログ)

糖尿病の方が眼底出血などの網膜症をおこすと、腎不全、脳卒中、虚血性心疾患の危険性が高くなり、さらには死亡率にも影響。だからこそ糖尿病の方は定期的な眼底検査が必要。


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