体外受精や顕微授精など不妊治療に取り組む医療施設を対象に「蔵本ウイメンズクリニック」(福岡市博多区)の福田貴美子・看護師長らの研究グループが全国調査。回答した114施設のうち、人工授精時の精子の混同や患者違いなどの事故を「身近に感じたことがある」と回答した施設が約半数あった。また施設内に「医療安全管理委員会」を設置している施設は約9割に上り、事故防止への意識の高さがうかがえた。

 国内の総出生児に対する体外受精児は05年で約55人に1人の割合を占める。不妊治療の果たす役割は年々大きく、安全管理は急務とされる。研究グループによると、不妊治療現場の事故に関する調査は過去に例がないという。

 調査は07年7月末時点で日本産科婦人科学会に登録する594施設を対象に郵送でアンケートを実施し、調査期間は07年12月〜08年1月。

 回答では、ヒヤリハット事案も含めて▽胚(はい)の取り違え▽人工授精時の精子の混同や患者間違い▽器具落下による卵の破損▽承諾を得ず凍結精子の破棄▽精子の名前の誤記入−−などの生殖医療特有の事例が寄せられ、「(事故を)身近に感じたことがある」と答えた施設が56あり、49・1%を占めた。患者に被害が及ぶケースは少なかった。

 安全管理対策については、事故の分析や再発防止に取り組む「医療安全管理委員会」を設置している施設が101(88・5%)あり、設置を義務づけられていない無床診療所でも高い設置率が報告されている。

 一方、精子や卵、胚などの取り違え防止や事故発生時のマニュアルの有無については87施設(76・3%)が「なし」と回答。患者誤認防止のために患者参加型でフルネーム確認に取り組んでいるのは43施設(37・7%)だった。

 調査した福田看護師長は「現場レベルでの安全対策は把握できたが、フルネーム確認などはさらに進める必要がある。医療施設全体でリスクの高い事故事例を共通認識するためにも、学会レベルで共通の安全管理指針を設けることも必要だ」などと話している。【松本光央】