キャリーケースを機内に預ける手続きを済ませ、保安検査で手荷物のチェックを受ける。
トレイの上に口を開けたショルダーバッグを乗せて、スマートフォンをその横に置いた。
トレイはベルトコンベアに乗って流れていく。
続いて金属探知機を歩いて通過する。
ポケットに鍵が入っているのを思い出したがとりあえず通過を試みる。
ブザーが鳴り(やはり駄目か)とポケットに手を入れようとすると係の人が靴を脱げと言った。
(靴じゃないんだけどな)と思いながらも言われるままにビルケンシュトックを脱いだら通れた。
確かに小さな金属のバックルは付いているが、鍵はスルーしてバックルを感知したのだろうか。
基準がよく解らないが(小さなスイスアーミーくらいなら持ち込めそうだな)などとシニカルな事を考えた。
おそらく無理だと思うけど。
それから手荷物を受け取るカウンターへ向かうと、係の女性が申し訳なさそうに私の前に荷物を置き、日焼け止めが容量オーバーだから没収すると言った。
一瞬耳を疑ったが確認すると確かにそうだった。
日焼け止めくらい持ち込めるだろうと容量の事は意識していなかった。
100mlを越える液体の容器は中身の量にかかわらず持ち込めない。
航空会社は液体の機内持ち込みに厳しくなっている。
(危険物は持ち込めない。当然だ。だけど日焼け止めだとわかっていながらルールだから没収すると言うのならば交渉次第でなんとかなるんじゃなかろうか。いや、そんな事は誰もが考える。一握りくらいは実際に交渉する人もいそうだが、そんな交渉にいちいち真摯に応対するほど保安係員も暇じゃないだろう。だからこそ「危険な物ではなく日焼け止めだとわかっているけれど没収するからね」と言うのだろう。)
1秒で交渉の余地など無いと悟った私は、潔く日焼け止めをあきらめた。
詰め替えたばかりだったのに。

こうして成田国際空港の制限エリア内に入った。
制限エリア内にはCHANEL、PRADA、BOTTEGAなどハイブランドの免税店が並び、AKIHABARAといういかにも外国人向けのアンテナショップがあった。
そしてマツモトキヨシやレストランフロアもあった。
各々、離陸時間まで自由行動という事になったので、夕食をとった後、没収されてしまったので日焼け止めを買う事にした。
なぜここまで日焼け止めに執着するのかというと、海外の製品で肌に合う物を選ぶなど到底無理だと思っていたからだ。
まずレストランフロアへ向かった。