ここ数年さまざまな膠を試す機会を得て、気づいたことがある、
常々「岩絵具にとって良い膠とは、」と言う観点で接してきたが、従来から言われている、発色や筆馴染みの良さそして塗膜の柔軟性・適度な接着力などに加え、膠で練ったとき10段階ある粒度による濃淡と発色の違いを粉体のままの状態にいかに近く保てるかと言う点が重要なのではないだろうか。
この点で比較して見ると不純物の少ない洋膠やゼラチンよりも和膠(特に昔のもの)のほうが明らかに優れている。また樹脂膠類は確かに柔軟性があり接着力も強いがこの濃淡・輝きの幅がかなり、狭まってしまう。
アラビアゴムではさらに縮まるし、リンシードオイルなどにいたっては濃淡が殆ど無くなってしまう、つまり水彩画や油画ではピグメントを粒度分けする意味が無いわけである。
日本画の大きな特徴である岩絵具の番手による濃淡と輝きの振幅をより忠実に再現できるものが良い膠の重要なポイントと言えるのではないか。