10月19日東電が脱国有化に向けて、6年ぶりに社債発行を再開する方針を固めた。社債発行により資金調達で自立し、脱国有化の環境を整える構えだ。東日本大震災以降、原発事故による巨額債務を負ったため東電は実質国有化された。また、信用力を失った東電は社債償還資金確保のために新しい社債発行を打ち切った。その東電が再び社債発行の再開に動いている。
発行業務を担う主幹事証券にSMBC日興、野村、大和、みずほ、モルガン・スタンレーの5社を指名した。社債発行の再開を許諾した理由は業績の改善が見られるからだ。東日本大震災以降、一時は1兆円を超える赤字が計上されたものの、2013年以降連結決算は約4000億円の黒字だった。さらに、2012年以降は売上高も過去最高益と好調である?
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しかし、東電が発表する連結決算の内訳は不透明である。
まず一つ目に、電灯量と電力量による収益が大幅に増加している点が挙げられる。収益の増加は消費が強いことを表す。しかし、2011年以降民間の電力消費量の推移は大幅に改善している。2011年政府が節電を促す政策を施行したが、これが民間に定着したものと思われる。関西電力の発表によれば、販売電力量計(電灯量+電力量)は2010年に9064kwh、2013年に8485kwhを示した。この8485kwhは2000年の8379kwhに最も近い数値だ。しかし、2000年と2013年の販売電力量計の収益率は約1.3倍続伸している。東電含む地方電力各社は電気料金の値上げを実施したが、その数値は平均8.46%。販売電力量計が減少しているにも関わらず、収益率が約30%も増加したことに驚きを隠せない。
二つ目に震災以降CFの推移である。CFとは企業の手元資金のことだ。B/S、P/Lは財務活動を示す指標であり、手元資金の残高を示すものではない。東電のCF残高は減少を続けているが、営業活動によるCFは8729億円で、震災前と同額水準に戻すことが出来た。一方で財務活動、投資活動によるCFの改善は見られない。特に財務活動によるCFは長期借入による収入を2011年に計上しているから、借入金返済による支出が滞るだろう。また、投資活動によるCFは定期預金預け入れによる支出が大きな値を示している。預入期間3か月以内の定期預金は現金同等物として扱われるため、東電の預け入れによる支出に含まれる定期預金は預入期間4か月以上と判断できる。B/S上の定期預金預け入れは流動資産か固定資産に振り分けられる。そのため、現金及び預金が企業内部でどのように流動しているか監査が難しいのである。手元資金の枯渇は明白だ。なぜ巨額資金を長期の定期預金預け入れに繰り込むのだろう。

2011年に監査法人も同様に東電の連結決算に対して無限性適正と唱えている。この理由は引当金計上額が合理的に見積もることが出来ないためであった。
東電は原発事故以後、見掛け倒しの企業成長を続けている。しかし、政府に対する長期借入金返済額は未だ多額である。また、政府は緩和政策によって手元資金に余裕がないだろう。社債発行の目的は本当に脱国有化を目的にしたものなのだろうか?東電に対する不信感は募るばかりだ。

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2015年11月20日