クリスマス期の歌の2曲目。
前回はドイツの歌でしたが、今回はイングランドの歌から、17世紀初頭の作曲家・音楽理論家であるレイヴンズクロフト Thomas Ravenscroft による《忘れるな、ああ人々よ Remember, o thou man》です。*

記譜法についてはこちら。ただし、以下の記号のみ私が独自に加えています。


( ) … 一時的転調と捉えた場合の、別の階名
/// … 終止線



では、歌ってみましょう。調(音高)は大まかにのみ設定しています。


d: G~B (3/2)

* 二分音符を1拍として記譜

/l  :l  :l  /d’  :-.t :l  /s  :-.s :l  /t  :-.se :m  /


/l  :l  :l  /d’  :-.t :l  /s  :s  :l  /t  :-  :-  /


/d’  :m’  :m’  /m’  :-.r’ :d  /t  :r’  :r’  /r’  :-.d’ :t  /


/d’  :t  :l  /se  :-.l :t  /r’ (f)  :de’ (m)  :t (r)  /l (d)  :-  :-  ///



さて、この曲は日本ではあまり知られていないかもしれませんが、私が大好きなクリスマスの曲の一つです。
後期ルネサンス時代のイングランドに特徴的な、いわゆる「メランコリック」な旋律の好例とも言えます。

 

私が感じる、この旋律の魅力的な点を挙げるとすれば以下のようになるかと思います。

① 1オクターブ内の狭い音域の中で動く素朴さ
② 基本的に滑らかな順次進行を基本としながら、味付けのように分散和音的進行も登場
③ 2つ目のフレーズ(上記楽譜2段目)から3つ目のフレーズ(3段目)にかけての平行調転調的な変化
④ 最終和音だけ長三和音(短旋法のラド♯ミ=長旋法のドミソ)で解決する、いわゆるピカルディー終止(当時の短旋法曲における一般的な終止)

そして何よりも、

短旋法の第7音がソ♯とソ♮の間で揺れること

特に⑤は、他にもロシアの歌《ポーリュシュカ・ポーレ》やポルノグラフィティの《サウダージ》などにも例があり、私が大好きな旋律パターンの一つです。

以上のこともすべて、階名で歌うことでよく分かります

では、次回もお楽しみに!

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注)
* 1611年出版の曲集、Melismata. Mvsicall Phansies. Fitting the Covrt, Citie, and Covntrey Hvmovrs. To 3, 4, and 5. Voyces に所収。元の楽譜はこちら