マネジメント寺子屋「日新塾」《雨にも負けず日々新た》

《『おかげさまです思考』に基づく統合的マネジメント》

『おかげさまです思考法』以下の三つを順序良く回す思考法
➀全体を生かし、部分を生かす。
➁「無知の知」を知る。
③問題は価値を生む源泉である。         



カテゴリ : 生産性を高める・働く意味の変化Ⅰ

生産性革命は終わった

 生産性の急激な向上は、過去百年間で最も重要な社会的事件であっただけでなく、史上例のないものだった 

 
 (豊かな人々と貧しい人々は常に存在した。しかし
1850年に至ってなお、中国の貧しい人々は、ロンドンやグラスゴーのスラムに住む人々よりも、はっきりと分かるほどひどい状況にあったわけではない。1910年当時の最も豊かな国の平均所得は、最も貧しい国の平均所得のせいぜい三倍にすぎなかった。ところが今や、余暇、教育、医療を差し引いて、なおかつ両者の間には二十倍から四十倍の開きがある。)


 生産性の急激な上昇性がなかった時代には、一つの国が先進国になるには、少なくとも50年を要した。ところが、1955年までまさしく世界の遅れた国の一つだった韓国が、20年で先進国となった。昔から当然のこととされていたものをかくも劇的に覆したのは、すべて1870年から80年にかけてアメリカで始まった生産性革命のなせる技だった。


 物を作ったり運んだりすることの生産性は、同じような割合でいまだに向上している。一般に信じられているのとは逆に、アメリカにおいても、日本やドイツと同じように向上しているそれどころか、アメリカの農業における生産性の伸びは、いかなる時代のいかなる地域と比較しても、ずば抜けて高いそのうえ、アメリカの製造業における生産性の向上は、絶対値で見るならば、日本やドイツの製造業よりも大きい。なぜならば、アメリカでは基礎となる数値が依然高いからである。


 しかしもはや先進国では、これまでのような生産性革命は終わった肉体労働の分野では、その生産性が決定的な要因になるほど十分な人数が雇用されていない先進国では労働力人口の五分の一以下である。わずか
30年前には、それが過半を占めていた。


 他方、今日重要性を増してきた知識労働者の生産性は全く向上していない。分野によっては低下してさえいる。インフレ調整後の数値でみると、先進国のデパートの店員一人当たりの売り上げは、
1929年当時の三分の二である1991年の教師は、1901年の教師ほど生産的でないという意見に異論を唱える人もあまりいない


 知識労働者には、研究活動を行う科学者や心臓外科医から、製図工、小売店の店長、保険会社の保険請求処理部門で働く者まで多様な職種が含まれる。だがこのように多様な知識労働者も、彼らの生産性を向上させる上で「何が役に立たないか」という点では同じであるその知識、技術、地位、給与がいかに異なろうとも、生産性を向上させる上で、「何が役に立つか」という点でも同じである

              『プロフェッショナルの条件(・ドラッカー)』より

 
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資本と技術は生産手段にすぎない

 われわれが強い衝撃をもって最初に学んだことは、知識労働においては、資本は労働(すなわち人間)の代わりにはならない、ということである技術も、それだけでは知識労働の生産性を高めることができない。経済学の用語に従えば、肉体労働については、資本と技術は生産要素である。しかし知識労働については、もはやそれらは生産手段であるにすぎない。資本と技術が仕事の生産性を高めるか損ねるかについては、知識労働者がそれらを使って何をいかにするかにかかっている仕事の目的や、使う人の技量にかかっている


 
30年前、われわれはコンピュータが事務要員を大幅に削減すると信じていた。そのためサービス業におけるコンピュータ投資は、素材加工における機械投資と同じように行われた。ところが人の数は増えた。生産性は、実質的にはほとんど向上していない。

  (今日の病院は、超音波、ボディスキャナー、磁気画像装置、血液分析器、滅菌室、その他諸々の投資を行い、きわめて資本集約的な施設になっている。だがそれらの機器は、病院のスタッフを一人も減らすことなく、逆に高給のスタッフを新たに必要としている

  実際、医療コストの世界的な増加には、病院が経済的な怪物になったことが関係している経済学のいかなる定義に従っても、病院は高度に労働集約的であり、かつ高度に資本集約的であるそのため病院は、もはや経済的に成立しえなくなっているだが病院の場合は、少なくともその能力は高まっているところが他の知識労働の分野では、投資は増え、人員は増え、コストが高くなっただけである。)

 医療コストの爆発は、病院の生産性を大幅に向上させることでしか食い止めることはできない。生産性の向上は、より賢く働くことでしか達成できない。ところが経済学者や技術者は、生産性向上の鍵として、より賢く働くことに主役の座を与えようとしない。経済学者は資本を主役とし、技術者は技術を主役とする


 科学的管理法であれ、インダストリアル・エンジニアリングであれ、ヒューマン・リレーションズであれ、効率エンジニアリングであれ、あるいは職務研究(フレデリック・W・テイラー自身が好んだ控え目な呼称)であれ、より賢く働くことこそが生産性向上の主役である。先進国では、資本と技術は、産業革命の最初の百年もその後の百年も同じだった。より賢く働くことが影響を与えるようになって、初めて肉体労働の生産性が急速に向上した。


 肉体労働に関しては、より賢く働くことが生産性を向上させるうえで重要な鍵であるだが知識労働に関しては、それが唯一の鍵である。もちろん、知識労働におけるより賢く働くということの意味は、肉体労働の場合とは大いに異なる

                 『プロフェッショナルの条件(P・ドラッカー)』より

 
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目的は何か」を問うことが重要

 フレデリック・テイラーが、砂のすくい方を通じて後に科学的管理法として結実した研究を始めたとき、彼は個々の肉体労働について、「何が目的か」と問うことなど思いもしなかった。問題としたのは、「いかに行うか」だけだった。


 そのほぼ
50年後、ハーバード大学のエルトン・メイヨーが、後にヒューマン・リレーションズと呼ばれるようになった理論をまとめたとき、彼もまた、「何が目的か。なぜ行うか」を考えることはなかった。ウェスタン・エレクトリック社のホーソン製作所における有名な実験でも、電話機の配線を「いかにもっともよく行うか」について分析しただけだった。こうして肉体労働については、目的は常に自明のこととされていた


 これに対し、知識労働の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、「何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」である。手っ取り早く、しかも、おそらく最も効果的に知識労働の生産性を向上させる方法は、仕事を定義し直すことである特に、行う必要のない仕事をやめることである



  (古い例が、このことをよく表している。初期のころのシアーズ・ローバックが行っていた通信販売の注文処理のケースだった。1906年から8年にかけて、シアーズは、注文に同封されてくる硬貨の勘定という手間のかかる仕事をやめた。当時は、紙幣や小切手はなく、硬貨だけだった。おおよその金額は封筒の重さで計れた一定の範囲内で重量が注文に合えばよいことにした注文件数の詳細な記録という時間のかかる仕事もやめた封筒を束ねて重さを計り、一ポンドにつき注文件数四十件と計算し、注文処理と商品配送のスケジュールを立てた。こうして、注文処理の生産性は、わずか二年で十倍に向上した。

 
 ある大手の生命保険会社は、保険請求処理の生産性を最近五倍に向上させた。請求金額が特に大きな案件は別として、チェック項目を大幅に削減し、一件当たりの平均処理時間十五分を三分に縮めた。三十項目があったチェック・リストを今では、保険の有効期限、契約金額と請求金額、被保険者名と死亡証明書の氏名、保険金受取人の名義と請求者の氏名など五項目にした。生産性の向上が実現したのは、「何が目的か」を考えたからだった。「できるだけ安く、かつ、できるだけ早く保険金を支払うこと」という答えが容易に導きだされた。今日その保険会社では、詳しいチェックは五十件に一件行うだけである。

 
 ある病院では、手間とコストのかかる受診手続きを簡略化した意識を失って運び込まれたり、出血がひどく書類を記入できない緊急患者向けの方法を、あらゆる患者に適用している。受信手続きについて「何が目的か」を検討した結果、患者の氏名、性別、年齢、住所、医療費の請求方法を知ることである、との結論を得た。それらの情報は、患者が持ってくる保険証で分かった

 
 もう一つ例がある。ある有名私立大学が、奨学金部門のスタッフを常勤の十一人から、年に二、三週間働く二人のパートタイマーに減らした。他の大学と同じように、この大学も学生の支払い能力に関係なく入学者を決定し、その後、奨学金申請者の授業料の減免額を決定していた。この作業は、各申請者が提出した詳細な書類を処理して行っていた。しかし実際には、百人中九十五人は、ごくわずかの項目で決定していた。そこで、親の収入などいくつかの項目をチェックするだけにした。どれだけの奨学金を与えるべきかは、コンピュータが二、三秒ではじき出す。

 
 こうして今日その大学では、二人のパートタイマーが、通常と異なる五%のケース、つまり陸上の花形選手やナショナルスカラーシップを得たなど、ごくわずかの者を選別するためだけに働いている。その後、学部長や小さな委員会が午後の数時間を使って処理している。

 
 際立った例がもう一つある。ある多国籍企業が、戦略計画について定義をし直した例である。その会社では長年にわたって、四十五人の優秀な人材からなる企画部門が、詳細な戦略シナリオを作成していた。出来栄えは一級品であり、一読の価値があることは誰もが認めていた。しかしそのシナリオが、会社の行動に直接影響は与えることはほとんどなかった

 
 
新任のCEOは、「何が目的か」を考えた。答えは、「将来を予測することではない。事業の方向性と目標を示し、その目標を達成するための戦略を示すこと」だった。そこでこの定義に従って戦略計画の見直しを行った。試行錯誤が四年続いた

 
 その結果今日では、企画部門は、会社の事業のそれぞれについて、次の三点を検討するにとどめている。業界におけるリーダーシップを維持するには、市場でどのような地位を必要とするか」「その地位を維持するには、どのようなイノベーションの成果を必要とするか」「資本のコストを賄うためには、最低どれだけの利益率を必要とするかである。

 今日この企画部門は、各事業部との共同作業によって、多様な経営環境を想定し、それぞれについて、これら三つの目標を達成するための戦略計画を作成している。以前のものに比べると、簡単で見栄えはしない。しかしそれは、今日、会社の事業と経営陣を導く実際の飛行計画の役割を果たしている。私はこの会社以外に、何が目的か」「なぜそれを行うかという問いを、企画部門の仕事のような知識労働について行っている例を知らない。)

                 『プロフェッショナルの条件(P・ドラッカー)』より


 
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分散化する知識労働者の仕事

 肉体労働では、人は一時に一つの仕事しかしない。テイラーの研究対象となった肉体労働者は砂をすくったが。同時に、炉に燃料を入れることはなかった。メイヨーが研究した配線室の女性たちは、ハンダ付けを行ったが、出来上がった電話機のテストを行うことはなかった。トウモロコシを植え付けているアイオワの農民が、仕事の合間にトラクターを降りて会議に参加することもない。

  (知識労働においても、集中の必要が知られていないわけではない。外科医は手術室で電話に出ることはないし、弁護士も、依頼人の相談中に電話に出ることはない。)

 ところが今日、知識労働者の仕事はますます分散しつつある。もし本社ビルの最高層部にいるのであれば、集中するということもたまにはできるかもしれないが、そうしてみようという経営トップもほとんどいない。今日、技術者、教師、販売員、看護婦、現場の経営管理者など、知識労働を実際に組織で行っている人たちは、仕事や給与にはほとんど関係がなく、かつ、ほとんど意味のない余分の仕事を課せられて、忙しさを着実に増大させている

  

(最悪のケースが、アメリカの病院における看護師である。看護師不足についてはいろいろと言われている。しかし、どうして看護師不足などということが起こりに得るのか。看護学校を卒業し、看護師という職業につく人たちは増えている。同時に、入院患者は急速に減りつつある。こうした矛盾が生じるのは、次のような理由からである。

  看護師たちは、看護学校で学んだこと、給与を支払われている本来の仕事、つまり看護のための時間の半分しか使っていない時間の半分は、看護師としての技能や知識を要しない医療的にも経済的にも価値のないこと、患者の世話や患者の満足とは関係のないことに使わされている。いうまでもなく、メディケア(高齢者向け政府医療保障)、メディケイド(身障者、低所得者向け政府医療援助)、医療保険、医療過誤訴訟防止策などのために膨れ上がる一方のペーパーワークが、それである。

  高等教育機関の状況もさして変わらない。あらゆる調査が、大学の教員は、授業、学生指導、研究よりも委員会の類に多くの時間を費やしていることを示している。それら委員会のうち、絶対に出席しなければならないものなどほとんどない。かえって、委員を七人ではなく三人にすれば、よりよい仕事をより少ない時間で行うことができる。)

 店員の仕事も多岐にわたる。デパートでは店員が書類にかかりきりになっている客と話をし、サービスをする時間がないおそらくこれが、売り上げと収益を生み出すべき店員の生産性を確実に低下させている原因である営業所の所長たちは、時間の三分の一を客に電話するよりも諸々のレポートの作成に使わされている技術者は、ワークステーションに向かっているべき時間に、会議に出させられている


 知識労働者の仕事は、充実するどころか不毛化している。当然、生産性は破壊される。動機づけも士気も損なわれる。看護師の意識調査を見ても、自分が看護の世界でしようと思ったこと、そのために訓練を受けてきたことができないことにいらだっている。当然のこととして、「仕事に見合う給与が支払われていない」と感じている。他方、これまた当然のこととして、病院の方は、彼ら、彼女らが行っている事務の仕事に対し、給与を払わされすぎていると感じている


 対策は、いたって簡単である。すでにいくつかの病院では、電話に答えたり、花を活けたりする病棟職員にペーパーワークを回している。とたんに、看護師に余裕がうまれ、看護に費やす時間も急激に増えた。それらの病院では、看護師の数を四分の一削減し、人件費を増やすことなく給料を引き上げることができたという。


 この種のことを実現するには、知識労働のそれぞれについて、「何のために給与を払うか」「この仕事には、どのような価値を付加すべきか」を考えればよい。答えは、必ずしも明白ではなく、議論の余地もありうる

 (あるデパートでは、定員の仕事は「売ること」という答えを出した。ところが、場所も客層も同じような別のデパートでは、「客にサービスすること」という答えを出した。答えの違いによって、売り場の仕事をどう変えるかは異なった。しかしいずれの場合も、フロア当たり、一人当たりの売り上げは急速かつ実質的に増大した。生産性と収益性が伸びた。)

              『プロフェッショナルの条件(P・ドラッカー)』より

 
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知識労働は三種類ある

 知識労働は、単なる労働の一言で片づけるわけにはいかない。それは大きく分けて三種類ある。それぞれについて、異なる分析と異なる組織が必要となる。物を作ったり運んだりする仕事については、生産性の向上の焦点は「仕事」に合わせなければならない知識労働の仕事については、「成果」に合わせなければならない


 第一に、知識労働のいくつかにおいては、仕事の成果は純粋に質の問題である。たとえば、研究所の仕事である。量、すなわち研究成果の数は、質に比べれば全く二義的である。
10年にわたって市場を支配する年間売り上げ五億ドルの新薬の一つのほうが、年間売り上げ二千万ドルの物真似薬二十種類よりも価値がある。戦略計画についても同じことが言える。医師の診断、放送や雑誌の編集についても同じことが言える


 第二に、質と量をともに成果とすべき知識労働が幅広く存在するデパートの店員の成果がそれである顧客の満足は質的な側面であり、定義するのはそう簡単ではない。だがそれは、売上高や売上伝票の枚数という量的なものと同じように重要である

 建築デザインについては、質が成果の大部分を決める。製図については、質は全体の成果の一部である。量もまた成果である。同じことが、医療技師、工場技術者、証券会社や銀行の支店長、リポーター、看護人、自動車保険会社の請求処理担当者の仕事など、広範な知識労働について言える。この場合、成果とは常に量と質の双方である。それらの仕事の生産性を向上させるには、量と質の双方に取り組む必要がある

 第三に、生命保険会社の保険金支払い、病院のベッドメイキングなど、その成果が肉体労働と同種の仕事が多数ある
それらの仕事の場合、質は前提条件であり、制約条件である仕事の質は、成果ではなく条件である最初から仕事のプロセスに組み込んでおかなければならない。組み込んでおきさえすれば、成果のほとんどは量で定義される。「定められたとおりに病院のベッドを一つ整えるのに何分を要するか」というように、量で測ることができる。それらの仕事は、物を作ったり運んだりするわけではないが、作業労働的である。


 このように、知識労働の生産性を高めるには、「その仕事が、成果に関して、いずれの範疇に属するか」を知っておく必要があるそうして初めて、「何に取り組むべきか」が明らかになる何を分析すべきか」「何を改善すべきか」「何を変えるべきか」を決定できるさらには、知識労働のそれぞれについて、生産性の意味を明らかにすることができる

                『プロフェッショナルの条件(P・ドラッカー)』より

 
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