ふじもと歯科診療室BLOG

東京都稲城市の歯科医師の日記 

カテゴリ: 噛み合わせ

毎日のように患者さんにお話しているのに、意外にブログで書いていなかった話題。

物を噛むとき、左右均等に噛んだほうが良いのか?という話です。


片側ばかり使っていると顔が歪むからという理由、もしくはいつも使っているところの歯が傷むからできるだけ万遍なく噛むことを意識しているということをおっしゃる患者さんは、意外に多いようです。

う〜ん、本当でしょうか?

確かに、人の顔は左右対称ではありませんし、良く使う側の筋肉が発達するのは当たり前でしょう。

しかし、右利きの人の腕回りが左腕と大きく異なるでしょうか?
もちろん、多少の違いはでますが、みるからに違うというほどまでの差を感じることは滅多にないと思います。

歯科医師によっては左右均等に噛む方が良いと言っている方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的には噛みやすいところで噛めば良いのでは?と考えています。

この話題もちょっと続きます。

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お前の仕事は良く噛めるようにすることだろう!とお叱りを受けるかもしれませんが、昨日の続きです。

総入れ歯に限らず、固定式のブリッジやインプラントでも、噛めるようになったことで、新たな危険が生まれるケースがあります。

要するに、それまで力を入れる事ができなかったことが幸いし(?)、歯に負担がかかっていなかった。
だから、なんとか持ちこたえていた、という状態のところに突然大きな力がかかるようになるとどうなるでしょう?

一番怖いのが、歯根破折。
歯の根が折れてしまうことですね。

おそらく、一般の方が想像している以上に、この問題は頻発します。

また、歯ぎしりのクセがある人などは、それが酷くなったりすることも(しっかり食いしばれるわけですから)。

さらには、被せてあるモノが壊れたり、歯がぐらつくようになってきたりということもあります。


お口に入れる補綴物(被せたり、歯のないところ入れた人工の歯)を作品と考えると、私の本音としては、長持ちさせる為には使わないで欲しい、という本末転倒な願いすらでてくるほどです。

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今日の話題は、診療中に、しょっちゅう患者さんにお話している内容です。

総入れ歯だけでなく、入れ歯をお使いの患者さんから、なんとかもう少し良く噛める状態にならないか?という要望をいただくことがあります。

そういった方のお口を覗くと、ほとんどの場合、噛み合せに問題があることが多いようです。
そして、そういうお話をすると、ほとんどの方が、新しい入れ歯を作りさえすれば、不満が解消されるとお考えになります。

しかし、入れ歯は道具です。
そして、噛むという動作は、顎の筋肉(と、口腔周囲筋)が担っているもの。

例えてみれば、包丁でモノを切るとき、切るのは包丁を動かしている腕。
切れない包丁であれば、それなりに動かしている訳で、そういうクセがついた状態で新しく切れる包丁を渡されても、使い慣れた切れない包丁の方が具合が良かったりします。

私は、入れ歯もこれと同じ様なところがあると考えています。

例えば、新しい入れ歯を装着すると、途端に今まで噛んでいた所と違うところで噛みだす方がいらっしゃいます。

もう、お亡くなりなったある総義歯の大家は、これを「顎のよみがえり現象」と呼んでいましたが、2〜3ミリずれてくる方もいらっしゃるほど、顎の噛む位置というのは変化します。

こういった現象が起きてしまうと、一言で言えば「新しい入れ歯は、具合が悪くて、とても使っていられない」ということになってしまいます。

しかし、噛み合せを変えていくというのは、どちらかというと「治療」と言うより「リハビリ」。

新しい歯を入れたときからが、実は処置のスタートとなるわけです。(続きます)

pf1891_b~Christmas-Tree-c-1958-Posters昨日投稿した、私自身の治療。
結果的には、噛み合せの調整だけで様子をみることにしました。

詰める治療を師匠にしてもらったのが、ちょうど20年前。
全寒天印象という、今では教科書でしか見ることの無い、でも素晴らしい方法でやっただけあって長持ちしています(もちろん、師匠の腕前&私自身の手入れもあってこそ)。

そして、天然歯にちかい摩耗をしてくれる20Kゴールド。
それでも、歯ぎしりのせいでしょう、当たりが出ていました。

実は、噛み合せの調整だけで冷たいものがしみる症状が治まるというのは、日常茶飯事。
患者さんにはよく驚かれますが、私も大学卒業当初は、一緒に驚いていました。

ただ、調整と言っても、どこをどうするのか?
このあたりが、歯科医の腕の見せ所。

私の場合、調整量が適切だったおかげか、2日たってますます快調です。

それにしても、ちょっと削っただけ反対側の当たり具合まで変わったのがハッキリわかるのには、我ながらビックリ。

微妙なものなんですね〜。
改めて、噛み合せの大切さを実感しました。

9c252198.jpg噛み合わせの話とはちょっと違いますが、でも噛み合わせが関係しているかな?という話題を。

噛む力がとても強くて、歯が摩耗している患者さん。
いわゆる歯ぎしりで歯がすり減っているだけでなく、もう、どこでどう噛んだらこんなに歯が減るんだろうと思わされる方が、時々いらっしゃいます。

こういう方の処置も、とても難しいんですね。
詰め物なども、どんどん擦り切れて(という表現しかないくらい)いきますし、入れ歯は割れるわ、差し歯は折れるはと、とにかくやることなすことうまくいかないということがあります。

いわゆる原則通りに処置を進めてもうまくいかない時には、創意工夫が要求されますが、ほとんどの場合トライアンドエラー。

仮歯などで、経過を診ながら噛み合わせを決めて行きます。
ただ、時間がとてもかかります。

最後は、患者さんとの根比べになる場合も。

お付き合いくださる患者さんに、感謝です。

b09a8e8f.jpgまだまだしつこく続きます(笑)

噛み合わせの問題を考える時、しっかりと噛み合っている状態のところへ補綴物を装着するのか?
それとも、噛み合っていないところに補綴物を装着するのかで、様々な考慮すべき事項があります。

例えば、総入れ歯などは、噛み合っていない状態の典型ですね。
そして、新たに作成するときというのは、たいていそれまでの義歯の調子が悪くなった時。

実は、そんな時には、具合が悪い状態に合わせようとした「クセ」がついている場合が多いんですね。
特に、義歯の噛み合う部分が過度にすり減った状態で永年使っていた場合は、顕著です。

そうすると、新しい入れ歯の咬み合わせを決めるのにもひと苦労。
一旦トレーニング用の入れ歯を作ったりすることもあります。

しかし、なんといっても難しいのが「すれ違い咬合」。

歯が残っていても、自分の歯同士が当たらない状態のことをこう呼びます。
例えば、上は、奥歯だけ残っていて、下は前歯だけが残っているとすると、奥歯は、上が自分の歯。下は義歯。
前歯は、上が義歯で下が自分の歯。

ちょっと解りにくいかもしれませんが、このような状態になってしまうと、「噛み合わせ 2」で書いたバーチカルストップが得られず、義歯も不安定で、なかなか快適な状態になりません。

そして、このすれちがい咬合一歩手前という方が実に多く、その時ほど自費診療のメリットが生きてくる場合が多いと感じています。

bdb11a22.jpgまだ続くの?と言われそうですが、もう少しお付き合いください。

噛み合わせについて、「これだっ!」という決定版がない理由のひとつに「顎の位置」の決定方法が、いろいろあるということがあげられます。

顎の関節そのものがフレキシブルですし、体の姿勢によっても、その位置は変化するからです。

それに、基本的には、「中心位」(セントリック)と呼ばれる位置を基準にすることが多いと(思い)ますが、この中心位ですら歴史的変遷があります。

おまけに、ポイントセントリック/ロングセントリック/ワイドセントリックという呼び名があるように、ぴっちり1点で咬むタイプ、ちょっと前後に遊びがあるタイプ、左右に遊びがあるタイプなど様々。

さぁ〜、こうなってくるとどこを基準に噛み合わせを構築していくのか、訳が分からなくなりそうです。

深く知ろうとすればするほど、泥沼です。
ですから、論争のタネになるのでしょうね。

ちなみに、寝た体勢と起きた体勢での位置関係にも違いがでます。

そのため、うちでは、その違いが顕著と疑われる場合には、両方の体勢で調整したりしています。

16df0cc7.jpgさて、またまた長々と綴ってきましたが、ここで咬合論をぶっても仕方が無いので、私がどういう風に噛み合わせをチェックしているかをご紹介したいと思います。

噛み合わせのチェックというと、咬合紙と呼ばれるカーボン紙みたいのなを噛んで、当たりを診るのが一般的。

うちでは、まっすぐ噛んだ時の当たりを診るのは赤。
横に滑らせた時の当たりを診るのは青の紙を使います。

診るべきポイントが異なるので、長さを変えてあります。

大抵の調整はこれで大丈夫なのですが、これだけに頼るとうまく行かない場合もあるところが、くせ者。

特に、早期接触と呼ばれる当たりがあると、これだけでは解らなくなり、「いくら調整しても違和感が取れない」ということになり勝ちです。

そんな時に使うのが、写真左上に写っている「オクルーザル・インディケーター・ワックス」。
大学卒業直後に、名人と言われていた故村岡博先生がお使いになっているのを知り、速攻で使うようになりました。

多少時間がかかるのが難点ですが、咬合紙では解らなかった接触状況がわかります。

さらに細かく診るときには、下に写っているロール状の咬合紙を使います。

これは、通常タイプのものよりもずっと薄く、印記も片面だけ。
インプラントの時は必須ですね。

それと、非常に敏感な方。

使いにくいのが難点ですが(なにしろ薄いので、ひらひら動いてしまいます)、意外な当たりを発見することもあり、重宝しています。

これ以外にも、一旦型を採り、咬合器と呼ばれる器械にくっつけて確認することもあります。

8dab2cd6.jpg実は、噛み合わせについては、歯科医師同士が話を始めると論争になりやすいトピックです。

私が歯科医師になったころ(もう20年以上前ですが)は、歯科の業界雑誌では噛み合わせ(咬合)に関する記事が多く、またいろんな意見が紙面を賑わせていました。
ですから、このブログでもあえて記載を避けていました(実は、ず〜っと前にちょっとだけ触れたことがありますが)。

なぜ、そんな話題を書く事にしたのか。
それはここ最近、他院で装着した補綴物の違和感を訴えて来院なさる方が続いたから。
そして、そういう方々に共通するのが「ちょっと調整したら、この違和感は消える」と思っていらっしゃる傾向があること(もちろん、例外もありますが)。
つまり、当たりが強過ぎる、もしくは噛み合わせが高いところを削りさえすれば良いのでは?と考えていらっしゃるんですね。

そう考えてしまうことも解らないことはありませんが、実はそんなに簡単なものではありません(簡単なこともありますが)。

場合によっては、補綴物を撤去し、仮歯を作り、経過を診ながらでないと調整ポイントがわからないこともあります。

次回から、私が気をつけている噛み合わせのチェックポイントについてお話しますね。
とは言っても、私も別に咬合の大家というわけではありません。
もしかすると、うちで装着した補綴物に不満を持って他院を受診なさった患者さんもいらっしゃることでしょう。

ですから、噛み合わせの調整と一言で言っても、そう簡単なものではないということを、ご理解いただければと思っています。

cars歯に被せものを入れたり(クラウンと言います)、失われた場所に歯を作る(義歯やブリッジなど)ことを補綴(ほてつ)と言います。

そして、補綴のための人工物を総称して「補綴物」と呼んでいます。

噛み合わせというと、もともとの歯並びから問題になることがありますが、今日は補綴物の噛み合わせについて。

私が補綴物を装着する時、もしくは設計する時に特に注意することが2点あります。

ひとつは、噛み合わせたときに、しっかりと噛み合い、ずれたりしないこと(バーチカルストップ)。
もう一つは、咀嚼時に、きれいに前歯や犬歯がガイドの役割を果たしてくれる事(アンテリアガイダンス)。

要するに、グッと噛み締める事が出来、スムーズに顎を動かす事ができる状態を作るというわけです。

そんなこと、当たり前と思われるかもしれませんが、実際のところ、なかなかそう簡単にはいきません。
なにしろ、基準となる顎の位置からして、学問的に変遷してきています。
また、顎の関節の柔軟さでも変わってきます。

1本だけであれば、それほど難しくなくても(そうとも限りませんが)、多数歯にわたる補綴が必要な場合など、なんどもチェックし、しかも仮着で経過を診るのがうちの基本。

時間がかかると思われることもあるでしょうが、急がば回れ。
慎重に進めることが大切です。

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