今回は、前回の記事の最後に言及した「音の性格」についてです。*
階名の本質に関わる大変重要な話になります。

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まず、調性音楽とは音階の各構成音に固有の性格がある音楽である、と言うことができます。

例えばダイアトニック音階(全音階)を用いた音楽の場合、1オクターヴ中に7つの音があります。

そして、7音はすべて、他の6音に対する音程関係が異なっています。

このことを以下の図で確認してみましょう。

「音の性格」を示すための12分割された円


この図では、円を12等分したスペースのうち灰色で塗ったものが、ダイアトニック音階を構成する各音を表します。その上で、塗ったスペースにはそれぞれ対応する階名を付けています。

また図では、時計回りに進むほどより高い音になります。他方で、反時計回りに進むほどより低い音になります。

隣り合う2つの(階名で表される)音の間の音程については、全音であれば1つスペースを空け、他方で半音(短2度)であれば2音を直接隣接させる形で表しています。

ただし、ダイアトニック音階では8音目ごとにオクターヴ違いの音に回帰し、2周目以降も同じ音程関係を繰り返すことになります。つまり、いわゆる「オクターヴの同一性」が存在しています。

オクターヴの同一性を踏まえているので、図は直線ではなく、常に同じ階名に回帰できるよう円形になっています。

さて、図を見ると、各階名に対応する全音階構成音はそれぞれ、他の諸音に対する音程関係が異なっていることが分かるかと思います。

例えばドの音であれば、より高い諸音に対しては1音移るごとに全音、全音、半音、全音、全音、全音…という音程関係になっていて、他方でより低い諸音に対しては半音、全音、全音、全音、半音…となっています。

またラであれば、より高い諸音に対しては全音、半音、全音、全音、半音…となっていて、より低い諸音に対しては全音、全音、半音、全音、全音…となっています。

このような、各音の他の諸音に対する音程関係のことを、以下では東川清一氏に倣い「音環境** と言うことにしましょう。

音環境をまとめたのが以下の表です。


●階名で表される各音の音環境
(いずれも単位は度。完は完全の略)

←より低い音階音に対し

階名

より高い音階音に対し→

完5

増4

長3

長2

ティ

短2

短3

完4

完5

完4

長3

長2

短2

短3

完4

完5

完4

長3

長2

長2

短3

完4

完5

完4

短3

長2

長2

短3

完4

完5

完4

短3

長2

長2

長3

完4

完5

完4

短3

短2

長2

長3

完4

減5

完4

短3

短2

ファ

長2

長3

増4



この表からは、階名で表される7音すべての音環境が異なっていることが分かるかと思います。

ところで、このような各音の音環境の違いは音の物理的側面に関わるものです。

そして、物理的側面としての音環境の違いは、我々の耳には音の性格の違いとして聞こえてくることになります。言い換えれば、音環境が音の性格を決定します。

したがって、7音すべての音環境が異なるということは、7音とも音の性格が異なるということになります

他ならぬ、このような各音それぞれの性格をラベリングするための言葉として考案されたのが階名ドレミである、というわけです。

実際、7つの階名は、それぞれ「ドの音環境および性格」や「ラの音環境および性格」のような固有の「音環境および性格」を持った音をラベリングしています。

したがって、ある音が同一の「音環境および性格」を有している以上は必ず同一の階名で表され、他方で、異なる「音環境および性格」の音は必ず異なる階名で表されることになります。


次回の記事では以上のような、階名により表されるところの各音の性格の違いや相互関係について、より具体的に述べる予定です。
また併せて、ふたたび前回記事までの《ボレロ》副主題も取り上げつつ、ではなぜ我々の耳はフラット音に「ファ」と反応するのかなどの問題についても詳しく論じたいと思います。


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注)
* 当記事と同様の話は、下記の本の18頁以降などにおいても詳しく解説されています。ただし、当記事の内容は、それを大島が自分の言葉で論じなおしたものです。


なお、音階各音の音環境を表す円形の図は同著者の以下の本にも登場します(具体的な頁は現在未確認)。

移動ドのすすめ
東川 清一
音楽之友社
1998-12-10


** 東川清一『退け、暗き影「固定ド」よ!』、18頁。