20201116  日本健康心理学会33回大会は、「新生活様式と健康心理学」というテーマで開催されました。この大会において、「研究推進委員会」は、(演題)「3密の回避」は私達のメンタルヘルスに何をもたらしたか?-健康心理学の研究と貢献-」というシンポジウムを企画しました。

とても興味深く、現在の新型コロナウィルスの影響が非常に懸念される中、どのように未来を構築したら良いのだろうか?日々、不安を抱える私達の生活において、「良いヒント」「明るい光」を照らしてくれる内容もありましたので、ここに投稿したいと思います。

まず初めは、国際基督教大学の笹尾敏明先生より、「社会生態学視座から見るCOVID19世界的聞危機における健康心理学への挑戦」についてのご発表がありました。

今回の感染症「COVID19」は「社会性」を帯びている。誰もがかかり得るという脅威があり、個人レベルの「行動」「信念」「価値観変容」などでは対処しきれない状況にある。

そこで、「コミュニティー心理学」からのアプローチについての発表でした。現代社会は、「社会通年」「規範」「価値感」の多様化があり、「学校」や「会社」、「地域」の人間関係の希薄化が存在する。その事が「被害者非難」の増加に繋がったり、これまでの健康心理学的介入の問題点として、「リスク型アプローチ」の課題がありました。即ち、個人レベルの介入であったため、問題が起きた時に、「〇〇をやらなかったのではないのか(感染症対策をしなかったのが原因ではないか)」等、「被害者非難」に陥りやすいアプローチ(2010年)がありました。そこで、「コミュニティー心理学」の目指す所は、「人間と環境の適合」。Kelly1979)は(1)相互依存「生活空間において全てのものが依存しあっている(2)資源の循環「社会関係資本を含む、友人関係、サポート(老人が赤ちゃんの世話をするボランティア)等、お互いに影響しながらRecyclingしている」(3)適応性「生活空間において私達は適応していくという考え方」(4)連続性「時間が経てば(新型コロナウィルスを越える事が出来れば)生活が戻る。又、違った方向で進んでいく事もある。連続性がある(環境は常に変化するため、より適応力に富む集団は、適応の低い集団にとって代わる等)」「社会生態学の4原理」が紹介されました。そして、「コミュニティー心理学における価値感」とは、「社会正義」が重視されてきた(1960年代)。「誰もが安全でかつ安心できる生活空間を確保」のためには、「社会、組織、地域における弱者、社会的に疎外されてきた人々の人権や社会正義の確保」が大きなテーマでなり、Albee&Ryan-Finn1933)は、行動・情緒障害の発症率は、ライフリソースを取り巻く「リスク要因」と「保護要因」の「バランス」によるとの事でした。

それでは、心理的介入・研究における「社会正義」とは何か。それは、個人や集団の「ウェルビーイング」を確保、保持するために、ライフリソース(物資的資源や、社会的関係資本、機会、交渉力など)が「公平」「公正」にアクセスする事が出来、いかなる社会背景を持つ個人、集団にも「公正」かつ「平等」に分配される事。これが、「コミュニティー心理学」の狙いとなりました。

現代における様々な社会的な問題(学校、職場、医療、災害、ホームレス地区、在日外国人、移民問題)への介入プログラムは、「今、見直しの時期に来ているのではないか」。発表者の笹尾先生は、定義されています。即ち「社会正義」を基盤とした「ライフリソース」の分配の在り方。それを、個人レベルではなく、社会レベル(コミュニティー参画等)で、どのように理解して考えていくのか(「公正」「公平」という視点)。そして、それを「繋げていく」。家族、学校、職場、コミュティーとの「社会的な繋がり」があって、初めて「ウェルビーイング」「充実感」が達成される。新型コロナウィルスは、「問題な飲酒行動」や「家庭内暴力」に相関関係があったと報告されています。そんな今こそ「社会的なつながり」を促進するようなプログラムが必要。「つながる社会」が「安心、安全な社会」へ導くならば、「つながる社会」とは、人間社会に「HOPE(希望)」を与える。そのような素晴らしい発表でした。

真に必要とされている介入とは、「希望」を与えるあるいは獲得するものである(Hobfoll 2077)。安全な生活保証という「安心の実感」。コロナ以前の隣人との再開が確実なものであれば、それは「希望」に繋がるでしょう。「社会の繋がり」の中で、個人の価値感。そして、「社会適応」するために個々がどのようにバランスを取っていくのか。「健康心理学会」や「健康心理士」が様々なアプローチを考案して下さる中、それを受け取る私達は、常に、「希望に繋がる社会の実現」のために、どのように行動するべきなのか。考える事の大切さに気づいたシンポジウムでした。