10年ほど前の話になりますが、私は国立職業リハビリテーションの職員として、「高次脳機能障害」を背負った方達の就労支援に携わっていました。この障害になる原因は、バイク事故による「脳挫傷」。あるいは「脳梗塞」の後遺症として「高次脳機能障害」状態になる方など様々でした。「記憶力障害」「遂行機能障害(物事を順序立てて考える事が難しい)」「情緒障害」などに苦しむ方達を目の前に、「弱い所」よりも「強み」を生かして支援をする。「高次脳機能障害」により、「就労」や「生活」を難しくしているのはどんな場面なのか?その障害を補完するための訓練、環境を整える支援を繰り返し行ってきました。訓練生(高次脳機能障害者)が経済的にも自立する生活を望み、日々の努力が実って就職が決まった時は、職員一同、揃って本当に喜びました。少々心配もしましたが、訓練生のたくましい姿に感銘を受けたものでした。

そこで今回、ご紹介する文献は、
岡村尚昌先生(久留米大学高次脳疾患研究所)の「胎児期と乳幼児期のストレス」についてです。私が携わった「高次脳機能障害」の方達は、学生時代、仕事に就いた後に発症した方達が多かったのですが、ここで取り上げているのは、「胎児」「乳幼児期」という幼い子ども達。幼少時期に、過度なストレスを受けると、その後の発達にどのような影響があるのか?日々、子ども達と接する中で、健やかに成長出来る環境を整える大切さを痛切に感じます。日本健康心理学会「健康心理学コラムvol.66」より。岡村尚昌先生からのご承諾を頂きましたので、文章をそのまま載せたいと思います。

「胎児期と乳幼児期のストレス」
 岡村 尚昌(久留米大学高次脳疾患研究所)

胎児期・乳幼児期の過度なストレスにより,脳の神経細胞の形態変化が引き起こされることや,出生後の記憶や学習機能,情動機能に決定的な影響が及ぼされることが知られています。ラットやサルを対象にした研究では,母親が妊娠中に繰り返し心理社会的ストレスを経験したことで,多くのコルチゾールに暴露された胎仔では,ストレスに対する生理学的及び行動的応答の調節機能が破壊されることや,免疫機能が低下することが明らかにされています。研究報告は少ないですが,ヒトにおいても妊娠中における母親の心理社会的ストレスの頻繁な経験が,乳児から大人までのストレッサーに対する脆弱性に影響することが報告されています。
さらに,乳児から幼少時期にかけて脳機能が著しく発達する時期に,養育者から虐待などの過度なストレスを受けると,成長後も視床下部-脳下垂体-副腎皮質(HPA)系と視床下部-交感神経-副腎髄質(SAM)系の機能亢進が持続することが明らかにされています。その結果,ストレッサーに対する感受性が高まり,虐待を受けた時期のみならず,思春期,青年期そして成人期に至るまでその影響が続くことがわかっています。
現在,胎児・乳幼児期の過度なストレスを経験した子どもに対して,具体的な支援法を構築することが求められています。そのためには,胎児・乳幼児期に経験した虐待などの種類や受けた年齢や期間,その後に罹患した精神・神経疾患,成人になるまでにおかれていた環境や状況などの多くの心理社会的要因との関連性を生理心理学的に明らかにすることが望まれます。これらを科学的に解明することができれば,現代社会のストレスや健康に関わる問題に大いに貢献できると考えます
(岡村,
2018)。

岡村尚昌(2018)第17

章 胎児期・乳幼児期のストレスとストレス応答 室橋春光・芋坂満里子(編)生理心理学と精神生理学(3巻)北大路書房.

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