【はじめに】
本記事に登場する鍵括弧付きの「音階」という言葉については、以下のいずれかの言葉に置き換えると理解がより正確になります。
 ① 東川清一氏の理論でいう「均」
 ② 吉田孝氏によるこちらの研究ノートでいう「キー」


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こちらの記事でも説明したように、音名には固定モノサシ、階名には可動モノサシの役割があります。

調や旋法について理解するためには、これら2つのモノサシのうちの片方だけでは不十分です。
常に両者を組み合わせて用いる必要があります
。 
特に、階名の可動モノサシとしての役割の重要さについては、本ブログ以外にこちらのブログ(例えばこちらこちらの記事)でも説明されています。

ということで、実際にモノサシを作ってみました

読者の皆さんも、教育用・学習用の資料作成にあたりぜひ参考にしてみてください。
なお、同様の発想による資料はこちらのリンク先でも紹介されています。

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写真中、右側の下敷き状のモノサシが音名を表す「音名モノサシ」です。これは常に位置を固定して用います
他方で、左側の竹製のモノサシが階名を表す「階名モノサシ」です。これは音名モノサシに対して平行に移動させて用います

以下は備考点です。
① どちらのモノサシも十二平均律的発想により作られています。したがって、目盛りの上で全音と半音の間隔の比は2:1となっています。また、音名モノサシでは、嬰ハと変ニなどの(十二平均律上での)異名同音については同じ位置にまとめて書いています。
② 音名モノサシでは、嬰系の派生音については嬰ヘ、嬰ハ、嬰ト、嬰ニ、嬰イの5音までを書いています。そのため、調号でシャープ(嬰記号)5つの「音階」まで対応可能となっています。
③ 同じく、変系の派生音については変ロ、変ホ、変イ、変ニ、変トの5音までを書いています。そのため、調号でフラット(変記号)5つの「音階」まで対応可能となっています。


では、実際にいくつかの「音階」を例に、音名と階名の関係を確認してみましょう。 
以下の説明からも分かるように、これらのモノサシは、長・短調(長・短旋法)はもちろんドリア旋法・フリギア旋法などのいわゆる教会旋法の理解まで容易化する大変な優れです。
もっとも、厳密にいえば、優れものであるのはモノサシというよりは音名・階名自体ですが。


例1) フラット1つの「音階」
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この「音階」に属する長・短調は以下の通りです。
 ① 主音をドとする時 …へ長調(ヘ調長旋法)
 ②  〃 ラをする時 …ニ短調(ニ調短旋法)

その他、以下の旋法もこの「音階」に属します。
 ① 主音をレとする時 …ト調ドリア旋法
 ②  〃 ミとする時 …イ調フリギア旋法
 ③  〃 ファとする時 …変ロ調リディア旋法 
 ④  〃 ソとする時 …ハ調ミクソリディア旋法
 ⑤  〃 ティとする時 …ホ調ロクリア旋法


例2) シャープ5つの「音階」
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この「音階」に属する長・短調は以下の通りです。
 ① 主音をドとする時 …ロ長調(ロ調長旋法)
 ②  〃 ラをする時 …嬰ト短調(嬰ト調短旋法)

その他、以下の旋法もこの「音階」に属します。
 ① 主音をレとする時 …嬰ハ調ドリア旋法
 ②  〃 ミとする時 …嬰ニ調フリギア旋法
 ③  〃 ファとする時 …ホ調リディア旋法 
 ④  〃 ソとする時 …嬰ヘ調ミクソリディア旋法
 ⑤  〃 ティとする時 …嬰ロ調ロクリア旋法

 
例3) フラット3つの「音階」
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この「音階」に属する長・短調は以下の通りです。
 ① 主音をドとする時 …変ホ長調(変ホ調長旋法)
 ②  〃 ラをする時 …ハ短調(ハ調短旋法)

その他、以下の旋法もこの「音階」に属します。
 ① 主音をレとする時 …ヘ調ドリア旋法
 ②  〃 ミとする時 …ト調フリギア旋法
 ③  〃 ファとする時 …変イ調リディア旋法 
 ④  〃 ソとする時 …変ロ調ミクソリディア旋法
 ⑤  〃 ティとする時 …ニ調ロクリア旋法 


例4) シャープ3つの「音階」
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この「音階」に属する長・短調は以下の通りです。
 ① 主音をドとする時 …イ長調(イ調長旋法)
 ②  〃 ラをする時 …嬰ヘ短調(嬰へ調短旋法)

その他、以下の旋法もこの「音階」に属します。
 ① 主音をレとする時 …ロ調ドリア旋法
 ②  〃 ミとする時 …嬰ハ調フリギア旋法
 ③  〃 ファとする時 …ニ調リディア旋法 
 ④  〃 ソとする時 …ホ調ミクソリディア旋法
 ⑤  〃 ティとする時 …嬰ト調ロクリア旋法


 例5) フラット2つの「音階」
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この「音階」に属する長・短調は以下の通りです。
 ① 主音をドとする時 …変ロ長調(変ロ調長旋法)
 ②  〃 ラをする時 …ト短調(ト調短旋法)

その他、以下の旋法もこの「音階」に属します。
 ① 主音をレとする時 …ハ調ドリア旋法
 ②  〃 ミとする時 …ニ調フリギア旋法
 ③  〃 ファとする時 …変ホ調リディア旋法 
 ④  〃 ソとする時 …ヘ調ミクソリディア旋法
 ⑤  〃 ティとする時 …イ調ロクリア旋法


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いかがでしょう?
これほど「初学者に優しい」楽典教習器具が他にあるでしょうか?
もちろん、これも器具がすごいというよりは、そもそも音名・階名がすごいという方が適切です。

音名・階名モノサシ一式は、本講座および私の他の楽典・ソルフェージュの授業でも今後使い続けるつもりです。
絶大な効果があるだろうことは今から目に見えているので、楽しみです。