前回の記事の続きです。

さて、以下では《ボレロ》副主題を基に、階名的な音楽の聞こえ方の例をいくつか挙げてみることとします。
(以下に楽譜を再掲します)

ボレロ 副主題000


まず重要なのは、階名的な音楽の聞こえ方では耳が「音の性格」に反応するということです。

例えば、新しい♭音が登場した時には耳が「ファ」と反応する傾向があります。
「耳が『ファ』と反応する」という言い方が分かりにくければ、「耳に反射的にファと聞こえる」と言いかえてもよいかもしれません。

例えば、上掲楽譜のうち冒頭の変ロ音のところをご覧ください。

この箇所で聴き手は、それまでの「ドーーーティドレドティラ……(中略)……レミレファミレド」という主題に耳が慣れていて、そのハ長調の調感覚が心理的に構築されている上でこの副主題を聴き始めることとなります。

すると、冒頭の変ロ音を聞いた時に、この音がそれまでの調感覚あるいは調の心理的枠組(この場合はハ長調の心理的枠組)には収まらない音であり、なおかつ♭音であるために、ファと聞こえることとなります。

同様に以後も、それまでの調感覚に収まらない♭音(各★の箇所)が登場するたびに、多くの場合その音がファと聞こえてきます。

そして、新たにファと聞こえるいずれの箇所からも、そのファを軸として後続部分の階名が決定されることとなります。
これについても、上掲楽譜の各★の以後の階名をご参照ください。

では、なぜ♭音がファと聞こえるのか?

このことについてはきわめて音楽理論的あるいは音楽心理学的な説明を要するため、詳しくは次回記事にて。
階名の他ならぬラベリング対象であり、それゆえに階名唱の本質を理解するにあたり大変重要な「音の性格」について解説します。
お楽しみに!