山元加津子先生の記事が日本講演新聞に掲載されていたので紹介します。
山元先生は石川県金沢市生まれ 富山大学理学部卒業、小松市在住、長く特別支援学校に勤務、作家、映画監督、モナ森出版を立ち上げています。
「長く特別支援学校の教諭に勤務し、並行して、養護学校の子供達の理解を広く社会に知らせる活動を行ってきた。また、哲学、宗教、科学分野においても、造詣が深く、多方面に置ける著書がある。
マザーテレサ、ヘレン・ケラー、向井千秋、オノ・ヨーコなど、世界で活躍した女性の生き方や信念が伝わる、心に響く感動の名言事典「世界の女性名言集』PHPにも記載される。
「きいちゃん」小学校6年生の国語教科書に記載、また中学校課題図書となる」
荒れた学校での50周年講演会
ある高校で講演をしました。
講演の依頼を受けた時、その学校の校長先生が言われました。
「うちの学校は今とても荒れています。どんな話も生徒は10分と聞きません。講演中にケンカが始まるかもしれないし、物が飛び交うかもしれません。でも創立50周年の記念講演録を作るので、どうか最後まで話し続けてください」
当日、学校に行って校長先生の後をついて廊下を歩くと、床のあちこちに穴が空いていました。
講堂に入ると、いろんな髪の色の生徒さんがいました。
パイプ椅子の背もたれに寄りかかって前の人の椅子の上に足を上げている人や、反対向きに座っている人もいました。
それは全然平気だったのですが、男の先生が、「お前ら、ちゃんと聞けよ!」と怒鳴ってすごく怖かったので、私もドキドキしました。
私はすごくおっちょこちょいでいろんな失敗をするので、そんな話をしました。
例えば、車で買い物に行くと、どこに車を置いたか分からなくなって、自分の車だと思ってカギを差し込んだら、「僕の車に何か用ですか?」と後ろから言われたり。
車に乗り込んだらすでに誰かが乗っていて、私が「どうしたんですか?」と言うと、向こうの方も「どうしたんですか?」と言われたり。
スーパーでカレーを買ったはずなのに袋を開けたら、お菓子の「柿の種」が入っていたり。
失敗ばかりで私は時々自分のことが嫌になってとても落ち込んで、悲しくてたまらなくなるんです。そんな話をしたんです。
そしたら、みんなだんだん一生懸命聞いてくれるようになって、一つの話が終わるたびに拍手までしてくれるようになりました。
私が、「自分で自分のことを嫌いになることがある」と言うと、「大丈夫だよ。僕たちがついてる。元気出せ」と言ってくれました。
私は、「なんて優しい子どもたちなんだろう」と思いました。1時間半、誰も席を立たずに私の話を聞いてくれました。
最後に一人の男の子が手を挙げて、「今日は校内でうどんとかフランクフルトを売ってるから、この後一緒に食べに行きませんか?」と言いました。
すごく嬉しくて、みんなでうどんを食べたり、アイスクリームやクレープを食べたりして、一緒に写真も撮りました。
そのうち、「講演が終わったら校長室に来てください」と言われていたのを思い出し、慌てて校長室に飛んでいきました。
校長室をノックして、「すみませんでした」と言って入っていくと、校長先生は私の顔を見るなり涙を流されました。
「僕は、うちの生徒が10分と話を聞くのを見たことがありませんでした。だから、『あいつらはダメな奴だ』と思って生徒を信頼していませんでした。ところが今日、生徒が、『大丈夫、元気出せ』とあなたに言っているのを聞いて、泣けて泣けて仕方ありませんでした。生徒が僕らについてこないのは、僕らが生徒のことを信じていなかったからだと分かりました」とおっしゃって、男泣きに泣かれました。
そして、「今度の集会の時、子どもたちに謝ろうと思います」とおっしゃいました。
しばらく経って、校長先生から電話がありました。先生は、生徒の前で謝ったそうです。
そしたら一人の生徒が、「先生たちが僕たちを信じてくれるなら、僕たちも変わっていくよ」と言ってくれたそうで、先生は電話口でまた泣いておられました。
とてもすてきな先生と生徒たちでした。