生徒の皆さんの中には、まだ階名唱(いわゆる「移動ド」唱)の勉強を始めたばかりなのに視唱の試験を受けなければならない人もいるかと思います。

例えば、音楽高校などに所属していて、4月に階名唱を始めたばかりなのに早くも5~6月に定期試験を受けなければならない生徒です。

そして、その試験というのが、五線譜から視唱しなければならないものだとします。
また、音楽大学入試にあるような難度の高い試験曲が出題されるとします。

そもそも階名唱では、五線譜での読譜を始める前に、簡易譜(ハンドサインモデュレーターなど)を用いてやらなければならない基礎訓練がたくさんあります。
それについてはこちらの記事で東川清一氏も述べている通りです。

にも拘わらず上記のような試験を与えられるというのは、生徒たちにとっては時期尚早な試験を強制される状態になります。

私は個人的には、そのような試験は(いわゆる)「捨て」てしまっても問題ないとまで思っています。
まだ基礎段階の勉強をしているところで不相応に難しい試験を与えられ、そのためにペースを乱され、より大事な基礎訓練が疎かになっては問題があるためです。

生徒の皆さん。
今はもっと大事なことがあります。
目前の試験よりも、先の試験に照準を合わせましょう。
その方が、長い目で見れば力がつきます!

マイペースが大事!

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しかし、生徒の皆さんにとっては、「そのようなことを言われても現実に試験は大事だし、成績にも響くし…」と思い、不安が解消されないのが自然だと思います。

また、確かに私も、せっかく試験が与えられているのにそれを完全に「捨て」てしまい、実力向上にまったく生かさないというのも、もったいなく思います。

これらの点を踏まえ、生徒の皆さんには以下のように伝えたいと思います。
試験が初めてで不安な皆さんも、ご安心ください。

与えられる試験曲をすべて完璧に歌おうとしないでください
試験曲の中で優先順位が高いポイントと低いポイントを自分で作り、前者に集中するようにしてください
他方で、後者については今回は「捨て」てもよいくらい考えてください。

優先順位の付け方の基準には、例えば以下のようなものがあります。

◆ 長調ならばド、短調ならばラだけは外さないようにしよう!
◆ 主三和音の構成音(長調ではドミソ、短調ではラドミ)だけは外さないようにしよう!
◆ 終止(半終止、全終止など)の音だけは外さないようにしよう!
◆ 音程関係は取れなくてもよいから、リズムは間違えないようにしよう!
◆ テンポだけは最後まで変わらないようにしよう!
◆ リズムは少しくらい間違えてもよいから(途中で止まってもよいから)、音程関係はなるべく取れるようにしよう!
◆ ファとティは外してもよいから、ドレミソラ(五音音階構成音)は外さないようにしよう!
◆ 途中はどうでもよいから、最後の音だけはしっかり戻って来られるようにしよう!

…など

なお、音程関係に関し「なるべく外さない方がよい音」と「外しても比較的問題ない音」の区別については、こちら(講師 Twitterアカウントより)をご参照ください

もう一つとても重要なことを言うと、視唱ではドレミを言うことは目的ではないのだから、歌う時に必ずしもドレミを言う必要はありません
あるいは、すべて言う必要はありません。
こちらこちらの記事にもあるように、「ラララ」などの無シラブル唱で歌えれば十分です。

したがって、五線譜からの階名読み取りにまだ不慣れな皆さんもご安心ください。

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西洋クラシック音楽では、「変えてもよい音は一音もない」などと言われるように、曲中のすべての音が重要だとされます。

しかし、それはその曲の「作品」としての存在にとっての話です。
同じ曲を音楽の基礎教育(特にソルフェージュ教育)の教材として扱うならば、やはり重要性の高い音と低い音というのはあるとも言えます。

そして、すべての音を対等に大事に歌う必要もないと考えてよいでしょう。

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人間はあれもこれも同時にできないので、すべてのことに一度に意識を向けようとする必要はありません。

自分の中で優先順位を作り、100点狙いをして失敗し0点を取るのではなく、最初から「上手に」60点、70点を狙いましょう
あるいは、そのレベルも難しく思えるならば、最初から30点や40点を狙いましょう

そして、その通りの点数がしっかり取れたならば、自分にとっては成功としましょう

うまくいくことを祈ります!