ネットの向こうでは男子たちが、のそのそとバレーボールで遊んでいた。
 そう、練習というより、ボールと、けだるーく遊んでいる、そんな感じだった。
 教師も体育館の端にパイプ椅子を持ってきて、ただ座って雑誌を読んでいるくらいだから、そうなるのも当たり前だった。

 不意にふざけて誰かが強く打ち上げたボールが、体育館の天井にハマり込んだ。
 鉄骨のようなものがぶわんと共振する音が、体育館全体に響く。
 おかげで男子も、ミハルたち2年の女子も、つい手を止めてをの様子を見つめることになった。

 高さ十メートルほどある天井に張り巡らされた鉄骨。
 その枠組みが網になっている部分に、ボールがガッチリとはまり込んでしまった。

 あーあ、という嘆息。
 教師も仕方なく椅子から立ちあがって、届くはずの無いボールを下から見上げている。
 新しいボールを探して動き出す男子たち数人と、よくあることだと授業を再開する女子たち。

 その体育館の中にいる人間、誰もが自分の時間を取り戻そうとしていた時だった。


 最初、パーンという軽い破裂音がした。
 と思った次の瞬間には、ボールが突き刺さった部分が爆発し、梁(はり)がまるで矢のように四方八方へと発射される。
 床に突き刺さる太い鉄骨。

 悲鳴さえも恐怖で静まる。

 ド、ン。
「え? バレーボールが破裂しただけでしょ?」
 ゴ、ン。ゴガ、ッガ、グガン……
 まるでドラムを打つように、その大きな音は鳴りやまない。人を串刺しにしそうな鉄骨と、コンクリートのような塊が落ち、床をグシャグシャに破砕してゆく。

 もうすでに同級生たちは仲良し同士の誘導で、体育館から逃げている。
 今日転入したばかりの、腰を抜かして横たわってしまったミハルの事など誰も見向きもしない。
 恐怖で頭を抱え、体をダンゴムシのようにして精一杯防御するが、恐ろしい音と、床から伝わる破壊の振動は、ミハルの小さい心臓を潰さんばかりだ。
 
「おい、寝てどうする」

 ミハルの耳に男の声がして、ほんの少しだけ顔を覆っていた手をずらし、相手を見上げた。

 左目から頭部にかけて包帯を巻きつけた男が、ミハルの真上から覗き込んでいた。

 その彼の後ろから、さらに身長2メートル越えの大きな男子が、顔を出して無言のまま笑っている。