
ほめる達人協会理事長、西村貴好氏の講演録「まずほめよ!あとはそれから考えよ」を紹介します。
私の店長セミナーでも、スタッフに対するほめ言葉を100個書いてくださいと、グループディスカッションをしていただくことがありますが、本当に100個出るのです。
「まずはほめよ!あとはそれから考えよ」
ほめ慣れていない人が、一気に「ほめ達!」になることは難しいと思われるかもしれません。
そこで、誰でも「ほめ達!」にしてしまう口癖を皆さんにお伝えします。魔法のフレーズ、「ほめ達! 3Sプラス1」です。これは何かと言うと、Sで始まる三つの言葉です。
「すごい・さすが・すばらしい」
この三つの言葉を口癖にして、反射的に使えるように心がけます。例えば、「ほめ達!」が町を歩きながら「ほめ達3S」を使うとどうなるか。
「すごいなこのビル、まっすぐで」こんな感じです(笑)。大切なのは、先に「ほめ言葉」を言ってしまうことです。

「まずほめよ。あとはそれから考えよ」、この精神が大切なんです。
「ほめ達! 3Sプラス1」のプラス1とは何か。
例えば、相手の意見や考えに対して回答するとき、「自分の考えと違うんだけどなぁ」ということは多々あると思います。
そこで頭ごなしに否定するのではなく、「そうくるか!」、この一言でまず相手を受け止めます。
これを言われた人は不思議と嬉しくなります。なぜなら、「相手の持っていない発想をしたんだ」と思うからです。特にほめているわけではないのですが、無条件に相手を認めていることになります。
「おお、そうくるか!」と言った後、何を言うべきか考える余裕も持てますし、場も和みますから、非常に便利に使える言葉です。
もうひとつ「魔法の言葉」ともいえる便利なものがあります。それが、「惜しいなぁ」です。
「ここを直すともっとよくなるのに」という場面で、相手の心をペシャンコにすることなく、的確にアドバイスしたい場合に使える言葉です。

「西村さん、スーツをピシッと着て、姿勢もいいですね。だけど、惜しいなぁ」と言われると、思わず「何ですか?」と聞きたくなります。
まず、「惜しいなぁ」の前にほめること、認めることで、相手にネガティブな受け取り方をさせない効果があります。そのあとの「惜しいなぁ」で相手の関心を引き寄せる。そこで、本当に伝えたかったこと、自分の考えを伝えてあげるのです。
そうすることで、「認めているけど、ここを直したらもっとよくなるよ、もっとあなたが輝けるよ」という思いが伝わり、相手に安心感を与えます。そして、言われた人もその指摘や考えを素直に受け止め、応えようとするのです。
まさかこんなことは言いませんよね。「いや、西村さん、スーツピシッと着て、姿勢もいいですね。だけど、惜しいなぁ」
「何ですか?」
「顔、不細工ですよね」
そんな致命的で直せないことは「惜しいなぁ」の後には続きません。

「どうせ指摘をするんだったら、この機会にすべて言っておこう」と考えたり、言っているうちに盛り上がってきて、アドバイスが批判に形を変え、どんどん口をついて出てしまう。そんなことはありませんか?
相手に良かれと思って言っているアドバイスのつもりでも、それは決して効果的とは言えません。
なぜなら、言われている人は立場上、聞いていますけど、「あなたどうせ私のことなんか認めてないですよね」と、もう心のシャッター、ガラガラガッシャンです。
まずほめて、認めて、受け入れて、相手との信頼関係を確立した上で伝えることです。それにより相手の次の行動をより良く変えてあげるんです。
ちょっとした言葉の使い方で相手の自主的な行動を引き出してしまう人こそ「ほめ達!」なんです。
(スマイル・シェアリングが主催した講演会より)