むかし、未来はこんな風だった。

紹介

 昭和二十年~四十年代。
 戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、子供たちを魅了した「未来予想図」がありました。
 原子力やコンピュータ、ロボットに宇宙ロケット。
 もし実現したら、僕らの生活はどうなるんだろう――当時の少年向け雑誌に描かれたイラストや漫画、玩具広告などを収録。
 心躍る「未来」がここにある。



感想

 いわゆる「レトロフューチャー」を特集した本です。

 20世紀中盤くらいの人々にとって、21世紀は近未来。日々進歩する技術は日常に浸透し、バラ色の世界がやってくるハズでした。
 この本にも、そうしたイメージが紹介されています。

 例えば、
  • 車が空を飛ぶ
  • ロケットが宇宙港から飛び立つ
  • 家族で月旅行
  • ロボットは一家に一台
  • 大都市には超超高層ビル、その間を透明なパイプが結んでいる
  • 海底に都市を築く
 などなど。まさに科学万能ですね。

 この頃に描かれた作品、例えば『鉄腕アトム』や『メトロポリス』などには、こういったイメージの「未来」が描かれています。



 いま、「未来」とカギ括弧付きで書きました。

 ご存じの通り、そんな未来は来ませんでした。我々は既に、アトムの誕生日である2003年4月7日を十年も昔に抜き去ってしまっています。
 宇宙旅行も出来てないし、地球環境は汚染されてるし、ロボットはなかなか賢くならない。
 車だって飛んでないし。
 あーあ、やだやだ。

 そんなガッカリ感が、新たなタイプの「レトロフューチャー」を生みます。

 既に21世紀を生きている我々が描く、「もうひとつの世界」「来るハズだった世界」としてのレトロフューチャーです。
 もはやそれは未来でもなんでもありません。その世界は実現しません。
 我々にとって、それは異世界。
「指輪物語」の世界に憧れを抱くのと、なんら変わらない感情を、その「未来」に対して抱くのです。

 例えば『アストロボーイ・鉄腕アトム』や『Project BLUE 地球SOS』などをご覧頂ければ(バンダイビジュアルで視聴できます)、そのイメージが掴みやすいでしょう。
 後者は原作が挿絵画家の大御所小松崎茂氏で、本書でも特集されています。

 映画ならば『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』でしょうか。

 こちらのサイトには、非常に多くのレトロフューチャー資料がそろっています。



 奇異でありながら、どこか温かい。
 ハイテクでありながら手作りの質感を感じる。

 そんな不思議な魅力を持つ世界観、それが「レトロフューチャー」です。