ふじもと歯科診療室BLOG

東京都稲城市の歯科医師の日記 

カテゴリ: 歯周病の話

88ad435b.jpg開業すると、患者さんと一緒に年を取る、と良く言われます。

自分の年齢とともに、通院してくださる患者さんの年齢もだんだんと高齢化するということです。

ご他聞に漏れず、私も開業して26年。
開業当初に比べると、来院患者さんの中で年配の方の占める割合が多くなっています。

そういう方とお話していると「自分がこんなに歯で苦労する日が来るなんて思いもしなかった」と言われる事が多々あります。

特に歯周病の治療をしている方に多いのですが、むし歯で若い頃から苦しんだ方はマメに歯医者に通っているので意外に歯周病にはならない傾向があります(あくまで、意外ですが)。

歯周病の原因菌とむし歯の原因菌が仲が悪いから、とも言われていますが、そもそも歯周病はある程度悪化しないと自覚症状が出ません。

なので、「具合が悪くなってから歯医者に行く」頃にはかなり進行しているケースが多いんですね。

「今まで大丈夫だったのに・・・・」という言葉を聴く度に、健診にさえ来て下さっていたら・・・と思わずにはいられません。

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先日、とある歯科医院のHPを読んで気になった事。

ざっくり要約すると、歯周病が生活習慣病だから日常のお手入れのみならず、定期健診で歯科医院でのお手入れが欠かせない、といった内容。

確かに、歯を磨かない、お手入れをしないといったお口の衛生状態によって左右される病気ではありますが、そもそも生活習慣病というのは、「生活習慣が起因」で発症する病気のこと。

つまり、生活習慣を改善することで治癒に導く事が出来るんですね。

しかし、歯周病は明らかに感染症です。

もちろん、歯磨きや歯科医院でのお手入れだけでかなり治癒に導くことはできますが、統計的にそういう方は、全歯周病患者の約7割程度。

先日も、とある研修会でこの問題が取り上げられたのですが、未だ歯科医師側のこの認識。

う〜ん・・・・。

さて、自覚症状も乏しい、治療効果の実感も乏しい状態で患者さんに通院を促すというのは、こちらとしてもなかなか勇気がいることでもあります。

ましてやそれだけ時間とお金を割いてもらって本当に治るの?と言われると(言われたことはありませんが)、絶対治るとは保障しきれない歯周病治療の難しさをひしひしと感じます。

それでも、キチンと続けて下さっている方々にはちゃんと結果が出ています。

自分としては、過去のそういった実績を頼りに、きっと目の前のこの患者さんも治ってくれるだろうと、ある意味「信じて」やっていくだけなのですが、「まだ通うの?」といった表情をされると少し信念がグラつくことも・・・(^^;

そこで気を取り直し、現状の説明と通院が必要な根拠をお話するのですが、そういう状況になる度に、これは「根比べ」みたいなものだな〜と感じます。

そんな感じですから、結果が出始める徴候が見えた時の悦びはひとしお。
もしかしたら、患者さんより私の方が喜んでいるかもしれません。

歯周病を生活習慣病と表現する人がいるほど、その病態はさまざま。

実際には、歯周病菌による「感染症」ですから、定義としてはまったく生活習慣病ではないのですが、それでも食生活やハミガキ/喫煙などの習慣、糖尿病や高血圧などの影響も多く受けます。

多くの方が、歯科治療というと歯医者に行き、口を開け、不快な思いを我慢すればなんとかなると考えている節がありますが、歯周病治療に関しては病気と向き合う姿勢でその結果が左右されます。

そして、そういう歯周病治療の特殊性を理解していただいた上でお口の中の環境整備をやらなければ、長期的な予後は望めません。

これが、言うは易し、行うは難し。

その要因のひとつにとても治療時間がかかるということ。
と、同時に通院回数も多くなるということ。
そして、その変化の実感が得られにくい(おだやかに変化するので)ということ。

しかも、歯周病は中等度以上に進行しなければ、日常生活に支障を来すこともほとんどありません。

つまり、患者さん自身はさほど不都合と感じていないのに、やたらと歯医者に通わなければならないというところにこの病気の治療の難しさがあります。

歯科診療には、様々な分野がありますが、私が好きなのは総入れ歯と歯周病治療というちょっと統一性のない、ある意味正反対の分野。

理由については、またの機会に書こうかと思いますが、今日は歯周病治療についてちょっと思うところを。


私の場合、歯科医師になって1年目から歯周病治療の不思議さと面白さに取り付かれました。
出会った師匠が、歯周科出身だったというのもあるでしょうが、歯の治療と違って生体の免疫や抵抗力、治癒能力などに左右され、なおかつ「治る」という言葉が使えるところが私にとって魅力的だったのだろうと思います。

当時の勤務先の立地が都心のオフィス街ということもあり、患者さんはすこしでも通院回数を少なくして欲しいという要望が強く、そのために結果を早く出さなければという状況でした。

そこで、歯肉の表面の炎症が治まったら、手術というパターンがとても多かったんですね。
毎週毎週、いわゆる歯周外科の手術がない週はないというくらいで、多い時は毎日という時も。

比較的大規模な歯科医院で、私以外の歯科医師があまり歯周病治療に熱心ではなかったこともあり、なんだか歯周病担当のような感じで取り組んでいたせいもありますが、それにしても・・・。

しかし、歯周病の治療というのは一時的に良くなっても、長い目でみると根本的なお口の環境が整わなければまた悪くなってきてしまいます。

6年間の勤務医生活で、歯周病治療に対する考えは当初とはずいぶんと変わってきました。

私が勤務医時代に過ごした立地と正反対とも言える現在地を選んだのも、この考えの変化から来ています。

さて今回、少し続きます。

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歯周病の治療を難しくすることの要因のひとつに「自覚症状に乏しい」ことが挙げられます。
特に初期の段階では、全くと言ってよいほど。

そして、中等度の状態になっているときには、かなり強く治療の必要性をお話するのですが、「忙しいから」という理由で治療に通ってくれない方がいらっしゃいます。

そういう方が、数年して自覚症状が出てから通院を始められると、実は対応に相当苦慮します。

抜歯だけで済めばまだしも、抜歯したら今よりも余計に噛みにくくなるという予測が着く方の場合、現状でいかに症状を軽減するか?という点に絞らざる得ません。
治そうなんて、問題外。

あ〜、あのときキチンと来てくれていればな、と、「たられば」は禁句と言いながらも思ってしまうほど。

歯周病の進行は、地震のようなもの(と私は感じています)。

いつ来るか解らない。
もしかしたら来ないかもしれない。
そして来たときにどれくらいの規模で来るのか予測がつかない。

ゆっくり少しずつ進行するタイプもあれば、あるときドカーンと進んでしまうタイプもあります。

自覚症状がないからというのは、嵐の前の静けさにしか過ぎないのかもしれません。

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歯と歯の間にモノが挟まることを食片圧入といいます。

ただ、挟まると一言で言っても、その状態は様々。

歯と歯の接触点に挟まっている場合、間のスキマに横から入り込んで挟まっている場合、歯とハグキのスキマに挟まっている場合、など。

このうち、最後のハグキとスキマに挟まった場合が、もっとも痛みが出やすく、ムシバ?と思っていらっしゃる方がほとんどです。

実際、噛めないほど痛い、鎮痛剤を飲まずにいられないというくらい痛むこともめずらしくありません。

そして、これを完全に防ぐ方法も難しいんです。

挟まった食べカスを除去しただけで相当楽になるようですし、案外こういうことって侮れないんですね〜。

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延々と続いた「歯周病治療のメインテナンス」編ですが、今回で最終回です。

現状維持が目標のメインテナンスですが、体は老化していきますから現状維持というのは、実はなかなか大きな目標です。

ですから、ある意味メインテナンスは歯科治療の集大成。
歯周病学だけでなく、細菌学や口腔衛生学、診断学、心理学などの背景が要求されます。

そんな中で改善という手応えがないので、患者さん/術者ともに継続していくことがお互いに大変な部分がある。

ということが言えると思います。

また、今回は歯周病関連に話を絞りましたが、ウ蝕(ムシバ)や噛み合わせ、補綴物の適否の判断などもメインテナンスでは必要とされます。


しかし、なんと言っても、

メインテナンスの主役は、歯科衛生士さんなんです。





ですから、来院してくださる患者さんに満足してもらえるかは、歯科衛生士さんの日ごろの研鑽とプロ意識にかかっています。

患者さんに頼りにされるような歯科衛生士さんが、一人でも増えてくれることが、歯科界の未来を左右すると言っても過言ではないと思っています。

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今回の一連のお話では、メインテナンスに対する考え方として「分類し整理する」ということをメインにしました。

歯周病治療にメインテナンスは不可欠ですが、「メインテナンス=動的治療が完全終了」という意識で臨むと、あまりにも多くの問題が次々と出てきて、あっという間に壁に突き当たります。

また現状維持を目標にするということで、ともすれば消極的でモチベーションが高めにくい(患者さんも術者も)ところもありますが、問題点を整理するだけでずいぶんと変わるものです。


分類したそれぞれのメインテナンスについて、患者さん来院時の具体的な施術/対応法については省略しましたが、常に忘れてならないのがリスクアセスメント。

一言で言えば、メインテナンスにいらっしゃった方のウィークポイントを把握することです。

そのために、なにより大切なのは過去のデータと現在のデータから未来を予測すること

これが、毎回の施術内容、次回の予約の時期などを決めます。

ですから、BOP の測定結果や、プロービング値の持つ意味を十分理解する必要があります。

また、今回お話した分類は患者さん別ではなく、同じ患者さんでも部位別で考えなければならないこともあります。

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「次は、いつ来れば良いんですか?」

メインテナンスの患者(お客)さんに毎回訊かれることです。
もちろん、事前に解っていらっしゃる方も多いのですが、この次回の予約をどういう根拠で決めていくかは、とても大切ですが、実はとても難しいんですね。

有名な Ramfjord 先生の論文では、3ヶ月に一回。
また、 Lindhe 先生の論文では、2週間に一回。

現実的には、3ヶ月に一回の頻度を基準にして決めていく歯科医院が多いのではないでしょうか?

うちも、一般的にはおおむねこの基準で決めています。

ただ、試行的メインテナンス、妥協的メインテナンスに分類される方々については、2週間に一回という方が数人。
毎月という方が数十人いらっしゃいます。

いろんな文献を漁っても明確な回答はなく、最初は短めに設定し、安定してきたら延長していくというパターンになっていきます。

その安定をどこで判断するか?

もちろん一つだけで決まるものではありませんが、うちでは BOP 率を参考にしていますし、同じようにしているところは多いように感じます。

ちなみにこのBOP 率が20%(16%説もあり)を切ると、ある程度安定したと言えるという論文をその根拠にしています。

ただ、20%を切っていても、数値の上昇が認められる場合はやはり再考しなければなりません。

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