2018/02/19

レビューというほどでもない感想8

中村文則さんの『土の中の子供』と『迷宮』を読みました。

簡単に紹介しておくと、『土の中の子供』は2005年に芥川賞を
受賞。『迷宮』は推理サスペンスの雰囲気もあります。

全体的に、中村先生の作品は狂気と正気の境目で危うく生きている
人々が出てきます。
自分を考えすぎる程考えて喪失感や孤独感なんていう単純な言葉では
言い表せない内心を深くえぐるような描写が続きます。
酒、タバコ、睡眠薬など、拠り所の無い人がそれらに逃げながらも
なんとか生きて、でも死にたいのか生きたいのかも、
よくわからないという状態。
そういう極限の状態が、最初から最後まで続くのです。

こちらがのめり込んで読むと、間違いなく疲弊してしまうのですが、
最後まで読むことで、なんとなく救われるのです。
ここまで苦しんだ人(主人公)の選んだ結果が、ちゃんと納得できる
最後であり、そこに必ず希望もあるからです。

中村先生は多分誰よりも生きることを丁寧に書こうとしているのでは
ないかなと、思います。

ただ昨今、私は考えてしまう時があります。

幼少期に衝撃的な経験をした者は、大人になって必ず異常を発するとか、
異常を発する正当な理由である、的な事を言う物語が多いです。
少年犯罪においても、過去の家庭環境がどうだったか等の話が
クローズアップされます。
家庭内での性的暴力や、養育拒否などの虐待があると、その子は
犯罪因子となりうるかのような、いや、犯罪を犯してもしょうがない、
というような見解がまかり通っているような気がします。

勿論、深い傷がついた人は己を見失うこともありえるでしょう。
でもそれならば、辛い目に遭った人が頑張って生きて行く支えはどこに
あるんでしょうか。
あなたは辛い目に遭ったから、一般の人より犯罪者に近いのだ、という
レッテルを貼って、その上で上から目線で可哀そうだと思っているだけ
ではないでしょうか?

何らかの不幸の中、生きて行く努力をしている人がいて、
その人の内面を知ろうとしても闇に閉ざされている、そんな深い闇を、
中村先生は丁寧に描いてらっしゃる。
複雑なひだの中に沁みこんだ、迷いと疑いと自己の喪失で、ふらふらに
なっている主人公たち。
私は読むことで実際にいるであろうそういう人々の何の力にもなれない
ことを思い知らされるのです。
だから、最後は絶望のエンディングではないことが、
どこか自分も悩みを持つ人間の端くれとして、安堵するのです。
今まで読んだ中村先生の作品は、『教団X』にしろ今日書いた2冊にしろ、
やはり先生の一生懸命生きている人への愛情を感じます。

面白かったです。
でも、先生の癖のある文体などを、知らないうちに真似てしまったら
マズイなあと思いました笑。






f_day at 23:19|Permalink