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「接吻」を観ました。
孤独なOL・京子はTVに映った男に恋をする。その男とは、無差別殺人で3人を殺し連行される殺人犯・坂口だった・・・
殺人犯に恋したストーカー女・京子。あぁ、なんて面倒くさい女なのだろうか。最終的にはもう坂口なんてどうでもいいのね、これは全くもって京子の物語。この女、なかなかの悪女なのだよ、無意識にね。
あの後の京子の気持ちがとても気になる。坂口が言っていた言葉「君と僕は違う、僕は人を殺したんだ」という境地。殺してしまったからこそ感じられる事に、彼女も塀の中で気付く事が出来るんだろうか。それとも、もう永久に自分の世界へ逃げてしまうのか。無理なのかな、あのやり方で自分の中に坂口を永遠に閉じ込めてしまったような人だものね。
最後のシーンは物議を醸しているようだけど、確かに唐突な印象は否めないのよね。ただあの状況そのものが異様だから、何が起こっても不思議ではない気がしないでもないが。
あれは、長谷川に対する罠というか手錠というか、京子が最後に大博打に出たというか。もうあの瞬間に長谷川は完全に京子に支配され、虜になってしまった。坂口に対する京子の一方的な慕情が、あの瞬間完全に立場が入れ替わってしまい、長谷川が塀の中の京子を追いかけ続けるという舞台が整ったようなもの。
京子は長谷川の自分に対する気持ちを冷酷に利用したとも言える。あの行動で長谷川が自分の幻影から抜けられなくなると本能でわかっていたはずだ。そして彼の心の中に自分を植え付けるという行為は、現世への京子の執着とも取れる。「自分の事には構うな」という捨て台詞は心とは恐らく裏腹だろう。忘れられてもいいと心底思っているなら、長谷川に対してあんな事はしない。京子は、長谷川を通してこの世界と繋がっていたいのだ。
何よりも恐ろしいのは、そのない交ぜの気持ちがあの「接吻」で昇華されてしまった事。全く無意識にその行動をとったという事。凄いぞ、悪女・京子。
不穏な空気の漂わせ方がとても上手い。冒頭、ブラブラと歩く坂口役のトヨエツの姿からして「何かあるぞ」と思わせる。押し入った家に帰宅した子供が、程なく家から飛び出そうとしてスローで髪を引っ張られて引き戻されるシーンは本当に怖い。一心不乱に手紙を書く京子の姿も、日増しに生き生きとしてゆく京子の目も。
京子役に小池栄子を据えた監督の選択も良かったのだろうね。ノーメイクになった時の彼女の目、ひときわ大きくてギラギラした感じが後半になればなるほど生きていたと思う。文字通り、体当たりで一生懸命役になりきろうとしている感じにとても好感を持った、これからも期待。

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