2005年11月10日
[よろず感想]
流血女神伝 喪の女王 2
喪の女王 2
須賀しのぶ著
船戸明里カバー絵
集英社 (2005.11)
ISBN : 4086006669
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擬似中世風異世界に生きる、少女カリエの波乱万丈物語。
私は元々挿絵の船戸明里さんのファンで、シリーズ開始当初は挿絵だけを立ち読みで見ていたのですが、すぐに挿絵の前後が気になって文章も読むようになり、巻を追うごとに読むページ数が増えていき、6冊目にしてついに観念して購読者になりました。
物語に勢いがあり、怒涛の如く動いていくのでぐいぐい引き込まれます。文章が最近のライトノベルにしてはあっさりめでクセが無く、キャラクターの心情を読者の想像に任せる部分が大きいのも私の好みでした。
なにせ冊数が多いので、いきなり「買って!」と薦めるわけにもいきませんが、最近は公立図書館でもコバルト文庫を置いてくれている所が多いですし、機会があったら是非読んでみて下さい。(番外編や外伝の発行も、本編の進行具合に合わせて行われていますので、発行順にそってお読みになる事をお勧めします)
シリーズ21冊目にあたるこの巻は、本編最終章の2冊目。
作中の時間の流れ、主人公カリエの周りの事態の変動共に緩やかで、次巻に向けての溜めの巻、という感じではありましたが、水面下の国家間の綱引きがいよいよこんがらがってきてこの先どうなるのか更に予想が難しくなりました。
以下ネタバレ全開で今後の展開を妄想しています。
今回は、カリエの精神状態がシリーズ開始以来稀に見るほど安定していたと思います。お陰で読みやすくて、私はやっぱりカリエびいきなのだな、と改めて自覚したり。しかし、だからといってこの巻の内容がほのぼの寄りかというとそんな事は無く、カリエの母としての素朴な喜びが描かれれば描かれるほど、母になれないグラーシカの悲哀が余計に強調される、というえげつなさ……。
以前も同様の対比がなされていた事から考えて、下手すると彼女達はこの先明確な敵同士として合い見える事になってしまうのかもしれない、と感じました。
次巻でグラーシカがルトヴィアに戻れないまま母と姉の争いに巻き込まれるのはほぼ間違いないと思います。その際、彼女とイーダルが行動を共にしてくれた方が読者的には安心出来ますが、どうもこのままだと母&イーダルvs姉&グラーシカ、になってしまいそうな気がします。
以前カリエが見た不吉な白昼夢が今後の展開のヒントになっている訳ですが、あれの意味する所も当初の予想とは違うような気がしてきました。
最初は、ルトヴィアで市民革命が起こり、グラーシカはドミトリアスを護って討ち死にし、革命側のリーダーであるミュカがドーンに退位を迫る……というシーンだと思っていたんですよ。
しかしグラーシカがルトヴィアで孤立する様子が描かれるにつれ、西南戦争よろしく彼女が望まなくても、親衛隊が彼女をかついでルトヴィアに内乱を起こす可能性はあるかも、と思うようになり、あれは内乱を鎮圧したミュカが、返す刀でドーンに……という意味なのかな、と思うようになりました。
そしてこの巻を読んだ印象では、グラーシカ、姉に後押しされるままに、ルトヴィアに攻め込んでしまうのではないかと怖れています……。
今回エティカヤ側の動きが全く描写されなかったのも不気味です。真っ先に攻め込む先は弱体化したルトヴィアしか無いだろう、と思っていた所に、ザカール人を巡るユリ・スカナとの火種も示唆された訳で。思惑が外れたビアン様がどう動くのかも全く読めません。
戦火の不吉な影はこれまでも明確に示唆されてきた訳ですが、単にバルアンが他国を侵略する、とかルトヴィアの現王朝が倒れる、というだけでなく、四方八方に火の手が上がる大戦乱時代に突入してしまいそうですね。となると、本編の完結までには戦火が収まらないのかもしれない……。どっちみち、激しく「その先」が気になる終り方になりそうなので、完結後にアフレイムら次世代が中心の外伝を書いてくださる事を祈っています。
色々妄想を書き連ねましたが、実はこの巻で一番印象に残ったのは、本筋とあまり関係ないカリエの詠唱でした。まさかこの状況であんなバルカリ的に嬉しいエピソードが読めるとは思わなかったので、ものすごく嬉しかった!ほんの数行ですが、胸に染みました。