トニック・ソルファ譜は一種の階名譜です。しかし、これを使いリズム譜を作ることもできます。

そのためには、各音を通常のアルファベット略号の代わりに「x」「o」などの中立的な文字で記していくだけで良いです。

これは私が最近思いついたやり方であり、伝統的なトニック・ソルファ譜の記譜法では一般的なものではありません。
そのため、リズム譜の作り方については読者の皆さんも色々試すことができるかもしれません。

以下に作成例を提示します。ここでは「x」を使うこととします。
その他、基本的な記譜法についてはこちらをご参照ください。

《ほたるの光》のリズム
(4/4)
: x  / x  : -.x: x  : x  / x  : -.x: x  : x  / x  : x  : x  : x  / x  : -  : -  : …

《仰げば尊し》のリズム
(6/8)
.x / x .- .x : x .- .x / x .- .x : x .- .x / x .- .x : x .- .x / x . - . - : - .- …

ビゼー《アルルの女》第2組曲~〈パストラール〉より
(3/4)
/ x  .-,x: x  .x  : x  .x  / x  .-,x: x  .x  : x  .x  / …

ラヴェル《ボレロ》より
(3/4)
/ x    .(xxx) : x    .(xxx) : x    . x    / x    .(xxx) : x    .(xxx) :(xxx) .(xxx) / …

* (  ) は連符を表します    

ホルスト 組曲《惑星》~〈火星〉より
(5/4)
/(xxx) : x    : x    :x .x  : x    /(xxx) : x    : x    :x .x  : x    /  …

行進曲の小太鼓風のリズム
(2/4)
/   .x  :   .x  /   .x  :   .x  /   .x  :   .x   /   .x,x :   .x   / …

サンバ風のリズム
(4/4)
/ x  .x   : x  .x,x : -,x.-,x : x  .x  / x  .x   : x  .x,x : -,x.-,x : x  .x  / … 


そもそも、五線譜のリズム表記法は記号性・恣意性が強く、初学者にはその規則がやや覚えにくいとも言えます。*
この点を考慮しても、リズム読譜の訓練を五線譜よりも先にトニック・ソルファ譜から開始するのも、ある意味では合理的かもしれません。
トニック・ソルファ譜では音の時価の表示がより直接的となるためです。

あるいは、通常の階名付きのトニック・ソルファ譜を読むための基礎訓練用にも、リズムだけを記した楽譜を使うことができます。

もっとも、トニック・ソルファ式のリズム譜だけではリズムの重要な要素であるゲシュタルトの把握(あるいは複数音のグルーピング)が行いにくいと感じるならば、コダーイ式のリズム唱などを併用しても良いかもしれません。

なお、五線譜でスラーやブレス記号を用いるようにフレーズのまとまりを示すにはどのようにすれば良いかについては、今後検討の余地があるかもしれません。
あるいは、フレーズについては生徒・学習者が自分自身で読み取る対象にしても、重要な訓練になるでしょう。
このやり方はコダーイも奨励しています。**


以上、ぜひお試しください。


_____
注)
* この問題については、別に詳しく論じる必要があります。
** 以下の教本の33頁。

コダーイ 333のソルフェージュ
コダーイ ゾルターン
全音楽譜出版社
1998-12-10



* 画像は講師所有のリズム関係の本より。いずれも大変勉強になります。なお、リュシーやクーパーとマイヤーの本は音の長短関係を主に問題とする、現代日本人の考える狭義のリズム法というよりは、フレージング法を扱っているという方が近いです。
KIMG0402