ふじもと歯科診療室BLOG

東京都稲城市の歯科医師の日記 

カテゴリ: 初期ムシバ

さて、ながながと続いた「初期ムシバ」シリーズも最終回。

結局のところ、初期ムシバを「初期ムシバ」と診断するか、「ムシバ(即治療が必要)」と診断するかは、その歯科医師の考えでほとんど決定されると言っても過言ではないと考えています。

ちょっと前に、ネットで見つけたこんな記事があります(ちょっと長いですが)

『東京医科歯科大教授で歯科総合診療部長の俣木志朗さんは「初期虫歯は見た目では判別が難しく、虫歯の定義にもあいまいな点がある」と言う。

 虫歯は、表面のエナメル質の軟化から始まる。白濁や茶、黒などの着色があっても、単に汚れの場合もある。唾液(だえき)や歯垢(しこう)があると見えにくく、奥歯の溝に沿って細く深く進んだ虫歯は見逃しやすい。学校検診など照明が不十分だと、なおさら診断の水準は下がる。

 そこで、鋭利な探針(たんしん)を用いて歯の硬さを確かめる「触診」が行われる。しかし、感触からの判断は、歯科医の経験に左右されるため、個人差が出ると言われる。また、探針は強く押すと、歯を傷つける危険が指摘される。このため日本学校歯科医会は2003年から、学校検診では視診を主とするよう指導、一般に使われていない。

 適切な歯磨きなどで経過を見る要観察歯(CO(シーオー))と、場合によっては治療が必要な初期虫歯(C1)の鑑別に「明確な線引きがない」(俣木さん)という問題もある。

 こうした中で、「レーザー診断」を導入する歯科医もいる。健康な歯質と虫歯菌により軟化した歯質のレーザー光線への反応の違いを数値化し診断の参考にする機器だ。利用する愛知学院大教授の千田彰さんは「歯垢や着色などの諸条件に左右されるので、これで診断するのではなく、一つの目安」と説明する。

 視診、触診、レーザー検査に加えて、エックス線写真も使われる虫歯診断。ほかにも重要な要素がある。虫歯菌や歯を修復してくれる唾液の性質や量、歯磨きや食事の習慣など、口内の状態には個人差が大きい。俣木さんは「総合的に危険度を見極めなければなりません」と語る。

 質問の長坂さんの場合、集団検診では着色など虫歯の疑いのある5本が「虫歯」とされ、実家近くの歯科では、治療が必要な1本だけが指摘された可能性が高そうだ。東京医科歯科大教授で虫歯学が専門の田上順次さんは「集団検診は歯に注意を促すための参考です。診療所を受診する際は、削る必要があるのか、適切な予防管理で修復可能なのか、よく聞いてみて下さい」とアドバイスしている。

 初期虫歯と再石灰化(さいせっかいか) 口内の細菌が、食べカスを取り入れて出す酸で、歯の表層が軟化し始める状態が虫歯の始まり。この段階なら、唾液の働きでカルシウムとリンが付着して歯を修復する「再石灰化」で、歯が元に戻る可能性がある。

(2006年1月24日 読売新聞)』
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060124ik02.htm?from=os2

結局のところ、急速に進行しないのであれば、削らないのが一番。しかし、その状態はお口の中の環境で決まります。

初期ムシバと診断されたところで安心しないで、念入りなハミガキといった日常のお手入れと、歯科医院での予防処置を受けなければ、やがては処置が必要になるということです。

通常、ムシバの治療というと、早期発見・早期治療をオススメするのに、どうして初期ムシバと診断されると、すぐに処置をせず、なるべく経過観察でみていこうとするのでしょう?

その理由は、削って修復したところは、いずれまたダメになってやり直しが必要になる可能性が高いからです。

もし、削って詰めたところが、本来の歯よりも丈夫になるのであれば、歯科医師は皆、躊躇せずムシバを削ると思います。
しかし、過去のさまざまなデータを見ると、一番丈夫なのは、自分の歯のようで。

ですから、削らずにすめば、おそらくその方が、将来歯を失う可能性が低くなるというわけです。

そこで、ハッキリと削る必要があると認められた歯以外は、なるべく削らず、ムシバの進行抑制をはかりながら、経過を見ていくということになるわけです。

ただ、初期ムシバとして処置をしなかった場合、その後の定期健診と予防処置が前提条件となります。

つまり、初期ムシバと診断され、経過観察という道を選ぶ場合、必然的に定期健診と積極的な予防処置が前提になるわけです。


初期ムシバで経過観察していく場合、原則として一ヶ月おき、さらに来院のたびにフッ素ジェルで磨くことにより、少しでも削らずにすむよう状態を維持するというのが、うちのスタイルです。


4908d38c.jpgところで、いったいいつ治療を必要とするかも、初期ムシバの対応について、意見の分かれるところでしょう。

人、それぞれですが、まずハミガキがきちんとできているかどうか、保護者の方が、お口の健康に関心を持ってくれているか否か?

さらに、キチンと通院した既往があったり、予防処置などに通院してもらっている人であれば、そうそうすぐに進行するとは考えにくいので、経過観察になることが多いですし、その間隔も比較的あけても大丈夫と思われます。

しかし、ハミガキができていない、治療歯もしくはムシバが多いといった場合には、例え初期ムシバでも即治療となることもあるわけです。
グズグズと様子をみているうちに進行してしまう可能性が高いですし、そもそも定期健診にキチンと来てくれるかどうかもわからず、大穴になってから来院されるくらいならば、早めの処置の方が結果が良いと期待されるからです。

つまり、単純にムシバの程度でだけで治療開始時期がきまるわけでなく、それまでの経緯や、お口の健康に対する関心度なども考慮にいれるわけです。

ですから、先述した、ダイアグノーデントの数値も、あくまでも目安であって、絶対とは考えておりません。

ただ、定期的な観察と言っても、客観的な評価が必要ですから、ムシバの程度を数値で表してくれるダイアグノーデントは重宝しています。

最近はずいぶんと一般的になってきた「初期ムシバ」という言葉ですが、なかなかその対応については難しいところがあります。

まず、どこまでが初期ムシバなのかという問題があります。
そして、どの段階になったら削る必要があるのでしょうか?

私自身、毎日のように初期ムシバという言葉を使っていますが、果たしてその定義は?と思い、グーグルなどで検索してみましたが、どうもスッキリした文章に出会えません。
文献を調べても、確かにエナメル質がどうたらこうたらといった定義はあるようですが、実際の現場では抜歯して検査して見ない限り、そんな細かいところまでは判定できません。

また、私の持っている(多少古いですが)歯学辞典によると、
「組織の破壊は穿掘性に深部に進行するので早期発見は難しい。診断には、視診・触診・透過光線による診査、X線診査などが併用される・・・・(略)」
と、その難しさが強調されています。

ちなみにうちでは、表面が荒れておらず、ダイアグノーデントという器械による測定値が30以下を初期ムシバとしています(これについては、異論もあるでしょうし、後述します)。

ところが、この基準で観ても、見かけは真っ黒という歯も多くあります。

保護者の方に、「初期ムシバですから、定期的に健診して診ていきましょう」と、お話しても怪訝そうにされることもあります。

また、学校検診では、やはり真っ黒であれば、通常初期ムシバではなくムシバとして治療勧告書が出されます。


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