2017年10月

2017年10月11日

橘流、深淵




大きく後ろに吹き飛ばされた恵美にアーカムが追撃の踏み込みで迫る。
だが、恵美はいなすように真横に回り込んでその突撃をかわした。その動きは舞、というよりもスペインの闘牛を彷彿とさせるものだった。
アーカムは恵美に体を向けながらまた、ナイファンチの構えを取った。恵美はやはり下段の構え。
そしてそのピンク色の唇が開いた。

「ふふ、やっぱり出し惜しみしてるとあなたも全部見せてくれないのかしら?」
「そんなことはないぞ」
恵美の言葉にアーカムはそう答えるが、恵美の微笑みは消えない。
そして、恵美の構えが下段から変化を見せる。

「じゃあ、見せましょう。これが橘流の『深淵』よ」

下げていた左腕がゆっくり上がり、肘が天を指す。
とある人気漫画の「かめは○波」をうつ構えにも似た格好。
それは、弟子である鈴香も初めて見る構えだった。




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